2009.5  於衆議院議員会館、石破事務所
 石破 茂 衆議院議員 
≪インタビュー≫  聞き手・蛭田有一
政治家になる前に田中角栄事務所で働いたそうですが、田中氏はどんな人物でしたか。
あの人は人間じゃないですよ。魔神だね、魔神。あの人に匹敵するような
存在感のある人を、私は一人も見たことがないですね。
とにかくいるだけで凄い存在感でしたね。前に立っただけで足が震える。
私はその後、渡辺美智雄先生や竹下登先生、いろんな方に御指導いた
だいたが、角さんみたいに人間とは思えない人はいませんでしたね。
当時、角栄氏から直接、政治について学んだことは。
いやそれはない。末端事務員でしたからね。私がいよいよ選挙に出るた
め地元に帰るときに挨拶に行ったら、「お前なんか単なる27歳の政治好
きのあんちゃんにしか過ぎん。お前より立派なやつは一杯いる。にも拘ら
ずお前が選挙に出られるのは、お父さんの名前のお陰で1億8千万円安
く上がるからだ。それだけのことだ。
そう言われて悔しかったら今すぐ鳥取へ帰って、一日に戸別訪問4百回、
街頭演説3万回やれと。そうすれば選挙区が見えてくる。そういうことが
できて初めて一人前だ」と。
こういうことを二代目みんなに言っていたらしいです。
私はそうだなと思って言われた通りにやりましたけど、最初の選挙は、
56.534票だったですよ。歩いた家は5万4千軒でした。歩いた家の数
しか票は出ないとも言っていましたね。』
実際にそうだったわけですね。
実際にそうだった。選挙のノウハウというのは小手先のものじゃなくて、
そういうものなんですね。
どんなに立派な演説をしても、そんなもん票にならんと。実際に会って、
手を握って、手をついて頼んで初めて一票だということを、それは徹底し
ていましたね。
今も石破さんはそういうやり方が一番いいと。
そう思います。若い人たちにもそう言っています。立派なことを言う前に
歩け、歩いた家の数しか票は出ないと。
高く評価している政治家はいますか。
私は亡くなった方や自分が接したことのない人の評価はしないことにして
います.
直接いろんなことを教わったのは田中角栄先生であり、渡辺美智雄先
生であり、竹下登先生ですが、やはり竹下登という人の気遣いは文句な
しに素晴らしいと思いましたね。
竹下先生の怒鳴ったのを見たことがない。でも底知れぬ怖さっていうの
はいつも感じていましたね。
我々が陳情団を角栄さんの目白亭に連れて行くじゃないですか。
そうするともう朝7時からずっと、門前市をなして、大体短くて30分、
長ければ2時間待ってはじめて会える。
だけども竹下さんの場合は、必ず時間通りに会える。それはもう秘書が
全部時間調整をやっているんですね。待たせちゃいかんと。
その時はもう総理をお辞めになっていたけども、竹下派のオーナーとして
海部内閣や宮沢内閣、政権奪還を果たした村山社会党首班内閣なんぞ
というのを作ったりと、竹下さんが絶対の力を持っていた頃ですよ。
ですけども必ず時間通りに会える。それで5分と言われても必ず10分会
ってくれる。それも秘書が時間調整しているんですね。
こんなに長く会ってくれえ、帰るときに「引き止めて済まなかった」と。
竹下さんと写真でも撮っていくかと必ず言う。そりゃぁ行った人は5分と言
われていたのに10分も会えて最後は引き止めて済まなかったと言われ
て大感激しますよ。これは凄いと思いましたね。
それを石破さんも実行しているんですか。
なるべくするようにしていますけど。竹下さんがお亡くなりになって7回
忌に、島根に竹下記念館が完成して、私たちゆかりの者が行きました。
パーティが小学校の講堂で開かれたんですが真夏の最中で、冷房して
いても暑かった。
テーブルの上を見るとウーロン茶とか置いてあるわけですよ。
やっぱり竹下さんがいないとこういうもんだと、冷たいビールは出てこない
んだと。竹下さんだったらここで冷たいビールを出すよなとか誰だかブツ
ブツ言ってんの。
それでは乾杯に移りますという言葉とともにテーブルの下からクールボッ
クスが出てきて、キンキンに冷えたビールが配られたんです。
やっぱり竹下さんが亡くなっても、その教えは生きているんだなと思った
んですけどね。
消費税なんてみんなが嫌がるものを自分の内閣と引き換えに成立させた
っていうのは凄いなって思います。
小泉さん、福田さん、麻生さんと3人の総理に仕えて、やっぱり総理にな
る人っていうのは、それぞれ偉いなとしみじみ感じましたね。
福田さんも話していて楽しかったですよね。麻生さんもそう、一国の総理
になる人はみんな凄いねって思います。
石破家は四代つづくクリスチャンですね。
母方ですがね。
信仰は政治家・石破 茂にどんな影響を与えていますか。
それはすごくあると思いますよ。
例えば自民党の政策の中で、クリスチャンとして矛盾を感じたことはありますか。
政策的にはそうはありません。
それじゃクリスチャンのくせして何故靖国に参拝した、もちろん閣僚になっ
てからは行きませんが、一体あれはなんだとかね。山本七平流に言えば
日本教キリスト派みたいなものかも知れませんね。
ギリギリつめれば矛盾するところも一杯出てくるだろうと思います。ただ
お天道様は見てござると言うけれども、例えば人をどんなにごまかしても、
神様だけは絶対にごまかすことはできないわけですよね。
自分がやっていることがどんなに拍手喝采されても、すべて見透かして
おられる絶対の神なるものにそれがどう見えるのか、ということをいつも
自問自答しています。
我々は一日何回か祈りますが、その時に神様の御用のためにどうぞお
用い下さいと、あなたの目からご覧になって誤っていることはどうぞ正し
ないんですよね。
自分がやっていることは多分間違いは沢山あるだろうといつも思っている、
そういうことなんだろうと思います。
常に初心を維持するには必要なことだと。
そうだと思いますね。それでも自信過剰とか思い上がりみたいなことは一
杯あるでしょうけどね。うん、あると思いますよ。
私は四代目ということもあるし、ものごころつく前からキリスト教的環境の
中で育ったので、そういう神聖なるものが世の中にないと思っている人の
気持ちがよく分からない。
そういう恐ろしい考えができることが信じられない。仏様でもいいんです。
八百万の神でもなんでもいいんだけれども、人間を超えた絶対のものが
あるということを信じない人が多いですよね。
逆に私から言わせると、そういう気持ちがよく分からないところはあります。
石場さんが掲げる自民党改革の中で、政治を官僚から取り戻すと言って
いますが、そのためにどうすべきと思いますか
官僚をどんなに怒鳴っても変わりません。政治家が変わらなければ官僚
は変わらないのです。
だから霞が関改革は官僚組織をいじることではなくて、政治家が変わるこ
とだと思います。
官僚の武器は法律ですから、こっちがその法律を何も知らなきゃ向こうが
強いに決まっているし、官僚組織を使えるはずがない。
無知でも官僚組織を使おうと思えば、おだてて遣うか、脅して遣うか或い
は、昔であれば政治家が大臣になると、課長以上にお仕立券つきのワイ
シャツを配ったりしたわけです。
だから私は政治家が明確な国家ビジョンを持っていて、それを実現する
ための法律や予算についての知識があることが大事だと思っています。
そうすれば官僚も変わるけれど、単に俺は大臣だ、偉いんだみたいなこと
を言っていると、それは面従腹背になるに決まっている。
主党が官僚主導政治を打破するには政権交代しかないと言っていますが。
なにも政権交代しなくてもできますよ、そんなことは。
今まで変えられなかったのにこれから出来るわけがないと民主党は主張していますが。
ウン、それは官僚組織との間に妙な貸し借りがあればそうなっちゃうでしょうね。
つまり癒着ということ。
癒着っていうかな、先生これやってください、その代わり先生の地元でこ
んな事業に予算付けますから、業界にも口きいてパーテー券買わせます
からとか、そういう関係があればそうなっちゃいますけど、今の自民党には
そういうことに全く関係ない代議士も一杯いるわけですね。
今まで、お金のある人がトップになることもありましたが、例えば小泉さん
や福田さんはそんなにお金持ちでもないですよ。
麻生さんはお金持ちであるけれども、官僚組織を使ってお金を作ったわけ
じゃないですよね。
もう官僚組織に依存して票も金もという自民党ではないと思っている。
だから国民に政権交代しなくても、官僚主導政治じゃない政治が作れる
ということを見せなきゃいけない。
国民は自民党はひどいと思っているけど、民主党に対する不安もすごい
んじゃないか。
だから自民党政権でも官僚主導は変えられるということさえ見せられれば、
自民党政権でつづいた方がいいと思っている人もいらっしゃると思います。
官僚政治を断固変えるという自民党の強い姿勢が伝わってきませんが。
うーん、どうでしょうか。自民、民主お互いにダメ比べみたいなところが
あるんですけど、じゃあ小沢さんの蓄財は一体何だ。その人が実際に取り
仕切る民主党は一体なんだとかね。どっちおどっちなんですよ。
ただ農林水産省とか、明日添えさんの厚生労働省は明らかに変わってき
たと思いますね。
官僚組織を変えるには先ず大臣がビジョンを持ち、法律、予算の知識を持
つこと。
もうひとつは大臣の言っていることが正しいという世論になることですね。
だけど常に舛添氏にしても私にしても、一定の国民の支持を頂いていれば
官僚と自民党の族議員が結託して改革を潰そうとしても、いや、大臣の言
っいる方が正しいと、世論がついてくればそれでいいわけです。
どんな組織でも真っ当な人は2割ぐらいなもんですよ。どうしようもないの
が2割。残りの6割はどっちでもない人達だと思いますけどね。
近年、中国が尖閣諸島は自国領との主張を鮮明にしています。もし大量の
漁船で上陸された場合の有効な対策はできていますか。
先ず尖閣を奪ることの中国のメリットって一体なんだろうということです。
先ず武力で侵攻したら国連で袋叩きにあって中国は生きていけないんじゃ
ないでしょうか。
常任理事国であるだけになお更、国際社会の批難を浴びる。
中国の経済はアメリカや日本がなければ成り立たないんですよ。かつて
南シナ海に出たり、ベトナムと戦争していた頃の中国は国際的にも孤立し
た国家でしたよね。しかし今はアメリカや日本がなければ成り立たない中国
なんです。
中国がそういうことをするメリットがあるとは思えないけれども、ではなん
であんなに武力を増強しているのかという議論になるんですね。
そうすると中国が何のためにどのような戦闘機を何機持つかなんのため
にどのような潜水艦を何隻持つのか、なんのために航空母艦を建造して、
それをどう使おうとしているのかというのは常にシュミレーションしなけれ
ばいかんと思いますね。
中国は日本と違って14の国と国境を接していますので、日本の正面とだけ
やっていると、それらの国境ががら空きになったところに、ロシアだ、やれ
ミャンマーだと、中国にとっておっかない国が一杯ある。
わけですよ。だから中国が日本に武力行使に出る可能性は非常に薄いと
私は思っているんです。ただ中国が何をどのように持とうとしているのか、
それをどのように運用するのかということは常に考えておかなければいけ
ないということです。
仮にそういうことが起きたとして、今の自衛隊、日米同盟がどういうシナリ
オで、それに反撃するかということについて、常に納得できる答えを出して
おかなければいけないのだと思っています。
尖閣の領有問題にはアメリカは関与しないみたいな話がアメリカから伝わ
っていますが。
昔、モンデール大使がそんなことを言いましたけれどね。中身は申し上げ
られないけれど、その尖閣に入ってくるとしたらどういう場合か、どのよう
に入ってくるか、その時に自衛隊はどのように対応し日米同盟はどのように
機能するかというシュミレーション、それは当然行うべきものです。
どのようにシュミレーションしているんですか。
いや、中身は言えないけど。そりゃあ私のときは何度もやりました。
アメリカも参加してですか
いや、自衛隊の中で何度もやった。こんなことになるわけないだろうとか,
もう一回やり直しとかですね。
我々が持っている装備品はオモチャではないので、これをどのように使うか
ということは、使う側である政治家が知らなければどうにもならない。
日本が持っている中で足りないものは何か。たとえば核はない。航空母艦
もない。長距離爆撃機も弾道ミサイルもない。
そうすると、そういうものがどれくらいの時間でアメリカからやって来る
か、日米が共に戦った場合に、どれくらいこっちの飛行機が落ち、どれくら
い向こうの飛行機が落ちるかみたいなことは全部精密にシュミレーションし
てみないと安心はならん。
今の防衛力は日本の安全にとってどの程度のものですか。
アメリカとセットであれば十二分にあります。
そのセットのアメリカが衰退しています。いつまでも日米同盟を頼りにでき
ないのでは。
中国はなんせ13億だか14億だか本当の人口は誰にもわかんない国です
ね。私は中国の指導者といつも話すんですけども、本当にお宅も大変だねと。
どんな指導者ですか。
温家宝総理とか、国防大臣とか外務大臣とか或いは共産党の幹部ですよ。
だって日本の10倍の人口があって、民族は50からあって、14の国境を
接している。
マルクス・レーニン主義をみんなが信じていたときは、共産党だと言ったら
みんなハハーッみたいなことだったのが、今はマルクス・レーニン主義を
信じている人はほとんどいない。
その中で貧富の差がものすごいわけですね。
あの国を統治するのはきっと日本の10倍難しいと思います。
私は共産主義一党独裁は大嫌いだけど、あの国で民主主義を導入したら、
多分ひと月持たないですよ。
あの国はとにかく国民を養わなければいかん。養わないと共産党を倒せみ
たいな話になるわけで、そうならないように国民を食べさせるために農業を
どうやっていくんだと。
中国は水が足りない、土は悪い、どんどん砂漠化は進む。
だから日本は水や土、森林整備などで助力してやんないとあの国はもた
ないわけですね。
中国にとって日本を敵に回したらろくなことはないということを、どれだけ
思わせるか。そして合衆国は日本がアメリカ国債を買わないと言ったら倒
れるわけです。日本と中国が買っているわけです。
アメリカ国際なんぞというものをですね。アメリカは日本がなくてやってい
けますか。中国も日本がなくてやっていけますか、ということを常に発信し
ていかねばならないし、それだけではカルタゴみたいな国になっちゃうん
で、常に日米同盟なるものの力が中国の力に対して上ということをキープ
しておくというウオッチングはしておかねばならないと思います。
現実にそういうことを政府はちゃんとやっていますか。
と思いますけどね。
思いますですか。
いやだから総理とか外務大臣、或いは官房長官、防衛大臣、その辺りです
ね、特に。経済という分野、武力という分野の両方を知っていないと総理は
務まらんですわ。
経済的にアメリカも中国も日本がなければやれないはずだと。それはそう
なんだけど、経済合理性の通りにいかないから戦争が起こるんですよ。
だから経済の面で常にアメリカや中国に対して目配りをしておくこと、しか
し経済の理屈通りにいかなくなって、軍事が出なきゃいけないときに、それ
でも軍事的にそういうことを起こさないようなバランスを取っておく。
万が一になったときには負けないためのあらゆることを考えておかないとい
かんです。
日本の中には声高に中国脅威論を述べ立てる人がいるんだけど、それを
聞くと中国だって面白くないわけですよ。
脅威だ脅威だといくら言っても何の足しにもならないんで、ワーワー言う前
