ロゼ・アプロヴァール

 2006年現在の国連事務総長兼国連最高評議会議長。フランス人。老齢の域に達した女性ながら、世界の表裏を問わず幾多の要人に太いパイプを有する謎の多い人物で、剛毅かつ周到な知性の持ち主として国際社会においてはカリスマ的な存在である。情に厚く地球の未来を真剣に憂えながらも、国家間の利害を精確に把握し、時に非情な決断もためらわない一面もあり、一概には捉えきれない「大人物」である事は万人が認めるところである。
 本来安全保障理事会直属となるはずだった新GGGを半ば強引に最高評議会の直属とし、その全権を自ら掌握すると共に、最高評議会の議員選出に際しても豪腕振ぶりを発揮したとされている。経歴にも不明な点が多く、その強権を危ぶむ声も多いが、それ以上に彼女の手腕によって国連創設以来「専横」とも言われる権力をふるってきた国連安全保障理事会常任理事である五ヶ国が、これまでとは比較にならないほど積極的に共同歩調をとるようになり、ついには拒否権の無期限凍結を共同宣言するに至った事が、現在の国連は事実上彼女の独裁体制にある、との批判が存在するにもかかわらず、彼女に絶大な評価を与えている。国連総会で選任されたにもかかわらず、「実力で」国連事務総長の地位に就いたのだと言われる所以である。
 GGGの上部組織である最高評議会議長、つまりGGG長官大河幸太郎と参謀総長・火麻激の直属の上司であり、同時にふたりの古い知己である。世界広しといえど彼らを「幸太郎坊や」「激坊主」と呼ぶことのできる者は彼女以外にありえない。彼らもまた、彼女に対しては最高度の敬意を抱いており(火麻参謀の場合「頭が上がらない」という表現の方が適切だろうか)、余人に測りがたい濃密な関係性がそこには存在しているようだ。
 しかしその彼女をしても、国連主導で進められた木星開発計画、正確には「ザ・パワー」利用開発計画を押し留める事は出来ず、2006年初頭には第一次調査と称して特殊能力者も含めた調査団が木星へ向けて出航するなど、その「独裁」体制に小さな瑕も目立ち始めている。
 2006年のGGG急進派クーデターに際しては、ディビジョンフリートの離脱を確認後、殆ど独断でクーデター派を地球圏より追放する特別令を発表、この迅速さは世界中を驚嘆させた。以後は「急進派のクーデターを大変遺憾とする」という声明を出しながらも、従来どおり国連運営を殆ど一手に引き受けながら、オービットベースにとどまった隊員への温情的措置を実現させるべく奔走し、一方で無事帰還を果たしたGGG特別隊員の証言に基づきクーデター派の名誉回復を図る事になる。
 しばしば自身の強権を利用して強引な決定を下す事があるが、多くの場合それは国際情勢を的確に踏まえた深慮遠謀の下になされる苦渋の決断であり、後々になって初めて彼女の決断の正しさが証明され、それゆえに彼女はそのカリスマ性を高め、より高度な決断を下す、という循環によって遂には国連事務総長と最高評議会議長を兼ねるに至った、正しく現代の傑物である。しかしその一方で大河長官や火麻参謀へと向けるまなざしが、非情の最高権力者という評価とは裏腹に暖かさに満ちていると思えるのは気のせいだろうか?GGGを追放した事が結果的にGGGにフリーハンドでの活動を認める事になったように、強引なGGGの最高評議会直属への組み込みもまた、大国の利害に翻弄される事なくGGGにその使命を果たして欲しいと彼女の願いが込められていはしなかったか?もちろん彼女は一方で冷徹な計算も怠っていない。量産型CRが国連宇宙軍として整備された以上、突出した戦力を有するGGGが現状を維持する事はきわめて難しくなるであろうことは容易に予測可能である。言い換えれば機界文明殲滅以後、GGGは治安維持戦力というよりは、そのシンボリックな活躍による広告塔という性格が強くなり始めており、彼らをそうした環境で「飼い殺し」にするよりも有効な運用をすべきだ、との判断がGGG追放命令として現れているのである。
 かつての教え子を追放した事で、多少は老け込むのではないかという無責任な憶測も流れたが、実際には却って若返ったかのようなバイタリティを発揮しつつある。座右の銘は「老いてはますます壮なるべし(後漢書・馬援伝)」
 なお長官の直属の上司ということで、長官不在時にはファイナルフュージョン、およびゴルディオンハンマー他、各種ハイパーツールの使用を承認する権限を有している。殆ど常時手にしているステッキは20年来の愛用品。
 声優は有馬瑞香さん。