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ウィンターホールド大学で、私は戦いの傷を癒していた。
中庭で立ち話をしていてもドラゴンの襲撃を気にする必要はもうない。
二週間ほど過ぎた頃、私は以前から考えていた計画を実行する事にした。
ホワイトランの自宅を引き払い、新しい家に住み替える計画である。
理由としてはいくつかあるが、一つには"世界を喰らう者"を倒した英雄として有名になってしまった私がホワイトランに居住しているのはどうかというものだ。
スカイリムの内戦はさっそく再開されてしまい、ホワイトランもその中で難しい立場になってしまっている。私自身はスカイリムの内戦についてどちらの側にも付く気はない。私はノルド人ではないし、シロディールで育ったわけでもない。
だがもしどちらかの軍がホワイトランに攻撃を仕掛けてきたらどうするか。もちろん黙って家を焼かれるわけにはいかない。
そうなれば戦わざるを得ないし、それによって"ドラゴンスレイヤー"がホワイトランに付いたと思われるのは困る。
ちなみにこの話をオダハヴィーングにしてみたところ、『お前の住処に手を出そうという軍隊がいたら我を呼べ。全て焼き尽くしてくれようぞ』と言って笑った。笑ってはいるが、たぶん冗談ではない。(※1)
引越し先の宛てはあった。
だいぶ前にファルクリースの首長から手紙をもらっていたのだ。土地の購入権利についての内容だった。
私は詳しい話を聞くため、ファルクリースまで出掛ける事にした。
ファルクリースの首長シドゲイルに会う。
土地購入について話してみると、土地を売りに出す話は確かにあるのだが、土地を購入するにはある程度の身分が必要だと言う。
住民からの推挙があれば従士として認めてやれるし、そうすれば土地を購入する事は可能だと言われた。
なんだが上手く乗せられたような気がするが、とりあえず困っている住民を探してみる事にする。
酒場の主人に話を聞くと、狩人のヴァルドルとその仲間が熊狩りに行ったまま戻っていないという。
情報を元に森の中を捜索すると、洞窟の前に座り込んでいるヴァルドルを発見した。
怪我を負っていて苦しそうだったので、治療の魔法をかけてやると楽になったようだ。(※2)
ヴァルドルの話によると、熊を洞窟まで追い込んだのだが、中に入ってみるとスプリガンの巣で、仲間はやられてしまったそうだ。
酒場の主人が心配していたと話すと、仲間の亡骸をそのままにして街には戻れないと言う。
「私に任せて、ここで少し待っているんだ」と言って、私は洞窟に入った。
小さな洞窟には確かにスプリガンが居て、奥には逃げ込んだ熊がいた。
どちらも倒してから、ヴァルドルに「終わったぞ」と告げる。
彼はとても感謝してくれて、彼の幸運のお守りだというダガーを私にくれた。
街に戻って酒場の主人にヴァルドルはもう心配いらないと告げると、安心したようだった。
同じ酒場の中にデンジェールという身なりのいい初老の男がいて、一つ仕事を頼みたいと言ってきた。
彼は先代の首長で、ストームクローク側に接近する動きを見せたところ首長の座を下ろされたそうだ。その件でどこかにスパイがいるはずだと確信している。
鍛冶屋のロッドが怪しいので、ロッドの家に忍び込んで親書を盗んできて欲しいと頼まれた。
私にとっては難しいことではないので、引き受けることにする。
まずはいつもの手順で、ロッドの家とロッド本人を観察する。朝になると鍛冶場に出かけ、夜まで戻ってこないことが確認できた。
扉の鍵も単純なもので、簡単な仕事のようだ。
ところでロッドがスパイとして怪しいのかどうか、単純に興味がわいたので鍛冶場でロッドに話しかけてみる。
すると彼は「しゃべる犬を見たんだ」と別の意味で怪しい発言をした。
その変わった犬を捕まえて欲しいという依頼をしてきたので、親書はいつでも盗めるし、引き受けることにした。
犬をおびき寄せるための生肉を受け取る。
さて、そもそも問題の犬は実在するのかと心配しながらファルクリースの周辺を歩いていると、一匹の犬がトコトコと歩いてきて「ああ、お前を探していたんだ」と言った。