にお互いの軍事力をよく分析し、日本に足らざるものはアメリカがきちんと
使ってくれるか、使ってくれるかわからないものは、日本が独自に持つべき
ではないかと。
こないだの北朝鮮のミサイル騒動のときも、早期警戒情報はアメリカの衛
星からしか入ってこなかったわけでしょう。
私は防衛庁長官をやっていた頃から、そういう早期警戒衛星を、つまりミサ
イル発射をキャッチできる衛星を日本は持つべきだと言ってきたのはそうい
うことであって、すべてアメリカ頼みで大丈夫かということです。
日本として最低必要なものは持つべきという視点は必要なことでしょうね。
次の選挙で与野党が逆転し、それが引き金となって政界再編が起きるとい
う人がいますが。
与野党逆転なんか起こらないと思います。起こさないし。
ただ現状では与野党逆転の可能性が大という人が多いですがね。
一昨年の参議院選挙で、どうしてあんなに負けたのかという反省さえきちん
とすれば、与野党逆転なんか起きません。
自民党は反省しているんですね。
私は安倍内閣が倒れ、福田内閣になったときからずっとそういっています
が、負けた理由は三つあって、小泉改革の負の部分が弱いところに出ちゃ
った。地方や農林水産業、年金生活者、高齢者というとこに出ちゃった。
底にちゃんと手当てができましたかということなんですね。
安倍さんは何を間違ったか、小泉内閣の負の遺産に手当てをしなければ
いけないのに、ますます突っ走ったので、ふざけんなということになったわ
けですね。
福田さんがそれを直そうとしたんだけど消えた年金だとか、長寿医療制度
は姥捨て山だとか、そんな話で福田さんはやり切れなかったわけですね。
麻生政権の下で、そういう医療や年金、林業などに手当てをしなくてはなら
ない。
今、ミサイルは飛ぶ、新型インフルエンザは起こる、経済危機になるで、
やっぱり与党でなきゃと、政権交代なんてやってる余裕はない、怪しげなも
のに任せられないという感じがジワジワと広がってきていると思います。
私の担当でいえば農業、漁業、林業に対してきめ細かい手当てをやってい
るんですね。
ですから政権交代は起こらないと思いますし、起こしちゃならない、。
万が一、民主党がやたらと多数とれば政界再編は起こりません。しかし、
社民、共産の力を借りないとできないときは、部分的な政界再編は起こる
かもしれません。
自民党が仮に下野することがあったら、野党の間は本当に自民党を改革
する絶好のチャンスだと思っているんですね。
野党でいる間にちゃんと勉強して、細川政権を倒したときみたいに、社会党
と組むなどという策を使うんじゃなくて、やっぱり自民党変わったねと、今
度は自民党に任せようねと言われるように自民党を改革するいい機会だと
思ってやっていくべきじゃないでしょうか。
政界再編を起こして、とにかく与党になって暖かい飯が食いたいというよう
なことをやってはいかんと思いますすけどね。
2008年の自民党総裁選に立候補した動機は
私は全然総裁選挙なんかに出る気はなくてですね、福田さんが辞めて次
は麻生さんだねと。
私は麻生さんが政調会長で、私は成長副会著として、一緒にテロ特措法
なんて作りましたし、麻生さんとは親しいほうですよ。だから今度は麻生さ
んでいこうと思っていたわけですね。
ただちょっと待てと、与謝野さんも石原さんも小池さんも東京の代議士だよ
ねと、麻生さんも選挙区は福岡だけども小学校から学習院だよねと。
なんで参議院選挙に負けたか、それは地方を軽視したから負けたんだろう
なと、やっぱり地方の代表みたいな人間が出て地方をどうするんだというこ
とを訴えることがこの総裁選挙の大きな意義ではないかと。
石破さんはいつも小沢さんの安全保障論はデタラメだと言っているじゃない
か、安全保障策を総裁選挙で議論しないのはおかしいじゃないかと。
地方のこと、農林水産業のこと、そして安全保障のことが総裁選挙のテー
マになることに大きな意味があるんだとという人たちが来て、お前出ろと。
いやだよと、俺なんか20人の推薦人が集まる分けないよと言っていたら
20人揃っちゃったので、しょうがないというのが本当のとこですよ。
国会議員であることも、大臣であることも、はたまた内閣総理大臣であるこ
とも、それは手段であって目的ではないのですよ。
何かやりたいことがあって国会議員になる。それを実現するための手段と
して大臣になる。
内閣総理大臣にならなければ自分のやりたいことが実現しないと思った
ら総理大臣になるということだと思います。
今後、総裁選挙があったら自ら立候補を考えますか。
他の人がやってくれるのならそれが一番いいです。つまり私のやりたいこ
とを、他の人が掲げてやっててくれるんであれば、私は農林水産であろうが
安全保障だろうが、ブレーンになって働くほうがよっぽど性に合っています。
誰もいなかったら自ら出ると。
しょうがないでしょう。ただ自分からやりたいやりたいというものではなく
て、誰かもっと自分よりも優れた人が、私のやりたいことをやる、それの
お手伝いをするというのが一番いいが、誰もいなきゃしょうがなかろうと。
今、自民党の中にはいなそうですか。
それは分かりません、まだ。少なくても私は麻生内閣の閣僚として、麻生
太郎という人に、例えば農地改革というものをやるためにお仕えしているの
であるし、福田内閣のときは防衛省改革というものをやりたくてお仕えして
おった。
私はまだ52歳ですから、場合によってはあと何度か閣僚をやることがある
かもしれない。その時に改革が出来ていればそれでいいんです。
今後、政治家としてどんな国づくりを目指したいですか。
人のために、世界のために何が出来るかということをみんなが考える、そう
いう国にしたいと思うんですね。どの国も自分のことしか考えていないのは
一緒。国際社会なんてそんなもんですよ。
どの国も自分の国益しか考えていない。そうなんだけど、日本の場合は
世界のために何が出来るかということを身をもって示す国でありたいね。
世の中の人々が自分だけの楽しみではなくて、その地域のために何かでき
ることはないかと思うようなね。
だから私は農林水産省に着任以来、親切で正直で丁寧な農林水産省を作
ろうよと言っているんですね。逆に言えば、今まで農林水産省はそれほど
親切でもなかったし、正直でもなかったし、丁寧でもなかったんだろうと。
一人ひとりが自分の幸せとか楽しみを少しだけ削って、本当に人のために、
他の国のために、世界のために何かできることはないかとみんなが思える
ような国を作りたいですね。
ありがとうございました。
はい、ありがとうございました
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2009.5  於衆議院議員会館、石破事務所
中曾根康弘 元首相
≪インタビュー≫  聞き手・蛭田有一
政治とはどういうものですか。
政治は挑戦だと思います。戦いを挑む。政治は挑戦なり。
日本の政治家に足りないところは。
世界的発言、それから学問との結合、それがかけている。
その学問とは。
万学ですよ。政治学も、生理学も、国際地理学など総ての学問、その上に立
った発言というものが非常に不足している。
若い政治家に強く言っておきたいことは。
それは学問に立脚した政治ですね。政治を政界の取引みたいなものだと誤解
してはいかん。やはり学問に立脚した経世的な初心を持たなければいけない。
今、日本の政界で世界に通用する政治家はいますか。
残念ながら見当たらないね。要するに世界的、経世的発言力を持った人間が
いないということだね。今のところは見えない。
鳩山由紀夫氏を首相としてどう評価しますか。
政権を取るまでは誰でもやれるけども、取った後、どういう成果を生むかは
まだ未定だ。評価するのはまだ早い。
小沢一郎氏はどうですか。
雄心勃々たるものはあるが、それを隠してやっているところはやっぱり東北
人だね。岩手県の産だね。しかし国の困難なときに役立つ政治家だろうね。
困難に直面している今の日本にとっては、小沢さんの出番であると。
まだそれほど困難とは言えない
就任早々、世界中を飛び回っている岡田新外相をどう評価しますか。
パフォーマンスはよいけれども、本当の骨髄に芯があるかと、日本的政治家
としての芯が通っているかはまだ分からない。
国民の圧倒的な支持を得て誕生した民主党政権をどう評価しますか。
自民党に対する批判政治として歩み始めているけれども、どの程度の実力が
あるかは、まだ未定だ。批判が口だけで終わる可能性もある。
一つの政権を評価するのにどの程度の期間が必要ですか。
少なくとも1年から1年半は要るね。
公明党はどんな政党と認識していますか。
自民党と協力して、要するに政権党になって国家の政治というものを勉強し
たと思う。だが独自性が少し薄まった感がある。それはやむを得ないだろう
と思う。しかしどう回復するかだ。
独自性を出そうと、自民党と少し距離を置くようになると自民党は困りますね。
だけど国のためにはいいことだ。
もし次の参議院選挙で民主党が過半数を獲得したら、小沢さんはどう出ると予測しますか。
やっぱり国を背負う責任を感じて積極的になるだろうが、しかし非常に慎重
にやるだろう。
小沢さんは日本の政治の仕組みを根本的に変えようと考えているのでは。
それだけの力はまだ持っていない。要するに話し合いで前進していくと思う。
仕掛け人として、その話し合いの中心はやはり小沢さんですか。
その中心になるかどうかはまだ分からない。
日本が二大政党制に移行するとしたら、その対立軸は。
欧米の二大政党は、政策的差異で政策的軌道は二つに決まっている。
しかし日本の場合は人間的な政策力のにおいが強すぎる。だから二大政党
制というところまで安定したとは言えない。
日本はまだ初歩の段階でね。二大政党がこれで安定して進むかどうかはま
だ分からない。
中曽根さんは二大政党制がいいですか。
いいと思います。
今、自民党の若手政治家の中で将来保守のリーダーになりそうな人物はいますか。
まだ分からない。要するに挑戦すると、その気力を示している政治家が少な
い。冒険を伴うけど、そういう政治家がまだ少ない。
要するに現状打破の勇気のある政治家が少なくなっている。
挑戦する勇気ある政治家を育てるということが大事と。
でしょうね。それと世界やアジアの将来に対する先見性を持った政治家を養
うことが大事と思っている。
国際的には日本はアメリカに従属した国と見られているんでしょうか。
西欧から見るとそう言われるでしょう。
そういうイメージを払拭するためにどんな独自外交をすればいいと思いますか。
欧米でも、アメリカとの関係というのはみんな持っていて、日米関係とは程
度の差なんです。ただ安全保障とかアジア政策とかそういう問題について、
日本の固有の見解をもう少し強くする必要がある。
固有の見解とは。
日本の伝統、アジアの一国としての存在、そういうものから出てくる政策や
戦略ですね。
アジアとの関係に力を入れようとしている民主党に何かアドバイスはありますか。
アジアの有力国のトップと日本のトップとの間に信頼感と友情が生まれるよ
うな、トップ同士結合力というのが非常に大事ですが、それが欠けている。
国と国との関係では、トップ同士の信頼感、友情というのが大きな影響を持
つ。
よく言われたロン、ヤス関係ですね。
そうです。
3年前、全斗煥元韓国大統領一家を軽井沢の別荘や日の出山荘に招待し、
中曽根一家と共に数日間の旅行を楽しまれましたね。私も同行しましたが、
元大統領が自国で困難な境遇にあっても、友情を大切にする中曽根さんの
姿勢に感銘しました。
今日本に、中曽根さんのような個人外交に力を入れている政治家はいるで
しょうか。
最近いないね。自分の家や別荘に外国のトップクラスの政治家を招待したと
いう例を最近見ないね。外国ではよくあることです。
岡田外相もその辺のノウハウを中曽根さんから学んだらいいですね。
そうかね。(笑)
日本はアメリカや中国との関係に比べて対欧州外交の優先度が低いのでは。
アメリカや中国との関係から見れば少し距離がある。
アメリカや中国との関係を上手くやる上で、ヨーロッパと良好な関係を作ってそれを戦略的に
活用できないかと素人的に思いますが。
ヨーロッパの存在それ自体がアメリカや中国に対してそれだけの独自性を持
っているか、それは検討課題です。日本と大同小異のもんだと思われる。
やはり日本はアメリカと中国が大きなテーマであると。
そうですね。
20年後の中国をどう想像しますか。
おそらくアメリカやEUと肩を並べる大国になっているだろうと思うね。
今後、日本はどんな日中関係を創っていくべきですか。
やっぱり隣邦というのは非常に大事なんで、だから欧米が中国に対するのと
一歩違った隣邦としての関係を結んでいく。それを両国の政治家同士で検討
して創造していくことですね。
やっぱりドイツ、フランスというのはそういう関係であったね。
隣邦としての関係とは具体的に言うと。
双方に進歩のために影響力を持ち合い、世界に対しても覇権を求めない。
そういう謙譲な態度が必要だと思うね。
それは中国の覇権的傾向を念頭に置いて言われているんですか。
ええ、そうそう。
大国になった中国が覇権意識を露わにすると心配ですね。
まだその辺は分からないから注意していく必要はある。
日本が巨大になった中国と従属関係になってしまわないかと。
いや、聖徳太子みたいに日本人はなっていくだろうと思う。聖徳太子は隣の
唐という大国に対して独自力を示しましたね。独自的存在を。 
尊厳を持った国になると。
そうです。
共産党が運営する中国経済が今、世界不況にあえぐ先進資本主義経済の牽引役になって
いるのは皮肉ですね。
中国が世界経済を牽引している段階にはまだない。あと10年か20年かか
るでしょう。
10年か20年でそういう役割をになうと。
それは中国の内政がどう安定しているかと、それから科学技術が日本や欧米
に比べて見劣りがしない国になり得るかと、そこが大事な点ですね。
不安定な部分ありますか。
中国は東北とか西北、あるいは南部、そういう地域的な個性が非常に強い。
また歴史的、伝統的なものを持っている。発展すればするだけまとめていく
のに苦労するでしょう。沿海地方と大陸内部の関係も問題になるでしょう。
今後、日本の発展のために注意すべきことは。
アメリカとの関係は非常に注意していくだろうが、アジア特に近隣諸国、韓
国や中国、アセアンとの関係を良好に維持していくことは、日本の発展のキ
ーポイントになりますね。その点に欠落が出てこないように注意を要する。
もう一度人生をやり直せるとしたら何をやりたいですか。
まあ学者か政治家かどっちかだね。(笑)
やっぱり政治家はいいですか。
魅力はあるね。
当然、総理大臣としてですね。
でしょう。世界的な影響力を持った政治家にならなきゃダメですよ。要する
にその発言が世界を動かし行くような政治家にならないと。
世界を動かす政治家とはどんなイメージですか。
G7サミットにおいて私の発言はサミットを動かしていた。それは世界を動
かしていたことになる。
再びそういう立場になりたいと。
ええ、そうです。
学者とはどういう学問ですか。
やっぱり自然科学を基礎にした政治学ですね。
今後の日本の政治に何を期待しますか。
我々人生の第四楽章においてね、現役の政治家が日本を発展させていくよう
にと、非常に念願していますね。
世界的スケールを持った政治家がまだ見えない。
ありがとうございました。
失礼しました。
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2008.8  於国会議事堂前庭
森 喜朗 元首相 
≪インタビュー≫  聞き手・蛭田有一
政治家人生で最も感動したことは。
一番感動したのは一つしかない。昭和44年12月27日、私の初当選
