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77.ドーンガード

レイクビュー邸での穏やかな生活は数週間のことだった。
ある日、ちょっとした不足品を買うためファルクリースの街へ行くと、通りで突然の悲鳴が上がった。
声のしたほうを見ると、ローブ姿の連中が魔法で人々を攻撃している。

私は完全武装というわけではなく、普段着で、ドーンブレイカーと付呪したナイフしか持っていなかった。
ドーンブレイカーの鞘を払うとその刀身が光を放っている。襲撃者はアンデットということだ。よく見れば吸血鬼であることが分かる。
私は襲われている人を助けるため火球で牽制しつつ、ドーンブレイカーを振るった。
その力により、吸血鬼は逃げ回り、灰になっていった。

襲撃者を全て排除したところ、衛兵から最近吸血鬼の活動が活発になっていて困るという相談を受けた。
以前に倒した吸血鬼ヴィグハールの仲間が復讐にでも来たのかと思っていたが、事はスカイリム全域で起こっているそうだ。
それに対処するため、古のヴィンパイアハンターであるドーンガードが仲間を募っているらしい。
私は衛兵からドーンガード砦の場所を聞き、そこへ行ってみる事にした。

自宅で旅装に着替えて、リフテンの南からディスプリング峡谷に入る。
途中でアズミルという青年に出会った。彼はドーンガードに入隊希望という事で、一緒に砦まで行こうと言う。
見たところ戦闘の経験はあまり無さそうだ。一応、腰に斧を吊ってはいるが……自分のつま先を切ってしまわないか心配だ。

ドーンガード砦はかなり立派なもので、大規模な攻撃にも対処できる作りだが、かなり古びており修理が必要に思えた。
入口で呼び止められ、アズミルがドーンガードに入隊希望だと告げると、中に入ってリーダーのイスランに会えと言われた。

玄関ホールでは、ドーンガードのイスランと、ステンダールの番人(※1)トランが言い合いをしている。
私はどういうわけかデイドラと関わることが多いので、あらぬ疑いを掛けられないか心配になった。

※1 デイドラは全て悪魔だから滅ぶべし、と活動している組織なので


そのまま立ち聞きしていると、どうやらイスランは以前ステンダールの番人だったようだ。吸血鬼について警告していたが聞き入れてもらえず、一人ステンダールの番人を抜けて、古のドーンガードを復活させるべく活動してきたらしい。
トランは、スカイリム各地でステンダールの番人が吸血鬼に襲われている件で、イスランに助力を求めている。だがイスランはドーンガードの再建を優先していて、割けられる人員はいないと答えた。
それに対してトランは、ステンダールの番人がイスランの話を聞き入れなかった事に対する意趣返しではないのかと声を荒げるが、イスランは「そんなつもりはない」と感情を押さえて言う。

どうやらイスランとステンダールの番人との間には問題があるようだ。

言い争いに困って視線を泳がせたイスランは私たちに気がつき、トランを置いて用件を聞いてきた。
「私はアンデットと戦う事を誓っている。協力するために来た」と言うと、現状のドーンガードは組織として十分ではないので、手を貸してくれるならトランに協力してやってくれと頼まれた。

トランは、吸血鬼がディムホロウ墓地に集まっているので、何をしているのか探りに行くと言った。
現地で合流しようという事になり、彼は先行していった。
私も後を追おうとすると、イスランがクロスボウをくれた。吸血されないように遠隔で戦うための武器だそうだ。(※2)

その後アズミルと話し、ドーンガードに加わりたいという彼の願いを一度は退けたものの、やはり人員不足は深刻なのか結局は仲間に迎え入れていた。

※2 何度か試し撃ちしましたが、結局使わなかった……


78.目覚め

ディムホロウ墓地についたが、トランの姿はない。
先行していたはずだが……と墓地を探すと、奥にある洞窟から話し声が聞こえてきた。ステンダールの番人が一人でいるところを見つけたので殺してやったという内容だ。

