In These Times 2017年11月1日 特別調査報告
モンサントは、グリホサートを市場に出し続けるために
どのように EPA を攻略し、科学を捻じ曲げたか

バレリー・ブラウン、エリザベス・グロスマン

情報源:In These Times, November 1, 2017
How Monsanto Captured the EPA (And Twisted Science)
To Keep Glyphosate on the Market
By Valerie Brown and Elizabeth Grossman
http://inthesetimes.com/features/monsanto_epa_
glyphosate_roundup_investigation.html


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2017年11月18日
更新日:2017年11月25日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/usa/articles/171101_
In_These_Time_How_Monsanto_Captured_EPA_And_Twisted_Science.html
著者
バレリー・ブラウン(Valerie Brown)は、環境健康、気候変動、及び微生物学を専門分野とするジャーナリスト。2009年に環境ジャーナリスト協会からエピジェネティックスに関する記事について授賞した。
エリザベス・グロスマン(Elizabeth Grossman)は科学と環境問題を専門分野とする受賞歴のあるジャーナリスト。Chasing Molecules, High Tech Trash 及びその他の本の著者である。彼女の同僚と友人にとって大変悲しむべきことに、グロスマンは、本年7月に卵巣がんで亡くなった(訳注0)。

1973年以来、モンサントは、雄マウスの子宮に関するテストというような、うさんくさい科学を引用したが、EPAはその多くを見逃した。
序論 (訳注:オリジナルには”序論”という項目名はなく、訳者が便宜上設けた。)
グリホサートの使用が激増
モンサントが規則を書く
ナンセンスなデータからはナンセンスな結果しか出てこない
外部の専門家ら
時代遅れの毒性学
その答えは気に入らない? それならもう一度問え
IARC は規制当局目を覚めさせる
母乳のように安全
未来に戻る

序論(訳注:オリジナルには”序論”という項目名はなく、訳者が便宜上設けた。)

 2014年4月、「全米の母親たち(Moms Across America)」と呼ばれるある小さな草の根の団体が、母乳の 10 サンプルをグリホサートの有無についてテストし、それらのうち 3 サンプルにその化学物質を検出したと発表した。グリホサートは世界中で最も広く使われている除草剤であり、ラウンドアップの主成分である。「全米の母親たち」により検出されたグリホサートのレベルは、米国環境保護庁(EPA)が飲料水のために、及び米国農務省(USDA)が食品のために定めたそれぞれの安全限界以下であったが、その結果はメディアで大騒ぎになった。

 「全米の母親たち」のテストは、どの様な公的な科学研究の一部でもなかったが、ラウンドアップの商標所有主であり主要なグリホサート製造者であるモンサントは、母乳中からグリホサートは全く検出されなかったという新たな研究に基づき、その最も利益を上げる農薬を急遽、守り始めた。この研究は、”独立”である主張されていたが、実際にはモンサント社自身により支援されていた。

 ”このことを知ればだれでも、たとえ未経験な母親の研究であっても、母親より化学会社の方を信用するということはとしないであろう”と、「全米の母親たち」の創設者であるゼン・ハネイカットは述べている。”母親の唯一の関心は家族や地域が健康であることである”。ハネイカットは、彼女らの母乳プロジェクトは公式な科学的研究ではないために、それを厳しく批判されていると述べている。しかし、彼女の意図は、グリホサートが我々の母乳に入り込んでいるかどうかを知ることであり、もし入り込んでいるなら更なる科学的研究を実施し、それにより政策が修正されるような動きを引き起こすことであったと、彼女は述べている。

 だれでもグリホサートに暴露している:その除草剤の残留は、全米で生鮮食品及び加工食品の両方並びに飲料水中で検出されている。グリホサートへの暴露は、非ホジキンリンパ腫((訳注1)や腎臓障害から腸内細菌のかく乱や不適切なホルモン機能に至るまで、様々な健康問題を引き起こし得る。

 「全米の母親たち」のエピソードは、EPA が初めてグリホサートを使用のために登録した1974年以来、出現しているあるパターンをよく表している。化学物質の安全性について疑問が提起されたときに、モンサントはその回答が科学的正確性と透明性より彼らの金銭的利害に役立つことを確実にしようとした。我々の二年間に及ぶ研究は、40年以上前にラウンドアップの主成分としてグリホサートが初めて市場に出されて以来、EPAの意思決定に深い影響を及ぼしてきたという、論争の余地のない証拠を見つけた。

 我々は、EPAのグリホサート検討の初期の段階からのEPA文書の公的に利用可能な保管記録を入念に検証した。関連文書のかなりの部分は編集されているか、又は完全に省略されていた。しかし、この保存されていた文書は、モンサントにより提出されたデータの多くは受け入れることができないことを発見した EPA の専属科学者らが、グリホサートは発がん性物質であることを示した1983年のマウス研究に大きな比重を置いたことを明らかにした。