です。今では考えられないようなことでしたからね。
私は当然無所属、非公認で戦ったわけですから。三つを争うのに10
人ぐらい出たかな。ですからどう好意的にみても落選間違いないと思
われた。だから本当に苦しかったけど、私はこれに全てを懸けた。
ところがいろんな条件が私に味方してくれたんですね。
その条件とは。
それは私の父ですよ。親父は当時、私の町の町長してましたが、全部
で9期、一度も落選したことないですよ、無競争で。それだけ町民の皆
さんに信頼を得ていたということでしょう。
私の町は当時小さな人口、1万3千くらいですね。その町の皆さんが
一丸となって私の選挙のために10ヶ月ぐらい、本当に死にものぐるい
で頑張ってくださった。
それは私のためというより、私の父親に対する町民の皆さんの気持ち
でしょう。
私の祖父もむかし村長をやってましたから、そういう森家に対する町の
皆さんの信頼と感謝、僕から言うとおかしいけど、そういう気持ちで倅
を応援してやろうということになって、選挙区内の地縁、血縁ありとあら
ゆる縁を求めて私を応援してくれた。これが私の勝因だったですね。
父の努力も本当にすごかったですよ。まあ若干は私のキャラクターも
あったかもしれない。
選挙は候補者の人柄も大事なんだろうから。当時32歳ですから、そう
いう私が飛び出したことに対して、世間が共感を覚えてくれたと思うん
ですね。
これまでに強い怒りを覚えたことは。
長い人生、いろんなことがありましたけどね。
一番怒りを覚えたのは、福田さんと田中さんの争いでしたね。30年も
前の話だけど。中曽根さんにしても三木さんにしても大平さんにして
も、みんなきれい事は言っていたけれど、結局は全部、田中軍団にや
られたかな。そういうのを若いなりに見ていて、本当に承服できないと
思ったですね。
それはいわゆる角福戦争のときですね。
そういうことですね。あの時はすごい怒りを覚えたし、これで政治はい
いのか、自民党はこれでいいのかなと思いましたね。
森さんのホームページに、立派な人間の育成こそ教育本来の使命と書いて
ありますが、立派な人間とはどういう人間だと思いますか。
立派な人間っていうのは優秀な人間ではないんですよ、僕の言ってい
るのは。優秀で頭のいい人間が必ずしも全てだと思っていない。やっ
ぱり人柄がよいということが一番大事でしょうね。
やっぱり世のため、人のためという気持ちがあってほしい。それは家族
でもいいし、妻でもいいし兄弟でもいいし、国家でもいいし、世界でもい
い。そういう中で、存在感というものをきちんと示す人間になってもらい
たいと思っているんです。
平気で人間にナイフを突きつける世の中にみんなが驚かなくなったとい
うことは、異常な世の中になったということですね。
今、日本人全体に無責任、モラルの荒廃が広がっています。この根源的な原因は。
その根源はやっぱり教育にあるでしょう。二十世紀というのは、まさに
戦争の世紀でしょう。
日本は外国と戦争をして負けたことがなかった。何かあると最後は神
風が出てきて勝つんだと思い込んでいた。それが無残に負けた。
負けたことによって全てを失ったんですね。
だけどヨーロッパやほかの国は負けても魂は取られない。ドイツは憲
法は譲らなかったんです。だから今でもドイツは憲法を持ってないんで
すよ。
アメリカや連合軍に押し付けられるのはいやだということだったでしょう。
ところが日本はまるまる手を上げちゃって、全て戦勝国の言いなりに
なった。
ただ韓国とドイツのように分割統治はされなかった。それだけは助かっ
たですね。日本は全てさじ投げちゃいますから、勘弁してくださいと言っ
たもんだから教育権は取られ、憲法は押し付けられて、そのことが今
日の日本の全ての基盤になってきたということです。
もう一つ悪かったのは当時、開放された共産党の連中が一杯いて、そ
れが労働組合だのマスコミだのいろんなところに入り込んだ。
特に教育の中に入り込んだ。
だから日本の歴史だとか天皇だとか日本の文化だとか、礼儀作法の
ことなど学校でやろうとするとその左の連中が全部壊してきたわけでし
ょう。
だから日の丸も君が代も大事にしないという教育政策を取ってきた。
それが戦後の日本ですよ。
神や仏は要らないという唯物論的な教育を戦後日本はずっとやってき
た。それにみんな慣れきってしまった。僕らの世代まででしょうね。
僕らの世代だと神社やお寺の前を通るとちょっと頭を下げる、そのこと
は子供の頃から教えられた。
やっぱり何が一番大事なのかということを子供たちに教えないから、
平等とか平和とか自由というのは自分だけが享受すればよくて、人様
に与えるという感覚がなくなってしまった。
それが戦後の日本の最大の失敗ですよね。
だからぼくは優秀な頭の人間をたくさん育ててもしょうがない。
頭のいい人間ばかりが役所でえらくなっていく世の中にするから、親た
ちはアホだから勉強して東大行きなさい、京大行きなさいと言う。
子供の能力は親を見ればわかるんで、それ以上になることは余程のこ
とがないかぎりないんだから。
日露友好連盟会長としてプーチン前大統領と親しいと言われますが、
どんな人物ですか。
ソビエトというと社会主義国のチャンピオンですよね。この国が結局社
会主義、共産主義の考え方ではダメだということを彼の前のエリツィン
かな、彼がそういう判断をして、ソビエトの衛星国をみんな開放して
共産党も捨ててある日突然自由化するわけですよ。
その結果がよかったか悪かったか、ロシアの中にはかなりいろいろ問
題はありますよ。
制度は確かに社会主義はなくなったけれども、役人の感覚は変わって
いませんよ。それからとてつもない金持ちが権力に結びついて悪さを
やっているやつは一杯おるでしょう。
しかし社会主義、共産主義の国を一挙に自由と民主主義の国にしたと
いうことは、なまやさしいもんじゃないですよ。
現に中国は、やり方は逆でしょう。一党独裁の共産党体制で、そして
経済だけは自由化させているわけでしょう。経済は日本やアメリカと同
じような仕組みをとっているけども、これまた格差は激しい。
北京のようにすごい街になったかと思えば、地方にはまともにトイレも
ないような家がある。食べものもない。暴動が起きてもおかしくない、今
起きてますけどもそれを抑えられてるのは、共産党が怖いからですよ。
怖いから何とか中国は保っている。
ロシアが一挙にそうなったとしたら、やはり大統領たるものは余程の力
を持たなきゃいかん。
それでエリツインがあの若い47歳のプーチンを引き抜いて大統領にし
た。そういうプーチンはやっぱり大変な人なんだろうね。
プーチン時代はずっと続きそうですか。
しばらく続くと思いますね。僕は彼には率直に何でも言いますからね。
あなたの国は自由主義といったって、役人のやっていることは、昔の
社会主義とちっとも変わっていないよとか。
プーチンによって何とか共産党が台頭して来ないように、今の自由主
義と民主主義、それから法の支配の三つの原則を守る国になって、日
本やアメリカやフランスなどみんなと協力していってもらいたいと思っ
ているんです。その方向へ彼らは一生懸命努力しているということです。
北方領土は帰ってきそうですか。
いやあ難しいと思いますよ。やり方だと思います。
少なくとも僕はプーチンと話したときには、いけるという思いがあったん
です。プーチンも協力したいといっていた。
隣同士でお互いに協力したらいいことができるのに、ただ一つだけ小さ
なこと、それはノドに刺さった骨みたいな四つの島のことだと彼は言う。
現実はあの島にロシアの人たちが住んでいるということです。
スターリンの政策でどんどん強制的に住まわされたんです。今は彼ら
にとってそこが祖国となっており、我々はまた放り出されるのかという
思いがある。だからそれをどう解決するのか。
日本側も、何が何でも四島全部返せと言うと、彼らのメンツもある。
これはプーチンが直接俺に言ったことだよ。
ソ連はハンガリーもチェコも東欧の社会主義国を全部開放したんです。
アゼルバイジャンや中央アジアにあるウズベキスタン、キリギスタン、
カザフスタン、みんなかつてソビエトの一部、それを全部開放した。
全部開放したらルーマニアやハンガリーがEUに入って、NATOという
北大西洋条約機構に入っちゃった。
NATOというのはアメリカとヨーロッパが組んでソビエトを包囲する軍
事的なもんでしょう。そこに自由にしてあげた国がロシアを包囲すると
いうのでは、我々は納得できないと。
ロシアの硬派にとっては、あんなもの返さなきゃよかったんだと。
だから北方四島も返すことはないという意見になってくるわけよ。そこ
のところを日本はよく考えてみないといかんのです。
僕は具体的な考え方をもっていたんだけど、それをやる前に私は辞め
ちゃった。彼には私は残念だけど辞めるから、後は必ず協力するから
と言ったらプーチンも分かったと、お前と一緒に片付けたかったけども、
分かったよと言ったけども、次の小泉さんになって小泉さんはいいこと
もやったけど、そういう問題には全く無頓着で、田中真紀子みたいのを
外務大臣にしちゃうもんだから全御破算になっちゃった。
だけどプーチンは今でも日本と仲良く協力し合っていくことのほうがい
いと思ってますからね。
それは大事にしていきたいと思っていますね。
次の選挙で自民党は負けると言われていますが、自民党の将来には
悲観的ですか、楽観的ですか。
いやいや楽観的ではありません。悲観的です。ただね、日本の国民と
いうのは非常にバランス感覚があるんですよ。
馬鹿でもないし、愚かでもないしまた利口じゃないところもあるんだけど
も、振り子の時計と、僕はいつもも言うんだけども小泉さんがバカ勝ち
しちゃった。
そして次がつまらんことをやって参議院選で負けたという勘定から言う
と今度は勝つ順番にはなるんですけどね。
ただ日本のマスコミにはテレビで大衆受けするようなタレントが一杯出
てああしなさいとか、そんなことばっかりやってるからみんなダメになっ
ちゃうんですよ。それによって、ふわふわと国民はどうにでもなる。
だから今のような形をマスコミが取っている限りはこれは危ないですよ。
だって今の日本人は新聞読みますか。新聞細かく読むよりテレビの画
面を見たり、週刊誌を読むほうが早いでしょう。日本の国民はみんな
そうなっているんですよ。
次の選挙の後、政界再編があるとしたらその対立軸は。
今は、自民党も民主党も価値観は同じなんですよ。だから区別はつけ
られないですね。そこが最大のポイントだと私は思っています。
選挙が行われた結果の数値によりますが、結局どちらか一党が、全部
を支配していくことにはならないと思います。
例えば今度の衆議院選挙に仮に勝っても、参議院は変わらないまま
です。衆議院で負ければ城は明け渡しですよ。民主党の天下です。
しかし民主党一党でやれるかといえば、なかなかやれない。そこで自
民党は割れるのか、或いは公明党がどうなるか、そういうことで政界再
編が行われていく。
だから何回かこういうことを繰り返していくうちに、二大政党になるんだ
ろうけども、今の選挙制度である限りは二大政党にはならんと思います。
そうでしょう、共産党もおれば、公明党もおるし。今、
民主党は選挙に勝ちたいから共産党とも協力しようなんてやっている
わけでしょう。
連立の繰返しでということですか。
だから連立という形でやっていって、最終的に一緒になっていくという
ことでしょうね。だってドイツでもイギリスでも連立になっているじゃない
ですか。
現に私は恥ずかしながら野党になった時、そこから抜け出すために、
社会党の村山さんを総理大臣の首班に決めたのは、幹事長だった僕
なんだから。随分節操のないことをやったんだよ。
ところが社会党の中がガチャガチャして、結局また社会党に戻っちゃ
った。戻っちゃったらどうだ、消えちゃったじゃないですか、社会党は。
時代の変化についていけなかったと思うんですね。
だからこれからもまだまだそんなことがあると思うが、どうなりますかと
言われても、私はそんなに先はないですよ。私はもう71歳でね、もう
最後なんですから。
80になっても85になってもやっているという時代はもう終わったんで
す。中曽根さんや宮沢さんで終わりですよ。
森さんは政界の頂点を極めましたが、今後の更なる目標はありますか。
更なる目標なんて僕はこれ以上ないよ。80まで生きれば最高だと医者
に言われて、私はガンを患っていますからね。
80までは生きますよと言われて、俺は80で死ぬのかねと言ったら、
それだけ生きればいいじゃないですかって医者に言われたんだよ。
そのとき64歳だったからさ、まだ先の話だと思っていたけど、今71に
なりましたからね。あと9年ですよ、私が生きていられるのは。
その9年で是非ともやりたいことはありますか。
いやいや国民が認めるかどうかという問題がありますからね。
世の中がだんだん若い者の方がいいという時代なんでね。そういう流
れで、果たして私が有権者から支持されるかということも分かりません、
やってみなければね。
現にそうでしょう、私が一生懸命真面目に努力して、かなりのことをや
ってきたつもりだけど、やっぱり選挙になると、なんで私に投票が入ら
なくてあんなに他に行っちゃうんだろうなと思う。
祖先に対してものすごい自分への嫌悪感を感ずるし、やっぱりどこか
悪いんだろうなと、どこか気に入らん人がいるんだろうなという反省は
常にしますよ。
当選するとしたら、いつまで政治家を続けますか。
いやあ毎日、一日一日ですよ。私にはそんなあと5年先だ、10年先だ
なんて考える余裕はないです。
政治家として今一番力を入れているのは。
一番力を入れていることは教育なんですよ。
国際社会で恥ずかしくない国民になってもらいたいという思いがある
んです。教育に関してはもう少しみんなが責任を持たないと、誰かが
やってくれると思っていたらとんでもない国になっちゃう。
それから外国人が日本に来て、日本人とはどういう人間なんだろうと
思われるようなことだけは、あってはいかんと思うんです。
オリンピックなんか見てると、外国人とはどこか違うですね。外国の選
手は神に祈りますよ、スタート台に立つと。日本の若者にはそれがあ
るかな。宗教心はないですよ。
日本の戦後教育の最大の欠陥は、宗教性を教えられないということで
すよ。だからオリンピックでは神様お願いしますっていうような選手は
あまりいないですよ。
お父さんお母さんとか、優勝したのは女房と息子のお陰ですとか言う
選手。いいよ、美しいよ。だけど女房と子供のために戦っていたのかね
と。やっぱり日本の国民の皆さんの応援あったからこそだということじ
ゃないのかな、まず最初にくることはね。
それから自分を助けてくれたのは神様なのか仏様なのかご先祖様な
のか、というのが素直な見方だろうと思うけど、女房と子供のためとい
うのがいたよ。
僕は日中韓の子供たちを集めていろんなことをやっていますけど歴然
と日本の子供って分かるんですよ。礼儀ができない、挨拶ができない、
ちゃんとした規律が取れない。
ましてや今の小学校を見てください。どうなっていますか。
私立は何とか保っているけど、公立はダメになっているんですよ。
教室は破壊されている、子供は平気で出て行く、それを先生は抑えら
それない。教育の現場がそうじゃないですか。そんなバカな国ってない
でしょう。
それをどう修正するかが僕の最後の仕事だと思っています。
ありがとうございました。
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2009.2  於神奈川県茅ケ崎市 サザンビーチ
 河野太郎 衆議院議員
≪インタビュー≫  聞き手・蛭田有一
政治家の前にどんな人間でありたいと思いますか
