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ドラゴンズリーチのドラゴンを捕獲する仕掛けは長い間動かしていなかったため、再び使用可能な状態にするまで数日を要した。
巨大な装置が動くのを確認したのち、ついにドラゴンを呼び寄せることになった。
各人の配置を確認してから、私はドラゴンズリーチのランディングから力をこめてシャウトした。
「オダハヴィーング!」
しばらく待っていると、空の彼方に翼を広げたドラゴンの影が見えた。
ぐんぐん近付いてくる。
現れたオダハヴィーングはすでに戦闘態勢になっており、ブレスで攻撃してきた。
私はドラゴンレンドでオダハヴィーングを地面に引き下ろし、仕掛けのある位置まで誘導する。
いい位置に来たところで装置のところにいる兵士に合図を送ると、巨大な拘束装置が天井から落ちてオダハヴィーングを固定した。
兵士たちから歓声が上がる。
しかし問題は、これからオダハヴィーングを説得しなければならない事である。
だが意外にも、囚われたオダハヴィーングのほうから話しかけてきた。
『アルドゥインを退けたというそなたのスゥーム、確かめさせてもらった』と、最初から私の力を試すつもりで来たと言う。
オダハヴィーングによると、ドラゴンの中でもアルドゥインが本当に最強なのか、従うべき相手なのかという意見が出ていて、オダハヴィーング自身迷いがあった。
だが私と戦った今は、私がアルドゥインに挑むのであれば手を貸しても良いと考えているとの事だ。
その証拠にアルドゥインの秘密を話す、とオダハヴィーングは話を続けた。
アルドゥインの力の源は、死者の魂を食らうことにある。
今、アルドゥインは私から受けた傷を癒し、さらなる力を得るために死者の世界ゾブンガルデにいるという。
ゾブンガルデに行くには、転移門を通るのだが、その転移門があるスクルダフンはドラゴンの翼でなければ到達できないような山の頂にある。
そのつもりがあるならスクルダフンまで連れて行ってやろうとオダハヴィーングは言った。
以前、私とアルドゥインは対極に位置すると考えた事があったが、それが全く的を得ていた事になる。
私はドラゴンの魂を喰らって力を増す。対するアルドゥインは人間の魂を喰らう。
ドラゴンボーンはアルドゥインに対して、アルドゥインはドラゴンボーンに対して、互いに抑止するための存在なのではないか。
オダハヴィーングの言葉は、この考えが正しさを裏付けた。それは同時に、私とアルドゥインの対決が避けようの無い運命だということでもあった。
私は反対の声を無視して、オダハヴィーングを解放する事にした。
解放されたオダハヴィーングは大きく翼を広げて伸びをし、私の目を覗き込んだ。私が頷くと、背に上りやすいように姿勢を変えてくれた。
そして私達は、ドラゴンズリーチを飛び立った。
『一度ドラゴンとして空を飛ぶ経験をしてしまうと、忘れられなくなるぞ』というオダハヴィーングの言葉どおり、空の旅は素晴らしい体験だった。
これからノルド人の死者の世界に行こうとしている時でもだ。
オダハヴィーングはさらに、スクルダフンにはドラゴンとドラゴンに仕える者がいると教えてくれた。
スクルダフンに到着して下ろしてもらうと、オダハヴィーングは『もしもの時は我が名を呼べ。ゾブンガルデまではゆけぬが』と言って飛び去った。(※1)
スクルダフンには強力なドラウグルとドラゴンがいたが、これ以上オダハヴィーングの手を借りるわけにもいくまい。私は隠密で進みながら、今まで鍛えてきた技で敵を倒して行った。
転移門のある場所にはドラゴンプリーストがいた。地面に突き立てられている杖が光を放っている。
私は透明化し、忍び寄って不意打ちで先制を取ったのだが、それでも苦戦するほどの強敵であった。なんとか倒して、ドラゴンプリーストの仮面を剥ぎ取る。
転移門を見ると、機能していないようだ。ドラゴンプリーストが杖を引き抜いてからだな……と思ったので、杖を元の場所に戻してみる。
すると転移門が輝きだした。
私は意を決して、転移門の中に足を踏み入れた。
落下による浮遊感を感じたあと、足の下に地面の感触を得て私は立ち上がった。
周囲は深い霧に包まれて見渡すことはできない。
