双眼望遠鏡 APM/LZOS 130/f6 BINO その2

新型EMSユニット

 公開:2010年2月1日 〜
更新:2012年3月9日
*BINO Checkerに追記 を追加しました。

 

なぜ銀ミラーなのか     -- 2009年10月15日 記 --

  どうやら松本さんには、新型EMS の考想があるらしい。最新の技術を駆使したミラーでEMS を組むとどうなるのか大変興味があったので、新型EMS に採用してみては、と話を持ちかけたのがきっかけであった。23の反射率の改善では、それ程差は出ないのではないか、という意見もあったが、それでも実際に是非試してみたいところだ。そこで、まず私が、データ上、最高の反射率を誇っている某メーカーの誘電多層膜ミラーを調達し、松本さんは、ImDIYgoの池田さんから銀ミラーを入手し、いざ、誘電多層膜ミラー、銀ミラー、そして従来のアルミ増反射ミラーの比較対決をする事となった。誘電多層膜ミラーは、製作したメーカーによると、銀ミラーより反射率は高い、という話であった。

 さて結果は?
何と銀ミラーの圧勝であった
報告12)。それも、鏡1枚、普通に反射させて見ただけで、これ程像が違うのか、と誰が見ても驚く位の差であった。結局、銀ミラーは、青色から赤色まで、全ての波長を均一に高率に反射しているのが、大きな要因のようだ。特に、長波長域での差は10%以上に及び、なる程、赤外線望遠鏡に採用されている訳だ。どうも反射率98%等と謳っているものは、最も良かった測定値のピークを言っているのであって、各波長の平均値をとれば、随分値は違ってくると思う。検査規格を決めていただきたいところだ。

 さて、銀ミラーは耐久性の問題があり、過去に使われなくなった経緯がある。いくら良くても23年で劣化するようでは問題だ。温泉に近い所で観望したら、ミラーが真っ黒になってしまったのでは泣くに泣けない。しかし、これ程差が出るのであれば、消耗品のようにミラーだけ交換しても、と思う位の素晴らしさである。いろいろ調べてみると、マウナケアの「すばる」の副鏡は銀ミラーを採用しているのがわかり、問い合わせてみると、2年経過した今でも何も問題が起きていない、との事。また、ImDIYgo の池田さんの調達した銀ミラーは、既に耐久性の問題もクリアしているというではないか。こうなったら、作らない手はない。池田さんは、その後、過酷な耐久テストを行い、実用に全く問題が無い事を証明して下さった。

  

1ミラーの大型化

 一見して、ハウジングが大型化しているのがわかる。これは1ミラーが大型化し、鏡筒の光束がもれなく接眼部へ送り込まれるためで、見るからに頼もしい。

 

ハウジング内の迷光対策

 接続バレル内周には遮光シートが貼ってある。どんな塗料、表面架工も、これには遠く及ばない。明るい像が、コントラスト、シャープネスを増し、クッキリ、ハッキリ。

 

比較してみた 〜新時代の到来〜

 さて、届いた新型EMS。さっそく交換し見てみた。思わず口に出たのが「えらいこっちゃ」。昼間の地上風景を散策したが、その間、ずっと頭の中は、「えらいこっちゃ、えらいこっちゃ」。何と言っても、像の鮮度が違うのだ。とにかくvivid 一段と明るく、シャープさが増している。

 夕闇に包まれてきた。左側に従来型EMS、右側に新型EMS を取り付け、冷静に比較してみた。いつも光学系の像をチェックしている高圧線・鉄塔のガイシだが、従来型EMSだと、もう黒いシルエットになっているが、新型EMS だと、何とガイシに街の明かりが反射して、ガイシの質感が伝わってくる。街灯や、マンションの電球などを見ると、ガラスの質感が1枚ベールを脱いだようにクリアにシャープに見えている。冷静に比較、等と書いたが、実はすぐに頭は興奮状態。いや〜、これは一種の革命だ!