 しかし彼らの解釈はその後、EPAの上層部マネージメント及び諮問委員会によりひっくり返されたが、それは明らかにモンサントからの圧力によるものであった。何年かすれば、その極めて重要な1983年のマウス研究はその真の意味を覆い隠すために、人を誤解させる分析であるとして葬り去られてしまうであろう。今日、その研究は、実際の証拠はそれとは違うことを示しているにもかかわらず、グリホサートが公衆に健康リスクを及ぼさないとする証拠として、EPA 及びモンサントにより引用され続けている。

 一方、EPA は、グリホサートが危険であることを示唆する研究がますます増加していることを見落としていた。2015 年3月、国際がん研究機関(IARC)は、2001年以来発表された複数のピアレビューされた研究に基づき、グリホサートはヒトに対する発がん性がおそらくある (probably carcinogenic to humans) と決定した(約注2)。しかしEPAはその分類を変えなかった。その代わりEPAは2016年9月に反証を発表し、同庁の科学者らは”IARACに同意しない”と述べ、1983年のマウス研究を非発がん性であることの証拠として引用した(約注3)。

 論争が、モンサントとの居心地の良い関係を享受していた EPA 上層部の周りで渦巻いた。独立した監査機関である EPA の監察官室(Office of Inspector General)は、 EPA の農薬プログラム室の前副ディレクターのジェス・ローランドが、 IARC 報告書の発表により促進されたグリホサートに対する米国保健福祉省の研究を”葬る”ためにモンサントと談合したかどうかを現在、調査中である。2015年4月28日にモンサントの規制問題マネージャーのダン・ジェンキンスは彼の同僚らに、”もし私がこれを葬ることができれば、私はメダルを授与されるべきだ”とロランドが彼に言ったとeメールした。

 一方、全国の人々が彼らの健康問題と彼らの愛する人の死はグリホサートと関連があると申し立てて、モンサントを訴えている。少なくとも1,100件の訴訟が州裁判所を通じて、さらに追加の240件が連邦裁判所を通じて、モンサントにに向けられている。

 どのようにして、このようなことになったのかを理解するために我々は、現在ひどく漏洩しているこの40年に及ぶ選択的な解釈の溜り(dam)と産業側の干渉はどの様にして整然と組み立てられていたかを検証しなくてはならない。

グリホサートの使用が激増

 1974年には140万ポンド(約64万トン)のグリホサートが全米の農場及び放牧地で散布された。2014年までに2億7,800万ポンド(約1億2,500万トン)が散布された。グリホサートの使用は、米国農務省がラウンドアップ耐性を持たせるために遺伝子操作をしたトウモロコシ、大豆、及び綿花の種子を市場にだすというモンサントの要求を承認した1990年代に急増し始めた。

 アメリカでは EPA がグリホサートを、小麦、コメ、エン麦、大麦、及びアルファルファーを含んで100種以上の作物での使用のために登録している。カリフォルニア州では2015年だけでも 1,100万ポンド(約500万トン)のグリホサートが、アーモンド、アボカド、カンタロープ、オレンジ、ブドウ、及びピスタチオを含む作物に使用されている。グリホサートの発がん性に関する 国際がん研究機関(IARC)の分類の結果を受けて、カリフォルニア州はプロポジション 65 プログラムの下に、グリホサートを発がん性物質として分類した(約注4)。このプログラムはビジネスに対して製品中の発がん性化学物質について消費者に知らせることを求めるものである。モンサントはこれについて法廷で争っているが、現在までの所、優勢ではない。

 グリホサートは、世界中で、160か国以上で使用されている。2015年にモンサントの農薬の売り上げは、伝えられるところによれば、47億6,000万ドル(約5,400億円)に達し、その多くはラウンドアップレディ大豆のような同社のグリホサート耐性遺伝子組み換え作物(GMO)が植えられている畑で使用されるグリホサートの販売によって支えられている。

 疾病管理予防センター(CDC)は、農薬を含む200種以上の産業化学物質について定期的に米国人の血液と尿を測定しているが、グリホサートは追跡されているそれらの化学物質ではない。米国農務省(USDA)は、食品中のグリホサートをテストすることを拒否しているが、食品医薬品局(FDA)は最近、食品中のグリホサートを監視するプログラムを再開した。しかしそのデータはまだ入手可能ではない。

 政府の良いデータがないので、様々な非営利団体はその除草剤の残留についての食品テストを外部に委託している。そのような中で最も新しい Food Democracy Now によるテストは、ハニーナッツチェリオ、リッツクラッカー、オレオ(サンドイッチ状のクッキー)、ドリトス(トウモロコシを主原料としたスナック菓子)、及びレイズのポテトチップス中にグリホサートを見出した。以前のヨーロッパのテストではパンとビール中に残留グリホサートを検出した。