私が驚いていると「散々色んなものを見てきただろう。いまさら驚く必要があるのか?」と言われ、確かにそうだと笑ってしまった。
犬の名前はバルバスと言って、デイドラの王子クラヴィカス・ヴァイルの友人だそうだが、喧嘩してしまったので仲裁して欲しいと言う。
現在のクラヴィカス・ヴァイルは力の大半を失っているものの、普通の人間では太刀打ちできないため、対等に会話できる相手として私という事らしい。
「まあ……話すだけなら、話してみてもいい」と答えると、バルバスは案内すると言って先導し始めた。
バルバスを追って進んでいくと、"ハエマールの不名誉"という場所に到着した。
中にあるクラヴィカス・ヴァイルの祠まで行くと、クラヴィカス・ヴァイルが『望みを言え。なんでもかなえてやるぞ』と話しかけてきた。
クラヴィカス・ヴァイルの言葉はそのまま受け取ってはいけないとバルバスに忠告されていたので、注意しながら「バルバスと仲直りしてやってくれ」と頼んでみた。
『それは無しだ。だが……交換条件がなくもない』と言う。
セバスチャン・ロートという魔術師に"悔恨の斧"を与えたのだが、惜しくなったので返してもらってきて欲しいというのが条件だった。
私はなんとなく、このデイドラとの付き合い方が分かってきた。クラヴィカス・ヴァイルには何かを望んではいけないのだ。
セバスチャン・ロートの居場所は聞いたので、さっさと行く事にする。
目的地の洞窟の奥にセバスチャンはいた。なにやら作業をしているようだ。
くっついてきたバルバスに離れているよう指示して、私は身を隠して接近した。見ればセバスチャンの近くの作業台に件の斧が置いてあるではないか。
目的は斧であってセバスチャンの命ではないのだから、これでいいだろうと私は斧を盗んだ。
クラヴィカス・ヴァイルのところに戻ると、彼は『その斧でバルバスを殺せば、斧はお前にやる』と言った。
これを受け入れれば、私が斧を望んだ事になってしまう。それはすなわちクラヴィカス・ヴァイルの罠にかかるという事だ。私はため息をつき、斧をクラヴィカス・ヴァイルに渡した。
「あんたに頼んで正解だったな!」とバルバスはニヤリとし、クラヴィカス・ヴァイルの元に帰って行った。
いつの間にか祠にはバルバスの像が増えていた。仲直りできたということだろう。
やれやれだ。
ファルクリースに戻り、ロッドに「犬は捕まえられなかった」と報告する。ロッドは「残念だけど、やれるだけやってくれたんなら良いさ」と言ってくれた。
どうも好人物に思えるのだが……デンジェールのほうが被害妄想的になっているのかもしれない。
ロッドが出かけたのを見計らって、彼の家に忍び込む。
親書以外には手を触れずに外に出てきた。親書はまだ封をしておらず、内容は注文書のようだ。陰謀に関係があるようには見えない。
デンジェールのところに行き、黙って親書を差し出すと、彼は内容を見もせずに懐にしまった。そして「信用できるようだな」と言った。
私を試したということか。
それから彼は、本当の依頼について話し始めた。
デンジェールの先祖ヴィグハールは吸血鬼になってしまい、一族総出で何とか封印する事が出来た。それ以降は、この封印を守ることが一族の使命の一つになっていた。
ところが最近になって封印がやぶられてしまった。この上はヴィグハールを退治するしかない……という事で、私に吸血鬼退治を頼みたいとの事だ。
私の実力はすでに有名だが、一族から吸血鬼を出してしまった事を恥に思っているらしく、口の堅さを確認したというわけである。
ヴィグハールのいる"ブラッドレットの玉座"の場所を聞き、私はさっそく向かった。
吸血鬼が君臨しているだけあって道中も吸血鬼だらけだったが、ドーンブレイカーの力で灰にしてやる。
最奥の広間には玉座があって、そこに悠然と座っている吸血鬼がいた。ヴィグハールであろう。
私は隠密状態のまま、弓を引き絞って眉間を打ち抜いた。が、さすがに吸血鬼だけあって死なない。
すぐに隠れ場所を移動して息を潜める。
