ラウドGストーン

 Gストーンは迫り来る機界昇華に対抗するべく生まれた自然界の抗体、ラティオの能力を模し、Gクリスタルを精製することで生み出された命の宝石である。持つ者の生きようとする意志、勇気に感応して理論上無限の出力を得ることが出来る無限情報サーキット。もしもGストーンがもっと早期に大量に精製されていたなら、赤の星で進められていた対機界31原種用兵器システム群と合わせて三重連太陽系の機界昇華を阻止することが出来たかもしれない。
 だが仮にそれが成ったとしても、Gストーンには大きな懸案が残されていた。Gストーンは持つ者の勇気次第で無限の高出力を得ることが出来るが、それは同時にGストーンのアキレス腱とも言える特性であった。持つ者の勇気が恒常的なものであればGストーンはそれに応えてくれるが、翻って言えば、ひとたび勇気が絶たれた時Gストーンはその力を失ってしまう事を意味するのである。Gストーンが命の宝石たるには持つ者の勇気が決して折れないという条件を満たしていなければならなかった。だがその要件を満たすことのできる者が果たしてどれほどいると言うのだろうか?Gストーンは勇気ある者が使用することで初めて絶大な威力を発揮する極めて特殊な出力機関であり、決して万人に対してその特性の全てを発揮することはないのである。
 しかし、機界31原種、およびゾンダーに対抗するにあたり、誰が用いても一定の効果を発揮しなければ、兵器としての運用に成果をあげることは難しい。戦略、戦術いずれの面においても、恒常的な勇気の持ち主と言う特殊な存在を基準に基礎的な計画を立てることは出来ないのである。
 ラウドGストーンは制式採用のために勇気や感情の昂ぶりに感応する特性を除去することで基礎出力を向上、安定化させたGストーンであり、使用者に応じて出力を変動させることはないが、その安定性能は極めて優秀であり、基礎出力はGストーンはもとより、Jジュエルをも遥かに凌駕する。緑の星はこれを大量に精製、投入することで機界昇華に対抗しようと企図していたようだ。しかし、結果的にGストーンはいくつかの試験的初期型と制式量産型であるラウドGストーンを僅かに精製できたにとどまり、三重連太陽系は機界昇華を阻むことが出来なかった。
 搭載されるはずの機動兵器も完成せず、宙に浮いた形となったラウドGストーンは緑の星の機界昇華寸前にいずこかへと持ち出されたという。緑の星の公式な記録はここで途絶えており、真相を窺うことは出来ない。だが、旧三重連太陽系宙域で活動を開始したソール11遊星種がこのラウドGストーンを主動力として稼動していた事実から、遊星種の完成を急ぐために行方不明となったラウドGストーンが流用されたことは、ほぼ確実である。定量ながら超高出力を誇るラウドGストーンを搭載したことにより、ソール11遊星主はGGG機動部隊はもとよりJアークすら凌ぐ戦闘能力を得ており、ピサ・ソール物質再生波動による再生復元能力と相まって両者を完全に圧倒した。
 なお、地球でもGストーンの研究を進めることでラウドGストーンと同様の出力機関を開発できないかと言う計画が持ち上がっていたが、GGG長官である大河幸太郎や、国連事務総長ロゼ・アブロヴァールの反対と木星開発計画の先行によって頓挫している。この後、GGG急進派のクーデターによって数多くのGストーンが地球圏より失われたことで実質上計画の遂行は不可能になり、その後計画はバイオネットより接収したフェイクGSライドの研究へとシフトしていくこととなる。