モンサントが規則を書く

 1970年代の農薬の眺望は今日のそれとはかなり異なっていた。トキサフェン(1990年に禁止)、エンドリン(1986年に禁止)、及びクロルデン(1988年に禁止)を含んで、市場にはもっと多くの非常に毒性の強い化合物が出されていた。対照的にグリホサートは非毒性物質として出現した。グリホサートは植物の代謝経路だけに作用するので、それは人間には無害であろうと規制当局は想定した。

 グリホサートが1974年に市場に出されたのは、EPAが設立されてからまだ4年後のことであり、同庁はレビューしなくてはならない多くの化学物質に直面していた。当時、毒性学テストの手順はまだ比較的固まっておらず、EPA がそのガイドラインを確立したのは1988年のことであった。それでもEPA のグリホサート分析はまだ、初期のデータに大きく依存していた。

 グリホサートの毒性の認識を低減しようとするモンサントの試みの中で我々が発見した最も早い事例は1973年からのもので、それはグリホサートが登録される前年のことであった。その時、生物学者で EPA の毒性学部門(TB)登録部のロバート D. コバリーは、その除草剤は眼刺激を引き起こす傾向があるので、”危険(Danger)”という語が、モンサントが登録を求めていたラウンドアップ製剤のラベルに表示されるべきであると勧告した。

 1973年、モンサントの上席職員 L.H. ハンナは、、毒性学部門(TB)の職員らが、”危険”という語を製品ラベル上に記載すべきとする勧告にモンサントが抵抗したと、登録部へのメモ中で述べたと EPA への手紙の中で書いた。毒性学部門(TB)の職員は、モンサントはテストで観察された眼刺激は除草剤よりもむしろ”以前の眼刺激の二次感染”により引き起こされたと示唆したと書いた。EPA 職員は危険という言葉を取り消すことをいやがったが、モンサントは抵抗した。やり取りの全体は入手することができないが、1976年1月にモンサントはラベル上の”シグナルワード(訳注5)”を”危険(Danger)”から注意(Caution)にするよう求めた。1976年6月、EPA はモンサントの要求を受け入れた。

ナンセンスなデータからはナンセンスな結果しか出てこない

 1970年代を通じて、EPA職員は繰り返し、モンサントがグリホサートの当初の登録の根拠としてモンサントが提出していたテストデータの不十分な点についてレッドフラッグ(危険信号)を出していた。例えば、1978年8月のメモの中で、毒性学部門(TB)の科学者クリスティーナ・ロックは、モンサントのある研究は契約した研究所の科学者らが実験で何が起きたのかを記録していなかったということに懸念を示した。ロックは、この研究を擁護したモンサントの科学者ロバート・ローデブッシュの発言を次の様に引用している。”全てのデータの一次記録を観察することはできないのだから、研究の科学的妥当性を疑うべきではない”。言い換えれば、EPA はデータがないことを懸念すべきではないということである。単に研究の結論を信用すべきである。

 EPA のロックはまた、(雄のウサギの)子宮から標本をとったとその研究所が述べた時に、その研究の科学的妥当性を疑わざるをえない(雄のウサギには子宮はない)と指摘した。

 これは、1970年代における最初の規制レビューの期間に、EPA が利用可能であった信頼できないデータについての最もひどい事例である。我々が検証した他の多くの EPA のメモは、不完全な、そうでなければ受け入れられない毒性学スクリーニングテストについて詳細に記述していた。

 逆に、明らかに有効な研究は、EPA上層部と巨大農業ビジネス(Big Ag)の両方によって信用を落とすための主要な試みのターゲットとなっていた。1983年に EPA はモンサントにより提供されたグリホサートの毒性データの検証を続けていたが、そのことは、殺虫剤殺菌剤殺鼠剤法(FIFRA)により、それぞれの農薬について少なくとも15年毎に実施することが求められていた。プロセスの一部としてモンサントは後にモンサント側にとって頭痛の種となり、グリホサートは良性であることを見つけ出したい EPA の後ろだてにとって足手まといとなることになる、二年間にわたるマウス給餌研究を EPA に提出した。その歴史は厳格に検証することに値する。

 そのマウス研究はモンサントのために Bio/Dynamics と呼ばれる研究所により実施されたが、その研究の結果はピアレビューも公開もされていなかった。Bio/Dynamics は 200 匹のマウスを研究した。200 匹は暴露させないコントロールグループ、他の各 50 匹ずつの3つのグループはそれぞれ異なる用量のグリホサートに暴露させた。暴露させたマウス4匹、そのうち1匹は中レベル用量暴露、3匹は高レベル用量暴露、は腫瘍性病変(アデノーマ)と呼ばれる腎臓の腫瘍が発生した。この腫瘍は最初は良性の傾向があるが、いずれがんになる可能性がある。