 晴れた日を狙って(これがまた実に少ない)、星空で比較してみた。都会の空ではメジャー天体ばかりになるが、M13や、M31 では、中心の星の密度が違う。中心の砂状のツブツブ感が増し、周辺の星がより多く見えている。M57 では、輪がよりはっきり見えた。M45 や二重星団では、一つ一つの星の点が針を刺すようにくっきりし、見えてくる星の数が違っている。木星は、帯の模様がより豊富に見えてた。M42/43 は、ガスがより広がり、これからが楽しみだ。

 どうやら、銀ミラーは、少なくとも口径一段アップ、高度500m(?)アップの効果があるようだ。という事は、ニュートンの鏡を銀にしたらどうなるのであろうか。今まで見えなかった色が見えてくるかも??

  

謝辞 (200910月)

 私にとって、この1年間は10年以上、と思える位、濃密で激動の1年であった。このような素晴らしい銀ミラーを見つけて下さった池田さん、そして新型EMS ユニットとして形にして下さった松本さんのお陰で、素晴らしい世界に浸っている。どうもありがとうございました!
 

 第2回双望会にて、鏡筒のチェック

  

 銀ミラー1年 (2010年11月)

 新型EMS が銀ミラーになって、1年少々が経過した。ミラーはピカピカで、いささかの曇りも無い。私はフィルターも外しているので、いつもはブロワーで埃を吹き飛ばし、たまにクリーニング・クロスで清拭する事もあるが、傷も付いていない。傷を恐れるより、汚れを放置しておく方が、かってミラーには良くないのではないか、とも思うが、このあたりは個人の清拭の手技で大きく変わってくると思うので、難しいところでもある。

  上記した通り、この新型EMS を覗いて驚愕し、そしてすぐに思った。じゃあ、反射望遠鏡を銀ミラーにしたら、どうなるのだろう。望遠鏡は、たった2枚の鏡。この主鏡が銀になったら、どんなに凄いことになるのだろう。少なくとも、ひとクラス上の口径の明るさが得られるし、ひょっとしたら、反射望遠鏡でも、同口径の屈折のような、コントラストの良い像が得られるのでは? オリオン大星雲は色が付いて見えるのだろうか? そして、もしこれが双眼になったら....!!  
 
 それを
ORION で実行した。詳細は、“銀ミラー化” を読んでいただきたい。反射式が屈折に負ける大きな要因の一つは、反射率の不均一さにあったのではないだろうか。従来のアルミ・ミラーでは、赤色と青色が削り取られる。2回反射では、なおさらだ。銀ミラーは、このフィルターを取り除いた豊かな色の諧調の世界であり、屈折に肉薄する世界を提供してくれる。ORION ドブは、鏡筒14.5s、架台13sだが、もし30cm屈折なら運搬不可能だし、1350mmなどという焦点距離も不可能、価格も想像を絶する。 これは、一種の革命、大進歩なのではないだろうか。

 しかし、まだ、銀ミラーの再蒸着には課題が残っているし、ガラス基板に起因する反射率のムラ、そして、いつも外気に思いっきりさらされているニュートンの場合の耐久性は、未知数のところがある。これから、技術も進み、いずれは、当たり前のように銀 ミラーの時代が来るのかもしれない。


     

あらゆる点で、バランスが取れているBino (2010年12月)

EMS 装着角度の位置は、ここしか無い。シンメトリカルに保つのが大切だ。時々チェックしてベストなコンディションを保とう。
   

 わが愛機、APM 130mm/f6 Bino は、あらゆる点で、最もバランスが取れていると思う。大口径には、大口径でしか見えない世界はあるのだが、口径130mmの屈折で見えないか、というとそうでもない。確かに迫力の点では負けてしまう が、周辺のピン・ポイントの星像のなかにぽっかり浮かぶ淡い星雲、銀河も、実に魅力的だ。ORION 300mm/F4.5 ドブは銀ミラーとなり、ますます凄いのだが、どちらか1台を持って来なさい、と言われたら、迷わずAPM-Bino を選ぶ。114中野さんも、同じく迷わず屈折双眼114を選ぶという。これ以上口径が大きくなると、温度順応に時間がかかってくる。このBino は空にあまり影響されず、いつもすぐに良像を届けてくれる。やっぱり、生涯を友とするBino だなあ。

  

調整

 双望会で気づいたが、しばらく離れていると、Bino の光軸が合っていない。光軸は調整済みなので、目幅とピントだけ合わせていただければ良いのだが、これでは本当に良い像で見ていただいたのか、心配になる。
 「もし興味があってご覧になりたい方は、本当に遠慮なく声を掛けて下さい。そして、是非、良い状態で見て下さい。」

