木星

 太陽系第五惑星。
 太陽からの距離は約5.20天文単位(778330000km。天文単位とは地球と太陽の平均距離を距離単位としたもの)。赤道直径142984km、両極直径133708km、質量1.900e27kg。地球の318倍、現在発見されている太陽系内の全ての惑星の質量の2/3以上を占める質量を有する超巨大ガス惑星。天球においては太陽、月、金星に次ぐ明るさで古くから知られていた。赤い縞模様が特徴。その直径はガス性惑星がとり得るほぼ最大程度の大きさであり、木星が一説に「太陽になり損ねた星」と言われるのはここに由来する。しかし木星が恒星たろうとするには少なくとも現在の100倍以上の質量が必要である。またその自転周期はわずか10時間で、太陽系内の惑星では最も速く、特徴的な縞模様の形成に一役買っていると思われる。
 その組成は90%余りが水素であり、10%余りのヘリウム、その他微量のメタン、水、アンモニアと岩石からなると推測されている(これは太陽系が形成された原初の太陽星雲の組成と近似している)。分厚い大気層は水素とヘリウム等からなるが、ここでは高速の風が吹いており風は緯度方向に沿ったいくつかの帯状の領域内に閉じ込められている。隣あう帯域同士で風は逆方向に吹き、帯域間の境界で複雑に渦を巻いている。この最も大きな例が大赤班であり、17世紀、カッシーニ、あるいはロバート・フックによって発見されたとされている。短軸12000km、長軸25000km、地球がまるまる2個入る巨大さを有する大赤班は赤外線観測と回転方向からその雲の頂点が周囲より高い、高圧の領域であることが分かっているが、こうした高圧領域が、長期間維持される原因は不明である。これらの帯域間の化学組成や温度の微弱な相違が、大気中に含まれる硫黄化合物などの微量物質の化学反応と共に木星表面の特徴的な色の帯の原因となっていると考えられている。特に明るい色の帯をゾーン、暗い帯をベルトと呼ぶ。
 大気を構成する水素やヘリウムは内層に向かうにつれ圧力によって液体化し、地球の10〜15倍の質量を持つと言われる中心核表面では、400万気圧という苛酷な環境下で液体金属状態となった水素が層をなしている。この液体金属水素は荷電した陽子と電子によって構成された電気誘導体であり、木星の磁場の元になっていると考えられている。水素が荷電した陽子と電子に分離しているこの状態は、正に太陽の内部とほぼ同様の状態であるが、その温度は華氏20000度程度である。ケルビン=ヘルムホルツ機構と呼ばれる惑星の緩慢な重力圧縮によって発生するこの高温は、深層部の液体層で対流を生じさせ、木星表面の雲の複雑な動きの原因となっているとみられているが、太陽のような核融合反応を引き起こす程の高温を得ることはできない。しかし一方で木星は太陽から受けているよりも多くのエネルギィを宇宙に放出している。最大650000000km、土星軌道をも飲み込む木星の磁気圏は地球のそれと比較しても、質的には類似していても、遥かに巨大で強力である。高レベルのエネルギィを持つ粒子がその磁場に捉えられ、充満しているこの空間は宇宙探査機や、我々人間を含めた生物にとって想像以上に過酷な環境であるといえるだろう。
 その過酷な環境下に木星は数多くの衛星を従えている。1610年、ガリレオ・ガリレイによる観測で4つの衛星(イオエウロパガニメデカリスト。これらを特にガリレオ衛星と呼ぶ)が発見された。これは宇宙において地球以外の物体が運動の中心となった最初の発見であり、コペルニクスによる地動説の根拠の一つとなった。ガリレイもまた公式に地動説を支持したために宗教裁判にかけられ、終生を獄中で過ごすこととなったのは有名である。その後衛星の発見が続き(特に1999年以降、観測技術の発達によって多くの衛星が発見された。しかしその多くは直径10km以下のごく小さなものである)、現在までに計79個の衛星が確認されている(ただし、そのうち7個は観測期間が短かったり、現在は見失われてしまったり等の理由で、正式に衛星とは認められていない)。比較的よく知られている衛星は16個で、以下はその一覧(順番は木星から近い順)である。

