ハーディングの実験を継続していると、意識の広がっている状態とはどういう感じかがわかってきました。指差し実験をして、こちら側の自分を見ていると、だんだん目と頭がポカーンとしてきて、自分がこの空間の空気になったようになります。この感覚は、とてもラクで気持ちがよいものです。こういう気分を保っていると、ありのままの現実を受け入れやすくなります。すると、気持ちに余裕ができて、人に親切なんかもしてみたくなり、自分が優しいよい人になった気分になります。
実験を続けていくうちにまた、私の生きているこの世界は、自分の外側にあるのではなく、自分の内側そのものなのだと、実感として思えるようになりました。その結果、他人との分離感が以前よりだいぶ減りました。これが、実験を続けた結果として一番よかったことです。
実用的なところでよかったこともたくさんあります。
たとえば、語学学習の際、素直に外国語を受け入れることができるようになりました。頭で言葉の意味を考えて、文法的にはこうで、日本語に訳すとこうで・・・といった頭脳作業が大幅に減り、外国語をそのまままるごと吸収できるようになりました。赤ちゃんのようにではないですが、体全体で覚えられるようになってきたと思います。そのため、語学の勉強が前より楽で自然で楽しいものに変化しました。
また、自動車を運転する必要がない都心に住んでいるため、実家に帰ったとき運転するのが非常に苦手でしたが、実験をするようになってから、なぜかずっと気楽にできるようになりました。家族いわく、以前はもっと体がカチコチだったとのこと。肩の力が抜けるようになったみたいです。
ハーディングの実験を続けて現れた変化は、このように体にも現れていると思います。というのは、20代でエネルギーが余っていたころは、私の頭は特定の考えで凝り固まっていて、現実のありのままを受け入れるなんてことは、全くできませんでした。今思えば、意識をがちがちに狭めていたんだなと思います。
しかし今では、身体の緊張に気づくようになり、頭を前ほど働かせなくなり、身体の重心がちゃんと下に落ちるようになったと思います。それと同時に、目や肩の力が抜け、身体全体の力みがなくなった、または、力んでいることに気づけるようになったと思います。苦手な人に接しなくてはいけないときなどは、自分を守ろうとしているガードに気づいて、意識的に緩めることができるようにもなりました。
心理面では、人生に対する安心感、本当の自分(源泉)に対する信頼感が、少し湧いてきました。この感覚はとても重要だと思います。目に見えないものですが、どれだけ支えになっているかは、はかりしれません。
自分の中のいわゆる「ネガティブ」思考との折り合いをつけられるようになったのも、ハーディングの実験の効用だと思います。なぜなら、すべては自分の中にあるものなのだから、否定しても取り除こうとしても無駄で、受け入れるしかないとわかったからです。
私も以前は、運などを良くするため、「ポジティブ」思考をやろうとしていたときがありましたが、どうしても長続きしませんでした。今では、それが続かないのは、究極の真実ではないからだろうと、自分なりに納得しています。
実験をしていると、時々ですが、子供のころに戻ったような、無垢な気持ちでこの世界を眺められるときがあります。曇りのない透明なところから、現実映画を観ている感じとでもいいましょうか。
ハーディングの実験は、もはや私の生き方になろうとしています。この先の人生で、何が起こるか全然予測もできませんが、この現実世界の源泉を信じ、日々曇りのない目で見ながら、生きていこうと思います。
定価4,500円
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