 

ハンドル

 Bino の操作ハンドルには、重心のバランスをとるため錘が付いていた。しかし、耳軸を程良い摩擦に保っていると、アイピースを交換しても、全く支障が無く観望が楽しめる。ハンドルは固定とし、錘は外した。結果的に操作ハンドルの剛性が上がり、快適に空を流せるようになった。

  

運搬

 運搬は、プチプチを8重に折ったのを後部座席に敷き、その上にダウン・ジャケットを被せて終了。その上には双眼鏡などが載る。レンズ・フードを縮めるとコンパクトになり、隣に人が乗れる。 重さは22sあるが、持った時のバランスが良いので、普通に運べ、架台に載せられる。

  

Starmap PRO*現在は、SkySafariを使っています。

 以前はSkyScout を使う場合もあったが徐々に頻度が減り、Starmap Pro という、iPhone 系のソフトが登場してから、もう電池も入れなくなってしまった。もはや、携帯電話で天体導入をする時代、いや、最強のソフトが携帯にインストールできる、というべきか。何とも凄い時代だ。

  Starmap PRO概略は、この動画を参照 すると良い。utoさんの掲示板には、2010年11〜12月に大変有益な書き込み、トリヴィアが満載。また、tacchiさんが、ブログで使い方をまとめている。

 さらに、
DSS Browser と組み合わせると、さらに便利。電波が届く限り、どのような天体も表示できる(ダウンロードしておけば、いつでも表示可能)。 これも、tacchiさんが、ブログで使い方をまとめている。また、写真の内容については、大森さんがブログで紹介している。どれも大変参考になるので、是非ご一読を。

 

スーパー・ナビゲーター

 導入にはスーパー・ナビゲーターを併用しているが(*現在は、使用していません)、電池は006P で、一晩で使い切ってしまう。コストはばかにならないが、ネットでリチウムイオン充電池を見つけた。ニッケル水素充電池は電圧が低すぎるか高すぎるし、今まで録音で幾度も散々な目に遭ってきたので、全く使う気になれなかった。リチウムイオンという事でさっそく購入したが、電圧がフル・充電で8.3Vしかない。スーパー・ナビゲーターに使ってみたが、3〜4時間が限度。しかし、スーパー・ナビゲーターは数時間すると導入誤差が大きくなってくるので、ここで交換して一休憩するのも良いかもしれない。まだ使い始めたばかりだが、乾電池2個分なので、すぐに元が取れると思う。
 重さは、乾電池44g に対し、わずか半分の22g しかない。

 

レーザー・ポインターは右側へ移動した

 右側の台座はSkyscout を装着できるようにしていたが、これを装着して使う事は無くなったので、レザー・ポインターを右側へ移動した(写真最下)。このレーザー・ポインターは冷えるとレーザーが発光されない。出番はあまりないが、場合によってはホッカイロ等を着けてやる必要があるのが難点だ。

 

レンズ・クリーニング (2011年6月)

 オーストラリアから、無事機材が戻ってきた。さっそく組み直してみたが、 双眼の光軸の再現性は完璧で、全く狂いは無かった。シンプルなフレームなのに強度は抜群で、惚れ直してしまう。どうもEMS の光軸については、妙な誤解があるような気がしてならない。光軸の調整は、眼を離して上下、左右を合わせるだけで誰でもできる簡単なものだし、覗く人が代わった場合には、眼幅とピント調節をすればOK(光軸は合っていれば、再調整の必要無し)、双眼鏡と何ら変らない。低倍のアイピースなら、アイピースを交換しても、光軸のノブに触る必要も無い。そのまま素直に使えばよいのだが、どうも面倒に考える人が事を面倒にしているのではなかろうか。

 光軸は良いのだが、レンズの汚れが目立ってきた。ちょうど、右側の鏡筒の対物レンズ・セルが、鏡筒から緩んできたようだったので、外してクリーニングした。外し方は、まず、フードにある3本の六角ネジを外す。フードを外すと、レンズ・セルが出てくる。レンズ・セルは、鏡筒にネジ込んであるだけなので、これを慎重に外す(入れる時も同様に慎重に)。ここが緩んでいた場所だったが、使っていく内に、ネジは必ず緩んでくるものなので、定期的なメンテナンスは大切だ。

  

