EHN 2010年1月15日
 FDAのBPAへの見解に変化
子どもの健康に”多少の懸念”があると発表

by Marla Cone

情報源:Environmental Health News, Jan 15, 2010
FDA shifts stance on BPA, announces "some concern" about children's health s
By Marla Cone, Editor in Chief, Environmental Health News
http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/news/fda-shifts-stance-on-bpa

訳:安間 武(>化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2010年1月18日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/ehn_100115_FDA_BPA.html


 米FDAが金曜日(15日)に、ビスフェノールAの子どもの健康への影響について”多少の懸念(some concern)”があり、この化学物質の規制をもたらすかもしれない重要な疑問に答えるための新たな研究を立ち上げようとしていると発表したことは、大きな変化である。

 この発表は、この議論あるエストロゲン様化学物質について、基本的には連邦政府規制機関(FDAのこと)が連邦政府の科学者に従うことを意味する。

 FDA長官マーガレット・ハンバーグは、FDAは米国国家毒性計画(NTP)の結論を受け入れたと述べたが、このNTPの結論は2年前に、BPAに暴露した幼児や子どもの発達障害や生殖障害に”多少の懸念(some concern)”があるとする科学的レビューの後に発表されたものである。

 ポリカーボネート・プラスチックの成分であるBPAは、今日産業で最も広く使用されている合成化学物質のひとつである。それは哺乳ビンやシッピーカップや、食品や幼児用粉ミルクが入っている缶のライニングから漏れ出すことがあり得る。

 ハンバーグは、FDAはこの点についてはBPAを禁止したり制限したり、又は消費者がBPAを含む製品の購入をやめることを勧めるものではないと述べた

 しかし、FDA は可能性ある影響についての疑問に対する答えが得られ、”もし適切ならもう一度速やかに動けるよう”この化学物質のしっかりした監視をすることになるであろうと彼女は答えた。彼女はFDAはいくつかの製造者がBPA製品を市場から撤去し、缶内部ライニングの代替を探そうとする試みを支持すると述べた。

 米保健社会福祉省の副長官ウイリアム・コールは実験室の動物は”微妙な影響”を示し、我々はもっとよく調べる必要があるという懸念を提起したと述べた。彼はBPAは危険であると証明されたわけではないが、FDAがもっとよく調べる価値があると述べた。

 金曜日の発表は、2008年にはドラフト報告書の中でBPAは安全であると結論付けていたのだから、FDAにとって大きな変化である。その当時FDAは、動物実験には不備があり、人間の赤ちゃんが危険であるという証拠がないと主張するプラスチック産業界に同意していた。

 FDA の副長官ジョシュア・シャルフスタイン博士は、BPAを含むボトルや缶の使用をやめるよう両親に助言するものではないと強調した。しかし、彼らは、人々は利用可能なら代替品を使用し、擦り切れたりひびの入っている容器は捨て、BPAの漏洩を引き起こすボトルの熱湯又は高熱に曝すことを避けるよう勧告した。

 環境団体はし、FDAの当初の決定は科学的に論外であると述べて、FDAのこの変化を歓迎した。しかし彼らは、金曜日の発表では消費者を保護することは出来ないであろうと述べた。

 ”我々は、BPAが容器の添加物として認められるような規制の枠組みの徹底的な見直しが必要であるとするFDAの評価に同意する。しかし、我々は、今日の発表は公衆の健康を十分に保護するものではないと懸念しており、消費者に混乱するメッセージを伝えるものである”と乳がん基金(Breast Cancer Fund)のシャノン・コフリンは述べた。

 天然資源防衛協議会(NRDC)のスタッフ科学者サラ・ジャンセンは”わずかのことであり、遅すぎる”と述べた。

 ”もっと多くの研究というのはいつでもよい考えであるが、我々は既に行動するのに十分なことを知っており、BPAについて何かをなすべき時は既に来ている”と彼女はブログに書いた。

 化学産業は金曜日にFDAの動きを批判して、”勧告のあるものは消費者を不安にするように見え、十分な根拠がない”と述べた。

 この発表は、”食品接触製品中のBPAへの暴露は子どもや成人に有害であることを証明したものではないことを確認”するものであるとし、さらに”最近この研究の見直しを行った世界中の規制当局はBPAの安全性を支持する結論に達している”とアメリカ化学工業協会はその声明の中で述べた。