 毒性学部門(TB)の専属の毒性学者、病理学者、及び統計学者らが初めて、これらの結果の解釈を提供した。1985年3月4日、これらの科学者らの特別委員会は、このマウス研究に基づき、グリホサートは発がん性物質である、又は”クラスC”物質である(訳注6;ヒト発がん性の可能性がある)と報告した。彼らは、1983年の研究の構造又は報告されたデータに疑問を提起しなかった。EPA の専属毒性学者ウイリアム・ディクストラは1985年4月3日のメモの中で明確に次の様に述べた。”グリホサートは用量依存で雄マウスに珍しい腫瘍である尿細管腺腫を引き起こす発がん性がある”。

外部の専門家ら

 毒性学部門(TB)専属の科学者らは更なる専門家分析の実施を勧告したので、1985年の秋にモンサントは、1983年の研究で使用したオリジナルの組織スライド、及び最終的にはオリジナルの研究で使用された同じ動物からの新たなスライドをレビューするために4人の外部病理学者を雇い入れた。1986年3月11日のメモでディクストラは、このレビューの結果、外部生理学者の一人マービン・クシュナーは暴露グループで発見されたのと同様な腫瘍をコントロールグループ中に見たと報告した。この発見に基づき、EPA は、もし暴露していないコントロールグループのマウスがある腫瘍を持っていたのなら、暴露マウスの腫瘍は”その化学物質由来ではない”という根拠に基づき、この研究全体が信用できないと結論を下した。それに続く、他の生理学者による同じ証拠の評価はコントロール・マウスには腫瘍の証拠は見出さなかったが、疑いの種はすでに播かれていた。その腫瘍は存在しなかったのに、つい2016年にEPA はまだコントロール・カウス中の腫瘍に言及していた。

 最初の外部専門家らの意見に満足しなかったので、 EPA は他の5人の外部病理学者らに、その研究のマウス組織スライドを見るよう要請した。EPA のハザード評価部門の毒性学者 D. ステファン・サンダースからの1986年3月1日のメモによれば、これらの専門家らは、”この研究中の腎尿細管細胞腫瘍( renal tubular-cell neoplasms)の発生は化合物由来ではない”、言い換えれば腎臓腫瘍はグリホサート暴露とは関係がないと、結論付けた。

 このプロセスを通じて EPA の内部には不同意者が多数存在した。1985年2月に毒性学部門(TB)の統計学者ハーバート・ラカヨは、1983年のマウス研究に関し熱烈なメモを書いた。彼は、グリホサート暴露がなければその研究中に示されている腎臓腫瘍の発生確率は 156 対 1 であったと結論付けた。

 ”そのような状況下においては、慎重な人は、グリホサート投与が腎臓腫瘍生成に影響を及ぼさないというモンサントの仮説を拒絶するであろう”と、ラカヨは書いた。”我々が疑惑のあるデータを見た時には、我々の観点は公衆の健康を守るという点にある。登録者を偽陽性(false positives)(訳注7:発がん性がある(陽性)は間違い)という誤判定/から守るということは、我々の仕事ではない”。

時代遅れの毒性学

 モンサントの利益は、当時支配的であった毒性学の教義、すなわち線形用量反応モデルによって守られた。これは、有毒物質の容量が大きくなればその影響も大きくなり、その逆もまた真であるという仮定であり、しばしば”毒は用量次第 (the dose makes the poison)(訳注:パラケルススの言葉)”と言われる(訳注8)。この仮定の下では、発がん性テストは、発がん性物質への暴露増大に対して線形関数的に腫瘍のサイズや数が増大することを示すことが予測される。マウス研究では、腫瘍の数はこのパターンに即しており、毒性学部門(TB)は腫瘍はグリホサート関連であると言及した。しかし、最大の腫瘍は中用量投与のマウスの一匹に発見されてた。最初に相談を受けた外部グループのメンバーである病理学者ロバート A. スクワイアは、1985年9月のモンサントへの手紙の中で、”もし腫瘍がその化合物に関連するならこのことは非常に起きそうにないことである”と書いた。かくして、腫瘍の数は線形用量反応曲線にしたがったが、中用量マウスの腫瘍サイズはグリホサート影響を非線形とし、したがってそれは存在しないとして無視する機会を提起した。

 ある状況では、線形用量反応理論は道理に合うが、化学物質健康影響の科学は1980代以来大幅に進展した。低レベル暴露の方が高レベル暴露より高い影響を生成し、高用量での影響が時には平坦又は次第に低くなる非線形用量反応モデルが大学の研究者らにより、現在一般的に受け入れられている(訳注8)。

