弥勒堂(鎌倉時代・重文)
三間四方コケラ葺のこの堂は興福寺の伝法院を受け継いだものと伝えている。内部には本尊の弥勒菩薩立像(重文)と脇壇には釈迦如来座像(国宝)が安置されている

室生寺金堂(平安初期・国宝
正面、側面ともに五間の単層寄棟造りコケラ葺き。内陣には一木造りの釈迦如来立像(国宝)を中心に向かって右側に薬師如来像、地蔵菩薩像(平安初期、重文)、左側に文殊菩薩像(平安初期、重文)、十一面観音像(平安初期、国宝)の各像が並ぶ

咲き始めたシャクナゲの花

五重塔説明(パンフレットより)
高さ16.1メートルと、屋外に建つ五重塔では最小のもの。勾配がゆるく軒の出の深い桧皮葺の屋根は、朱塗りの柱や白壁と心地よい対照を保つ。平安時代初頭の建立といわれ、室生山中最古の建築である。この塔は相輪が珍しく、九輪の上に普通なら水煙なのに、これは宝瓶を載せて宝鐸を吊りめぐらして天蓋を作ってあることなど他に類がない塔である。平成10年、台風により大きな損傷を受けたが、平成12年に修復、落慶した。

室生寺五重塔(平安時代初期・国宝)

奥の院・御影堂
方三間の単層宝形造、厚板段葺で、頂上に石造りの露盤が置かれているのが珍しく、他に類を見ない建物である

奥の院への石段
原生林に囲まれた胸突きの石段はかなり長く、きびしい登りである

県道28号線の様子
室生川は宇陀川の支流で、県道28号線はこの川に沿っている。時折観光のマイカーなどが通る静かな道だ

室生川と室生寺付近の県道
室生寺の門前町として県道に沿って土産物屋などが続く

今日は、名張から榛原(はいばら)まで歩く。国道165号線(伊勢街道、初瀬街道)をまっすぐに行けばよいのだが、途中、室生寺に立ち寄る予定である。室生寺は街道から6Km近く離れているが、私は室生寺には行ったことがないので、本日のコースのメインであり省略するわけにはいかない。


名張から室生寺へ

名張のホテルを出発したのは8時頃だった。今日はあいにく朝から雨が降っている。天気予報でも一日雨なので、はじめから雨合羽を着用してのスタートとなった。ホテルには連泊の予定なので、軽装で歩くことができる。
昨日の県道分岐点まで戻り、先を続ける。少し先で名張川を渡り、やがて県道は国道165号線と合流する。ここから先はこの国道を歩くことになる。しばらく行くと道の左側に宇陀川が現れ、国道と並行して流れるようになる。やがて山間の道となり、、近鉄大阪線の線路も近づいてくる。名張駅前のホテルを出発してから約1時間半ほどで三重県と奈良県の県境に達する。

大野寺から国道165号線を歩いて榛原(はいばら)まで

大野寺を出たのが15時過ぎ。天候と時間によってはここから近鉄の室生口大野駅に出てホテルに戻ろうかとも思っていたのだが、雨もやんだし時間もまだ早いので予定通り榛原まで国道を歩くことにする。大野寺から国道に戻り、国道を歩き始める。歩いているうちにまた雨が降り出した。今日は一日このような天気である。国道をひたすら歩き、榛原駅に着いたのは17時頃だった。

芭蕉と歩く 伊賀・大和路

名張から室生寺を経て榛原へ

潅頂堂(本堂・鎌倉時代・国宝)は修復工事中だったので、脇の石段を登って五重塔に向かう。石段の途中から見上げる五重塔はなかなか絵になる。これで石段の脇のシャクナゲが咲いていたら最高だったのだが、まだ咲いていなかった。少し下のほうでは咲き始めていたので、近日中には咲き始めるのだろうがちょっと残念だった。写真で見ると建物の大きさはわからないのだが、実際に見ると建物自体は割合小さいものだという感じがした。