洞窟を覗き込む。坂道の下でトランは吸血鬼の犬に食われていた。隠密で忍び寄り、ダガーの不意打ちで犬を始末する。
私が来るまで待っていれば……と苦々しく思ったが、仕方が無い。トランの遺体については後ほど埋葬する事にして、彼の仇を討つことにする。
前方で話し込んでいる吸血鬼二人を、一人は柱の影から不意打ちの矢で殺し、もう一人は私を探しにきたところを柱の影で待ち伏せして倒した。

吸血鬼を倒しながら洞窟を進んでいくと、やがて古代の遺跡にたどり着いた。
ちょうど吸血鬼が、ステンダールの番人の一人を倒したところだった。やつらの会話から、ここで何かを探しているらしいことが分かった。
奥のほうに円形をした石舞台のようなものが見える。吸血鬼たちはそこに向かっている。

私は隠密のまま倒れたステンダールの番人に近付いて確認したが、やはり死んでいた。
吸血鬼たちを追跡したところ、石舞台で何かを探しているようだった。
そこへ続く道は丸見えなので、私は"シャドウクローク"の力で透明化して近付き、敵の一人を始末した。もう一人とは剣の戦いになって、なかなかの使い手だった。吸血鬼相手に慢心は禁物のようだ。

敵の姿がない事を確認し、やつらが何を探していたのか、私も調べてみる。
しばらくして、この石舞台には仕掛けがある事に気がついた。仕掛けを操作してみる。
正しい操作ができると、中心から石のモノリスがせり上がってきた。
これは何だろうと思っていると、突然モノリスの一面が開く。

中には女性が眠っていた。

驚くべきことに、その女性は石の中に閉じ込められていたにも関わらず生きていて、しかもエルダースクロールによく似たものを持っている。
彼女はフラフラと石棺から出てくると、その場に手を付いた。
私は思わず手を差し出し、彼女は私の手をしばらく見てから、取った。そしてゆっくりと立ち上がる。ドーンブレイカーがビリビリと振動している。目を開いた彼女の瞳は金色に輝き、それは人間のものではなかった。
ドーンブレイカーの柄に手をかける。

「お手を貸してくださってありがとう。あなたは……誰に言われて私を探しにきてくださったの?」と古風な言葉使いで、彼女は問うてきた。
私はその問いに答えず、代わりに質問した。何者で、ここで何があったのか、そこに持っているのはエルダースクロールなのか、など。

彼女はセラーナと名乗り、吸血鬼である事、持っているものはエルダースクロールである事を認めた。
ここで何があったのかについては、複雑な事情があり、また私が何者か分からないので教えられないという。ただ、彼女の家族がヴォルキハル城に今も住んでいるはずだから、そこまで連れて行ってくれたらもう少し詳しい事情も知れるかもしれないと言った。

今までは人間と見るや襲いかかってくる吸血鬼ばかりで、セラーナのように話す吸血鬼は初めてだった。しかもエルダースクロールを持っている。
ドーンブレイカーは彼女を滅したがっていた。おそらくドーンガードの元に連れて行っても同じだろう。
ここで彼女の申し出を断るか殺すかしてしまえば、何かより大きな問題に繋がる糸を切る結果になるような気がする。

私はセラーナをヴォルキハル城まで送り届け、事情を探ることにした。

79.血筋

遺跡を脱出した私達は、ひとまず北の海岸まで旅して、ヴォルキハル城のある小島に渡る手段を探しながら歩いた。
この旅の間に私達はお互いの話をしたが、セラーナは驚くほど世事に疎く、少なくとも百年以上はあの石棺に閉じ込められていたようだ。
彼女は普通の人間よりも礼儀正しく、私や他の人間に襲い掛かるような事は無かった。

ノースウォッチ砦の近くの桟橋に小舟があるを発見した私達は、それを借りてヴォルキハル城に向かった。

ヴォルキハル城のある島に到着して小舟を降りたところで、セラーナは私を呼び止めた。
「ここまで送ってきてくださって、どうもありがとう」と礼をされ、城の中には吸血鬼しかいないから、迂闊な行動はせずに私に従っているふりをしてくださいと忠告される。
私は頷いて、彼女の後を歩くことにした。