ありきたりですけどウソを言わないとか筋を通すとか、子供が見て親父頑張
ってるなと思ってくれるような人間でありたいとは思っています。
特に好きな言葉はありますか。
座右の銘はといわれるとありませんと言っちゃう方ですから(笑)。
これだけは人に負けないと自負するものは。
真面目なとこですかね。
今の時代、真面目な人はあまり評価されないですね。
真面目にコツコツやっている人が、評価されるというのがすごく大事じゃない
かな。
要領がよかったり、調子よかったりというのも大事かもしれませんけども、そ
れだけが過大評価されちゃうというのはまずいかな。本当にコツコツ努力して
くれる人がいるから社会がもっているわけで、そういう人を大切にすることが
大事です。
政治家の家系として4代目になるんですね。
そうですね、曾おじいさんが県会議長で政治家をやった最初です。
3代の中で特に影響を受けた人はいますか。
昔、親父が新自由クラブを作って自民党を飛び出したことがありまして、その
とき日本中をグルグル回ってあまり家にいられなくなったんです。
僕が中学1,2年のときですけど、真夏のある日に家に帰ってきて、なんで手
一緒に風呂に入ったら、親父が手袋しているんですね。
袋して入るのって聞いたら、えって怪訝な顔をするんです。
それでよく見たら、いつもマイクを握って演説していますから、手が真っ黒に
日焼けしているんですよ。
それを見て親父のやっているすごさ というのが分かって、やっぱり真面目に
一生懸命頑張らにゃいかんなと思いました。
それは今でも鮮烈に印象にありますね。
河野さんは政治家としてどう評価されたらうれしいですか。
政治家の評価というのはそれこそ50年、100年経って決まるんでしょう。
いま人気投票みたいなもんですよね。
あれだけ人気があった安倍晋三も麻生太郎もそうですが、評価はいろいろ言
われて変わります。
それより50年、100年経って振り返ってどうだったのというのが一番かな
という気がしますね。
今の評価は気にしてもしょうがないと。
その時々の評価はマスコミに取り上げられる。取り上げられないで変わって
きますし、それもひと月経ったら麻生さんみたいに、ぱっと手の平返されちゃ
ったりもしますので、あんまり気にしてもしょうがないでですね。
アメリカの衰退による世界の多極化と、チェンジを強調したオバマ大統領の
誕生によって日米関係は変わりますか。
オバマ大統領になったから日米関係が変わるかといえば変わらないと思い
ます。
大統領が代わったから変わるほどやわな同盟じゃないと思っています。
戦後60数年、その間ずっとアメリカの基地を日本に置いて、そのお蔭で平
和は維持されていますけども、独立国が100年、他国の軍隊の基地を置い
ておくというのもあまり例のないことで、このあり方をいつまでやるのってい
うことをそろそろ考え始めないといけないのかなとという気はします。
それがこの10年、20年の間に来るかどうかもまだ分かんないですけども、
そういうことは考えておかないといけないとと思うんですけどね。
沖縄にはまだ多くの基地がありますが、いつまでもこんな状況を続けてはい
けないと。
日米同盟で半世紀以上平和が保たれていますから、それはそれで良かった
と思います。
ただそれで未来もずっとやっていっていいのかというのとはまた別問題だと
思うんですね。いやそれでもいいということかもしれませんし、それは違うだ
ろうということかもしれませんけども。
今までやってきたのは全然間違ってがっていないし、その日米同盟をこれか
らも強くしていくにはどうしたらいいのかという議論は当然しなきゃいけませ
ん。その一方で、よーく考えると、他の国の軍隊がずっといるというのはいい
のかというのは1回問いかけないといけないだろうなと思います。
日本の安全を丸投げしている限り、アメリカとの従属関係の解消は難しいと。
アメリカ軍を置かないで自分で守りますと言うなら、軍事費はいくらかかりま
す、それを補うのにどうしますと言わなければなりません。そうしなきゃ議論
が始まらないじゃないですか。
アメリカがいるのはけしからんと言うけど、じゃアメリカがいなかったらどう
するのという話はしないで、ワーワー言ってるだけというのは、なにかの戯言
でしかありません。
外交ですからもの言いは慎重に、しかし言うべきことは毅然と主張しないと
友達に注意するとき、第3者に分からないようにやるのと同じで、日本政府が
アメリカにそこはおかしいからこうした方がいいよというのをマスコミの前で
やるのがいいとは限りません。
経済危機に直面するアメリカは自分のことで精一杯となり、日本は否応なく
自立しなければ成らなくなったと言う人がいますが。
今までも何かあったらいつもアメリカが助けてくれたわけじゃありません。
オバマになったから日米関係はどうのこうのというのは、世の中を斜めに見
ているとしか思えないですよね。
アメリカの基地があるからとか、アメリカと日本の力の差が違うから、日本は
アメリカの言うことを聞いているんだみたいなことを言う人がいるけど、それ
は現実と違うんじゃないかと思いますけどね。
強大化しつつある中国は覇権的傾向がみられるだけに、将来の日中関係が
心配ですが。
日米同盟がちゃんとしていればそんなに心配する必要はないと思います。
日本も中国がなければやっていけないけれども、中国だって日本やアメリカ
がなければ経済的には全くなりたちっません。
攘夷みたいに外国はみんな嫌いだみたいな見方をする人もいますけども、
中国は悪いやつだと大声で言ってみたって何の問題解決にはならないわけ
で、それこそ中国には環境に気を付けて、エネルギーを無駄使いしないよう
にときちっと言って助けてやることが必要なんじゃないかと思います。
日本はアジアの発展のために、今後どんなアプローチが必要ですか。
これから先のことを考えると石油だってなくなるでしょうし、温暖化対策だっ
て経済成長しながらどうやって解決していくのか、食料の問題もあるし、それ
はもうアジアに限らず、とにかく地球に限界があるということをみんなで共有
して、日本の技術を使ってその限界を超えないようにしていかないといけな
いでしょうね。
そのことを日本は世界に積極的にアプローチしているんですか。
もっと明確にやった方がいいと思いますね。
それだけの技術があるわけですから。例えば温暖化対策だって、日本の電
力会社の圧力でやるべきことをちゃんとやっていない。
政治家が電力会社から献金もらったり、電力会社の票をもらったりして電力
会社が別格みたいになっているのはよくないですね。
実は、日本は世界に冠たる資源大国で、日本近海にはメタンハイドレードと
いう天然ガスが年間消費量の250年分埋蔵されており、これを開発すれば
もう中東から言い値で石油を買う必要はなくなるという話をご存知ですか。
メタンハイドレードだって全く無尽蔵ではないです。
要するに、石油や石炭やウランに頼らないでどうやっていくのというのがエネ
ルギー問題の鍵だと思います。
100パーセント再生可能エネルギーで必要なエネルギーをまかなっていくと
いうのが人類共通のゴールであるべきです。それは太陽光であり、風力であ
り、波の力であり、地熱であろうと。
これから中国、インドが経済成長すれば、かつて10年で使っていたものが
1年で無くなっちゃうかもしれないわけですから。
石炭が石油になりました、ウランになりました、天然ガスになりました、メタ
ンハイドレードになりましたといっても結局は同じ話で、そんなことを言って
るようじゃダメなんだと思うんですね。
そうじゃなくて、再生可能なエネルギーで、いかに全部まかなっていくかとい
うのが、今やらなきゃいけないことだと思うんですよね。
メタンハイドレードの話は日本人が自信を取り戻すきっかけになるのではと
思いますが。
メタンハイドレードが沢山あるのは事実ですけど、それは無尽蔵にはないわ
けで、使えば減ります。
メタンハイドレードを燃やせば二酸化炭素が出ますから温暖化につながりま
すし、メタンというのは温暖化ガスですから、それを使えばいいというのは全
く解決策になっていないですね。
テレビなどで麻生政権は崩壊寸前で、次の選挙後は自民党自体もなくなる
という人がいますが。
自由民主党って何だというと、資本主義であり、民主主義であり、日米同盟
だったんですね。
自民党というとまず共産主義でない人、社会主義でない人の集合みたいな
ものだったんです。
55年体制は共産党や社会党のの勢力が強かったですから、そこと自民党
は闘っていたんだと思います。その結果、共産主義はなくなって自民党が勝
ちました。
今共産党も社会党も議会の中では数パーセントしかいませんから、もう9割
以上が昔自民党が言っていた資本主義、民主主義、日米同盟には賛成です
ということになりました。
小選挙区でやれば共産党も社会党もほとんど当選する人はいないわけです
から、第一ラウンドは自民党が圧勝しました。今や日本には資本主義に疑い
を持つ人はあまりいないし、民主主義に異論をはさむ人もいないし、日米同
盟も大多数の人は支持します。
要するに自民党がいっていた通りになって第一試合は終わりました。
ところが第二試合は何を主にするのかといったときに、それがないのがいま
の自民党だと思うんです。
要するに今度は主張を明確にして旗立てて、うちはこういう政党ですと言わ
なきゃいけないのにそれができていないというのが問題なんです。
みんな自民党を支持してほしいみたいなことを言っているから、全くメッセー
ジが出なくなっちゃった。
今やんなきゃいけないのは、自民党はガリガリと市場で競争して勝った者が
天下を取る。要するに、汗をより沢山かいた者が成功するのを保証する政党
なのか、それとももっとセイフティーネットを手厚くしましょうよと、多少経
済コストが高くなって中国との競争に負けても、みんなが同じようなら嫉妬も
ないからいいじゃないかという政党なのか、どっちなのかを明確に言わなきゃ
いけないのに、両方にいいようなことを言っているからダメなんです。
幸いなことに民主党も同じなんです。
だから自民党はこういうメッセージを出す政党だからこれに賛同する人は集
まって下さいと言わなきやいけないんです。
自民党は新たなメッセージを出せる政党に変われますか。
共産主義でない人、社会主義でない人は来てくださいと言って集めたら、9
割の人が来ちゃったわけです。
ところがその9割には、市場原理で伸ばそうという人も、規制で守られてる人
もみんな入っています。今度はその中でお互いに意見が合わなくなって、こ
の9割が今だんだんばらけてきている。
その9割の中のこういう人は自民党に来てくださいと言わなきゃいけないんで
す。
自民党と民主党の決定的な違いはどこにありますか。
ありません。だからすぐに大連立しましょうみたいな話になっちゃうし、選挙
に出ようと思ったら、自民党の現職がいたから民主党に行ったという話になっ
ちゃう。
次の選挙後、政界再編の動きは出そうですか。
たぶん出てこないと思いますね。
というのは民主党はこのままいくと圧勝しますから、別に再編しようという必
要性を彼らは感じないでしょう。
圧勝とは単独で政権を取れるということですか。
そうなるでしょう。単独で取るんじゃ無いですかね、このまま行けば。
そうすると再編する必要はないということで終わっちゃうと思うんです。
日本の政治がどんな理念で分かれたらいいと思いますか。
比例代表をやめて小選挙区にすると完全な二大政党になり、それで政権交
代すればいいと僕は思っています。
ひとつは競争に強い経済を作って海外の競争に勝とうという政党。
もうひとつは、そんなことよりもみんな平等でなるべくセイフティーネットを
手厚くしてやろうよという政党。
つまりガリガリ競争をやっているうちに、社会がバラバラになってくるんで、
そうするとセイフティーネットをきちっとしましょうという政党が政権を取る。
そしてコスト高になって競争に負けて経済が停滞するので、やっぱり経済は
伸ばさにゃいかんという政党に振れて経済を伸ばす。
伸びたけれども軋みが大きくなったので再び政権交代して軋みをなくすと。
河野さんはどちら側ですか。
どちら側と言えば、バリバリ行こうという方です。
河野さんが目指す日本の国家像とは。
日本はというより、もうこの地球はそろそろ限界にきていますね。
その限界を超えないで、80億にもなるといわれる人類がそれ以外の動植物
と一緒になって、この星の上で生きていくためにはどうしたらいいのという
と、たぶんエネルギーや色んなものを転換しなきゃいけないと思います。
ひとつは、これだけ技術がある日の政治家として世界の先頭を切って、価値
感変えましょうと。
変わらないとその限界を踏み超えちゃいますから。
日本をこうしたいというのも大事だけども、その前に限界を超えずに80億の
人間が食べていくためには、やっぱり世の中を変えなくてはダメですよね。
日本はこうやって地球を救って、みんなで共存していくぞと、日本に続けとや
っていかないとダメかなという気がしますね。
そういう理念を端的な言葉で言うと。
限界を超えない国づくりというか地球づくりですね。
限界を超えたら地球は崩壊しちゃいますから。温暖化問題やオゾンの問題
を考えると、もう一部限界を踏み越えているところがあるんで、この地球にど
こまで持続可能な社会を作って生き残れるかをやっていかないと。
そのりだーシップを日本がとるしかないのでは。
日本は取れると思いますか。
取らないと少なくとも孫の時代はないと思いますね。
これだけ急速に環境が悪くなっていますから、子供の時代だって心配だけど
も、孫の時代はそれこそSFみたいな世界になっちゃう可能性があるんじゃな
いかと思いますね。
ありがとうございました。
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2008.10  於国会議事堂正門玄関
穀田恵二 日本共産党、衆議院議員
≪インタビュー≫  聞き手・蛭田有一
政治を志した原点は。
私は京都の立命館大学で学びました。立命館大学に「わだつみ像」という
反戦平和の像があるんです。
「わだつみの悲劇を繰り返すな」というのが私の政治を志した大きなポイン
トだと思っています。
私は両親が共産党員の家庭で育ちました。父は地方銀行の組合活動を
やっていたこともあって、労働の現場の厳しさというか、たたかうことの大
変さというものを教えられましたね。
それで私も共産党に入ったんですが、立命館大学の総長だった末川博
先生の「戦争を二度と起こしちゃならん、わだつみの悲劇を繰り返すな」と
いう教えを原点にして政治を志しました。
大学を出て同じ立命館大学に就職し、2年ほど働いてから共産党の専従
職員になりました。専従職員になって16年経ってから市議会議員に立候
補して市議会議員に当選し、一期勤め、そのあと衆議院議員に出ました。
政治家としての信念は。
私は自分のスローガンとして、ポスターにも書いているんですが、ひとつは
「政治を国民の手に」ということを、引退された寺前巌議員から受け継ぎま
した。国民が主人公を、私なりの言い方で表したものです。
かつて蜷川虎三さんが京都府知事時代に「憲法を暮らしに生かそう」とい
う垂れ幕を、ずっと京都府庁に掲げていましたが、私もそういう世代です。
ですから「憲法を暮らしに生かそう」というのを、もうひとつのスローガン
にしています。心情としてこれは譲れないと考えています。
政官業はもとより、近年は一般国民の間にも無責任やモラルの崩壊が
広がっています。この状況をどう捉えますか。
ことは重大な問題になっている点は、蛭田さんと認識を共有します。
ただ私は日本人全体がそうなっているとは思っていないんです。
一般市民のルール無視が広がっています。日常化したゴミの不法投棄、