 グリホサートの規制のための研究で非線形用量反応の可能性を考慮したものはない。モンサントにより提出された登録のための文書は、グリホサートのテストデータが線形用量反応モデルに一致しない時には、暴露された動物にみられた有害影響はグリホサートによって引き起こされたものではないと、同社雇用の科学者らとEPAのコンサルタントらは結論付けた。しかし、この時代遅れのアプローチは、グリホサートの毒性は現代的な概念と手法を用いて再検証されるべきことを強く示唆している。

 EPAの科学者らが繰り返し、モンサントのデータ中に見られる矛盾、誤り、及び疑問ある科学的解釈について10年間、警告した後、EPAが厳格な新たな研究の実施を要求することを人は期待したかもしれない。しかしそうではなくて、EPAは 探し求めている答えを得るまでは同じ質問をすることが決定されているかのように、そのデータのレビューを外部の専門家に依頼し続けた。

その答えは気に入らない? それならもう一度問え

 1986年の初めに EPA は、さらにもっと多くの専門家らを招聘し、EPA のいわゆる FIFRA 科学諮問委員会を設立した。7人の委員からなる同委員会は、化学工業毒性学研究所(CIIT)の化学物質毒性学及び病理生物学部門の長を含んでいた。この研究所は、化学物質製造者らによって設立され、モンサントをメンバーとして誇る産業側団体のアメリカ化学工業協会(ACC)及び BASF、バイエル、ダウケミカル等の農薬製造会社を含む組織や会社によって資金提供を受けていた。同委員会はまた、自身のコンサルタント会社を設立する前は ChemAgro Corporation (後にバイエルの農業部門の一部になった)で働いていた一人のコンサルタントを含んでいた。

  FIFRA 科学諮問委員会はグリホサートを発がん性物質とみなすことはやり過ぎであると感じ、その分類を”D:ヒト発がん性に分類できない”(訳注6)に下げることを示唆した。

 有害物質疾病登録局(保健福祉省の一部)の元ディレクターで生物統計学者のクリストファー・ポティエールは、EPA は毒性学部門(TB)の特別委員会の当初の解釈を確定しておくべきであったと述べている。 FIFRA 委員会で”彼らがどのようにしてその結論に至ったのか私にはわからない”と彼は述べている。

 同時に、ステファン L. サンダースによる1985年2月の要約メモによれば、委員会の助言に基づき、”EPA は既存のマウス研究はこの問題を解決するための十分な証拠を提供しないと決定していた”。

 実験を明瞭にするようにとの EPA の要求にもかかわらず、モンサントは明白に拒絶した。モンサントの登録ディレクターであるジョージ B. フラーは、EPA 農薬プログラム室のディレクターであるエドウィン F. ティンスウォース宛ての1988年10月5日の書簡の中で頑強に抵抗した。”マウス発がん性研究を繰り返す妥当な科学的又は法的根拠はない”とフラーは書いた。”そのようにするために EPA 又はモンサントのリソースを使用することは適切ではない”と我々は感じている。1988年の会議で、モンサントは EPA にマウス研究を繰り返すという要求をあきらめるよう再び圧力をかけた。

 我々が知る限り、当初の1983年のマウス給餌発がん性研究が繰り返されることはなかった。

 入手可能な EPA 内部記録から明らかなことは、テスト結果が有毒性を示唆するときは、 EPA 専属科学者らとは対照的に、 EPA 上層部は証拠がないことが望ましいとモンサント及びそのテスト試験所(ラボ)に示唆した。彼らは、グリホサートの発がん性に関する疑問を解明することができたであろう追加的な証拠の開発を求めるのではなく、モンサントが希望する結論にしたがっている。我々が検証した文書は、EPA はより良いデータを求めていたか、又はそれを強制することを意図していたかもしれないことを示しているが、実際に EPA がそのようにしたということを示すものは何も見ていなかった。EPA は我々のコメント要求に対して答えなかった。

 これらの怠慢と疑問にもかかわらず、1991年6月に EPA は、適切な研究中に説得できる証拠がないとして、グリホサートを”クラスD ”−ヒト発がん性と分類できない−から”クラスE”(訳注6)−ヒトへの発がん性はないという証拠がある”に降格したと、発表した。(このことは、適切な研究なら説得力のある証拠を提供するするであろうと暗示していることに留意。)

IARC は規制当局を目覚めさせる

 1993年に EPA がグリホサートを登録した後、 EPA のグリホサートの潜在的な健康影響の研究は、世界保健機関(IARC)が 2015年にグリホサートは”ヒトに対する発がん性が疑われる”と結論付ける(訳注9)まで、幾分休眠状態になっていた。IARC の結論に促されて EPA は2016年秋に”グリホサート問題に関する論文”を発表した。この文書は、グリホサートにはヒト発がん性はないとする EPA の結論の要として 1983年のマウス研究を引き合いに出した。

