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ハイフロスガーは相変わらずの吹雪だった。
アーンゲールに会い、ドラゴンを地に落とすシャウトがあるのか聞いてみると「なぜそれを」と言うのでここまでの経緯を話す。
ブレイズの名を出すと、ドラゴンボーンを巻き込んで余計なことに首を突っ込む連中だとあからさまに嫌悪感を示した。
とはいえ、ドラゴンボーンである私が望むことなら拒否する事は出来ないという事で、そのシャウトは"ドラゴンレンド"だと教えてくれる。
グレイビアードの中には知っている者はいないので、「長のパーサーナックスに聞くが良い」と彼がここよりさらに高い頂にいると教えてくれた。
しかしそこに到達するにはシャウトの力が必要なので新たに"晴天の空"というシャウトを教えてもらう。
どんな天候も穏やかにするシャウトだ。
これを使って吹雪を止めながら頂上に向かう。
スカイリムで最も高い山の頂に到着したところで、私はドラゴンの気配を感じてぎょっとした。
見ると一体のドラゴンが舞い降り、静かに座している。私を待っているようだ。
剣に手をかけたまま警戒して近付くと、ドラゴンはパーサーナックスと名乗った。
まずはお互いのスゥーム(シャウトのこと)で挨拶を交わすのが礼儀との事でそれに応じる。
私のスゥームはまさにドラゴンと同じものだとパーサーナックスは認めた。
元々、シャウトとはドラゴンたちの言葉であり、ドラゴンの力により言葉が現象を伴うのだという。
ドラゴンにとってファイアブレスを吐きかける事は、すなわち言葉をかけるのと同じなのだ。
目的のドラゴンレンドについては、パーサーナックスも分からないと言う。
なぜなら、本来はドラゴンの言葉であるシャウトの中で唯一人間が作った対ドラゴン用シャウトが"ドラゴンレンド"なので、ドラゴンであるパーサーナックスには分からないからだと教えてくれた。
ドラゴンレンドは諦めるしかないか……と思っていると、過去にドラゴンレンドを使った人間から学べば良いなどと言いだす。
意味が分からず聞き返すと、かつてアルドゥインを葬ろうとドラゴンレンドを使った人間がここにいたのだが、倒すことができず、持っていたエルダースクロールの力でアルドゥインを時の彼方へ放逐したらしい。
その結果、ここにはその過去に繋がる"時の傷跡"があり、そこでエルダースクロールを使えば過去を見る事ができるというのだ。
ブレイズに伝わるアルドゥイン復活の伝承は、エルダースクロールによって飛ばされたアルドゥインが再び現れる時代を示していたのだろう。
時代の時々に現れるエルダースクロールの話は私も知っている。
単なる書物ではなく、書の形をした"何か"だとも言われている。
そんなものが手に入るか分からないが、ともかく探してみるしかない。
私はパーサーナックスに礼を言い、情報を求めてウィンターホールド大学図書館に行ってみる事にした。
久しぶりにウィンターホールド大学に戻ってきた私は、自室で一眠りしてから図書館へ向かった。
司書のウラッグと話すと、かつてエルダースクロールについて研究していたセプティマスという男がいた事を教えてくれた。
その著書を見せてもらったが意味不明だった。
本人はどこかと問うと、ウィンターホールドの北に広がる氷河で何かを見つけたという連絡を最後に、戻っていないらしい。
装備を整えてから氷河に向かう。
手かがりだけでも……と思って捜索しているとセプティマス本人を見つけた。
氷河に半ば埋もれたドワーフの機械を研究しているらしい。
ほとんど狂人と化しているセプティマスの話を真に受けるのも馬鹿馬鹿しく思えたのだが、エルダースクロールのある場所に目星はついているのだと言う。