 このレンズは、コーティングの性質なのか、拭きムラがとても目立つ。クリーニング液や無水エタノールを使っても同様で、慎重に拭き上げる必要がある。 ただし、望遠鏡の場合は、通常のカメラのレンズのようにハード・コートをしていないので(面精度が桁違いに精密)、表面は脆弱だ。クリーニングを深追いし、擦り過ぎてコーティングが剥げないように注意しなければならない。そういえば、このBino の鏡筒をどれにするか検討している時、望遠鏡の修理・メンテナンスをしている人から、TOA はコーティングが弱い、という話を聞いた。真偽の程は不明だが、どの望遠鏡でも慎重なクリーニングは必要だ。鏡筒内は、恐ろしく丁寧なバフリングがなされている。これもコントラストの良さに貢献しているはずだ。


APM のsiteより

 クリーニングして、再度組み上げる。実にスッキリして、誠に気持ちが良い!

  

等倍ドット・ファインダー(2011年6月)

 オーストラリアでは、High Lander で使っているSky Surfer III が活躍したが、ORION で付けたTeleVue のスター・ビームをこのBino に移植してみた。台座には入らないので、またしても削った。レーザー・ポインターは、再び左側へ。等倍ファインダーは、もっと早く装着すべきだったのだが、今まで伸びに伸びてしまった。ただし、近日中に他の等倍ファインダーを導入する予定で、兼用はしないつもりである(その都度、光軸を合わせるのは面倒)。

 ちなみに、久しぶりに総重量を測ってみた。付属品一式装着して23.6sだった。鏡筒のバランスが良いので、今の所は難なく持ち上げ、取り扱っている。

 *追記 (2011年7月30日)

結局、この等倍ドット・ファインダーは、この望遠鏡専用となった。ORION には、Baader Planetarium Sky Surfer V を装着した。

  

光軸調整 (2011年12月4日)

 オーストラリア遠征から戻ってから、徐々に左側の鏡筒の見え方がおかしくなってきた。明らかに 鏡筒単体の光軸が狂っているようだ。しばらくObsession にかかりっきりで手付かずだったが、これからの季節は、このBino もしくはHigh Lander の季節だ。まして、来週の土曜(12月10日)は、皆既月食。久々に、空の良い所で見ておきたい。赤い月の周りに沢山の星々が見えると、神秘さが全く別次元だ。

 手持ちの光軸調整アイピースは反射用なので、屈折用に笠井のものを購入した。当然だが、接眼部のもろもろを外し、直に光軸調整アイピースを挿入。チェックしてみたら、右側の鏡筒はバッチリ合っているが、左側の方は、5時方向にずれていた。対物レンズ・セルを回転させても光軸は変化しない。また、接眼側の筒を回転させても光軸は変化しない。つまり、レンズ・セル自体が鏡筒と平行になっていない事を意味している。

  
*
笠井の光軸調整アイピースは、太い 1 1/4インチ・アダプターは6個あるが、入ったのは1個だけだった。

 レンズ・セルを回して外すと、これを受ける側のフランジがある。これは、写真のように3本のネジで固定されている。このネジを緩めたり締めたりしてみたが、光軸に変化は無い。単なる固定だけのようだ。いろいろやってみたのだが改善しなかったので、最終手段、5mm四方の紙をフランジ側の “ここだ” という位置に貼り、鏡筒とのスペーサーにしてみた。何と一発で光軸がバッチリ合ってしまった! このBino を手にした当初、自分で紙を使って鏡筒の光軸調整をした経験が役立った。最終チェックは、もちろん星像。模範的なディフラクション・リングが両側とも見えている。もう気流は悪く、高倍率はダメだけれど、低倍で見る双眼屈折は、やはり素晴らしい!! まるで、「ご主人さま、私をお忘れになってはいませんか?」と言わんばかりに見事な像を展開する。

 よく言われている事だけれど、望遠鏡を生かすも殺すも光軸である。「見えない。」と評価を下す前に、きちんと光軸が合っているかどうか、再確認が必要だ。
 

     *2011年12月11日追記

 

 Hubble Optics から、Artificial Star を購入した。解説は、こちらを参照の事。チェックしてみたら、鏡筒は両側とも惚れ惚れする位、きれいな同心円を幾重にも重ねていた。実に気持ちが良い。

  

双眼望遠鏡での皆既月食は物凄い! (2011年12月11日)


