ギャレオリア彗星

   8年前(1997年)に発見された新彗星。地球に非常に近い軌道を約8年かけて周回している。同年に飛来したギャレオンと何らかの関連性(或いはギャレオンそのものか)があると思われるが詳細は不明。ガイの初フライトはこの彗星の観測が主な目的であった。
   後に彗星自体が三重連太陽系と地球圏を結ぶ次元間ゲートである事がマモル少年の証言から判明している。彗星の尾のように見えるのは、通常空間との位相のズレから「こぼれた」ゲート内のエネルギィが光子化したものである。太陽の重力に引かれて帯を作っていたために、それが「彗星の尾」のように見えたことから彗星と誤認されていたのだが、それがこの彗星を一躍有名にした一つの原因でもあった。
 というのも、そもそも彗星の尾とは彗星の進行によって彗星から削れおちた欠片や塵、ではない。絶対零度の真空の宇宙空間では、彗星の進行をさえぎる物質は基本的に存在しない。空気による抵抗もないのだから、彗星の欠片や塵が削れおちて尾のように見える事などありえないのだ(万が一こぼれた欠片も彗星と同じ速度で進行を続けるだけである)。
 彗星の尾は、実はいつも観測できるわけではない。尾が地球から観測されるのは彗星が太陽から一定の距離まで接近している間だけである。それは尾の正体が、太陽風と呼ばれる太陽から放出されたエネルギィ流によって彗星表面から削り取られたり蒸発した塵やガス、イオン等だからである。つまり彗星の尾は、彗星の進行方向とは関係なく、彗星を中心として太陽と反対方向に伸びるものなのだ。つまり、ゲート内エネルギィが光子化して太陽の重力に引かれて落ちている、即ち太陽に向かって「尾」を伸ばしているように見えるギャレオリア彗星は、通常の彗星とは真逆の方向に「尾」の伸ばしている、非常に奇妙な彗星だった。その原理解明のために接近観測を試みたのが、ガイの乗るスピリッツ号だったのである。
 ちなみに彗星の尾にはまっすぐ伸びる青い尾と、幅の広い黄色い尾があり、前者はイオンやプラズマによるもので太陽の反対側にまっすぐ伸びる。後者は塵やガスによるもので、やや曲がって見える。黄色いのは太陽の光を反射しているためだと考えられている。両者は同時に観測できるときもある。
 次元ゲートたる内部を突破するには、高度な慣性制御技術や有形無形の衝撃から宇宙船とその乗員を保護するシールド技術が要求される。現在のところ地球圏でそれを可能にしているのは、レプトントラベラーを搭載した新型ディビジョンフリート、すなわちツクヨミヒルメタケハヤのみである。
 旧三重連太陽系宙域における攻防の最終局面では、暗黒物質の回収を急ぐパルス・アベルによって無数のギャレオリア彗星が地球圏に出現し、暗黒物質吸入の影響と、放出されるエネルギィの干渉によって、地球はもとより太陽系に甚大な被害をもたらした。