場所を教える代わりに、エルダースクロールを保管している装置から情報を抜き出して来て欲しいと小さな機械を渡された。
他に手かがりが無いので、私はセプティマスに聞いたムザークの塔に行ってみる事にした。
アルフスタンド遺跡からさらに地下へ進むと、ブラックリーチという大空洞があり、そこにムザークの塔があるという。
アルフスタンド遺跡を通り抜け、ブラックリーチに到着した私は驚異に目を見開いた。
大空洞というより、地下世界と言ったほうがいいのではないかという広さだ。
魔法の照明も天井まで届かないので、星のない空の下にいるのではないかと思ってしまうほどだ。
ファルメルたちが独自の文化圏を作っているようで、地上から誘拐されてきたらしい人々もいた。
地上でファルメルを見ることはないが、スカイリムの地下世界はもはや彼らの世界だと認めざるを得ない。
道中、不思議な赤いニルンルート(※1)を見つけて採取したりしながらムザークの塔を探す。
何度も太陽が恋しいと思いながら、ようやくムザークの塔を見つけた。
実物を見るまで半信半疑だったが、エルダースクロールは本当にそこにあった。
(とはいえ、これで何も無かったらセプティマスに殺意を抱くところだったろう)
ドワーフの機械で保管されていたので解除して取り出す。
地上に戻った私は久しぶりの太陽と、地上の空気を堪能し、一応約束なのでセプティマスのところに向かった。
約束の機械を渡すと、今度はエルフの血液を集めてきて欲しいと頼まれる。
さすがにそこまでやってやる義理はないのだが、抽出機を押し付けられてしまったので「約束は出来ないが機会があったら集めておく」と適当に返事した。
セプティマスの隠れ家から外に出ようとすると、出入り口のところに"闇の塊"としか言いようのない何かがあった。
これは何だと身構えると、デイドラの王子ハルメアス・モラと名乗った。
ハルメアス・モラは知識を司るデイドラの王子だ。私に興味があり、ずっと観察していたという。
セプティマスへの興味は薄れ、そろそろ終わりだと不吉な事を言い残して消えた。
私は嫌な汗を拭ったが、気分は良くならなかった。
ともかくエルダースクロールは手に入ったので、パーサーナックスの元に向かうことにする。
地下世界ブラックリーチで見つけた赤いニルンルートだが、やはり貴重なものだったらしく、これを研究していた人の小屋が地下世界にあった。
手記から名前はシンデリオンと分かったが、当の本人はファルメルに殺されてしまっていた。
手記には他にもアブルサという女性とニルンルートについて研究していた事や、彼女にこの発見と研究成果を見せたいと書かれていた。私はシンデリオンの願いに応えてやれる機会もあるかもしれないと思い、サンプルの赤いニルンルートを集め、研究資料も全て持ち出してきていた。
アブルサの農園については偶然通りかかったことがあったので場所を知っていた。
遠回りする事にはなるが、ブラックリーチで無念の死を遂げたシンデリオンの願いをかなえてやるくらいはいいだろう。
アブルサを訊ねて見つけたものを全て渡すと、彼女はシンデリオンの死を悲しみ、彼の研究成果について私にも教えてくれた。
私も大学で錬金術の基礎を修めていたので、その内容は理解できた。
偉大な発見をしたのに、その名誉を生きて受け取ることができなかったのは残念だ。しかしその遺志はアブルサに受け継がれた。
そういえばこの件以外にも引き受けたままになっている頼まれ事がいくつかあったなと思い出す。
エルダースクロールは非常に危険な書物で、開いたが最後、どうなるか分からない。
もし私の身に何かあれば、シンデリオンの研究のように世に出るべき何かが失われてしまうかもしれない。
アルドゥイン復活の前に、出来るだけやっておくべきだろう。
暑さ対策のために氷の塩鉱石が必要という話だった。