 それにも関わらず、多くの研究が低容量BPAに暴露させた実験動物に様々な有害影響を見出している。さらにヒトでの初めての最大規模のBPA研究によれば、2008年に科学者らはより高いレベルで暴露した人々は心臓血管系障害と糖尿病を起こしやすいと報告した。

 約2年前、国立健康研究所(NIH)の一部門である米国国家毒性計画(NTP)は、約500の研究をレビューした後、BPAはほとんど全ての人間の体内で見出される低容量で動物を損なうので、胎児、赤ちゃん、子どもが危険であるという”多少の懸念(some concern)”があると結論付けた。

 動物の胎仔又は新生仔が暴露すると、BPAは”行動と脳、前立腺、乳腺、メスが成熟する年齢に変化を引き起こすことが出来る”とNTPの報告書は述べた。

 ”これらの研究は発達への有害影響について限られた証拠を提供するものであり、それらのヒト健康への影響をよりよく理解するためにもっと多くの研究が必要である”と同報告書は述べている。”しかし、これらの影響は人間が経験するのと同じようなBPA暴露レベルで起きるので、ビスフェノールAがヒトの発達に影響を与える可能性は無視することは出来ない”。

 FDAは安全性の懸念はないとしたので、この報告書は二つの連邦機関の間に見解の不一致を引き起こした。

 ハンバーグは、FDAの当初の決定は”標準的テスト手法”に基づいていたが、NTP報告書が発表された後、新政権下のFDAはこの問題に立ち戻り、もっと新しい研究を調べ、科学者らの意見を求めたと述べた。独立諮問委員会は、FDAはBPAが安全であると結論付けたときに、動物テストからの重要な科学的証拠を無視していたとFDAに告げた。

 その結果、ハンバーグはFDAは考えを変えて、今は”多少の懸念(some concern)を正当化するに足る十分な証拠があるというNPTの見解を共有する”と述べた。彼女は”BPAに関する我々の安全評価は現在、進行中である”と述べた。

 連邦政府は、BPAの安全性についての疑問に答えるために今後18〜24ヶ月にわたる研究に3,000万ドル(約27億円)を約束した。

 国立環境健康科学研究所(NIEHS)及び米国国家毒性計画(NTP)の長官リンダ・バーンバウムは、彼女の連邦機関は、”出来るだけ多く、出来るだけ速く学び、出来るだけ速やかにその情報を共有する”ことを計画していると述べた。

 BPAの健康影響研究における主導的専門家であるミズーリ大学の生物学者フレデリック・ボンサールは、FDAの立場の変化は前進する重要な第一歩であると述べた。しかし彼は、最近の研究はこの化学物質は禁止されるべきとする多くの証拠を提供していると付け加えた。

 ”我々は、彼らが2年前には認めなかった危険性を示す大量の新しい科学に対応できるかどうか、見ることになるであろう。彼らは、幼児だけでなく大人が使用する製品に含まれるBPAの使用を制限するために早急に動くべきである”と彼は述べた。

 FDAはこの化学物質を1960年代にまで戻る食品添加物の法規制の下に規制している。

 現在、産業はこの化学物質を食品と飲料容器で使用する時にFDAに届け出る必要はない。もしFDAがそれを規制することを選択するなら、製造者らはその使用をFDAに届け出なくてはならず、FDAは勧告又は要求を出すことが出来る。

 ダイアン・ファインスタイン上院議員(民主党−カリフォルニア州)によって提出された法案は、赤ちゃん用ボトル及び再使用可能な食品容器でのBPAの使用を禁止するもので、BPAを含む缶には警告表示をすることを求めている。

 この化学物質は約50年間ポリカーボネート・プラスチック中の成分として使われてきた。多くの赤ちゃん用ボトルとスポーツ飲料ボトルの製造者らは消費者の要求に対応してBPAを含んだ製品の製造をやめた。

 FDAの勧告についての更なる情報:http://www.hhs.gov/safety/bpa/


訳注:厚労省のビスフェノールAの安全性に関する資料
訳注:BPA関連情報


化学物質問題市民研究会
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