物質復元装置

   ソール11遊星主を実行力とした三重連太陽系の恒星系復元システムの中枢。別名「再生マシン」。おそらくその構造さえ把握していれば、ありとあらゆる物質を分子レベルから忠実に再生復元、更には複製することができる。作り出された復元体、あるいは複製体は一律にレプリジンと呼ばれる。マモル少年、パピヨン・ノワールのレプリジンの例から、生物の記憶さえも同時に「複製」することが可能のようだ。なお、再生復元、複製には宇宙空間に遍在する暗黒物質が必要とされる。物質復元装置が完全な状態にある場合、システムは再生復元する物質を文字通り、「ありのままに」復元、複製する。たとえば「破損した物体」を復元しようとする時、物質復元装置はその物体を破損する以前の姿で再生復元する事も出来るが、再生時点を破損した後に設定して複製すれば「破損した物体」を、それこそ壊れかたまで忠実に再現できるのである。また過去に一度でも再生復元した事があれば、同じ物体を暗黒物質が存在する限りは、同時に何度でも再生復元、および複製することが可能である。まさしく物体の「転写」と言っても過言ではないだろう。換言すれば「超高精細蜜な機能を有する3Dプリンタ」である。
 しかし一方で、再生復元する際に「もう壊れないように」とその物体の強度を上げたり、別の物質で構築したりする事は出来ない。換言すれば、物質復元装置は無原則に物体を「創造」できるわけではなく、「過去に現実に存在していたもの」を忠実に再生復元させる事しか出来ないのだ。
 その任務、すなわち恒星系全体の完全なる複製を行うため、規模は極めて巨大である。無数のパーツキューブで構成されるそれは、恒星かと見紛う程のサイズと輝きを放っており、外敵を排除するための外層数万kmにおよぶレプリションフィールド、「原材料」となる暗黒物質を回収蓄積する暗黒物質プラント層、100km立方のコアキューブ、長径40m前後の楕円型コアルームという四層構造になっている。暗黒物質を莫大なエネルギィへと変換し、同時にあらゆる物質への変換を行うこれらのシステムの中枢がパスキューマシンである。地球をそのまま、地上に生きる全ての生物や周囲を周回する月や人工衛星などをも含めて「複製」できることから推測すると、能力こそ物質瞬間創世艦フツヌシと同様であるものの、そのポテンシャルは比較にならないほど高度である。これを破壊するには中心部であるコアルームとパスキューマシン、そして機能中枢であるピサ・ソールを同時に、かつ完全に破壊する必要があるが、外層数万qにおよぶレプリションフィールドが外敵の侵入を堅固に阻んでいる。また表面からは、物質再生波動が常時照射されており、照射範囲内における再生物質の損壊を瞬時に再生復元すると共に、再生物質を構造的に維持する役割も持っている。この波動は再生物質の中枢と連絡して、超時空的に供給されているために、三重連太陽系外においてもレプリジンの活動を保証しているが、基本照射範囲内でない場合、損壊の即時再生は不可能である。
 ソール11遊星主のひとり、ピサ・ソールはこれにフュージョンすることで物質復元装置の全ての機能を統括し、司っている。いわば、この物質復元装置とその管理者ピサ・ソールこそがソール11遊星主の中枢、本体であり、遊星主の莫大な戦力と無限の再生能力、そして本来の任務である恒星系の復元を保証するものなのだ。指導者的存在であるパルス・アベルや実働戦力としてパルパレーパピア・デケムなどはシステム全体から見れば枝葉末節に過ぎないのである。
 しかし、物質復元装置にも弱点やデメリットが存在しないわけではない。パスキューマシン単体、あるいはパスキューマシンやピサ・ソールを欠いた状態でも一応の「複製」は可能であるが、「複製」された物体の色素が低下する、生体物質(つまり生物)は不安定で即座に消失してしまう可能性があるなどのリスクがある。また一度に極めて大規模な再生復元を行うと、装置自体のエネルギィが不足するために、エネルギィチャージをかねて一時的に装置が機能低下してしまうという特性がある。この他、再生復元される物質は、「本来の状態」を忠実に再現するために、本来遊星主の陣営に属さない者を複製したとしても、それを遊星主の戦力として運用しようとするならば、機能的な改変や改造を加える必要が生じる。更には再生復元、複製された物質は物質復元装置から常時照射されている物質再生波動によってその構造を維持しているために、何らかの理由で波動の供給が絶たれた場合、その物質は構造を維持できずに暗黒物質へと還元してしまう、など運用上留意すべき点は多い。