錬金術の素材を入れているポーチを開くと、中にいくつか氷の塩鉱石が入っていたので、依頼人のドラヴィネアを訊ねてカイネスグローブに向かう。
目的の物を渡すと、彼女はあまり期待していなかったらしく(まあ、通りすがりの旅人に駄目もとで頼んでおいたという感じなのだろう)私が約束を覚えていたことに感激していた。
「これくらいしかできなくて……」と感謝の証に変性魔術のコツなどを教えてくれた。
大学の先生ではなく、在野の魔術師が経験で身に着けた知識も貴重なものだから、私には十分な報酬だ。
次の目的地アンガルブンデの遺跡に向かう途中、野営をしている集団が見えた。
いつものようにリディアを待機させ、隠密して接近して様子を見る。
彼らの話を盗み聞きしていると山賊などの類ではない事が分かったので、挨拶をして通り過ぎようとしたところ声をかけられた。
ストーリオと名乗ったその男は、困ったことになっているので助けて欲しいと言う。
彼が家族と住んでいたトレヴァの監視所というところが、戦争から帰ってきたら山賊のような連中に占拠されていたという事だ。
中には家族もいるはずなので心配なのだが、彼らだけでは対抗できずに困っていたらしい。
とりあえず正面の門を開けてくれれば中に入れるのだが……というので、これも何かの縁と助力する事にした。
ストーリオのところにリディアを残し、単身、監視所の様子を探る。
外にいる山賊を一人ずつ全員始末して、門を開くレバーに手をかけたが、門の開放は後回しにする事にした。
ストーリオ達を呼び込んだら建物の中の山賊にも当然気付かれるだろう。
その時に彼の家族を人質にされても困る。
ならば私一人で先に建物の中を調べておいたほうがいいだろう、というわけだ。
建物の中には外より多くの山賊がいた。
私は影から影へと移動しながら、時に魔法を駆使して建物内を探る。
私の隠密能力は魔法やナイチンゲールの能力と融合して非常に高いレベルにあり、ほとんど見つかることはない。
こちらが先に山賊の首領を発見したので、二刀を抜いて忍び寄り、不意打ちした。
首領はこの攻撃に耐え、椅子から立ち上がろうとしたので私は少々驚いた。
すぐに"時間減速"のシャウトを放ち、首領が立ち上がる前に二刀の連続攻撃で倒す。
まともに戦っていればかなりタフな相手だったに違いない。
砦の屋上まで捜索したがストーリオの家族らしき人物は見つからない。
続いて地下を捜索していると、部屋の一つに平服の遺体が数体押し込められているのを発見した。
これがストーリオの家族でなければいいのだが。
地下から外まで通じる抜け道があり、監視所の外に出てしまったので再び監視所に戻って約束どおり門を開放。ストーリオたちを呼び込んだ。
あとは自分達でやるというので、私たちはその場を後にした。
あの遺体がストーリオの家族かもしれなかったが、私に出来ることは何もないので言わずにおいた。
グレイビアードのアーンゲールがシャウトの波動を感じると言っていたアンガルブンデの遺跡を探検する。
中はドラウグルの巣窟であった。
リディアを待機させて私が先行したり、リディアに突っ込んでもらって囮になってもらい私が不意打ちする等、これまでに培ってきた連携でもって進む。
しかし、この道中の順調さが慢心を招いた。
その大きすぎる代償を私は払うことになる。
最奥のシャウトが刻まれた壁付近には強力なドラウグルがいる事を知っていたので、私は一人、隠密で部屋に入り不意打ちを試みた。
しかしここにいるドラウグルには通用しなかった。
墓から起き上がってくる。
仕方ない、と私は二刀を抜いて斬りかかった。
次の瞬間、ドラウグルの放ったシャウトで私は跳ね飛ばされて壁に激突した。
リディアが援護すべく部屋に走りこんでくる。
立ち上がってみると、右手に持っていたドーンブレイカーがない!
