数列の極限の例 : トピック一覧

1. 1/n→0 (n→∞)  →証明

2.  n
n 
→1 (n→∞)  →証明  

3. an→α (n→∞) のとき、(a1+a2+…+an)/n →α (n→∞)
           →証明
4. 任意の定数aに対して、an/n! →0 (n→∞)  →証明

5.  任意の実数α>1、任意の自然数kに対して、
    an/nk → +∞ (n→∞)  
    ax/xk → +∞ (x→∞)  
    →証明

数列の収束・極限
総目次



 1/n→0  ( n→∞ )


   数列収束・極限値の定義より、
     an =1/n→0 (n→∞)   
   とは、すなわち、 { an }={ 1, 1/2, 1/3, 1/4,…, 1/n ,… } について、
     任意の(どんな小さな)正の実数εに対して(でも)、
     ある(十分大きな)自然数Nをとると、
        | an −0 | = | 1/n −0 | <ε ( nN ) ※
     が成り立つ
   ということ。
   したがって、以下、
   任意の正の実数εに対して※式を満たす NNが存在することを示す。
   | an −0 | = | 1/n −0 | = 1/n (nは自然数なので常に正)なので、 
     ※式⇔ 1/n <ε ( nN ) 
   したがって、1/N<εを満たすN、すなわち、N>1/εが、※式を満たすNN。 
   では、
   正の実数εをどこまでも小さくしていっても、このようなNNは存在するのだろうか。
    アルキメデスの原理により、NN上に有界ではない。
    ゆえに、1/N<εの右辺に対して、どんなに小さな正のεがあたえられようとも、
           これよりも小さく左辺1/Nをしてしまう、
           大きなNは存在するのである。
    あるいは、N>1/εの右辺に対して、どんなに小さな正のεが与えられ、
                     右辺1/εがどんなに大きくなろうとも、
           これを左辺から凌駕する大きなNは存在するのである。
   ∴任意の正の実数εに対して※式を満たすNNは存在し、an = 1/n →0 (n→∞)

[黒田『微分積分学』§2.5.2例2.7(p.43);笠原『微分積分学』1.2例1(p.10-11);吹田・新保『理工系の微分積分学』1章§2(I)(p.6) ]


 

トピック一覧:数列の収束・極限
総目次

 n1/n → 1 ( n→∞ ) 


  n
n 
→1 (n→∞) の証明 

<設定>

  n
n 
 =1+hn  とおく。 …(1)

ここで、

  n
n 
 ≧ 1 より、hn ≧ 0  …(2) 
              

<準備作業>

 n = (1+hn )n    ∵(1)より 
  ≧ 1 + n hn + n (n-1) hn2 /2   
         ∵(2)より、定理「a>0ならば、各nNに対して (1+a)n≧1+na+n(n-1)a2/2」
                  を適用できる。→証明 
   > n (n-1) hn2 /2   ∵(2)より 1 + n hn≧1 
   以上をまとめると、つまり、
    nn (n-1) hn2 /2   
    1>(n-1) hn2 /2   (両辺をn≧1で割った)
    2>(n-1) hn2     (両辺に2をかけた)
  ∴ n≧2では、 hn2 < 2/(n-1) 

n≧2では、0 ≦ hn < 
2/(n-1)     ∵(2) 

 (1)より  hn =  n
n  −1 なので

 ゆえにn≧2の全てのnについて、

 0 ≦  n
n  −1<

2/(n-1)  …(3)
    が成立する。

<本題>

 数列収束・極限値の定義より、

  n
n 
→1 (n→∞) 
        