 1983年の研究に言及して、EPA は、”追加の病理学的及び統計的評価は、雄マウスの腎臓腫瘍は化合物(訳注:グリホサート)と関連がなかったと結論付けた”と書いた。

 モンサントとしては、 IARC のレビューには”欠陥がある”とし、IARC 委員会はデータのいいとこどりをし、見落としていると非難した。モンサントはその報告書を取り消すよう求めた。

 9月27日の In These Times 宛てのeメールでモンサント報道担当チャルラ・ロードは、 IARC は規制機関ではなく、”グリホサートが発がん性物質であると結論付けている規制機関など世界中にない”と強調した。しかし上述の通り、カリフォルニア環境保護局の健康ハザード評価室はサートが発がん性物質であるとした(訳注4)。

  IARC 論争及び2009年に始まった EPA のグリホサート再登録プロセスは、科学ジャーナル記事と農業ビジネスからのコメンとの一斉射撃の引き金となった。これは、グリホサートの安全性を断言し、真逆の結果に疑いをかける毒性学ジャーナル誌(全てモンサントによる資金提供)を含む。これらのコメントと記事の明らかな目標は、IARC 決定の信用を落とし、 EPA のグリホサート再登録プロセスに影響を与えることである。

 EPA の”グリホサート問題論文”の立ち位置から判断して、そのキャンペーンは成功した。EPA は、グリホサートの潜在的健康影響を検証するために自身の研究を委託又は実施することはなかった。むしろ、EPA の文書は非公開の産業側研究及び産業側から金の出ているレビューに依存している。グリホサートの発がん性影響だけでなく、胎児の発達、ホルモンバランス、腸内細菌、及び生態学的バランスへの有害影響に関する多くのピアレビューされている文献を無視している。

 実際に産業側のレビューは、単純に EPA のための関連文献の便利な照合ではない。EPA は産業側からの資金を受ける科学者らの解釈と結論に、ある場合にはオリジナル研究を見せずに、依存しているように見える。2016年11月3日に FIFRA 科学諮問委員会に提出されたコメントの中で、天然資源防衛協議会(NRDC)の上席科学者ジェニファー・サスは次の様に述べた。

”NRDC は、EPA が(発がん性に)肯定的な多くの研究の棄却又は評価を低くし、一方その承認を支持するために生成された、そのほとんどが産業側から金の出ているガイドライン研究に高く評価することに強く反対する。NRDC は、当初の研究ではなく、レビュー論文、特にその製品がこのリスク評価の対象となっている産業の後援を受けた論文に依存していることを特に懸念する”。

 化学物質コンサルタント会社である Exponent 社の社長ジョーン・デセッソは、EPAが頼りにした研究とレビューは信頼できると主張している。”確かに彼らはこれらの研究に頼ったが、彼らはそこにある良い研究に出っくわしたということだ”とデセッソは言う。”モンサントはそのために金を払ったのだから、私は人々がそれは確かな方法であると言うことを理解する”。彼は、”もしそれが EPA に持ち込まれたら、彼らはそれを実施する人材を持っていないか、又は自分たちでやる時間を持っていない”と付け加える。だから、彼らは中庸の人間を探して、データに物語を語らせようとしている

 しかし二つの事実がある。第一に、EPAは、現在利用可能なグリホサートに関するピアレビューされた大量の科学的文書を検討することをしなかった。第二に、グリホサートの安全性の主張について EPA が根拠としたモンサントからのオリジナルの研究データに公衆も科学界もアクセスしようとしなかった。

母乳のように安全

 IARC がグリホサートには発がん性があると結論付けてから 5か月後の 2015年7月、モンサントは「全米の母親たち(Moms Across America)」の2014年の母乳研究に再度、公的に行動を起こした。この小さな非営利団体に対する同社の反応は、同社がたとえどんなに小さくても全ての反対派の信用を落とそうとしていることを示しており、それは同社の過去 40 年間にわたる連邦機関(EPA)へのロビーイング活動にと軸を同一にする。

 「全米の母親たち」への最初の攻撃は、ワシントン州立大学(WSU)の2015年6月のプレスリリースであった。WSU の生物学教授ミシェル・マックガイアーは次のように言った。”「全米の母親たち」の研究は全く間違っている”。 WSU のウェブサイトには最早、掲載されていないそのプレスリリースは、まだ発表されていないマックガイヤーと彼女の仲間らによる研究がグリホサートは”母乳に蓄積しない”ことを示したということを明らかにした。WSU のプレスリリースは、マックガイヤーの結果を”信用のできる外部組織により個別に検証された”と記述した。これらの断定は誤りであることが後に判明した。