悪質なひき逃げ等々、後を絶ちません。こうなった原因は。
凶悪な犯罪を許せないのは同じです。少し意見が違うのは、本当に犯罪
の数値が多くなっているのかとか、凶悪犯罪が多いかというとそうでもない
んです。
モラルが退廃しているという問題については、危機的な意識はあります。
一般国民が全部悪くなっているというふうには思っていないんですね。
むしろ問題なのはこういう傾向をなんでも道徳律の問題だと考える場合が
あるけども、果たしてそうでしょうか。
やはり政治の退廃が根本にあると思っていますね。政官業の癒着があっ
たり、それから経済では儲け第一主義で、目先の利益だけを追うというや
り方、それが当然一定の思想ですから広がっていくわけでね。
金の延べ棒を集めた政治家がいたり、官で言えば、国民全体への奉仕者
でありながら実際は談合をやって、一部の政治家とゼネコンなどがつるん
で悪行を行っています、高級官僚ですけど。
民間で言えば、ホリエモンとか村上ファンドとか、あたかも時代の先駆けの
ように言われたけれども、いまや虚偶であったことが明らかになっている
んですけどね。
そういうものを煽ったメディアにも責任はあると思いますし、政治の責任も
あるし、経済が目先の利益だけを追っていくというやり方にもあるんじゃな
いですか。
庶民の側に立った政策を掲げながら、共産党が議席を伸ばせないのは
何故ですか。
蛭田さんが今、庶民の側に立った政策を掲げながらと言われましたが、
そう思っていただくだけでも私はうれしいなと思っていますけども。
実際そう思っている人は多いと思いますが。
やっぱり今、かまびすしくやられている二大政党制の中で、それを打ち破
るだけの実力っていいますかね、力がないということを率直に反省してい
ます。
実力というのはどういうものですか。
国民の理解を得て、やっぱり共産党が必要だという風に思っていただくと
いうことですね。政策はいいけけれども、国会を動かしていくというか、政
治を動かしていくという力がないと思っている方もいらっしゃる。
街中で自民党や民主党よりも熱心に活動しているのに、投票につながら
ないのは。
投票行動っていうのは、自分とこの頑張っている姿だけじゃないんですよ。
例えば、いいこと言っているけども、国会では議席が少ないわけだからそ
う簡単に実現できないじゃないかという多くの方々の思いもあるわけです。
政権選択の話になれば自民か民主かと宣伝されるじゃないですか。
共産党に入れても死に票になるだけと宣伝されるわけですよ。
多くの人たちに共感を得るような、いや日本共産党が伸びれば政治が変
わるんですよという訴えが、多くの国民の心に響くところまで、まだ届け切
れていない結果でしょうね。
でもその結果が何十年も続いているわけで、今までやってきたことに問題
はなかったんですか。
何十年もって言われましたけども、日本共産党ができてから86年なんで
すね。戦前ですと23年間ですよ。
私たちはその点では確信を持っていまして、党が生まれたときに、民主主
義とか平和とか、基本的人権なんて言っているところはなかったわけでね。
私たちの先輩が掲げた理想が、戦後の平和と民主主義を要求する闘いを
通じて、憲法に結実したわけですよ。
まさに歴史的に役割を果たしたと私たちは思っています。だから長い目で
見れば前進をしていると。
また戦前に弾圧を受けただけじゃなくて、戦後もレッドパージをうけて排撃
されたり、職場で差別を受けたりしました。
さらにはソ連やその他の出来事について名前が同じじゃないかと攻撃を受
けるとか、数々のことをやられながら、前へ前へ進んできているわけです
から、そういう意味では私どもは楽観主義っていいますか、楽天的にもの
ごとを考えて前へ行こうと思っていますけどね。
党名を変えたらもっと支持者が増えると言う人もいますが。
私たちは党名の問題には拘っているんです。日本共産党という党名を掲
げて最後まで頑張ります。
私は今の社会体制が一番いいとは思っていません。もっといい社会を作
ろうというのが私たちの考えなんです。
資本主義社会はやはり儲けが第一ということですね。全ては儲けなんです
ね。あとは野となれ山となれという考え方なんです。
新聞やテレビで資本主義の限界ということが取り沙汰されていますが、特
に環境問題とか経済不況、それから食料とか、それらの問題が解決でき
るんだろうかという根本的疑問が提起されています。
そういう問題を資本主義では解決できないと私は思っているんです。
人類はやがては資本主義の矛盾を克服して、未来社会へ進むときがくる
と考えています。
人間一人ひとりの個性が花開いて、自由で平等な社会、真に国民が主人
公の社会を作ろうという理想と結びついた名前が共産党なんです。
二つ目の理由は何といったって、あの戦争に反対した共産党だということ
で、私たちとしては歴史を語り継いでいく上で、ゆるがせにできない名前だ
と。未来と歴史という二つ点で日本共産党という党名を我々は変えるつも
りはないということですね。
社民党という政党をどう捉えていますか。
あまり他の政党のことをあれこれ言ったことはないんですが、例えば憲法
の問題では改悪反対の立場で一緒に努力する、共闘したいと思っていま
す。
部分的にあえば共闘すると。
それはどの党に対してもね。仮にどんな政権になるにせよ、日本共産党
が選挙で伸びれば、後期高齢者医療制度は廃止しようと、それから労働
者の保護法制は作ろうという積極的提案を行っていきたいですね。
ただ政権となるとね、政治の根本方針が問われますよね。
憲法を変えるのか変えないのか、それから消費税をやるのかやらないの
かという一番根本の問題の意見の違いがあるときにね、政権と一緒にや
るとなったらそれは野合と言われますよね。
だから私たちはとしては、少なくても政権の協力はないということを国民に
言わないと嘘になりますからね。その辺はクリアにしたい。
国民要求の実現のために、一致点にもとづく国会内での協力は進めてい
ます。
労働者保護法制についても協力する方向で協議を進めています。
BSEの問題でもやりました。その過程の中でね、例えば後期高齢者医療
制度を廃止しようという場合でも、民主党は年金からの天引きは残そうと
いう意見だったんですね。
それはあかんと、いちばん怒りの対象になっているのは、先ず天引きされ
ることなんだと。だからうちは天引きをやめるという提案にしようと最後ま
で粘ったわけですけど。
筋を通す。国民の要求に忠実である。そういうことが私たちの役割だと思
っていますけどね。
日本は民主主義国家とは言えない端的な事例は。
やっぱり「職場に憲法なし」ってことだと思いますね。現場へ行けば分かり
ます。憲法には政治的自由が規定されていますよね。
例えば関西電力、東京電力、中部電力で日本共産党員であることを理由
に昇進や給料で差別があったということで裁判しましたが、勝利的和解を
しました。
これらの事実からも憲法が職場に入れば通用しないというのが日本の民
主主義の状況の一断面じゃないでしょうか。そこに今の問題があると思い
ますけどね。
それと敢えて言えば、憲法との関係で無視できないのは、アメリカ言いな
りと安保条約の問題ですね。例えばなぜ首都に基地があるのかとか、在
日米軍に対する思いやり予算というのがなぜあるのかという問題は大事な
問題ですよね。
だってアメリカ軍に対して便宜供与している国は27カ国ありますけれど、
日本が貢いでいる金は、残りの26カ国分を上回る金を出しているわけで
すから、あまりにも異常と言わなければならないと思うんですね。
だから私は基地の中に憲法なし、職場の中に憲法なしということが、今の
日本の民主主義の最大の欠陥だと思いますけどね。
自民党の政治家でも日本はアメリカに隷属したとても独立国とは言えない
と言う人がいますが。
ええ、そういう方いますね。後藤田正晴さんもおっしゃっていたように、
アメリカの窓からしかものを見ないと。その根本は軍事的な従属がある
からだと思いますけどね。
日本の安全をアメリカに守ってもらっていると。
というふうに言っていますわね、自民党は。
私たちは何もアメリカとことを構えようと言っているわけじゃないんです。
私たちはアメリカと対等、平等な関係を作ろう、日米安保条約を廃棄して
「日米友好条約」を結ぼうと提案しているんです。
安保条約は日本の国土を守る代わりに、基地を置かせるという一応の法
律体系になっていますが、アメリカ軍は日本の国土や国民を守ることにな
っているでしょうか。
配置されている海兵隊にしろ空軍、海軍、陸軍にしろ全部、殴りこみの軍
隊ですよ。日本を守る仕事などしていませんよ。
日本を守るために置いているわけじゃないんですよ。日本を拠点にどこを
攻めるかという部隊を置いているわけですから。
後藤田さんも似たようなことをおっしゃっていましたね。
後藤田さんも著書でそう指摘されていますよね。外交官の話を聞いて、
アメリカの言うことしか見てないと。こんな外交ではどうしようもないと
後藤田さんは指摘しています。
その点では、私も何度か後藤田さんと話をしたことがありますけど一致し
ていたと思いますね。
日本政府は、アメリカのやり方に対して一度として文句を言ったことはない
ですよね。例えばベトナムの侵略に文句を言ったとか、今のアフガンでも
イラクでもそうですが、アメリカの行う報復戦争、特に無辜の民を殺戮する
空爆にさえノーと言ったことはない。
つまり後藤田さんも言っておられるように、アメリカのやり方に対して日本
の政府は一度としてノーと言ったことがないわけですね。
自民党の政治家で、日本はアメリカに従属して独立国家とは言えないと
本当に思うのなら、ちゃんとノーと言っては如何かと、私は思いますけどね。
在日米軍に対する思いやり予算2500億をやめろと、これ言えるかどうか
なんですよ。
米軍がグアムに移転する費用を、日本が3兆円も負担するのは反対だと
堂々と主張できるかということですよ。だけどそういうことは言えないと思
いますよ。
なぜなら自民党の方々は従属をよしとしているんですよ。蛭田さんも、なぜ
言えないんだといっぺん今後のインタビューで問い詰めてくださいよ。
我々は従属なしで生きられると言っているわけです。世界は平等だと考え
ている。そこに哲学の違いがある。
日本はアメリカにとってどんな存在なんでしょうか。
私は思うんだけど、もしアメリカが日本に対して事を構えるとすれば、日本
の経済力って無視できないですよ。だってもし日本から輸出が止まり、輸
入が止まったりしたら、アメリカだって大弱りですよ。貿易ひとつとってみ
ても、そのくらい深い間柄ですよ。
従属をやめられないのは官僚や政治家たちが、従属をやめようとしたとき
に曝されるであろうアメリカからの脅しやプレッシャーを自ら背負いたくな
いという事なかれ主義に起因しているのでは。
そんなことはないでしょうね。だって麻生さんや自民党が主張しているの
は、日米同盟が絶対的機軸だというわけですね。
この同盟なしに日本の存在はないといっているわけですよ。まれに従属は
おかしいと言う人はいますよ。日米同盟をやめるとは絶対に言わないです
って。日米同盟で生きているんですって、こうした皆さんは。
アメリカに頼らなければ日本はやっていけない思っているからなんですよ。
私たちは違うんです。ハッキリしているのは世界軍事同盟ではなく、共同
の時代に入っていると、平等な時代だと。
「紛争は話し合いで解決する」という東南アジア友好条約(TAC)地球人
口の6割を占めることに見られるように、平和の共同体づくりの波が広がっ
ているんですよ。
毎日新聞が世論調査を毎年1月にやっていますよね。日米同盟が絶対だ
と思っている人は少ないんですって。
そこに自民党などの日米同盟絶対という考え方と乖離があるわけですね。
例の新テロ特措法の論議だって,政党の配置図というものを明確に映し出
しましたよね。私たちは憲法に関わる重大問題だ、アフガニスタンの現状、
アフガン政権の動向、戦争でテロはなくならない、などについてしっかり議
論する必要があると主張しましたが、結局最後は自民党も民主党も、この
国会での質疑はちょっとでいいと、すぐ手を握っちゃうわけでしょう。
テロ特措法については国民の多数が反対ですよ。真っ二つに割れている
のを、たった二日間の審議で通そうなどということ自体、国民をバカにして
いる議論ですよ。
ここにも政治が退廃していることが現れていますよね。
日本共産党が最終的に目標にしているものは何ですか。
先ほどの党名に関するところでお話ししたことですが、私たちは社会主義、
共産主義を目指しています。
先ず資本主義の枠内での民主的改革を実現するということが大方針です
ね。それは大企業中心のルールなき資本主義を正して、国民の暮らしと
権利を守るという経済社会、つまりルールある経済社会を作るということ、
アメリカ言いなり政治を改めて、独立、平和の日本を作ることですね。
そういう社会を作る可能性はありますか。
国民のための改革は、21世紀の早い時期に実現できるように頑張ります。
最終目標の社会実現には長くかかると思います。
10年、20年という単位ではなくて、相当かかると思いますけどね。
時間がかかっても諦めないと。
諦めるとか諦めないとかじゃなくて、例えば資本主義の今のありようとし
て、資本主義の限界と言われるような現実に直面していますよね。
投機マネーが暴走して、いまやカジノ資本主義の破綻と、それに伴うアメリ
カ発の金融不況が起きていますよね。こういうカジノ資本主義や投機マネ
ーの暴走などが永遠に続くとは思えないですよ。
極端な金融自由化と規制緩和のもとで、マネーゲームに狂奔するような
社会は続かないというのが私たちの考えです。こんなこと長続きしません。
格差社会になってきた今、「赤旗」が売れているそうですね。
少しづつではありますが。「しんぶん赤旗」は増えて、日本共産党員もこの
1年ほどの間に1万2千人増えていますね。(笑)
世の中がおかしくなると伸びて、安定すると減るというのでは困りますよね。
そんなこともないですよ。蛭田さん、誤解あると思うんだけどね。日本社会
なり、資本主義社会が混乱すれば日本共産党が伸びるとそう思っている
んじゃないですか。
そういう話を聞きますが。
そこが誤解なんですよ。例えば1972年に日本共産党は伸びているんで
す。
田中角栄氏の日本列島改造で、経済がグーッと伸びた時代に、うちもガバ
ッと伸びている事実があります。ことは単純じゃないですわね。
私たちは、先ほどお話したように、ルールなき資本主義を正して、ルール
ある経済社会を作ることが当面の目標なんです。それはルールある資本
主義を作ると言い換えてもいいでしょう。
資本主義が健全に発展すればするほど、次の社会に進む条件が熟する
というのが私たちの立場なんです。
もちろん今の自民党、公明党の悪政はひどすぎますよね。この悪政への
怒りが政治を変えたいとの思いになり、その役割を日本共産党が受け止
める。その受け皿であるとは言えますね。
今後の大きな目標と決意をお聞かせください。
やっぱり大目標は憲法ですね。
憲法を暮らしの中に活かしていくということが必要な時代が来ます。
平和主義を徹底し、生存権を規定している憲法というのは、世界にほとん
ど例がないくらい先駆的ですよ。
生存する権利を高らかに謳いあげた憲法を、実際の政治と生活に実現さ
せることですね。
憲法が本当にこう花開いていく社会というのを私は目標としているし、その
目標を実現するために最後まで頑張りたいというのが決意です。
ありがとうございました。
こちらこそありがとうございました。すいません、いろいろ言いまして。
 Copyright (C) 2006 YUICHI HIRUTA. All rights reserved.