城に入ると、セラーナを見た門番の吸血鬼が驚きの声を上げた。そして「なんと、セラーナが帰ってきた!」と城の住人に知らせる。
セラーナが「お父様はどこにいらっしゃるの?」と聞くと、門番はセラーナと私を城のホールへと案内した。
そこでセラーナの父ハルコンが出迎える。

父と娘は微妙な関係に見えた。ハルコンはセラーナがエルダースクロールを持っているかをまず確認したが、セラーナは自分よりエルダースクロールのほうが大事なのかと不満な様子だ。
それからハルコンは私に気付き、どういう素性の者かとセラーナに訊ねた。
セラーナは「わたくしの心の拠り所であり、わたくしを自由にしてくれた恩人ですわ」と大げさな物言いをした。それが私の安全のためだという事くらいは、私にも分かる。
ただここまでの旅の間に友情を感じつつあったのも事実で、内心嬉しくもあった。

ハルコンは、彼ら一族がスカイリムでも最古の吸血鬼一族で、最も強大な力を持っていると言った。世間を離れ、人間を獲物にして暮らしていると。
ところがセラーナの母親の裏切りがあって、問題が起こっているという。詳細は言わなかったが、セラーナがエルダースクロールを持っている事と封印されていた事は、おそらくそれに関連するのだろう。

今回の働きに関して、褒美として最も強力な吸血鬼である自身の血をやろうと申し出てきた。
つまり吸血鬼の王の力をやるということだ。
考える余地もなく、私は断った。セラーナには悪いが、ここで戦いになるかもしれないと剣の柄に手を置く。
だがハルコンは、セラーナの恩人である事に免じてこの場は安全に立ち退かせてやると言った。

約束どおり、私は危害を加えられる事無く城を出て行く事が出来た。
次に来る時は戦いになるのだろうな、と私は小舟からヴォルキハル城を見上げた。

80.新たな命令

ドーンガード砦に戻ると、吸血鬼の集団が襲撃してきていたので私も加勢する。
撃退したあと、イスランに何があったのかを話す。彼はヴォルキハル城の吸血鬼がエルダースクロールを持っている事に危機感をあらわにし、私に二人の協力者を連れて来て欲しいと依頼してきた。

一人目のガンマーは、武装したトロールを訓練して戦力にするという計画を進めているらしい。
彼の元に向かい、イスランが召集している旨伝える。

二人目のソリーヌ・シュラルドはドワーフの遺物で実験をしていた。
イスランが召集している事と、大学でやはりドワーフの遺物を使って実験していたアーニエルの結末について教えてやる。
彼女は「これはとても重要な実験なんだけど……仕方ないね」とドーンガード砦に合流する事を合意した。

二人を連れてドーンガード砦に戻ると、入り口ホールの扉が全て閉ざされた。
そして魔法の光がホールを満たす。
二階の通路にイスランがいて、私たちの中に吸血鬼が紛れ込んでいないか確認させてもらったと言った。
疑われて良い気分ではないが、この用心深さは必要だと理解できる。

その後ソリーヌから、フロレンティウス・バエニウスを探し出して欲しいと頼まれる。
彼はアーケイの使徒だと言い張っている、ちょっと変人なのだが、対アンデット呪文と回復呪文のマスターなのだと言う。
イスランはフロレンティウスを連れて来る事に反対したが、現状を考え、個人的感情はひとまず置いておくとして……と、彼の消息について手がかりをくれた。

私がルーンヴァルドの発掘現場からフロレンティウスを救出してくると、イスランは私に「ちょっと私の部屋に来てくれ」と言った。
普段感情を表に出さない彼だが、どこか動揺しているように見える。