ヴィグハールに操られているらしい狼やヴィグハール本人が私を捜しに来るが、矢を放った場所からはすでに移動しているので見つからない。
やつらが諦めて広間に戻っていくところを、今度は後頭部から打ち抜く。そして別の影に移動。
これを数回繰り返し、ヴィグハールの頭が矢だらけになるころ、やつは動かなくなった。(※3)
あとは狼を適当に始末して、念ためドーンブレイカーを突き刺して灰にした。
デンジェールのところに戻って報告し、この件は他言しないと約束した。
首長シドゲイルが呼んでいるというので館に行ってみると、シドゲイルは私を従士に推薦する声があると言った。ただし、一つ仕事を頼みたいという。
以前に取引のあった山賊がフェルグロウ砦を占拠しているのだが、メリットよりもデメリットが目立ってきたので関係を清算したいという。つまり山賊退治の名目で、始末してこいという事だ。
あまりいい気分のする仕事ではないが、山賊が相手ならば……まあ、やってもいいだろう。
しかし、単純に「山賊を退治してきてくれ」で良かったはずなのに、その裏話まで暴露するというのはどういうつもりなのだろうか。
私を信用しているということか、それとも馬鹿なのか。
裏を話した上で仕事させることによって私に共犯意識を持たせる、という心理的な効果を狙っているのだとしたらかなりの策士にも思える。
シドゲイルには注意したほうがいいかもしれない。
フェルグロウ砦まで馬を走らせ、到着したのは夜だった。
夜陰に紛れて敵を始末するのは得意分野ではあるが、今日はオダハヴィーングを呼んで一緒に戦う事にした。
強い者が力を振るうのに躊躇う必要はない、というドラゴン流のやり方で行きたい気分だったからだ。
山賊を始末してファルクリースに戻ると、シドゲイルは私を従士に任じて、土地の購入権利を認めた。
私は大金を支払って、ついに土地を手に入れることができた。
朝を待たず、手に入れた土地を見に行く。
湖が一望できる丘の上にある土地で、ちょうど朝日が差し込んでくる時間帯が、特に美しい場所だった。
まずは土をならして土台から作っていかなければならない。それから木材を用意して柱を作り、組み合わせて骨組みを作る……非常に力と体力がいる仕事だが、余計なことを考えずに黙々と作業に集中するのは悪くない。
特にアルドゥインを倒してからというもの、なんだか世界が複雑になったような気がして悶々としていたのだ。
私は一心不乱にハンマーで鉄を叩き、木を切り、石を積み上げた。
必要な材料は自分で切り出すこともあれば、街に買出しに出たり、商人に注文して届けてもらったりした。
家と呼べる形になるまでは、何週間もの時間がかかった。(※4)
最初に出来上がった家は、ホワイトランで買い取った家よりも小さく、"とりあえず住めるだけ"というようなものだった。
必要最低限の家具を揃えて新しい生活を始めてみたものの、当初の目的だったホワイトランからの引越しは難しいように思われた。
私は相談相手を求めてウィンターホールド大学に足を運んだ。
大学でオンマンドと話していると、彼は家令として、家の建設や維持などを手伝っても良いと言ってくれた。
そういった方面の事ができるとは思っていなかったので少し意外であった。
オンマンドとは友人でもある事だし、私も安心なのでお願いする事にした。
オンマンドが来てからは、職人の手配、材料の手配、建築計画、すべてが順調に進んだ。
私が最初に作った小さな家は玄関に改築され、より立派な二階建ての家が出来た。
湖を望むテラスに、図書塔、付呪の研究室、実験用や訓練を行える頑丈な地下室など、何週間かかけて増築した。(※5)
その間、私はホワイトランからの引越しを進めていた。
たいへん貴重な品物や書物もあるため、私自身の手で行う必要があったからだ。
レイクビュー邸とホワイトランの間を何度も何度も往復した。
本は一冊ずつ分類しながら図書塔の本棚に納め、錬金術の素材を箱に整理し、今までの冒険で手に入れた貴重な品物を一つずつ思い出と共に展示室へ飾った。
引越しが終わり、完成した我が家には、これまでの思い出とこれからの生活が詰まっている。