   とは、すなわち、

{ an } = { 1 ,  

2
,
3
 ,
4
4
 , …  について、

     任意の(どんな小さな)正の実数εに対して(でも)、
     ある(十分大きな)自然数Nをとると、
         nN ならば、

  | an −1| = |  n
n 
  −1 | < ε    
     が成り立つ
   ということ。

   任意の正の実数εに対して※式を満たす NN が存在することを示す。
    (3)から、n≧2の全てのnについて、

※式左辺が 
2/(n-1)    を超えることはありえない。

ゆえに、nN   
2/(n-1)    < ε となるとき、 ※式成立。

したがって、
2/(n-1)    < ε を満たすような NN 、すなわち、>1+2/ε2が※式を満たす NN
     
   では、正の実数εをどこまでも小さくしていっても、このような NN は存在するのだろうか。
    アルキメデスの原理により、 NN上に有界ではない。
    ゆえに、>1+2/ε2の右辺に対して、どんなに小さな正のεがあたえられ、
           1+2/ε2がどこまでも大きくなったとしても、
           左辺からこれを凌駕する大きなNは存在する。
     ∴任意の正の実数εに対して※式を満たす NN は存在し、


n
n 
→1 (n→∞) 


  [吹田・新保『理工系の微分積分学』1章§2(I)例1(p.6);細井『はじめて学ぶイプシロン・デルタ』 3章演習問題3(p.25)]


トピック一覧:数列の収束・極限
総目次

 an→α(n→∞)のとき、 (a1+a2+…+an)/n →α (n→∞)

 an→α (n→∞) のとき、

  bn=(a1+a2+…+an)/n (nN)によって定義される{ bn }が、
  bn→α (n→∞)

 を満たすことの証明。

【準備】
  ・an→α( n→∞ )であるので、
    任意の(どんな小さな)正の実数εに対して(でも)、
    ある(十分大きな)自然数Nをとると、
    
| ak −α|<ε/2 (k>N)              …(1)
    が成り立つ。         (∵数列の収束の定義
  ・「(1)を満たすN」よりも大きなnについて、

 bn−α ≦ 
 n 
 
N
Σ
k=1
 ak−α +  
 n 
 
n
Σ
k=N+1
 ak−α  …(2)

       なぜなら、

 bn−α  = 
 n 
 
n
Σ
k=1
ak  −α
   ∵bn=(a1+a2+…+an)/n 


     = 
 n 
 
n
Σ
k=1
ak − 
 n 
 nα  


     = 
 n 
 (
n
Σ
k=1
ak − nα  )
  ∵分配則

               ( a1+a2+…+an nα )/n
              = ( a1−α+a2−α+…+anα )/n  
                  ∵ − nαを、n個の−αにバラした上で、a1の後ろ、a2の後ろ、…、anの後ろに分散配置。

      = 
 n 
 
n
Σ
k=1
(ak−α)
  

     
      ≦ 
 n 
 
n
Σ
k=1
ak−α   ∵ 絶対値の性質 |x+y|≦|x|+|y|  


        = 
 n 
 
N
Σ
k=1
 ak−α +  
 n 
 
n
Σ
k=N+1
 ak−α  

 ・「(1)を満たすN」よりも大きなnについて、


 
 n 
 
n
Σ
k=N+1
 ak−α < 
 n 
 (nN) 
ε
 2 
   ∵ (1)


             < 
ε
 2 
   (∵ 0<(nN)/n<1 )   …(3) 

【本題】

   数列収束・極限値の定義より、
    
bn→α  ( n→∞ )
   とは、すなわち、 
     任意の(どんな小さな)正の実数εに対して(でも)、
     ある(十分大きな)自然数N1をとると、
        | bn −α|<ε ( nN1 ) ※
     が成り立つ
   ということ。
   任意の正の実数εに対して※式を満たすNNが存在することを示す。
   (2)より、「(1)を満たすN」よりも大きなnについて、

 bn−α ≦ 
 n 
 
N
Σ
k=1
 ak−α +  
 n 
 
n
Σ
k=N+1
 ak−α  
             
   となっている。

   (3)より、「(1)を満たすN」よりも大きなnについて、


(2)式右辺第二項 
 n 
 
n
Σ
k=N+1
 ak−α < 
ε
 2 
 となっているので、 


 (2)式右辺第一項 
 n 
 
N
Σ
k=1
 ak−α < 
ε
 2 
 であるとき、 左辺 bn −α <ε は満たされることになる。  

   ゆえに、N1N

 N1 
 
N
Σ
k=1
 ak−α < 
ε
 2 
  ※式成立。  


   では、正の実数εをどこまでも小さくしていっても、


 N1 
 
N
Σ
k=1
 ak−α < 
ε
 2 
   …(4) 