81.預言者

イスランの部屋にいくと、彼はさらに奥へと私を呼んだ。どうすべきか判断しかねている、と言いながら。
後をついていくと、一番奥の部屋にセラーナがいて私は驚いた。
セラーナは両手を縛られているものの、それ以外に酷い扱いは受けていないようだ。イスランによると彼女は私を頼って来たのだという。

私は、イスランならセラーナをすぐ殺してしまうだろうと思っていたので少し意外だった。
とはいえ彼は「セラーナが重要な情報を持っていて、それが吸血鬼との戦争に勝つため利用できるのではないかと思ってな」と言っていたが。

「彼女の縄を解いてくれ。私はヴォルキハル城でこのような扱いはされなかったぞ」と言うと、イスランは縄を解いた。
セラーナは父親がしようとしている事を止めたいと、彼女の目的を私に明かした。しかし一人では難しい。その時、頭に浮かんだのは石棺から解放されて目覚めた時に差し出された手だったという。
ヴォルキハル城までの短い旅の間、私はセラーナに何か共感を得ていた。それが彼女も同じだったと知って嬉しく思う。
私たちは共にこの問題へ立ち向かえるだろう。

まずは、ハルコンが何をしようとしているのか知る必要がある。それはセラーナも知らないらしい。
ただセラーナの持つエルダースクロールが必要なのは確かなので、このエルダースクロールの内容が分かれば手がかりになると考えているようだ。

エルダースクロールは特殊な条件が揃ったときを除いて、通常は普通の人間には読めない。(一度は読んだ事がありドラゴンボーンである私、定命の者ではないセラーナ、の二人で試してみたが無理だった。)
シロディールにはエルダースクロールを読むための訓練をしている"聖蚕の僧侶"というのがいるらしいが……

と、ここまで話を聞いていたイスランが"聖蚕の僧侶"がスカイリムに来ているかもしれないと言った。
街道を見張っていたドーンガードからそれらしき人物がスカイリム入りしたのを見たという報告があるらしい。

頼りない情報だが、今はこれに賭けてみるしかない。
イスランが"聖蚕の僧侶"は聖職者というより学者のような人達だと言うのを聞いて、学者ならウィンターホールド大学に行くかもしれないと私は考えた。
セラーナも賛同してくれたので、私たちは一路ウィンターホールド大学に行ってみる事にした。

ウィンターホールド大学で話を聞くと、確かに"聖蚕の僧侶"は来ていたが行き違いに出て行った後だった。
図書館を訪ねたというので、司書のウラッグに話を聞くと"聖蚕の僧侶"はドラゴンブリッジへ行くと言っていたそうだ。
セラーナは以前(何百年前か)に大学に来たことがあるらしく、大学を案内しながらその頃の話を聞きたいとも思ったが、今は時間がないのでドラゴンブリッジへと急ぐ。

ドラゴンブリッジで帝国兵に尋ねると「ああ、南のほうに向かったけど、あれ"聖蚕の僧侶"だったのか」と興味無さそうに答えた。
南へ向かうと、吸血鬼と護衛兵らしき人間の戦闘した跡があった。調べてみると吸血鬼の一人がメモを持っていて、『"聖蚕の僧侶"をフォアベアーズ・ホールドアウトに連れて来い』と書かれている。

吸血鬼も"聖蚕の僧侶"を狙っている事を知った私たちは急ぎ、フォアベアーズ・ホールドアウトへと向かう。
内部は吸血鬼たちによって守られていて、私たちは戦いながら奥へと進んでいった。
誰かと共に戦うのは久しぶりの事だ。セラーナは頼りになる相棒だった。

最奥では、魔法の障壁の中に"聖蚕の僧侶"と思われる灰色ローブの男が囚われていた。
周囲を取り囲んだ吸血鬼たちは何かの呪文を唱えている。
私は一人で先行して、儀式に集中している連中の間を通り抜け、この儀式を主導している男の背後に忍び寄ると二刀の不意打ちで斬りかかった。

この初撃によって戦闘が始まり、下にいる吸血鬼たちはセラーナのほうに向かった。私はまだ動いている目の前の男と戦わなければならない。
セラーナへの援軍として、私はショーンから授かったシャウト"勇気の呼び声"を叫んだ。私のシャウトに応じてゾブンガルデから英霊ハコンが援軍に来てくれる。