2008.2.17  於葛飾区柴又、自宅書斎
平沢勝栄 自民党、衆議院議員
≪インタビュー≫  聞き手・蛭田有一  
警察官時代、犯人と格闘して逮捕したという経験はありますか。
私にはそれはない。犯人逮捕の現場に行ったことは何回もあるんです。
いろんな重要な事件の指揮を取ったこともあります。例えば、茨城カントリ
ー事件とか、豊田商事事件とか、大型詐欺事件の指揮も取りました。
写真家の関係でいうとアラーキという写真家の逮捕を指揮したのは私なん
です。樋口加南子の写真集が出たときは、私は防犯部長をやってまして、
警視庁の担当が検挙すると言ってきたんです。
樋口加南子の写真集自体は芸術性のあるものでしたが、当時はヘアが出
ているかどうかで自動的に卑猥か卑猥でないかを判断していたからです。
警察ではなく第三者に判断させたほうがいいだろうということでマスコミや
学者、主婦の代表とかいろんな方に判断させました。
そしたら驚いたんですが、全員が検挙する必要はないと、地検も検挙する
必要はないということで、従来の方針を変えたのです。
自身をどんな警察官だったと思いますか。
自分自身、その時点で評価されなくても、いずれ分かってもらえればいい
ということでやってきたので、おそらく周りの見る目は、はみ出し警察官だっ
たと思いますよ。
政治家は地元に行ったらどんな人とでもあって話をするわけですよ。
どんなふうにはみ出していたんですか。
例えば卑猥の方針を大きく変えたときもそういうふうに思われたでしょう。
それから1988年「パチンコ疑惑」というのが起こったんですけど、あれも
火をつけたのは私なんですよ。
それはパチンコ業界の脱税がワーストワンを、ずっと続けていましたので、
売り上げを明らかにする方法を業界に考えろと言って、プリペドカードの導
入を支援したのですが、まあもの凄い嫌がらせや攻撃を受けました。
あの業界は北朝鮮系がもの凄く多かったもんですから、北朝鮮に対する
嫌がらせや狙い撃ちだということなんです。
当時外国籍のパチンコ業者や朝鮮総連から献金をもらっていた人たちは
一杯いたんです。
朝鮮総連は国会議員だけではなしに、マスコミなどいろんなとこに手を廻し
ていましたから、私はあちこちから集中攻撃を受けて、もう本当に火達磨
でした。
仕事とはいえ大変でしたね。
ですから政治家も役人もそうですが、その時点での評価をあまり気にせず
に、正しいと思ったら突っ走って、後は後々の判断に任せればいいんです。
後藤田先生も最初は悪の権化みたいに言われたけれど、最後の頃になる
と、いろんなマスコミから政治家の良識の代表みたいなことを言われた。
まあそういうもんじゃないですか、世間やマスコミというのは。
政治家にはいろんな人が近づいてくるんでしょうね。
誰とでも会わなければならないのが我々政治家です。政治家や警察、お医
者さんは、人を選ぶわけにjはいかないんです。
政治家は地元に行ったらどんな人とでも会って話をするわけですよ。
すると大体分かりますよ。この人が何を考えているのかがね。
選挙の直後、真っ先に駆けつけておめでとうございます、おめでとうござい
ますと。そして一番前で万歳、万歳と言う人の中には、全然応援してくれな
い人もいる。よく分かるんですよ人間が。
そんなこと言って大丈夫ですか。
構わない、構わない。そういう人もいたということね。
選挙をしていると本当に人間というのが分かる。要するに選挙というのは、
一番苦しいときに必死になって応援してくれる人、途中から応援してくれる
人、選挙が終わってから応援してくれる人、選挙が終わっても応援してくれ
ない人といろいろです。
見ていれば、応援をしている振りをして全然応援してくれない人は全部分か
る。
それは顔ですか。
表情で分かる。顔の表情で応援してくれているか大体分かる。
選挙応援に行ったとき、集まっている人たちの表情を見る。そうするとこの
選挙が勝てるかどうかが大体分かる。
ひとことで言うなら、命を懸けてでも応援するという人がどのくらい集まって
くれるかが選挙の決め手になるんです。
選挙をやると人間というのがよく分かる。本当に信頼できる人間かどうかが
すぐ分かる。だから人間を知るという点でも政治の仕事は最高だと思いま
すよ。
私が政治家になるときに言われたことが二つあって、ひとつは書道とダンス
を勉強しろと、もうひとつは政治家の世界は人間が信用できない、いつ裏切
られるか分からないと言われて政界に入ったんですが全くその通りでしょう
な、これは。
だから状況の変化でカメレオンみたいにくるくる変わらない人たちを、いか
に自分の傍に置くかということでしょう。たとえ自分の意見と違ってもいい。
その人が絶対に変わらない、ぶれない人かどうかということです。
影響を受けた政治家は。
私はイギリスの大使館で保守党を担当していたことがあるんです。
サッチャーの時代に、イギリス病ということで経済はどん底に落ち込んだ。
ストライキは続くわ、失業者は増えるわ、街頭でデモは起こるわ、治安は悪
くなるわで、それを立て直すためにサッチャーは大鉈を振るった。
それと北アイルランド紛争が熾烈を極めていましたが、これに対するサッチ
ャーの毅然としたリーダーシップには非常に感銘しました。
もうひとつ感銘を受けたのは、フォークランド紛争ですね。アルゼンチンの
近くにあるイギリス領の島に、アルゼンチンの軍隊が進駐したことにサッチ
ャーは怒って、あんな遠くにまで軍隊を派遣して、それを取り返してしまっ
たんです。それはサッチャーのリーダーシップですよ。
北アイルランド紛争では、獄中のIRAの連中がハンガーストライキで次々
死んでいくわけですよ。
そのときサッチャーが言ったのは、死んだって私は絶対に譲らないと。
まさに鉄の宰相というか、それを見て私は、リーダーシップとはこういうもの
かと思った。
日本では後藤田さんからいろんなことを教えてもらいました。後藤田さんの
ぶれない姿勢。
もうひとつは、後藤田さんは下の人間に非常に暖かい。逆に、上に対して
これだけ厳しい人は珍らしい。
普通の人は逆なんです。私は秘書官でしたが運転手とかSPとか、そういう
人間に対しては物凄い配慮をして、逆に上の人間には物凄く厳しい。
後藤田さんが役人やマスコミに言っていたことが三つありまして、一つは、
お前たちは名刺が偉いんであってお前たちは偉くないんだぞと。それから
一日30分でもいいから必ず本を読んで勉強しろと。
もう一つは、何かこの分野で絶対に人に負けないという専門分野を持てと
必ず言っていますよね。実際ご自分でも努力しておられた。
社会全体に非常識、無責任、利己主義が蔓延しています。日本人がこう
なったのは何故。
子供も大人も役人も政治家もみんな同じレベルになっちゃったんです。
かつては政治は三流だけど経済や学問は一流と言われましたけど、経済
も三流、学力も三流、モラルも三流。日本はどんどん後進国になってしま
った。
以前、中国の李鵬首相が日本はこのまま行けば、20年後にはこの地上か
らなくなると言ったことことがあるんです。残念だけどその通りになっている
んじゃないですか。
そうならないためにもその原因を追究しなければ。
山田洋次監督が2月号の「文藝春秋」に、昔の子供は貧しいけれど目がき
らきら輝いていた。今の子供たちの目はどんよりしていると書いている。
昔の子供は貧しいけれども目標があった。
今、子供たちは豊かで目標を失ってしまったとも書いている。
結局何をしていいかわからない。目標を失って右往左往している中で、いろ
んな問題が出てきている。私はそうだと思いますよ。
子供だけでなく政治家や官僚、企業家、一般市民までおかしくなっている。
何故でしょうか。
社会全体がおかしいとなって、突き詰めれば戦後の社会のあり方ということ
になるし、日本国憲法にも問題があると思う。
日本国憲法を見てみれば、憲法の中に権利というのが十いくつも書いてあ
る。義務というのは教育と納税、それに勤労だけじゃないですかね。
義務というのはほとんどないですよ。
私は日教組の教育が間違えていたと思います。子供たちの競争を悪とし、
みんな平等であると。
旧ソ連に対する憧れを教えていたし、北朝鮮もすばらしい国だとずっと教え
てきたわけで、私はこういう弊害も大きかったと思いますよ。
学校現場も偏っていたし、社会も歪んでいたと思います。そういう中で私た
ちの頭は洗脳されていったわけですから、日本の社会がおかしくなるのは
当り前だと思いますよ。
日本の戦前にはいいところが一杯あった。軍国主義や皇民主義に走ったの
は間違いだったけども、良いところも一杯あったんですよ。
ところがその良いところもすべて捨ててしまった。時計の針でいえば、戦前
は右にぶれていた。その反動で左にぶれて真ん中に戻っていない。
その真ん中に戻っていない過程で、今いろんな問題が出てきたんじゃない
かという感じがします。
日本の常識が世界の非常識、世界の常識が日本の非常識なんてことは山
ほどあるわけです。何故こうなってしまったかと言うと、日本のあり方の問
題、憲法も教育も含めて全て戦後のあり方に起因するんじゃないかなと思
いますね。
日米、日中関係でなにか問題を感じることはありますか。
日米関係は大事ですけど、それが全てではないんです。
アメリカの悪いところは自分たちのやり方が世界中で通用すると思っている
んです。これは間違いなんでね。
アメリカは自分たちと違う生き方、考え方、文化、伝統があることを尊重しな
いと、世界中に敵を作ることになりかねない。
日米同盟は大事ですけど、そこはしっかりとアメリカとは自制しながら付き
合わないといけないと思います。
日中関係は将来のことを考えたらきわめて大事で、中国に従属するという
形ではなく、対等なパートナーシップとしてどうやって良好な関係を築くのか
を考えていかないと、これまでのアメリカと同じように中国の植民地にもな
りかねないという感じがします。
要するに国会は親米派と親中派に分かれて、親米派はアメリカとパートナ
ーシップで行くんじゃなくて、アメリカの植民地みたいな形で行くのが親米だ
と思っている。
逆に親中派の人たちは、中国の植民地みたいな形で行くのが親中派みた
いな感じになっている。どっちも不幸な形になると思いますよ。
アメリカも大事、中国も大事。それはものを言える関係を作っていかなけれ
ばならないと思いますけどね。
アメリカとの植民地的関係が日本人の根底を歪ませていると思いますが、
そこから抜け出すためには何をなすべきか。
日本がアメリカの植民地的な状況でいるというのは二つあって、一つは安
全保障上、もう一つは経済なんです。
日本はかつてアメリカがくしゃみをすれば風邪を引くといった関係にありまし
たが、今でもその状態は残ったままです。
アメリカは日本との貿易では大幅な赤字を出しているんです。ですから、
日本の経済にとっては大変なプラスになっているわけです。
もし本当に植民地から脱していくためには、安全保障上の問題で日本を取
り囲む核保有国から日本の安全をどう守るかということも考えなければなら
ないんです。
今、日本の核抑止力はアメリカに頼っています。経済では日本は今中国に
どんどん依存していますが、アメリカにも大きく依存している。
この状態からどう脱却していくか。この両方ができない限り、本当に日本が
独立できるとは私は思わない。どの政党が政権を取ってもこれは同じだと
思いますよ。
政権交代のメリットは何ですか。
日本の唯一最大の不幸は政権交代がないことです。これがないために政
治、行政、いろんなところに病弊が溜まっているんです。
大改革をやろうとしたら、政権交代がないとこれはできないでしょう。
日本の本当の劣化は政権交代がないことによる緊張感のなさからかも知れ
ません。政権交代がないから緊張感が出てこない。政治家にも、企業の経
営者にも役人にも緊張感が出てこない。みんな出てこない。
政権交代が行われれば経済政策にしろ公務員改革にしろ教育政策にしろ、
みんなが鍋を削って競争するでしょう。必死になってやりますよ。
最大の目標は政権を取ることなんですが、自民党は政権党であることを当
然のことのように思っているし、野党は野党であることの満足しちゃっている
んですから、これじゃあ政治がよくなるはずがない。
政治が良くならないというのは、他の分野が全て良くならないということに繋
がってくるんです。
政界再編はどんな理念の違いで分かれたらいいですか。
小さな政府にするのか、大きな政府にするのか。或いは高福祉国家を目指
すのか。自己責任型の社会を目指すのか。こういうことで分かれてくる。
保守かリベラルか、憲法改正か反対かではどうですか。
憲法改正とか教育のあり方とか、そういったものも当然アジェンダになるで
しょう。新米か親中かという分かれ方もあるかもしれません。親米というのは
親台湾ということです。
例えば平沼赳夫さんや中川昭一さんたちは完全な親台湾派ですからね。
安倍さんも麻生さんも親台湾です。
新聞で言えば産経は親台湾です。そういう形で行くことはあり得ると思いま
す。
親台湾というのは少数かと。
いやそんなことはないです。結構いますよ。中川さんのグループは多くが
親台湾派でしょう。60人とかいます。
民主党の中でも例えば、日本会議所属のメンバーは大体親台湾派です。
こういうので分かれるというのはありますけど、ただあれだけ韓国、中国に
距離を置いた人が総理になった途端に先ず韓国、中国に行くという方もおら
れましたから、変わる可能性があります。
この考え方で政界再編をやってもこれを本当に貫き通せるかどうか。
絶対に変わらないのは、簡単に言えば市場原理を導入するのかしないのか、
自己責任でいくのかいかないのか、そういうことで大きく分かれる。
平沢さんはどちらの方ですか。
私は基本的には自己責任の方です。ですから大きい政府、高福祉型では
ありません。高い税金でスエーデン、ノルウェー、デンマークなどの福祉国
家型を目指すのか、それともみんな競争をやってその競争から落ちこぼれ
た人には再チャレンジの機会を与え、ドロップアウトした人にはセーフティ
ネットを張る。そうしないと社会は活性化しない。
今、日本の医療は世界に冠たる平等なシステムなんです。医療はある程度
仕方がないとしても、他の分野に平等主義をやったら日本はどんどんダメ
になってしまいます。
だから努力した人にはそれなりに報われる社会を作る。ある程度の格差は
仕方がないです。
みんな平等というのはかつてのイギリスがそうだった。イギリス病と言われ
たときのイギリスは所得の高い人からめちゃめちゃに税金を取ったんです。
結局イギリスの金持ちはどんどん外国に逃げちゃって、本当にいい人がい
なくなっちゃった。
こうしたこともあってイギリスは社会全体が沈滞化してしまった。
日本もそうなりかねないです。
政治家としてぜひとも実現した課題は。
まだ日本の戦後は終わっていません。例えば北方領土は帰っていません。
北朝鮮との外交関係も樹立していません。戦争直後に起こった問題をまだ
引きずっているのは世界で今この地域だけなんです。
ですからこの戦後を終わらせるというのが外交的には一番大きな問題でし
ょう。国内的には、ぜひやりたいと思っているのは競争社会と小さな政府で
す。政治の一番の役割は税金をできるだけ安くして、所得の少ない人もお
金持ちにもできるだけ安くして、そのためにも行政とかの無駄を徹底的に
省く。そして最低限のセーフティネットを張る。
これが政治の目的なんですよ。ところが日本は何でもかんでも面倒を見よ
うと、行政を肥大化してやろうとするが、これでは税金をいくら取っても足ら
ないですよ。だから行政については全面的な見直しが必要です。
しかし今の自民党じゃできないと思いますよ。自民党はどうしても今までの
負の遺産、しがらみを引きずっていますから。
ではどこの党ならできますか。
新しい党を作らなければならない。やっぱり政界再編がないとダメですね。
今までのしがらみを切り捨てなければできないですよ。役所は既得権益を
絶対に離さない。役所に無駄はいやというほどあります。ですから民主党が
言っていることは基本的に正しい。
いろんな無駄を省けば相当出てくる。しかし民主党の言っていることで一つ
だけ間違いは、そう簡単にこの無駄は省けない。政権交代でも簡単にはで
きない。
日本を作り直すためには、もう一回GHQに来てもらうしかないと思っている
んです。日本を本当に作り直そうと思ったら。
政治家の本当の力量が問われますね。
小泉さんみたいにあれだけ国民的支持、人気があっても、できることとでき
ないことがある。なぜかというと議会制民主主義をとっているからです。
大統領制だったらもっとできるんです。
私は前々から日本を本当に立て直そうと思ったら、もう一回戦争に負けるか、
もう一回GHQに来てもらうか、そのくらいのつもりでやらないとできない。
日本の前途は絶望的ですね。
ですからその問題意識を国民全員が共有できれば、そこでまた変わって