 その当時、その研究について問われた時に、マクガイアー、WSU 及びモンサントの全ては、研究は独立して実施されたと述べた。しかしながら、そのプレスリリースは、その研究の母乳サンプルは、コーヴァンス社(同社は以前にはヘイズルトンと呼ばれ、1979年ごろからモンサントのために毒性テストを実施していた)はもちろん、セントルイスにあるモンサントの試験所でもテストされたと述べた。このことについて2015年7月に我々が問いただした時に、マクガイアーとモンサントは、モンサントが母乳中のグリホサートを測定するために用いられるテスト手法を開発していたからであると説明した。

 モンサントはどうしてそのようなテスト手法を開発したのかと問われて、同社はメールを通じて、マクガイアーの研究は実際、「全米の母親たち」のテスト結果に対応して実施されていたと説明した。モンサントの報道担当官は次の様に述べた。”「全米の母親たち」のテスト結果がウェブ上に掲載された後、モンサントはそのデータについて研究者らに相談した。我々は、この問題に対応するための最も適切な方法は、母乳中のグリホサートの検出のために正確で具体的であることが検証されている分析手法を用いて、もうひとつ別の分析を実施すべきと決定した”。

 9月25日のバイオロジー・フォーティファイド社の YouTube ビデオで、マクガイアーは、研究は”非常に注意深く扱われる必要のある利益相反”であったと述べた。そのような注意深い管理の最も具体的な事例として、彼女は、我々は独立系又は第三者の試験所がそのサンプルを分析したということを確実にするために、そのサンプルは直接コーヴァンス社に送られており、したがって、それは我々がモンサントを介して送ろうとしたものではないと彼女は述べた”。

 コーヴァンスとモンサントの間に密接な関係があり、研究の企画と分析手法の開発にモンサントがある役割を果たしているのだから、その分析は独立であるとするマクガイアーの説明には無理がある。

 2016年3月、 WSU のその研究は米臨床栄養学会ジャーナル(American Journal of Clinical Nutrition)により発表された。その研究の謝辞(acknowledgements)はモンサントからの広範な支援を詳細に示している。

 その研究の9人の著者のうち3人は、モンサントの雇用者としてリストされている。

 モンサントがマクガイアー家に実費精算した研究費用に加えて、研究謝礼の1万ドル(約113万円)がモンサントからマクガイアーと彼女の共著者(及び彼女の夫)マーク・マクガイアーにわたった。

 この研究の生物学的サンプルテスト(母乳及び尿)はモンサントにより支払われ、同社は研究設計及び手法開発という他の側面でも関与した。

 奇妙にも、たとえ著者にミシェルとマーク・マクガイアーが含まれていても、その研究の脚注は、”著者らはこの研究のために金を受け取っていないと報告し、著者らはモンサントに雇われておらず、研究に関連する利益相反行為はなかったと報告した”。

 研究の独立性の主張をさらに弱めるのは、マクガイアーの研究を出版したそのジャーナルはアメリカ栄養学会(American Society for Nutrition、ASN)が著作権を持っており、モンサントがその他の数多くの農業製品及び食品製造会社とともにそのジャーナルの”維持会員”であるという事実である。ミシェル・マクガイアーは彼女の大学経歴書にアメリカ栄養学会(ASN)報道官として掲載されている。

 WSU の報道官フィル・ウェラーは、マクガイアーの様な同大学の科学者らは、”産業側で働く研究者らと連携し、彼らの研究を、関連するかもしれないどのようなバイアスもそれらの結果に影響を及ぼさないようなやり方で設計することを奨励されている。

未来に戻る

 グリホサートが最初に登録された時に、農薬として数十年間使用されていた非常に有毒な化合物と比べて良性に見えたことには疑いがなかった。しかし、グリホサートの使用は全ての予想を超えて急増し、40年以上後の現在においても、我々は、人間と環境へのこの増大する暴露の結果について明確には理解していない。

 EPA のグリホサートに関する規制記録は、所在不明、不完全、隠蔽、改ざん、紛失、及び間違った情報、により損なわれていた。 EPA は製造者らによって提供され、産業側によって解釈され、公的に入手することができない、そのほとんどが未公表のデータに依存している。したがって、明確で透明性のあるグリホサートの評価は不可能である。EPA は、有効であるように見えるを1983年のマウス研究を棄却する又は最小にするという決定に揺るぎなかった。EPA はその研究結果を明確にするためにその研究を再現しようとは決してしなかった。それはおそらく、そのような証拠がグリホサートは発がん性物質であることを示すであろうことを EPA が恐れたためである。さらに、それはまた、同様の議論及び産業側によって提供された、独立した分析を受けたことがない研究を使用して、以後の研究を無視する EPA がとり続けたひとつのパターンである。