 この中でも特にメティス、アドラステアは木星の環の内側を公転している。イオ、エウロパ、ガニメデは木星および相互の潮汐力によって1:2:4の共鳴軌道に固定されており、これらのガリレオ衛星の潮汐力は木星の自転速度を徐々に減少させると同時に、衛星自身の軌道をも変化させ、木星から遠ざかりつつあるが、イオ、エウロパ、ガニメデの軌道はほぼ同一の変化を見せている。カリストもほぼこの系の一部となっており、数百年後には共鳴軌道に固定され、ちょうどガニメデの2倍、イオの8倍の周期で公転するようになると考えられている。加えてエウロパは水を比較的豊富に有することから、その表面に生命が存在する可能性が指摘されている。最も外縁を公転する4つの衛星は楕円軌道を有する逆行衛星で、公転方向が木星の自転方向とは逆になっている。惑星が太陽を中心とした回転ガス円盤の中から形成されたように、衛星も惑星周辺のガスから生まれたとするならば、公転の向きは全て同一となる筈である。これら逆行惑星群は彗星や小惑星のような楕円軌道を有し、公転面の傾きも大きいことから、別のところで生まれた天体がたまたま接近したことで木星の重力に捕まり、衛星となったと考えられている。また木星には土星と同様に岩石や微細な粒子によって構成された薄い環を有しているが、土星のそれよりも遥かに小さいものである。地球からの観測では発見できず、ボイジャー1号の予備的な観測によって殆ど偶然に発見された経緯がある。土星の環よりアルベド値(光線反射率)が低く、暗く見えることも発見がされなかった一因である。木星の環の粒子は大気と磁気の牽引力のために、長時間その場に留まる事は出来ないため、環の中に軌道を持つ衛星(メティス、アドラステア)がその粒子を環に補給しているのではないかといわれている。
 命名はギリシア神話における神の中の王ゼウス(ローマ神話ではユピテル)に由来する。オリンポス十二神の一人にして、神々の家族および人類の守護者にして支配者である。雨、雷などの気象を支配する、神々と人間たちの父と考えられた。現在4年ごとに行われるオリンピック祭の起源はオリュンピアで彼の栄誉を祝福する大祭に求めることが出来る。
 ティターン神族のクロノスとレアの末子にあたり、ヘスティア、デメテルらの弟。我が子に玉座を奪われるという父ウラノスの予言を恐れたクロノスが生まれた子を次々と飲み込む中、妻レアが生まれたばかりのゼウスの代わりに産着に包んだ石をクロノスに差し出したためにゼウスは難を逃れたといわれている。その後、ゼウスはクロノスの目を遁れクレタのニンフに育てられた。成人したゼウスはクロノスに兄弟たちを吐き出させ、父への復讐を望む彼らを糾合してティターン神族と戦い、これに勝利してティターン神族をタルタロス(奈落。無限の暗闇)に投げ落とし、神々の王となった。ホメロスの記述に拠ればゼウスは弱者の守護神、正義と慈悲の神、断罪の神である。姉であるヘラを正妻として、戦争神アレス、青春の女神へべ、火の神ヘファイストス、出産の女神エイレイテュイアなど多くの子をなした。その一方で幾度もニンフや女神などと交わって子をなし、その不貞を妻から隠す為にあらゆる手段を尽くす好色な面がむしろ有名である。
 1994年夏のシュメーカー=レビー第9彗星衝突など、数多くの天文ショーの舞台となっている。
 その内部(決して正確な表現ではないが)には「滅びの力」とも言われる謎の無限エネルギィ「ザ・パワー」が存在しており、超竜神の保存・復活をはじめとして数々の奇跡を起こしている。これを求める機界31原種とそれを阻止せんとするGGGとの激しい戦いの舞台となった。
 機界新種殲滅後、この「ザ・パワー」の採取を目的とした木星開発計画が国連に提出され、審議が繰り返されている。
 火星ともども、SFの題材となることが多い惑星である。