自宅(横浜)屋上で撮影。天体写真は絶対撮らないぞ、と意地を張っているが、一応三脚を立てて撮ってみた。というのも、冬空オールスターズがバックの皆既月食ですから。
中央にオリオン座、月の右下がヒアデス、右上がプレアデス。実際にはもっと良く写っているが、縮小して掲載すると、随分情報が減るもんだ。
天体写真はど素人だし、手抜きなので、こんな写真でご勘弁を。

 12月10日(土)は、皆既月食、久々の好条件。しっかり見るのは2000年7月、富士山・新五合目以来だ。皆既月食そのものは、晴れていればどこでも見れるけれど、皆既の時、満天の星空に赤銅色の月が輝くと、荘厳さは全く別次元だ。だから暗い空の方が断然良い。今回は週末、また、予報では天城高原は快晴、という事もあって、遠征を予定していた。しかし 直前の予報では、どうも曇りそうな気配。さんざん迷ったが、結局安全策をとり、自宅観望となった。双眼望遠鏡を手にして始めての皆既月食だったので、気合は入っていたのだが...

 空が明るいので、皆既月食での満天の星空は望めない。しかし、屋上に、このBino High Lander EMS対空双眼鏡を並べて観望した。当初、快晴。しかし、8時半を過ぎて半影食が始まる頃から薄雲に覆われてきた。これでは明るさの変化がわからない。しばらく様子見。ところが、部分食が始まる頃から、スキッと雲が消えていった。 月の明るさは、明らかに落ちている。満月を望遠鏡で見ても、眩しいだけでのっぺりとしていて面白くないが、部分食が始まってくると、俄然おもしろくなってくる。双眼望遠鏡で見ると、立体感が徐々に増してくるのだ。食もだいぶ進んで行くと、徐々に月が赤みを帯びてくる。すると、今まで見えなかった星が急に見え出してくる。月は星に囲まれ、実に不思議な光景だ。月は赤銅色で、立体的な球体。その影の右側から、星が昇ってくる! 皆既月食でもあり、掩蔽(星食)でもある。こんな微細な星が月から顔をだしてくるなんて、この時しか見れない。しばらくすると、また星が顔を出してきた。皆既日食の時は血が逆流するが、双眼望遠鏡で見る皆既月食は、同じように大興奮だ。満天の星空でないけれど、双眼望遠鏡の威力がしっかり補ってくれた。

 High Lander もシャープな像を届けてくれたが、意外な程、絶景だったのが、EMS対空双眼鏡。月とその周囲の星のバランスが絶妙! とにかくうっとりする程美しい。超広角である事と、三脚固定で天頂も見やすい事が、絶大な効果を発揮していた。手持ちの双眼鏡では、全く望めない世界だ。という訳で、家族で3台をとっかえひっかえ飽きずに楽しんだ。


携帯でコリメート撮影

 長女が、携帯を この望遠鏡のアイピースにくっつけて撮り出した。何と実に良く写っているではないか。まねしてiPhone で撮ってみたが、なかなか難しい。結局、彼女の写真がベストだった。その写真がこれ。携帯電話で手持ちコリメート撮影、何とも凄い時代になったものだ。再び月が明るさを取り戻し、星が姿を消して行く。結局、ほぼ最後まで見届けた。

 それにしても、双眼望遠鏡、EMS対空双眼鏡の皆既月食は凄い! 本当に美しい..... あらためて、製作者の松本さんに感謝!
次は3年後、2014年。楽しみだ。

 

SkySafari 3 + NEXUS導入! (2012年2月5日)

 現時点で、最強かつ理想的な導入装置が稼動を始めた。詳細は、こちらへ。

  

Bino Checkerでチェックしてみました (2012年3月3日)

 Bino Checkerが発売された。詳細はこちらに書いてあるが、やはり実際に見てみないと、今一実感がつかめない。人間の眼は片目だけ上下方向へは動かせないので垂直方向の光軸調整は容易だが、水平方向は輻輳が働くので、至近距離や無限遠を交互に見ていたりすると、いつの間にか、水平方向の光軸調整ノブが定位置からずれた位置で見ている場合もある。という訳で、実際に手にしてチェックしてみる事にした。