空をみると、天空に大きな穴のようなものが開いていて、雲が渦を巻いている。もしやあそこから降りてきたのだろうか。翼がなければ戻る事はできそうもない。
そこへ、霧の中から一人のストームクローク兵が現れた。
彼はノルド人ではない私がこの場にいる事に驚き、ここがゾブンガルデである事を教えてくれた。
死したノルドの英雄はショール神によってこの世界に招かれ、ここにある"勇気の間"で最終戦争に備えて饗宴に耽っているのだという。
私はアルドゥインの情報を得るため、一路"勇気の間"を目指した。
霧の中を彷徨っていると、ふいに霧が晴れた瞬間があり、遠くに宮殿のような建物が見えた。おそらくあれが"勇気の間"だろう。
そして黒いドラゴンの姿も。アルドゥインに間違いない。空中から地面近くまで下降し、何かを喰らっている。
私はアルドゥインに向かって走ったが、すぐに霧に巻かれて分からなくなってしまった。
やがて霧の中から橋門が現れた。
その前には筋骨隆々とした男が胸を張って立ちふさがっている。ツンと名乗ったその男は、ショールの従士だと言う。
「ノルド人の死者の館に入ろうとするのは何者か?」と問われたので、「ドラゴンボーンだ」と答えると、彼は竜の英雄に会うのは久しぶりだと言い、そしてその力を示してみせろと武器を抜いた。
彼は定命の者には倒せないだろうと思える強さであったが、しばらくの間打ち合っていると、満足したように笑みを浮かべて剣を引いた。
そして"勇気の間"への道を開いてくれた。
"勇気の間"は暖かく、たくさんの食事と酒と音楽が溢れていた。スカイリムを旅してきて耳にした過去の英雄達がいた。
そのうちの幾人かと話をし、アルドゥインを倒しに来たと言うと、私が来るのを待っていたと三人の英雄が立ち上がった。
ハコン、ゴルムレイス、フェルディルである。
外に満ちている霧はアルドゥインが作り出したもので、やつが好き勝手に狩りをするための隠れ蓑になっているそうだ。
三人のスゥームでは無理だったが、四人ならば霧を吹き晴らし、アルドゥインを丸裸に出来るだろうと彼らは言った。
ここに来て力強い仲間を得た私は、アルドゥインの暴虐を永遠に終わらせるために"勇気の間"を後にした。
外に出た私達は四人のスゥームを合わせて"晴天の空"をシャウトした。霧の全てを晴らすまでシャウトを続けると、ついに霧は消え去り、アルドゥインの姿が丸見えとなった。
「今こそやつの破滅の時だ!」とフェルディルが叫び、私はそれに答えるように"ドラゴンレンド"をシャウトした。
地に落ちたアルドゥインを、三人のノルドの英雄と共に攻撃する。
そしてついに、私の剣がアルドゥインの首深くに突き刺さった時、アルドゥインは恐怖と怒りの入り混じった咆哮を発して倒れた。
アルドゥインの身体は燃え尽き、その魂はいずこかへ消え去った。
他のドラゴンのようにその魂を吸収できない事は予想していたことだ。
「ドラゴンボーンに祝福あれ! 彼を称えよ!」歓声を上げながら人々がやってくる。
アルドゥインは完全に消滅したわけではないと私は考えているが、今はこの勝利を喜ぶべきだろう。私は三人の英雄達と固い握手を交わした。
共に過ごした時間はほんのわずかだが、強敵を倒したことが強い絆となっていた。
そこへツンがやってきた。
「お前は真の英雄だが、残念ながらここはお前のいるべき場所ではない」と彼は言った。私は頷いた。
「だがショールもお前に感謝している。贈り物を受け取るがよい」
その瞬間、力の言葉が私に授けられた。ドラゴンの言葉でも、人が作り出したものでもない、神の言葉か。よろめいた私の腕をツンが取って支えてくれた。
「では、スカイリムに戻るか?」というツンの問いに、私は一瞬迷った。
もしかしたら……ゾブンガルデのどこかにリディアがいるかもしれない、と。
だが、私は頭を振って「ああ、スカイリムに戻ろう」と答えた。
私が目を覚ますと、世界のノドだった。雪に埋もれて横たわり、空を見上げていた。
空にはたくさんのドラゴンたちが円を描くように飛んでいる。その中にはパーサーナックスに、オダハヴィーングもいた。
アルドゥインが消え去り、世界の運命が変わったと彼らは告げていた。そのスゥームは実に心地良いもので、私はいつまでも彼らを見続けていた。