   を満たすN1は存在するのだろうか。


(4)から、 
2
 ε 
 
N
Σ
k=1
 ak−α <    N1 
  

   アルキメデスの原理により、NN上に有界ではない。

ゆえに、 
2
 ε 
 
N
Σ
k=1
 ak−α <    N1 
 の左辺に対して、どんなに小さな正のεがあたえられ、 

   2/εがどこまでも大きくなったとしても、
   右辺からこれを凌駕する大きなNは存在する。

   ∴任意の正の実数εに対して※式を満たすNNは存在し、bn→α ( n→∞ ) 

【文献】
  和達『微分積分p.12;
  吹田・新保『理工系の微分積分学』1章§2(I)例2(pp.6-7);
  高木『解析概論p.9;
  細井『はじめて学ぶイプシロン・デルタ』定理5.6(pp.46-8)



トピック一覧:数列の収束・極限
総目次

 任意の定数aに対して、an/n! → 0 (n→∞) 

   an/n! →0 (n→∞)
   ※指数関数のマクローリン展開の証明に使われる。

 直感的に把握するために、ざっと状況を読むと…
     cn= ann!とする。
      cn= { an−1(n―1)! }×(a/n)=cn−1×a/n なので、
       |cn|=|cn−1|×|a/n|=|cn1|×|a|/ n  ∵絶対値の性質 
        n→∞では、|a|/n→0  ∵1/n→0
      これなら、|cn|→0でしょう。

(証明) [高木・押切『解析I・微分p.18。]  [笠原『微分積分学』1.2問1-ii(p.16)]
  
  cn= ann!とする。
  n→∞に至る途中のどこかで、自然数nは「定数a絶対値の2倍」をこえる。
  この「定数a絶対値の2倍」をこえた最初の自然数をNと置こう。
 すなわち、N≧2|a|   …@ 

 n≧ Nを満たす自然数nについて、 


|cn| = 
|a|n
|a|N  ・
  |a|n-N     ∵絶対値の性質

n! N! (N+1)(N+2)…(n-1)n
     
 
  ≦ 
|a|N
|a|n-N  =
  |a|N   ・ (   |a|  ) n-N 

N! Nn-N N!N    ∵(N+1)(N+2)…(n-1)n≧Nn-N と分子が小さくなっているため。
 
 
  ≦ 
  |a|N   ・ ( 1 ) n-N 

N!2           ∵@より  |a|N ≦1/2  

 以上から      
 
 0 ≦ |cn| ≦  
  |a|N   ・ ( 1 ) n-N 

N!2         

 n→∞で、最右辺→0となるので、いわゆる「はさみうちの原理」から、
  |cn| →0 (n→∞)  
  ∴ cn= an/n! →0 (n→∞)  


トピック一覧:数列の収束・極限
総目次





5.  α>1である限りで任意の実数α、任意の自然数kに対して、 
    an/nk →+∞(n→+∞)
 ※利用例:以下の事項の証明。
    an/xk →+∞(x→+∞)

       
(証明) 小平邦彦『解析入門I』を参照。 

トピック一覧:数列の収束・極限
総目次

(reference)

高木斉・押切源一『解析I・微分』共立出版株式会社、1995年。
小平邦彦『解析入門I』 (軽装版)岩波書店、2003年 pp. -。
和達三樹『理工系の数学入門コース1:微分積分』岩波書店、1988年、p.12.
吹田・新保『理工系の微分積分学』学術図書出版社、1987年。p.6.
高木貞治『解析概論改訂第3版』岩波書店、1983年、p.9。