ピサ・ソール

 ソール11遊星主のひとりにして、その本体とも言うべき存在。ラウドGストーンによって稼動する生体プログラムである。透明感のある白い肌と身長とほぼ同程度の長い輝くような金髪が特徴の女性を思わせる風貌で、その額には星、両の頬には菱形の刻印が見られる。パルス・アベルらのように言葉を発することはないが、時折発する歌のような声は空気の振動ではなく、自身が発するエネルギィの振動である。恒星サイズのパーツキューブ集合体である物質復元装置フュージョンすることによって、構造理解さえあれば、およそありとあらゆる物体を再生復元、更には大量に複製することすら可能である。特に生命体に至っては、その記憶や思考パターンさえも忠実に再生復元することができるが、それには物質復元装置、パスキューマシン、そしてピサ・ソール本人の三者が必要不可欠であり、そのいずれかを欠けば、再生復元は不完全なものとなり、最悪の場合その場で原材料である暗黒物質へと還元してしまう。
 三重連太陽系再生復元システムであるところのソール11遊星主において、物質復元装置、所謂再生マシンの中枢を担うのがピサ・ソールである。暗黒物質をエネルギィや物質に変換する作用を有するパスキューマシンと、その補助システムに過ぎない物質復元装置を統合運用することができるのは、そのためだけに生み出されたピサ・ソールのみであり、三重連太陽系の再生復元を目指すソール11遊星主の運用的中枢がパルス・アベルであるとするならば、その機能的中枢にあたる存在である。パルス・アベルが目立って行動していたのはGGGに対抗するにあたり、物質復元装置を戦術的に使用する必要が生じたためであり、本来再生復元作業に特化しているピサ・ソールではその任に耐えられないことが明白だったからである。その意味で、ピサ・ソールは結局、本来の機能を一度も発揮することがなかったとも言える。
 物質復元装置とパスキューマシンの統合的な運用が三重連太陽系の再生復元に不可欠である以上、遊星種にとってはピサ・ソールと物質復元装置、そしてパスキューマシンこそが最も重要であった。他の何を失ってもこの三者のうちのひとつでも失うわけにはいかなかったのである。そのため、物質復元装置はその最外層を非常に強力な反発力場、即ちレプリションフィールド発生装置で覆っており、認証のない者の物質復元装置への接近を阻止している。
 遊星種にとっての最初の危機は紫の星に端を発した機界昇華であった。機界文明にとっては膨大なエネルギィを発生させるパスキューマシンや物質復元装置は脅威であると同時に、魅力的な素体であり、三重連太陽系の機界昇華に際して、機界文明と遊星主、あるいは遊星主を生み出した者たちとの間で熾烈な戦いがあったことは疑いない。その決着がどのようなものであったのか、我々には知る由もないが、三重連太陽系の終焉と共に機界31原種は全宇宙へと拡大を開始し、ひとつの宇宙の終わりと再生を経て、地球へと来襲することとなる。
 一方、機界31原種との戦いを経た遊星主はその殆どの端末を失ったものの、その中枢、即ちピサ・ソールと物質復元装置、そしてパスキューマシンはかろうじて残されていた。おそらく物質復元装置最外層のレプリションフィールドが機界昇華を免れた最終的な要因と言えそうである。この段階で他の遊星主にどれほどの犠牲が出たのかは不明だが、ともあれその中枢が無傷であれば、機能の再生は可能である。11遊星主を復元したピサ・ソールは、本格的に三重連太陽系の復元を開始する。その第一段階こそが、ギャレオリア彗星を介した別宇宙からの暗黒物質吸収であった。それはその宇宙で熾烈な戦いを生き抜いたJアークの知るところとなり、かくして、遊星主とGGGによる宇宙の生存を賭けた戦いが幕を開けることとなる・・・。
 おそらくピサ・ソール自身に自律的な意志は存在しておらず、パルス・アベルの命令に対して反応する生体プログラム以上のものではなかったようだが、遊星主の強力な補給源として、GGGを大いに苦しめた。しかし、一度に大規模な再生復元を行うと物質復元装置自体がエネルギィ不足に陥り、その機能が一定時間低下するという欠点がある。その瞬間に物質復元装置に対してジェネシックガオガイガーが単機で突入、最終究極ツールゴルディオンクラッシャーにより、物質復元装置ごと完全消去され、遊星主の敗北を決定付ける結果となった。