芭蕉と歩く 伊賀・大和路

先に、私は芭蕉のあとを追って、3年かけて「奥の細道」を歩いてきました。これが無事に終了し、さて次はどこを歩こうかと考えていました。私の「奥の細道歩き旅」の最後に芭蕉の故郷である伊賀上野を訪問し、芭蕉ゆかりの場所を巡っているうちに、もう少し芭蕉と一緒に旅を続けてみたいなという気持が強くなってきました。

芭蕉には「野ざらし紀行」という作品があります。この作品は江戸から東海道を経て故郷の伊賀上野に至り、そこから大和、京、近江など畿内を巡りながら、最後は中山道、甲州街道を通って江戸に戻るという長大な旅を素材とした紀行文です。作品自体は大変短いもので、歩いた道筋などにはほとんどふれていないのですが、本文に書かれているポイントをつなぎ合わせてみると大体次のようなコースで歩いています。

@貞享元年(1684)八月、江戸を出発し、東海道、伊勢街道を経て伊勢に至る
A伊勢より故郷伊賀上野に帰郷、母の墓参りをすませた後、畿内行脚の旅に出る
B伊賀上野より、この旅の同行者「ちり」の古里、竹の内に行き、当麻寺を訪れる
C竹の内から吉野山に行き、西行庵などを訪れる
D吉野山から奈良、山城を経て近江路に入り、不破の関から大垣へ
E大垣から桑名、熱田を経て名古屋へ
F名古屋から再び故郷の伊賀上野へ。故郷で年を越したあと再び畿内行脚の旅に出る
G伊賀上野より笠置山を越えて奈良へ。そのあと京都伏見、琵琶湖東岸、鈴鹿峠を越えて桑名へ
H名古屋から中山道に向かい、木曽を経て下諏訪より甲州街道に入り江戸に戻る

私の旅としては、とりあえず東海道、中山道、甲州街道の分は飛ばして、二度にわたる畿内行脚の旅をできるだけ本文に記してある順番で歩いてみたいと思っています。とはいっても、私には畿内地域の土地勘がないので、具体的なコース設定は、「歩いて旅した野ざらし紀行」(関俊一著、和泉書院 昭和57年発行)によることにしました。この著者は、「歩いて旅した奥の細道」「歩いて旅した笈の小文」などの作品もあり、芭蕉の旅に大変造詣の深い方です。
というわけで、今回は「野ざらし紀行歩き旅 畿内行脚」として伊賀上野を出発し、伊賀、大和路を歩き始めました。これまで、私は奈良北部の奈良市、平城京跡、法隆寺のある斑鳩方面などは行ったことがありますが、今回のように奈良県南部を歩くのはまったく初めてです。花々が一斉に咲き始める4月中旬という時期を選び、ワクワクしながらのスタートとなりました。
                                 (2008.年4月 尺取虫 記)

参考 「野ざらし紀行」原文  野ざらし紀行(一) (江戸から伊勢参宮の旅)     
                  野ざらし紀行(二) (故郷伊賀上野から畿内行脚の旅)
                  野ざらし紀行(三)
 (ふたたび畿内行脚ののち甲斐をへて江戸へ)

野ざらし紀行歩き旅 畿内行脚 行程表

順番 月日 コース 距離
@ 2008年
4月17日
伊賀上野、故郷塚など〜名張街道(国道368号線)〜名張 約20Km
A 4月18日 名張〜室生寺、大野寺〜伊勢街道、初瀬街道(国道165号線)〜榛原駅 約30Km
B 4月19日 榛原駅〜長谷寺〜桜井〜今井町〜高田市駅 約30Km
C 4月20日 高田市駅〜当麻寺〜竹内、綿弓塚〜御所市〜巨勢寺跡〜下市口駅 約30km
D 4月21日 下市口駅〜吉野神宮〜金峰山寺〜奥の千本、西行庵〜如意輪寺〜吉野駅 約25Km
E 4月22日 大和上市駅〜新鹿路トンネル〜談山神社〜聖林寺〜桜井駅 約22Km
F 4月23日 桜井駅〜金屋石仏〜(山辺の道)〜大神神社〜長岳寺〜石上神社〜天理駅 約20Km
G 4月24日 天理駅〜和邇下神社〜帯解寺〜奈良、興福寺、国立博物館、東大寺〜奈良駅 約15Km
番外 4月25日 橿原神宮駅〜甘樫丘〜高松塚古墳〜橘寺〜石舞台古墳〜岡寺(バス)〜橿原神宮駅 約10Km
H 9月23日 奈良〜般若寺〜木津川・泉大橋〜井手の玉川〜宇治 約29Km
I 9月24日 宇治・平等院〜黄檗〜醍醐寺〜大津〜義仲寺 約23Km
J 9月25日 膳所〜幻住庵〜瀬田〜草津〜野洲 約24Km
K 9月26日 (朝鮮人街道1)野洲〜近江八幡〜安土〜能登川 約23Km
L 9月27日 (朝鮮人街道2)能登川〜彦根〜鳥居本〜番場〜醒ヶ井 約32Km
M 9月28日 醒ヶ井〜柏原〜関ヶ原〜垂井〜美濃赤坂 約26Km