 
*1 1/4アイピース・ホルダーのアイピース固定ネジの位置が左右異なっていますが、これは突貫撮影のためで、ふだんはきちんと左右統一された位置で使用しています。
光軸の再現性の点から、アイピース固定ネジを常時左右対称の位置にしておくのは、大切な事です。

 原理は、十字線入りアイピースが同じ条件で左右の望遠鏡に挿入され、その像の違いをチェックする、というもの。 アイピースは、焦点距離20mm、見掛け視界41°、との事。このBinoの場合、39倍、実視野1.05°、射出瞳径3.3mmとなる。

 アイピースの十字線は正確にセンターが出ている訳ではないので、ただ挿入しただけでは、左右の像のズレなのか、十字線のズレなのかは判断できない。Bino Checkerのプレートに、アイピースが正確に同位置に挿入・固定できるミソがある(アイピースの手前のノッチが、左右どちらも手前にあるのに注意)。

 まず、Bino Checkerの眼幅を指定・調整する*。私の場合は64mm。これがそのままBinoに入れば、Binoの眼幅が正確に合っている事になる。Binoの幅が自分の眼幅より広い場合は見えないので、その心配はほとんど無いが、少々狭くなっている場合は、輻輳で水平方向の光軸を合わせて見ている可能性がある。
 ただし、ピント位置が左右違うとアイピース挿入口の距離が広がってしまいBino Checkerが入らないので、まず、アイピースだけ片方ずつ挿入して左右のピントを合わせた後(覗く目は、左右どちらかに統一。普通は自然と効き目になる)、入れるようにすると良いようだ。

 *2012年3月9日 追記

 この方法だと、双眼望遠鏡とBino Checkerの眼幅が正確に一致していない場合、Bino Checkerが装着された時にアイピースを受けるスリーヴが若干傾いてしまい(内側に狭くなるか、外側に広がる)、見かけ上、光軸のズレや像の倒れ込み等を起こしてしまう可能性がある事がわかった。従って、眼幅指定ネジを緩めた状態でBino Checkerを装着し、眼幅が目的の数値になるように双眼望遠鏡の眼幅調整をするようにするのが良いようだ。
 また、アイピースの太さが眼幅と同等位の場合、眼幅が少しだけ狭い場合には、同様にアイピースを受けるスリーヴが若干外側に傾き、光軸が正確に出ていない可能性も考えられたので、注意!

 無限遠の天体でチェックするのが理想だが、日周運動があるので、アイピースをすばやく交換してチェックしないと、ターゲットが動いてしまい、何をチェックしているかわからなくなってしまう。また、アイピースの交換の時には、望遠鏡が動かないように慎重に行わなければならない。という訳で、まず、いつも光学系のチェックに使っている700m先の鉄塔で試してみた。

 目標の目印を左右とも十字線に合わせてチェックすれば良いのだが、それは無限遠の場合。700m先の鉄塔などの場合には、左右の鏡筒の目標は、鏡筒の幅の分だけ広げなければならない。すなわち、左側の鏡筒で、鉄塔の角に十字線を合わせた場合、右側の鏡筒は、その角より鏡筒の幅の分だけ右側に移動した点が目標となる。

 チェックしてみて驚いたのは、少しだけ内側に斜位があった事だ。従来の「アイピースから眼を離して、左右の像の光軸を合わせる」方法で調整した後、Bino Checkerでチェックしてみたら、少し水平方向にズレがあった。以前は真っ直ぐだったと思うのだが、加齢で変ってきたのか、輻輳傾向か出てきたのか(最近、望遠鏡から離れていたので、“覗こう”と して、輻輳気味に覗いたのか?)、また後日、チェックし直してみよう、と思う。

 このBinoは、以前、フレームの光軸調整とEMS倒れ込み調整をしっかりやったせいか、それ以外には問題は無かった。ちなみに、水平方向の光軸ノブを90°位回して見てみると、像が大幅にずれているのに驚いた。しかし、人間の眼は水平方向への調整能力は抜群なので、それでも輻輳して見る事ができる。その意味でも、客観的な調整器具として、このBino Checkerは極めて有用だ。

 収納は、プチプチの袋へ入れ、さらに国際光器のおまけで付いてきたポーチへ入れた。ちなみに、EMS対空双眼鏡のチェックはこちらへ。こちらは、 像の倒れ込みが認められ、要調整となった。

  
 
 
   続く.....!

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