くるでしょう。今のままだったら私はダメだと思う。
日本が変わるためにGHQに来てもらうと今言いましたが、もう一つの方法
としては落ちるとこまで落ちたらいい。落ちるとこまで落ちたらこれではダメ
だと、何かしなければという危機感がでてくる。
こんなことはあっちゃならないけど、日本の山中にミサイルが打ち込まれる、
そのくらいのことがなければ目覚めないんじゃないかという気がしないでも
ないです。
落ちるとこまで落ちないで日本を立て直す方法を考えるのが政治家の仕事
なんです。だけどこれは大変だと思います。例えば小泉さんだって大統領
制だったら思い切った改革ができたと思います。
いくら頑張っても日本の総理大臣の権限なんて極めて限られていますから。
常に党に気を遣わなければならない。アメリカの大統領は4年間の身分が
保証されている。
韓国だって5年間保障される。日本の総理なんて回転寿司のようにくるくる
変わるわけですから。
中国の李鵬首相が20年後にこの地上から日本という国がなくなると言った
ことは、癪だけど当たっているなという感じがしますね。
規制のシステムを全部ぶっ壊して新しいものを作る。そのためには今の制
度、システム、社会状況の中で、革命的な改革ができるかどうかに係って
いるんじゃないですかね。まあ難しいと思うな、これは。悲観的になっちゃい
ますけど。
結局日本は過去のいろんな問題を引きずったまま、一進一退を繰り返しな
がら、国際スタンダードの中でどんどん立ち遅れていく、ということになって
いくんではないですか。
長時間ありがとうございました。
いやいやありがとうございます。
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2008.8.28  文京区千駄木のマンション自室
河村たかし 民主党、衆議院議員
≪インタビュー≫  聞き手・蛭田有一
日本の将来で心配していることは。
心配しとるとすれば、ひとつは国内だと税金払う方が苦労しとって、税金
で喰っとる方が極楽という、これ庶民格差といいますかね。
議員が職業化しとる。議員が職業化すると、例えば憲法九条のこととか
靖国参拝問題とか、そういうことを国会で議論せんようになるんです。
損か得だけやっとればいいもんで。
それで総理になる人はみんな平安貴族みたいな人ばかりで、民主主義
のアメリカから嫌われて日本よさようなら、中国こんにちはとはならへん
かね。このままやっとると。
だから安全保障でとんでもない危機を迎える可能性があると思います
ね。
政治家として、河村さんの信念、こだわりとは。
信念は、今回党首選に向けて河村ビジョンを出しましたけど、その表題
は庶民革命ですわ。
僕は従業員4人くらいの古紙屋の息子として育ったんですけど、大学を
出てすぐ家の仕事をやりました。長男ですからね。
トラック乗るのも上手いし、フォークリフト乗るのもわしは名人ですけど
ね。フォークリフトの運転席の目線、納税者の目線といいますかね。
議員の目線じゃないです。
議員というのはパブリックサーバントですわな。本当はいなくていいんで
す、役所があるから。
年収100万、200万、300万400万。500万くらいの人たちから
政治を見ると、なんのこっちゃと、八百長じゃないかと思いますわね、
これ。パブリックサーバントが逆になっちゃった。だからフォークリフト
の目線で日本の国を見ると、そういうことです。
議員年金廃止では河村さんの政治姿勢は鮮明でしたね。
世界中で議員はボランティアななんです。日本だけ違うんです。ボラン
ティアはただじゃなくて寄付でやるんです。
外国は自分の意志でいいと思う人に払うんです。2票持っているようなも
のです。1票には名前を書き、もう一票はお金で投票するということです。
いいと思う人に寄付しないと、その人は政治活動ができないということを
知っているからです。
ところが日本は議員年金も議員宿舎もそうですけども、国会議員は立
派な仕事だから身分保障して、いい仕事やってもらえりゃいいと言う人
がいますが、そんなことは世界中で日本だけですわ。
税金で身分保障して政治をやってもらうというのは国王と言うんであって
議員とは言わないです。
志を持って政治家になっても次第に権力のとりこになる人は多いですか。
みんな議員で仲良うして、ほとんど議員生活防衛軍になっていますよ。
外国はほとんどボランティアだからそうはなれないですよ。ラーメン屋が
美味しいラーメン作らんと収入がないのと同じで、いい政治をやらないと
収入がないんですよ、寄付ですから。
民主党議員でも議員年金廃止に、内心賛成じゃない人は結構いますか。
そりゃあほとんどが今のままがいいですよ。いったん議員になって、税
金で身分保障されたらこんないい仕事ないですわ。これ極楽ですよ。
一応、国会議員年金はなくなりましたわね。その代わり、私はめちゃくち
ゃ議員に嫌われるようになったということですが。
でも地方議員年金が残っていますから、これは即刻やめないかん。
世界中にどこにもないですよ。ありえないんですよ。ボランティアが当た
り前。
それを言うと、そういうのがないとやれんと言う。そうしたら、ああそうで
すか、そんなに大変ならお辞めになったらどうですかと言えばいいんで
すよ。議員が辞めたって世の中何も変わりませんから、役所があるか
ら。日本は官僚国家だとみんな言うけど、これ嘘なんです。
日本職業議員国家なんですよ。
尊敬する政治家は。
そうですね、私はリンカーンが好きですけどね。あの人は丸太小屋から
大統領ということで、2回選挙に落ちてるじゃないですか。
私も同じで、丸太小屋ではないですけど。
日本人では。
日本人はあんまりピンとこんなあ、そういう夢を持たしてくれるような人は
残念ながら歴史上の人物くらいまで行かんとね。
戦前に粛軍演説をやった斉藤隆夫さんはなかなかいいですわね。「聖
戦という美名の下に」という有名な演説ありますわね。
あの戦争の状況の中で、この戦争は間違っとると言った。すごい勇気で
すわな、これ。
わしは左じゃない方なんですけど、自衛か侵略かは別として、戦争で国
民に大打撃、大損害を与えたことについて、先ず総理大臣が日本国民
に謝罪せなあかんですよ。それからちゃんと保障しないと。それないん
だもん。
中国や韓国ばっかり行って土下座してるだけで日本国民に謝罪しない。
そういうところがね。
日本人だけでも300万人も亡くなっている。
そうですね、うちのお袋のお袋も名古屋の空襲で死んでいますけどね。
お袋も2年前に亡くなったけど、そりゃあ言っとったなあ、全部なくなって
も誰も謝りもないと。
ほんで職業軍人のお偉いさんだけが軍人恩給もらってると、そりゃあ、
どういうことだと。
小沢一郎代表をどう評価していますか。
いろいろ言ってもええですけどね。今党首選で20人集めようとしている
ところですが、わしは新進党だったで小沢グループの中におるわけです
だから小沢さんの悪口言ってくれるなと言われてるもんで、なかなかあ
れなんだけど。(笑)
小沢さんは好きですか。
いやあ、好きだということにしておかにゃあいかんですけど、まあなんと
も言えんですけど。
党首選ではリーダーたる者は、自分でこれだというものを言ってもらわ
にゃ。例えば憲法九条変えるとか変えないとか言って、引っ張っていっ
てもらわにゃいかんけど。
僕は河村ビジョンとして全部出してあります。私が総理ならこういうことを
やりますと。
小沢さんはそういうものはまだ。
いやあ、まだ出てないでしょう。それと長いことっやられたんだでよ、そろ
そろわしらにやらせてもらいたいけどな、正直言うと。(笑)
河村さんが毎回党首選に立候補する狙いは。
議員をボランテアにしようとすることは総理にならないとできんですよ。
長いこと税金で食ってきた人ばっかりの下にいては実現できないです。
議院をボランテアにするとほんとうによくなりますよ。減税できるようにな
りますよ。
日本が財政危機というのは嘘ですから。オギャーと生まれた赤ちゃんが
600万も借金があるなんて大嘘です。
600万という国債の財産があるというのが本当ですから。今の国債とい
うのは金がないときに、無理やり発行したものではないですからね。
皆さんが貯金すると、銀行貸す先がないので余っちゃうんです、金が。
余ると経済学の原理で、貯蓄されたカネは必ず投資されなきゃいけないんで
す。だから国債を出して国が投資をしているんです。
今は敢えて国が金を使っている状況。増税なんか全く無用で財政危機
なんてとんでもない嘘なんです。
善良なる庶民が、国も借金漬けなんだで自分の生活苦しいけど辛抱し
ようとなりますけど、嘘だよ、あんなもの。何で日本の国債これほど売れ
るのかね。何で議員年金とか、1700億の議員宿舎、議員会館を作り変
えるのか。
地方に行くと一番最初にようなるの建物はみんな市役所じゃないですか
財政危機なら一番そういうところがボロくなるはずじゃないですか。だか
ら嘘なんです。
日本のトップリーダーとしてふさわしいと思う人はいますか。
民間人で一番好きな人は、カレーハウスCOCO壱番屋の社長、いま会
長だけれど、この人はゼロから上場会社を作った人です。
それで裸で生まれたんで、最後も裸になって全部寄付すると言って、名
古屋にコンサートホールを作ったり、バイオリンもストラディバリウスの
いいのを買って五嶋龍ちゃんに無償貸与したりしてすごいですよ。
こないだビックリこいたのは、そこのコンサートに行ったとき、去年の冬
だったけど、入り口で一人ずつにお礼を言っているわけですわ。
コンサート主というか会館主が、くそ寒いのに一人ずつお礼言っている
の聞いたことがない。
そういう人に総理やってもらわにゃいかんわ。普通ゼロから作り上げた
人だと、ええ車に乗って遊び回るバカが多いけども全然違う人ですわ。
偉いもんですわ。そういう人が総理大臣やるとようなりますよ。
民主党の魅力と問題点については。
民主党の魅力はやっぱり河村さんがおるということですよ。やっぱりそう
じゃないですか。
それから足らざるところは今言ったように、これが構造的なんですけど、
収入が税金になっちゃったわけです。
15年前の政治改革を失敗したんですね。リクルート事件が起きたとき、
献金によって悪いことをやるから税金でいこうということで、政党交付金
にしちゃったわけです。250円ずつ皆さんは払わされとるわけですわ。
去年民主党に120億、自民党に180億のキャッシュが入った。
何に使っても結構ですと、そんな国どこにもないですわ。そういうのを役
所と言うんではないですか。世界で一国もないですよ。
収入の95パーセントが税金となるとどういうことが起こるかというと、ラ
ーメン屋を税金でやったら、うみゃあラーメン作るかということだな。
だから党首選なしというとんでもない話が出てくる。外国で党首選なしだ
ったら終わりだと思いますよ。
国民主権とは、日本国民が総理大臣を選ぶのに関与できるということで
すよ。日本は首相公選制じゃないから、党首を選ぶ過程で参加して党首
が総理になるわけで、党首選やらないと政党にならないですよ。
次の選挙後、どんな理念の政界再編を望みますか。
政治というのは金持ちと庶民の対決になるんです。人類6000年必ずそ
うなるんです。そうならにゃいかんです。ほんで金持ち側は増税です。
庶民は減税です。
大きな政府と小さな政府とか、保守とリベラルとかいろいろ言われています
が。
そんなものにはならないですよ。日本は税金で保証されていますので、
理念で分かれません。
に戻せなんて言っとる。政党Aと政党Bを形式的に作って、Aがいかんな
らB、BがいかんならAそんなこと言っとる国は世界中にないですよ。
形式的に議員を二つに分けただけですから。
そうすると今後の展開はどうなりますか。
民主党の中には自社さもあり、自自連立もある、実際は。
自民党の中には新進党だった人が80人も90人もおるんだから、すぐな
んとかなりますよ。
公明党が民主党にくっつくというのは。
分かりませんけど。大体今までの政治がそうじゃないですか。
本当に自民党をノックアウトさせなきゃいかんといって、民主党には自社
さあり、自自連立ありでしょう。幹部みんなそうじゃないですか。
私は当選以降はいっぺんも自民党を支持したことはないですよ。これも
のすごくめずらしいですよ。
新進党で一緒だったとき、自民党ではいかんと言っていた人、自民党内
部では変えられんと言っとった人、みんな自民党に戻って大臣になって
おる。めちゃくちゃですから。大臣になりたいひとばかりですら。
そういうことをマスコミもあまり批判しないんですよ。番記者は政治の理
念じゃなくて、政治家個人に付いていますから、その政治家が出世すれ
ば番記者も出世する。延々と庶民は苦しむと。
これ応仁の乱ですわ。
マスコミの中には民主党に厳しく当たるところもありますね。
そうですかね、民主党に対してマスコミはどえりゃあやさしいと思います
よ。外国って党議拘束はないですから、そもそも。党が賛成だとみんな
賛成って、日本だけですから。
そんなら議員の理念はどうなるんですか。有権者は何を照準にして投
票するんですか。顔がええとか、世話になったとか、そうなるじゃないで
すか。
そもそも外国が何で党議拘束がないかといったら、ボランティアになって
るからですよ。寄付集めるのに嘘言ったらお金が集まらんからです。
ラーメン屋が嘘のものを出したのと一緒です。
そこの根本が狂っているから、応仁の乱を繰り返す。応仁の乱は京都
中を焼け野原にして、庶民を苦しみのどん底に落とし込んだで。
そうなると思いますよ。
どんな国、社会を目指したいですか。
今回出した河村ビジョン、庶民革命って。
庶民革命の中身の一つは議員ボランティアですね。ボランテアというの
は寄付金化ということですね。2番目が消費税減税です。3番目が党議
拘束撤廃です。
中学校単位ぐらいのボランティア議会を作ってね。市町村議会はやめた
ほうがいいです。職業議員ではもうだめなんですよ。
議員が職業になるといい仕事をやらない、ええ人は1割ぐらいはいます
けど。
だけど8割はもう長くやってそれで食うようのなると、どうなるかというと
他の候補者が出んようにするんです。今現実にそうじゃないですか。
日本中の地方議員は労働組合とか世襲とか、ほとんどが指定席ですよ
普通のおばちゃんなんか議員にはとても出られませんよ。
そうなると議員って役所と仲良くなるんですわ。一番強いものと。だから
行政改革なんてできない。
だから世界の標準にしたがって中学校単位ぐらい、人口1万人ぐらいで
すけど、夕張だって1万2千人ですから。
そこに4人ぐらいのボランティアの議員を作って選挙をやる。任期は2年
で2期までと。アメリカはそうですけど、地方議会は政党を名乗っちゃい
けないんです。これ何故かというと談合するからです。
党で賛成しようという党議拘束は官製談合になっちゃうんですよ。
そういうボランティア議会に介護だとか、任せたらどんだけ地方に活気
が出てくるか。
予算見れば分かりますが、日本にはすごいお金があるんです、実は。
ほんで秋田の山奥まで中学単位でちゃんとお金がいきますから、地域
格差も是正される。
役人と議員と補助金という仕組みでやっている連中がクソみたいに儲か
っとるんです。ほんで肝心の税金を払っているおばちゃん方には、金が
回ってこないで途中でなくなってしまう。介護が一番いい例ですけど。
河村さんの考えに共感を持つ議員はどのくらいいるんですか。
まだ勢力にはならんですよ。
僕が言ってもほーと言ってるぐらいなもんですよ。同志的な人間はおり
ますよ。だけど国会議員も職業議員になると、地方議員に応援してもら
う人も多いわけですわ。
そうするとボランティアに変えるちゅうのはたいへんですわね。役人が狂
うとるのは議員が変えりゃいいんですが、議員が狂うとる場合は国民が変えりゃいいといったって、選択の余地がないじゃないですか。
立候補制だもんで、大変ですよ、これ。
河村さんのビジョンを国民に広く知ってもらうには。
それはやっぱり党首選に出ることです。そこでアッピールすれば、なる
ほどとみんなに思ってもらえますよ。だけどそれが苦しいわね。
なかなかね、しゃあねえわな。
最後の質問です。生まれ変わったら次は何になりたいですか。
面白いのは演歌歌手にでもなりたい。やっぱり大衆の中で楽しいじゃな
いですか、夢もありますしね。まあそんな感じですかね。自嘲的ですけ
ど。やるなら農業もいいいけどね、百姓。
わし今、名古屋で米をちょっと作りかけてる。飼料米を2反ですけど。面
白いですわ。楽しいですわ。
ありがとうございました。
いえいえ。
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2009.12.25   新宿区内藤町
海江田万里 民主党、衆議院議員
≪インタビュー≫  聞き手・蛭田有一
前回の選挙では小泉旋風が、今回は民主党へ追い風が吹きましたが、この