五重塔から奥の院・御影堂に向かう。原生林に囲まれた胸突きの石段は長く、かなりきびしいものである。途中何回か休みながら、ようようのことで頂上の御影堂(鎌倉時代、重文)に到達した。ここには舞台造りの位牌堂と弘法大師四十二歳の像が安置されている。

境内の大きな枝垂れ桜
境内は広くはないが、二本の大きな枝垂れ桜があり、ちょうど満開で見事だった

大野寺山門
宇陀川沿いの県道の脇に建っている。門の下に入山料200円の張り紙があり、箱が置いてある

三重県と奈良県の県境
ここから奈良県宇陀市になる。国道165号線と宇陀川が並行し、近くに近鉄大阪線の電車も走る、山間の道である

名張大橋より名張川上流方向を望む
県道80号線の名張大橋の少し上流で宇陀川が名張川と合流する

やがて街道沿いに宇陀市三本松の集落が現れ、しばらく続いたあと山間の峠道になる。集落の中には旧道も残っているようだが、私はそのまま国道を進んだ。峠道をしばらく歩くと、国道は室生大橋で宇陀川を渡る。国道はまっすぐに榛原方面に進むが、室生寺に行くにはこの橋の先で左に曲がり、室生川に沿って約6Kmほど遡らなければならない。私の本日の旅のメインは室生寺訪問なので、ここは左に曲がり室生寺に向かう。

国道の室生大橋
この橋の少し先で左に曲がり室生寺に向かう

街道沿いの古い家(三本松)
三本松集落の街道沿いには古い造りの家も見られ、古い街道の面影を残している

国道を左に曲がると少し先で道は変形四差路になる。そのまままっすぐ行くと室生ダム方面、左に曲がって室生路橋を渡ると室生寺方面、左斜めにバックする道は大野寺を経て近鉄室生口大野駅方面への道である。オレンジ色の室生路橋を渡ると道は山道になる。この道は県道28号線で、近鉄の室生口大野駅から室生寺までのバスも走っている。

室生寺方面へ向かう県道28号線
宇陀川に架かる室生路橋を渡ると道は登り道となる。近鉄の室生口大野駅から室生寺に向かうバスもこの道を通る

室生路橋付近の様子
室生寺へは左の室生路橋を渡る。大野寺へは左斜めにバックする方向に進む

東海自然歩道を歩いて室生寺へ

県道をしばらく歩いてゆくと、一の渡橋があり、その橋を渡ったところに東海自然歩道の大きな案内板が立っている。ここから室生寺までハイキングコースの東海自然歩道が通じているのだ。このまま県道を進んでいってもよいし、ここからこの東海自然歩道を進んでいってもよい。雨もほとんどやんできたのでここから東海自然歩道ルートを行くことにした。自然歩道に入ると沢沿いの道になる。

東海自然歩道登り口付近の様子
始めのうち自然歩道は沢に沿って進んでゆく

東海自然歩道案内板の立つ辺り
小さな川を越えたところに東海自然歩道の案内板と道標が立っている
道標には室生寺まで4.8Kmとある

自然歩道はよく整備されており歩きやすいが、このところ雨が続いているため道が沢の一部となったような箇所もあった。やがて沢の音が遠くなり、道は峠の頂上に出る。峠を越えると下のほうによく手入れされた公園が見える。さらに下ってゆくと谷あいに室生の集落が見えてきた。この辺りは標高が高いせいか道沿いには桜の花がかなり咲き残っていた。私が山のほうから下りてくるのを見て、里の人が「お疲れ様でした」と声をかけてくれた。そういえば、ここまで誰にも会わなかった。

東海自然歩道より室生の里方面を望む
自然歩道はしだいに明るい下り道になり、やがて谷あいに室生の集落が見えてくる
途中の道沿いには桜が咲いており目を楽しませてくれた