 ”私は 1986年には EPA を信頼していた”とポティエールは言う。”私は 12017年には EPA を信用していない”。

 グリホサートは、自分たちのための金銭的利益を求めようとする企業社による”規制の虜(regulatory capture)”(訳注10)の明白な事例であり、一方公衆の健康についての重要な疑問は辺獄(訳注11)にとどまる。

 その記録は、8代にわたる歴代大統領政権を通じて44年間、EPA 上層部は問題を正すよう試みなかったということを示唆している。実際に、農薬産業は、彼ら自身の研究は秘密にしておくよう努力し、毒性学的規制において、疑問のある仮定と時代遅れの手法に依存しているので、その進歩的で現代的な技術をうるさく勧誘している。

 グリホサートの安全性を評価するための科学的根拠を確立するための唯一の方法は、2016年に14人の科学者のグループが示唆したように(訳注12)、産業側が独占する研究を公開し、ピアレビューされた論文と対照してウェブに掲載し、企業利益から独立の研究者等による新たな研究を実施すること、言い換えれば、規制当局と規制される側の間に光を当てることである。

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訳注0:エリザベス・グロスマン
Civil Eats 2017年7月31日 エリザベス・グロスマンさんの生涯と仕事をたたえる

訳注1
悪性リンパ腫/国立がん研究センター

訳注2
IARC 20 March 2015 / IARC Monographs Volume 112: evaluation of five organophosphate insecticides and herbicides

訳注3
The Intercept 2015年11月4日 EPA はモンサントの研究を使った結果、ラウンドアップを大目に見た/シャロン・ラーナー

訳注4:カリフォルニア州の規制
pdot.jpg(788 byte)カリフォルニア州、モンサント除草剤を発がん性認定へ(ロイター 2017年6月27日)
pdot.jpg(788 byte)【アメリカ】カリフォルニア州、除草剤ラウンドアップ成分のグリホサートの発がん可能性を認定(sustainablejapan 2017/07/09)
pdot.jpg(788 byte)プロポジション65 での表示義務など (J-Net 21 2014年7月11日

訳注5:シグナルワード
技術を学ぶ翻訳者養成講座【翻訳技術編】
シグナルワードは通常すべて大文字にします。
DANGER : 危険、WARNING : 警告、CAUTION : 注意、NOTE : 注、注記、NOTICE : 注、注記 (NOTE と NOTICE に差はありません)

訳注6:EPA発がん性分類
米環境保護庁(EPA)発がん性分類/1986年のガイドライン
グループC: ヒト発がん性の可能性がある(Possibly carcinogenic to humans)
グループD: ヒト発がん性と分類できない(Group D: Not classifiable as to human carcinogenicity)
グループE: ヒトへの発がん性はないという証拠がある(Evidence of noncarcinogenicity for humans)
▼注:EPA の最新の発がん性分類は 2005年記述式分類である。

訳注7:False Positive
グランジャン博士のウェブサイト Chemical Brain Drain - News 2014年3月3日 おじいちゃん、証拠? それとも予防?

訳注8:低用量曝露と非単調用量反応
世界のEDC政策の動向 EDCsの低用量曝露

訳注9:IARC の結論
Triple Pundit 2015年3月26日 モンサント ラウンドアップががんに関連するとする WHO の報告書を攻撃

訳注10:規制の虜
ウィキペディア:規制の虜
 (きせいのとりこ、英:Regulatory Captureとは、規制機関が被規制側の勢力に実質的に支配されてしまうような状況であり、この状況下では、被規制産業が規制当局をコントロールできてしまう余地がありうる。政府の失敗の1つである。その場合には、負の外部性が発生しており、そのような規制当局は、「虜にされた規制当局(captured agencies)」と呼ばれる。

訳注11:辺獄
ウィキペディア:辺獄

 辺獄(へんごく、リンボ、ラテン語: Limbus、英: Limbo)は、カトリック教会において「原罪のうちに(すなわち洗礼の恵みを受けないまま)死んだが、永遠の地獄に定められてはいない人間が、死後に行き着く」と伝統的に考えられてきた場所のこと。中世の西方教会の神学者たちが死後の世界について考える際に分けられたもので、いわゆる「地獄」や「煉獄」と混同されることもあるがこれらとは異なるものであり、イエス・キリストが死後復活までの間にとどまった場所(父祖の辺獄)、および洗礼を受ける前に死亡した幼児が行く場所(幼児の辺獄)と考えられてきた。
 辺獄は、聖書にはもちろんカトリック教会のカテキズムにも明確に書かれていないため、カトリック教会の公式教義ではなく「神学上の考えられる仮説」として残されている。

訳注12
EHN 2016年2月17日 専門家らが連邦当局に世界で最も多量に使用されているグリホサート除草剤を再評価するよう要求/ブライアン・ビエンコースキー(EHN)

訳注:当研究会が紹介したモンサント関連記事


化学物質問題市民研究会
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