周囲を探すと、離れたところに落ちていた。
私は拾い上げようとしたが、そこで再びシャウトによって跳ね飛ばされてしまった。
今度は左手からチルレンドが吹き飛んでいった。
別々の場所に落ちているそれぞれの武器を拾い上げた頃、すでに周囲をドラウグルに囲まれ、私たちは窮地に陥っていた。
ここはいったん退くしかない……そう考えて私は通路に飛び出した。
背後に向けて魔法を放ちながら遺跡内を逃げ回るが、ドラウグルたちは執拗に追いかけてくる。
覚悟を決めた私はスクロールなども駆使しながら距離を取って戦った。
やがて遺跡内を走り回るのに疲れ果てた頃、ドラウグルたちを全滅させることができた。
へとへとになり、ドラウグルたちの死体(?)を辿りながら最奥の部屋に戻る。
そこでシャウトを習得し、遺跡の外に出た。
「迂闊だった。大変な事になってしまってすまなかったな……」と私はリディアに声をかけようとしたところで気が付いた。
リディアがいない。
まだ遺跡内にいるのか、まさかやられてしまったんじゃ……。
私はすぐに遺跡内に戻った。
それから丸一日かけて遺跡内を隅々まで探して回ったが、リディアは見つからなかった。
彼女の持ち物も、死体も見つからない。
きっとはぐれてしまったに違いない、と私は嫌な予感を振り切るようにホワイトランへ馬を走らせた。
はぐれた場合はホワイトランの自宅で合流する手はずになっているからだ。
ホワイトランの自宅に着いたが、リディアは戻っていなかった。
そのうちに戻ってくると信じて、私はホワイトランで首長に頼まれていた山賊退治や賞金首の退治などをして過ごした。
一週間経っても、彼女は帰ってこなかった。
念のため、ホワイトランの地下墓地にも足を運んだが彼女の遺体が見つかったという話はない。
このままホワイトランに居ても仕方が無い……。
リディアが死んだという確証はないのだから、いつか戻ってくるかもしれない。
そう自分に言い聞かせて、私は旅を再会する事にした。
この後、今に至るまでリディアは戻ってきていない。
彼女の身に何が起こったのか、私が知る事は永遠にないのだろう。
しかし私は今でもホワイトランの自宅のドアを開けるとき、彼女が戻っているのではないかと期待してしまうのだ。
私は、噂に聞いたアズラの祠を目指して山を登っていた。
理由は特に無かったが、いつまでもホワイトランにいても仕方が無い。
やがてアズラの像が見えてきた。その祭壇で一人の司祭が私を待っていた。
彼女はアラネア・イエニスと名乗り、私がここへやってくる事は分かっていたという。アズラの預言によって、と彼女は言うが全く信じられない。
私がここに来たのは単なる気まぐれで、その一因はリディアの件である。
その預言とやらが何を意味するのか聞くと、「ウィンターホールドでエルフの付呪師について聞け」と言われた。
またデイドラの何かに巻き込まれたのか……と思いつつも、言われるままウィンターホールドに向かった。エルフの付呪師について聞いて回っていると、ネラカーという訳知り顔の男に出会った。
私が「アズラの司祭に言われて来た」と言うと、「"アレ"の事か……」と思い当たるものがあるらしい。情報料としていくらか支払うと、彼は"アズラの星"について話し出した。
彼の師匠メイリンは自身の魂をアズラの星に保管することで不死になるという研究をしていて、彼も手伝っていたのだが、メイリンは徐々におかしくなってしまったという。
彼がメイリンの元を離れた時には、"イリナルタの深淵"にいたらしい。
私が礼を言って立ち去ろうとすると、最後にネラカーは「もしアズラの星を手に入れたとしても、アズラの所に持っていくべきではない」と忠告した。
しかし、デイドラの道具はタムリエルに混乱をもたらす。破壊するか、オブリビオンに持ち帰ってもらうか、すべきだろう。
イリナルタまで旅してみると、そこには死霊術士と、彼らが作り出したアンデットが巣食っていた。狂気に囚われたメイリンの友人たち……なのだろうか。
忍び込むつもりでいたが、アンデットの存在を感知したドーンブレイカーが光を放ち、誓いを思い出させる。
私は隠密からの不意打ちを狙いながら、敵を倒して進んだ。
盗賊ギルド絡みで動いた時など、今までも単独行動は多かったはずなのだが、なぜか一人である事に不安な気持ちを感じていた。
頼めば付いてきてくれるであろう友人の顔がいくつも頭をよぎった。だが、そのたびに頭を振って、その考えを追い払う。
リディアには私のために死ぬ覚悟があったように見えた。だが私には、リディアを私のために死なせる覚悟はなかった。