儀式の主導者を倒した後、下段で残りの吸血鬼を倒す。
魔法障壁を解除すると、中にいた"聖蚕の僧侶"は正気を失っていて私たちに襲い掛かってきた。殺すわけにはいかないので殴り倒す(※3)と、"聖蚕の僧侶"は「もう大丈夫だ……やつらに操られて身体の自由が利かなかったのだ」と言って立ち上がった。

※3 HPを減らすと勝手に戦闘を止めるので、本当に素手で戦う必要はありませんが、気分を出すために素手で殴るのもありだと思います


"聖蚕の僧侶"はデキソン・エヴィカスと名乗った。吸血鬼は自分にエルダースクロールを読ませようとしていたが、何が起こっているのかと私たちに尋ねてきた。
私たちはドーンガードの協力者だと名乗り、これまでの経緯を説明した。
デキソンは「それなら協力しよう」と言ってくれたので、私たちはひとまずドーンガード砦に戻る事にした。

ドーンガード砦に着くと、イスランはデキソンを歓迎し、滞在を許してくれた。
十分に休息を取ってからさっそくエルダースクロールを読んでもらう。

「巨大な弓が見える……これは知っているぞ、アーリエルの弓だ。ドラゴンたちが人の世界に舞い戻り、光と闇が交わる時代に昼と夜とが一つになる……弓の秘密は……ううっ、この書にはない。古き血の力について書かれたものと……竜の秘密について書かれたものが……必要だ」

ここまで読んで、デキソンはがっくりと膝を突いた。かなり体力を消耗している。
私とセラーナで、ぐったりしたデキソンをベッドまで運んだ。

82.残響を追って

デキソンが寝ている傍で、他に人がいないのを確認してからセラーナは話を切り出した。
「ここの人達には言えなかったのですけれど……必要なエルダースクロールのうちの一つは心当たりがございますわ。私の母ヴァレリカなら絶対に場所を知っているはず。もしかすると持っているかも」

私たちはここまでの旅の途中、折を見てお互いの事を話していた。セラーナは必要なエルダースクロールの一つ、竜に関わる物は私が持っているのを知っている。
彼女の母親については、父の計画に反対して敵対する事になってしまい、どこかに身を隠していると言っていた。しかしその場所はセラーナも知らないと言っていた。

手がかりはないのかと聞くと「そうですわね……母は、父が絶対に探さない場所に行くと言っておりましたわ。でもそんな場所ございますかしら? 父は吸血鬼の王ですし、時間は無限にありますのよ」と答えた。

私は考えた。
たとえば世界中のどこをも探せるとして、そいつが探さない場所はどこか。
自分の城から逃げ出した相手……であるならば……「例えば、ヴォルキハル城の中とか?」とつぶやくと、セラーナはハッとした。
城の中庭に母の庭園があり、錬金術の素材を育てていたらしいのだが、その場所の穏やかな雰囲気が父は苦手だったとセラーナは思い出を語った。

「つまりその中庭は母親の領域で、父が行かない場所。そして自身の城内という盲点でもあるということか」と私が言うと、セラーナは頷いた。

「城には商人が荷物を入れる裏口がございますの。そこからなら、見つからずに入れると思いますわ」

行き先は決まったようだ。

ヴォルキハル城の正面を迂回して小舟を漕いでいる(※4)と、裏口の小さな船着場を見つけた。物言わぬスケルトンに守られている。
私たちはスケルトンを始末すると、裏口から城内へ入った。
この荷物運搬用の通路も倉庫も、もはや何十年と使われていない様子だった。打ち捨てられて忘れ去られたスケルトンがうろつき、大クモが住み着いて巣を作っている。
それらを排除しながらセラーナについて行くと、中庭に出た。