東海自然歩道、峠の頂上付近
自然歩道の入口から峠の頂上まで約1時間ほどの登り道で、あとは下り一方である

室生寺(むろうじ)

室生の里に着くと土産物屋や食堂などが並んでいる。時計を見ると12:30、ちょうどよいので近くの食堂で昼食にする。腹ごしらえもでき、元気に室生寺の見学を始める。
室生川に架かる太鼓橋を渡ると室生寺の境内となる。橋を渡ったすぐのところに表門があり、「女人高野室生寺」の大きな石標が立っている。表門は閉まっていて入れないので、川に沿った参道を少し進むと仁王門があり、この前で拝観料を払い中に入る。室生寺は山深い場所にあるが、ここまでの道路はよく整備され、マイカーでもよいし近鉄駅からのバスの便もあるので、雨天にもかかわらず結構参詣者は多い。まだ桜も咲いているし、シャクナゲの花も一部咲き始めている。観光にはちょうどよい季節なのだ。

室生寺縁起(パンフレットより抜粋)
奥深い山と渓谷に囲まれた室生の地は、古くから神々のいます聖地と仰がれていた。やがて、奈良時代の末期、皇太子山部親王(後の桓武天皇)の病気平癒の祈願が興福寺の僧によってなされ、これに卓効があったことから、勅命により創建されたのが室生寺である。以来、室生寺は山林修行の道場として、また法相、真言、天台など、各宗兼学の寺院として独特の仏教文化を形成するとともに、平安前期を中心とした数多くの仏教美術を継承した。
そのほか厳しく女人を禁制した高野山に対し、女人の済度をもはかる真言道場として女性の参詣を許したことから「女人高野」と親しまれている。

仁王門の少し先にある石段を登ってゆくと平安時代初期に作られた国宝の金堂が建っている。内部には本尊の釈迦如来像(国宝)、十一面観音菩薩像(国宝)などが安置されている。また、すぐ近くには重要文化財の弥勒堂が建っている。内部には本尊の弥勒菩薩像(重文)、釈迦如来像(国宝)が安置されている。国宝、重文クラスのオンパレードである。

室生寺への入口、仁王門
この門の前で拝観料を払い寺内に入る
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8:00〜17:00.。拝観料600円

室生寺表門
室生川に架かる太鼓橋を渡るとすぐ前に表門があり、「女人高野室生寺」の大きな石標が建っている

室生寺から県道を歩いて大野寺へ

室生寺の見学を終わって帰途に着いたのは13:30頃だった。帰路は室生川沿いの県道を行くことにする。室生川に沿って土産物屋などがしばらく続くが、やがてそれも途絶え静かな道になる。雨はまだ降ったりやんだりである。なだらかな下り道なので快調に歩く。途中で1回、室生口大野駅行きのバスに追い抜かれた。バスは1時間に1本くらい出ているが、抜かれたのはこの1回だけだった。1時間くらい歩いて東海道自然歩道の入口に着いた。ここからは往きと同じ道を通って国道方面に向かう。

大野寺磨崖仏

室生路橋を渡ってそのまままっすぐに行けば国道に出るが、右に曲がって宇陀川沿いに少し行くと大野寺がある。県道の脇に小さな山門があり、中に入ると大きな枝垂桜が見える。広い境内ではないが二本の大きな枝垂桜があり、ちょうど満開の時期で見事に咲いていた。
境内から宇陀川対岸を見ると、緑に囲まれて大きな磨崖仏が彫られているのが見える。高さ14mほど崖を掘りくぼめたところに弥勒菩薩像が線刻してあるのだが、光の加減で肉眼でははっきりとは確認できなかった。この磨崖仏は承元年間(1207)彫られたといわれ、国の史跡に指定されている。

史跡 大野寺石仏
宇陀川の対岸に彫られた磨崖仏。崖を掘りくぼめたところに弥勒菩薩像が線刻されている。高さ14mと大きなものだが、菩薩の姿はわかりにくい