背中を預けるにはその覚悟が必要だと、今の私は知っているはずだ。
イリナルタの深淵で、メイリンは死んでいた。白骨化した遺体からアズラの星を回収する。
アズラの祠に戻ると、アズラ自身が像を通して私に話しかけてきた。
メイリンの研究はある意味成功していて、彼女の魂がアズラの星の中にいるという。その魂が星の浄化を妨害しているのだ。
乗りかかった船だ。私は最後まで協力する事にした。
アズラの力で星の内部に送り込まれた私は、そこでメイリンの魂を解放した。
アズラの星は浄化され、再びアズラの元に戻った。
アズラは協力への報酬として、その"アズラの星"を私に授けると言い、返事も聞かずに去った。
仕方がない、私が"アズラの星"を管理するしかあるまい。
司祭アラネア・イエニスは、アズラの預言によってここで私を待っていた。その任が終わり、今度は私と共に行くと言う。
まるでリディアがいなくなるのを分かっていたようなタイミングだ。もしやリディアが行方不明になった事にアズラが関わっているのではないか……そんな疑念さえ抱いてしまう。
しかしその疑念を無視したとしても、私はアラネアと共に行く事はない。
これからは一人で戦うのだ。
ウィンターホールドの自室で、私は全エルフ種族の血液サンプルを机の上に並べていた。
イリナルタの死霊術士から最後のサンプルを手に入れてしまっていたのだ。
セプティマスの――というよりハルメアス・モラの――目論見どおりに。
悩んだ末に、私は好奇心に負けてセプティマスの元に向かう事にした。
セプティマスは相変わらずの様子で、ぶつぶつ独り言を言いながら作業を完成させた。
氷河に埋もれたドワーフの機械は内側に向けて伸びるように開かれ、その奇妙な通路に眩暈を感じながら、彼の後に付いて行く。
機械の内部には、ただ一冊の本があるだけだ。
セプティマスはその本に飛びつくと、さっそく読みふけった。
そして求めていた知識の答えにたどり着き、歓喜の声を発して……灰になってしまった。
突然のことに、私は驚き、ただ呆然と煙を上げるセプティマスだった灰の山を見つめた。
それから目の前の本"オグマ・インフィニウム"へと視線を移す。
「真実は弱きものにとって危険なものだ。だが、お前は大丈夫だ」
どこからともなく、ハルメアス・モラの声が聞こえる。
このままオグマ・インフィニウムに手を触れず立ち去り、この場所を埋めて、忘れてしまうべきだ。
しかし私は……オグマ・インフィニウムを開いた。(※2)
「オグマ・インフィニウムの全てを閲覧することは、定命の者にって危険すぎる」
私が魔術関連の項目を読み終えたところで本は閉じられた。その向こうに奇妙な存在――ハルメアス・モラ――がいた。
「だが、これは私が与える知識の一部に過ぎない。私に仕えれば、もっとたくさんの知識がお前のものになる」
「断る」私は即答した。
「お前は自分で選択したつもりかもしれないが、現に私の計画どおりに事は運んだ。結果的にお前は私に仕えてるのも同じだ」
「消えろ、怪物め」私は動揺を悟られないように、言った。
ハルメアス・モラはしばし蠢いた後に、消え去った。
「お前も、結局は私に仕えることになる……」と言い残して。
セプティマスの隠れ家を後にした私は、ウィンターホールドには戻らず、沿岸沿いに歩いてドーンスターを訪れた。
サイラス・ヴェスイウスという人物から博物館を作ったので見学に来ないかと手紙をもらっていたからだ。
この手紙は、ウィンターホールドで大変な事件の最中に配達人が渡してきたものだ。どけ、と言っても決して動こうとせず、ドラゴンの炎に焼かれながら陽気に話していたあの配達人は何者だったのだろうかと、今でも思うことがある。
現地ではサイラス自身が出迎えてくれて、この博物館は"深淵の暁"という組織の遺物を保管していると説明してくれた。
深淵の暁は、オブリビオンの動乱と呼ばれる事件を首謀した組織である。
サイラスは一通り講釈した後、もっとも重要な遺物が博物館に収められていないと話をついだ。どうやらこちらが本題のようだ。
問題の品は"メエルーンズのカミソリ"と呼ばれる短剣で、デイドラの王子メエルーンズ自身が与えたとされるものらしい。
深淵の暁は動乱の末期に壊滅したが、その残党狩りを行った連中がこの短剣を発見し、使えないよう分解して持ち去った。
サイラスはすでに、それらの所在について調べはついているので回収を頼みたいという事だ。
たしかに歴史上、深淵の暁は重要だと私も思う。
この博物館の重要性もまた然りである。
私はサイラスの依頼を引き受けた。