※4 実際には舟を漕げないので城の正面に着いちゃいます。歩いて裏口まで行きます


中庭は何世紀も前に打ち捨てられ、荒廃していた。
セラーナの母は園芸に長けていたようで、「達人が何世紀もかけて世話をしてきた庭園の美しさが想像できまして? 今のここを母が見たらきっと悲しみますわ」と悲しそうに言った。

庭の中央には月時計があり、そこに以前は付いていたクレストがなくなっている事にセラーナが気付いた。
庭園の中を探すとクレストが見つかったので、正しい位置に戻してみる。
すると月時計が回転し、隠し階段が現れた。この階段の存在はセラーナも知らなかったと言う。

隠し階段から隠し通路を抜けていくと、その先はヴァレリカの研究室へと繋がっていた。

私たちは手がかりを見つけ出そうと研究室の中を調べた。
研究日誌を発見し、ヴァレリカがソウル・ケルンに行く方法について研究していた事が分かった。
死霊術や魂石を用いて力を得られるのは、ソウル・ケルンにいる大いなる存在"アイディールマスター"に魂を捧げた見返りとして授けられる。魂の行き先の一つ、という事になる。

驚くべき事にヴァレリカはそのソウル・ケルンへ繋がる転移門を完成させていたらしい。
門を開くための材料はほとんどが研究室にあり、鍵となる"ヴァレリカの血"についてはセラーナの血で代用してやってみる。
すると転移門は正常に開いたように見えた。

もしかするとセラーナが追ってくる可能性を考えて彼女の血でも使用可能にしていたのかもしれない、とその時私は考えたが、今にして思うと二人の血が持つ力によるのだろう。

さっそくソウル・ケルンに入ろうとしたが、急激な虚脱感によって私は倒れそうになってしまった。
考えてみれば、ソウル・ケルンには魂を贈り物として受け取る存在がいる世界なのだから、生者が行けば魂を奪われてしまうはずだ。吸血鬼は生者ではないからいいとして……

セラーナと相談すると、彼女は魂の一部分だけを"魂縛"して魂石に取り込む方法を母親から学んだことがあると言う。それを使って魂の一部だけを捧げて通行料とする事で入ることができるかもしれない。
しかし大きな危険が伴うのは確かだ。
もう一つの方法としてセラーナに吸血鬼にしてもらうというのもあるが、それは私にとって本当の最終手段である。

私はセラーナに"部分的魂縛"を頼んで、ソウル・ケルンへの門を潜った。

83.死の超越

死後の世界といえばゾブンガルデもそうであった。アルドゥインから解放されたゾブンガルデはとても美しい世界だった。
しかしソウル・ケルンは対照的に、恐ろしげで陰鬱な場所だった。
通行料として支払われた魂の分、私の力も衰えていて、魂を奪われた嫌悪感がつきまとう。

ソウル・ケルンに入ってしばらく歩いていると大きな城が見えた。近寄ってみると何か魔法的な障壁に囲まれていて入れない。
「まさか……あなたなの、セラーナ!」
女性の声に振り向くと、障壁の向こう側に一人の女性がいた。セラーナも「お母様!」と駆け寄り、障壁越しに母と娘は再会した。

しかしヴァレリカは私を見ると、すぐに態度を硬化させた。
セラーナが父に騙されて母親を探しに送り込まれたのか、あるいは、ドーンガードとしてセラーナを騙してここまでつれて来させたのか。いずれにしてもセラーナ自身の意思ではなく、誰かに操られているのではと疑っている。
ここに来たのはセラーナの意思であり、私は彼女に協力していると言っても信用しない。その用心深さが彼女を今でも生かしているのだろうが……

ヴァレリカはセラーナをエルダースクロールと共に封印したのは、単にエルダースクロールを隠すためではないと説明した。
ヴァレリカとセラーナは"コールドハーバーの娘"であり、ハルコンの計画を完成させるには"アーニエルの弓"と"コールドハーバーの娘"の血が必要なのだという。だからエルダースクロールだけでなく、セラーナ自身を隠す必要があったのだ。
("コールドハーバーの娘"については大学図書館で読んだ事がある。デイドラの王子モラグ・バルの試練を生き抜き純血の吸血鬼になった女性のことだ)

だがこの説明はセラーナの怒りを招いた。
結局のところ、父も母も自分を道具扱いしかしていない。自分の意思はまるで尊重していない。父の計画を阻止するため、という理由だけでエルダースクロールと共に黙って封印されなければいけなかったのか、とセラーナは母を責めた。
「私はもう一度家族に戻りたい……でも、それが可能かどうかはわかりませんわ……私たちには分不相応な幸せなのかもしれませんわね……」とセラーナは悲しげに言った。これこそが、彼女の真の願いなのだと私は知った。

ヴァレリカは娘の言葉を聴き、ハルコンに対抗するという目的のあまりセラーナ自身の気持ちを考えていなかった事を認めて謝罪した。
何百年という時間を彼女から奪ったことを謝った。
そしてこれからはセラーナのために何でもすると誓った。セラーナが望むならエルダースクロールでも与えると。

だがそのためには、まずヴァレリカを捕えている障壁を解除せねばならない。
この障壁を発生させている搭があり、その番人を倒すことで止められるという。
私たちはこの番人を倒すためにソウル・ケルンを旅する事になった。

三人の番人を始末して城に戻ると、障壁はなくなっていた。
ヴァレリカは私たちの実力を認め、エルダースクロールのある場所へと案内した。
城内に入ってみると、この城は城壁部分しか存在していなかった。本来城のある部分には何もなく天井もない。そしてドラゴン"ダーネヴィール"が城壁の上にいた。問答無用で襲い掛かってくる。
ドラゴンと戦うのは久しぶりだったが、私は本来ドラゴンスレイヤーである。ドラゴンを倒すのは手馴れている。
ダーネヴィールを倒すと、その魂はどこかへ去った。

ヴァレリカは城壁の一部に自分の部屋を持っていて、そこにエルダースクロールを保管していた。
エルダースクロールを受け取ると、ヴァレリカは私が通行料として支払った魂を取り戻す方法について教えてくれた。それは単純なもので、捧げられた魂石を祭壇から取り戻せば自然とまた魂の一部に戻るというものだ。
私が力の一部を失ったままでいることはセラーナにとっても都合が悪いと考えたようだ。

ヴァレリカはハルコンの計画に利用される可能性を考慮して、このままソウル・ケルンに残るという。(コールドハーバーの娘という条件ならセラーナでなくヴァレリカでもいいからだ)

別れ際にヴァレリカは、セラーナを絶対に守り抜くよう私に誓約を求めた。
私は誓った。あなたの最もにして唯一の価値あるもの、セラーナを守る、と。
そしてハルコンの計画を阻止したあとで、ヴァレリカをタムリエルに呼び戻す事も。

城の外に出ると、目の前にダーネヴィールが待ち構えていた。
私はすぐさま剣を抜いたが、「戦うつもりはない」とダーネヴィールは言った。
ダーネヴィールはアイディールマスターによって生と死の狭間に囚われている。そして生者であった頃でも、ダーネヴィールを戦士として屈服させた相手はいなかったという。
ダーネヴィールを屈服させた者として、私を尊敬に値すると評した。ドラゴンの強者の理論はソウル・ケルンでも失われていないようだ。私もまたダーネヴィールに「好敵手であった」と敬意を払った。

ダーネヴィールはドラゴン流の礼儀に喜ぶと、自分の名をスゥームとして私に授けようと言った。タムリエルに戻ってから、必要な時に呼んでくれれば兄弟として戦場を駆けようと。
ダーネヴィールはもはや自身の力ではソウル・ケルンから離れることが出来なくなってしまったが、またタムリエルの空を飛びたいと願っているようだ。
私はスゥームを受け取り、必ずタムリエルから呼ぶと約束した。

私はソウル・ケルンで魂を取り戻し(もちろんアイディールマスターの激しい抵抗にあったが)タムリエルへと帰還した。



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