国民の風をどう思いますか。
特に最近は風というものが強く、国民も意識しますし、私たちも意識するよ
うになりましたね。
それはどうしてかというと、いま日本が曲がり角に来ていると思うんですよ
まだその曲がり角の行き先が分かりませんから、ちょうど国民が試行錯誤
する時期だと思うんです。
小泉さんの時は、正にアメリカ流の改革で一回やってみようと国民が大き
く舵を切ったわけですよ。
ところがどうも上手くいかない。ある程度の差は必要ですけど、ここまで拡
がると今度は社会がかえって停滞してしまうんで、これじゃいけないとまた
国民が舵を切ったということだと思うんですね。
結局日本の行く道がまだはっきりしていない。どうしていいか国民もわから
ないし、政党もわからない。
そこで大きく右に行ったり左に行ったり舵を切ることになる。
それが風と呼ばれているんじゃないかと私は考えていますけどね。
そういう意味では風を肯定的に捉えていると。
はい、悪いことではないと。
今の試行錯誤の時期では、これはやむを得ないと思います。
だから今度、民主党の改革がおかしくなったら、またもう一回揺り戻しがあ
ると思っています。
政治家として一番力を発揮できると自負する分野は。
財政と経済ですね。
財政というのは、国の借金や予算の作り方をどうしていくのかということ
で、経済というのは、お金を回して行くことですけども、日本はそのほかに
多額の借金を抱えていますから、この借金の重みで日本の国が潰れない
ようにするにはどうするかが、これは私の専門分野ですが、これからの
課題ですね。
政策を実行できる与党となった今、これだけは実現したいと思う政策は。
なるべく増税しないで財政を再建するということです。
今回民主党の政権で新たな借金を44兆円に留めた。この44兆円という
のは去年、自民党が作った借金ですから。
私はこれを上回ってはいけないと思いまして、国会の予算委員会で鳩山さん
に是非これを守ってくださいと言ったら、鳩山さんも守ると言ってその約束
は守られたんでね。
やっぱり借金というのは次の世代が返さなきゃいけないわけですよね。
今の世代は沢山いますけども、次の世代は少子化ですから。もうこれ以上
借金してはいけません。
増税するのは簡単なんですよ。消費税を上げちゃえばいいんですから。
だけど今、消費税を上げられる状況にはないんでね。
いつか負担を求めなきゃいけませんが、今はできるだけ増税しないで、どう
やって借金を減らしていくかということに一番心を砕いていくと、これからもね。
近年の日本の社会や日本人そのものの荒廃をどう思いますが。
しょっちゅう憤っていますね。それこそ交通ルールを、赤信号なのに車も突
っ走るし、自転車も信号無視して凄いスピードで走るし、歩行者だって守ら
ない。交通信号だけじゃありません。親殺し、子殺し、それから友達を平気
で裏切るとか、先輩とかも。
年長者に対する敬いが全然ないですね。もう少し社会が敬意を払わなきゃい
けない。
それなりの経験を積んでいるんですから、若い人達はお年寄りから学ぼうと
する姿勢がなきゃいけないと思いますね、これは。
日本人の劣化も日本の衰退の一因になっているのでは。
一言でいうと人間力が落ちたと。
今、劣化という言葉をお使いになりましたけどね、人間力、それは自殺が多
いとかそういうものにもね。
それから自分が死ぬだけじゃなくて、周りの人を平気で道ずれにするとか
ね。今、確かに厳しい時代なんですよ。
こういう時代だからこそ人間力というか、しなやかな強さが求められるんで
すが、ちょっと日本はそういうところがね。
やっぱり年間3万人も自殺するというのは異常ですよ。世界にないですよ。
逆協を生き抜いていく力強さというか精神力の強さがないですね。
これは教育にも問題がある。これからは子供たちがいろんな苦難にあっても
耐えしのいでいけるような、くじけない強さというものを教えていかなきゃ
いけないと思いますね。
日本の将来には悲観的ですか。
私はネアカな方ですから楽観的です。
ただ長期的に見れば楽観的ですけど、ここ10年位は悲観的にならざるを得
ないですね。
10年ぐらいですか。
はい、だからその10年ぐらいっていうのは、おそらく私が政治家として活
躍できる最後の10年かなと思っていますんで、その意味でいうと大変な時
代だなと思いますね。
最終的には楽観していると。
最終的にはこの10年を乗り切ることが出来ればなんとかなる。
それは少子化、高齢化の時代に合った安定した日本の国の政治、経済、社
会が出来上がると思いますね。
たださっき言ったように、その間は試行錯誤ですから、大きく揺れるという
のもしょうがないことかなと思っています。
だから10年の間にそういう厳しさに耐えうる力を日本の国全体に付けてい
きたい。それが私の役目かなと思っています。
高く評価する政治家はいますか。
チャーチルです。
チャーチルはまさに第二次世界大戦の一番厳しい時代に、イギリスを上手く
舵取りしてドイツとの戦争に勝ったんです。
厳しい時代に、彼はイギリス国民をひとつにまとめ上げたということ。
やっぱりこれからは政治家としてチャーチルのしぶとさに学ばなきゃいけな
いと思う。
日本で学ぶべき政治家はいますか。
日本人の政治家でいうと、うーんあんまりピンとくる人はいませんね。
だってこういう時代というのは初めてですからね。
それこそ坂の上の雲で、ずーっと登りつめて行って、戦争をやって負けて、
それから今度は経済で坂を駆け上がって、今はそのなだらかな下り坂にい
ると。
これは初めての経験ですから。これから新しい時代に対処していくわけで、
今までにないことですからね。
小沢さんとよく比較されますが、鳩山さんをどう評価するか、評価しない点
でもいいですが。
いやいや、評価できます。
それはもう昔からの盟友ですし、民主党の中で誰に聞いても鳩山さんを悪く
言う人はいないですよ。
彼の人柄の良さというのは私も敬服しているところです。
ただ鳩山さんと小沢さんという二人の力を併せ持った一人の人間というのは
いないですよ。無理ですよ、それは。
だから鳩山さんと小沢さんが力を合わせて今の難局を乗り切っていくのが
一番いいんですよ。
小沢さんを個人的にはお好きですか。
好きとか嫌いとかじゃなくて、やっぱり政治家として厳然たる力をもってい
ますからね。
これは好き嫌いで言う次元じゃなくなっていますね。(笑)
小沢さんを本当に知った人はファンなると言う人もいますね。
ものごとの評価がはっきりしています。分かりやすいです。
今、小沢さんと一緒にいろんな仕事をやっていますけども、指示が的確です
ね。ああでもない、こうでもないと言わないで、これとこれをやってくださ
いと言われれば、ハイ分かりましたと今やっていますけど。
凄いなと感じるところは。
決断力ですね、小沢さんの場合は。
鳩山さんはどちらかというとそれに欠けるところがあって、 だから二人で
上手くコンビを組んでいくのが一番いいと思っていますね。
憲法改正についてはどんなお立場ですか。
僕は今の憲法をそのまま絶対に守らないといけないなんて思っていないで
す。必要があれば変えればいい話であって、ただこの時期に憲法改正が必
要かと言えばそうじゃないと思う。
これから10年の間、今の憲法でしのいでいって、その中でいろんな矛盾も
出てくると思いッます。
その時に変えればいいので、私たちの次の世代がやればいいことだと思っ
ています。
10年なんてあっという間に経ちますよ。私も政治に携わってもう16年で
すが、あっという間でしたから。
どうしても今変えなければ日本が立ちいかなくなるということではないと僕
は思っているんですよ。
ただ30年も40年も絶対変えちゃいけないと、護憲だけを旗印にすること
は僕はやりっません。必要があれば変えればいいんであって、ただ今の憲
法が何か齟齬がきたしているかといえばそうではない。国際貢献だってでき
ますしね。
首相の靖国参拝については。
私なんか靖国が選挙区ですからよく行きます。
行ったときには参拝して手を合わせて頭を下げてきますよ。それでいいんじ
ゃないかと思いますね。わざわざ俺は行くんだと言ってね。
あそこは宗教ですから、それに対しては個人的に参拝すればいい話なんで
す。
首相は行くべきではないと思いますか。
いや、首相だって行っていいんですよ。
それを何も俺は行くぞというんじゃなくて、自分が行きたいと思ったときに
行けばいいんです。内面の問題ですもの。
だから通りかかったときにちょっと寄って行けばいい話であって、僕なんか
そうしていますからね。
日米関係でこれだけは納得できない、変えるべきということはありますか。
今、基地があるということはしょうがないことなんです。
日米安保条約でアメリカが日本を守りますと、日本はアメリカを守りますと
いう約束はしていないんですよ。
その代わりに、守ってもらうについては基地を提供しますよということを約
束しているんですよ。これが日米安保条約です。
守ってください、その代わり基地を提供しますということですから基地をな
くすわけにはいかない。守ってもらっている間はね。
ただ地位協定というものがあって、今も沖縄で問題になっていますけども、
犯人が起訴されるまで身柄引き渡しができないというのはおかしいです。
だから地位協定はもう少し平等なものにすべきだと思っています。
それにしても米軍基地はあまりに多すぎますね。
ちょうど2010年が安保条約から50年なんですよ。
70年とか60年とか10年ごとに安保の見直しをやりましたけども、それ
以来全然やっていない、自動延長で。
私は安保破棄の立場じゃないです。ただ蛭田さんがいま言われたように基地
が多すぎるんじゃないのとか、特に沖縄には過剰に負担がかかり過ぎるん
じゃないかとかそういうことを今度の2010年はちょうどいい機会ですからね。
一つ一つについて本当のこれだけの基地が必要なのか、極東の安全にどう
一つ一つの基地が貢献しているのかということをもう一回チェックし直すこ
とが必要だと思います。
鳩山さんは独立国家の尊厳として、米軍基地の状況は好ましくないという
捉え方ですが。
理想論から言うと確かにその通りですけれども、私はもう少し現実論者で
す。例えば今、北朝鮮のような国がある間はやっぱり安保条約は必要です
からね。
安保条約で日本がアメリカを守る程の軍備はできませんから。そしたら守っ
てもらう以上、基地を提供するのは致し方ないことです。
確かに独立国として鳩山さんの考え方は一つの理想ですよ。だけどそれは
まだもう少し時間がかかるかなと思っています。
日本の米軍基地はアメリカの国益と本土防衛のための基地であって、
日本の防衛は二の次では。
だけどそこは信じるしかないですよ。今、アメリカを敵に回していいことな
いですから。ちょっと現実論ですいませんけどね。(笑)
やっぱり、国民の生活にちゃんと責任を持とうとしたらしょうがないことです
よ。鳩山さんはそこを突き抜けちゃうからね、理想論で。僕はもう少し現実
的ですから。
今、経済的にも軍事的にも強大化する中国は、将来日本にとってどんな
存在になると思いますか。
これはもう完全にライバルであることは確かですね。
ただそのライバルをいいライバルにしていくのか、憎悪に満ちた敵対国に
していくのか、正に私たちの責任であって、これはやっぱりいいライバルに
していかなければならないというのが私の考え方ですね。
近年、日中間で日本が不快に感じることが続いていますが、このままだと
将来が不安ですね。
そこは正しく一つひとつについてはっきり中国にものを言っていかなければ
いけない。ただその時に本当に友人としてものを言っていくのか、それとも
悪意に満ちてものを言っていくのか、ということで違うわけです。
中国は共産主義だからダメだと頭から決めつけるんじゃなくて、中国は共
産主義を看板に掲げているけど、一般の人と話をしてみれば、私たちと全
然変わらないですよ。
だけどそういう人たちが全部日本と同じような民主主義の制度で保障され
ているかというと、そうではない。
だけどそれは彼らが考えていく話であって、私は、そこは今の現状を認め
て、だけど敵視するライバルにならないように、政府間だけじゃなく、民間
同士においても外交努力をしていけば、お互いに理解できますよ。
中国だって対日感情が非常に悪かったけれども、あの四川大地震の時に
日本の救援隊が行って死者に対して尊厳を払ったら、自分たちが忘れて
しまったことを日本の国民はやっているといって、一挙に日本への感情が
よくなったという点もありますから。
お互いが努力をしていかなきゃいけないことだと思いますね。
一方的にどっちかがやる話じゃない。おかしなときはおかしいと言わなきゃ
ならない。
今後、政治家としてどんなことに力を尽くしていきたいですか。
政治家に必要なのは、社会保障と安全保障なんです。
国民の生活を守るということと、日本の独立と主権を守るという、この二つ
なんですよ。
今までどちらかというと、社会保障の問題がお粗末になってこういう形にな
っているから、これをもう一回作り直しをしなきゃいけない。
安全保障の問題においても、アジアの中で真の友人は一体どこの国なの
か、ということを考えないといけない。
やっぱり近くに真の友人を作っておかないとダメですよ。
何も中国だけじゃなく、ASEANとかそういうものも含めてやっていかない
といけないと思っていますね。
そういう部分でも大いに貢献したいと思っていますね。
ありがとうございました。
はい、どうもありがとうございました。
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2008.3.3  千代田区永田町、社会文化会館
福島みずほ 社民党、衆議院議員
≪インタビュー≫  聞き手・蛭田有一
弁護士から政治家になった理由は。
1998年に土井たか子さんが、これから有事立法が五月雨のように国会
に出てくるので国会で一緒に頑張ってほしいと言われたんですね。
私自身は楽しく市民運動と弁護士活動するのが転職だと思っていたけれ
ど、本当に有事立法や盗聴法が出てきたので、憲法9条を変えないとか
社会がおかしくならないようにするために立候補したということですね。
どういう政治家になりたいと思いましたか。
初めて立候補した時のキャッチフレーズが「市民の政策直行便」だった
んですね。できるだけみんなが望んでいるような立法をしようと思ったの
が一点。
2点目は、憲法9条を変えないで平和を実現する政治家になろうと思いま
した。
どんな政治家を尊敬していますか。
ネルソン・マンデラさんを一番尊敬しています。アウン・サン・スーチー
さんも尊敬しています。
マンデラさんは25年間の獄中生活の後、南アフリカ共和国の初代大統
領になったんですが、素晴らしい方です。
彼は黒人を迫害した白人に復讐する政治をやらなかったんですね。
アパルトヘイトで弾圧が山ほど起き、虐殺も起きたけれど、「真実と和解
委員会」を立ち上げて、そこで真実を言えば恩赦を与えました。
人々が憎しみ合って報復するよりも、共に生きる社会を作ろうとしたんで
すね。
だから彼は白人からも尊敬され、刑務所の看守からも尊敬された。
敵と言われる人たちを感化し変えていったわけで、それはすごいと思い
ますね。
当時、南アフリカ共和国は持っていた核兵器を廃絶するんですね。そし
て、死刑を廃止するんです。政治改革もやりました。
本当の意味で、共に生きる社会を実現したというのは、すごいと思います
ね。志というものを持ち続けて、しかも敵と言われる人たちも感化して
かつ憎悪と報復が拡大していくような政策を取らなかったのは、政治家と
してとても尊敬していますね。
格差社会が進行して深刻な社会問題を引き起こしていますが。
格差を拡大して命を粗末にしてもいいという政策が政治の中でどんどん
作られていることが最大の問題だと思っているんです。
例えば、労働者派遣法をどんどん規制緩和して、今では製造業も一般
職もほとんど可能になっちゃった。
パートや契約社員の人が働く人の3分に1.女の人だと2分の1.
若い人だと24歳以下が2分の1.年収200万円以下の人が24パーセン
トで、働く人の4分の1になってしまった。
社会保障費の負担もどんどん増えて、高齢者は後期高齢者医療制度で
75歳以上は、別建ての健康保険制度にして、保険料が年金から天引き
される。
つまり人間が人間として本当に扱われない。働く人や非正規雇用や子供
やシングルマザーの人や高齢者やハンディキャップのある人たちが差別
されたり、苦労したり、ひどい目にあっても恬として恥じない政治の風潮
を作っているということが問題だとおもうんですね。
例えば、シングルマザーの人が二つも三つも仕事を掛け持ちしながら、
ものすごく働く。正社員で過労死したケースとか、180時間残業で働いた
とかね。
みんながゆっくり考えて優しさを発揮するとか、他人のためにボランティ
ア活動をしようとか、ゆっくり高齢者の介護をしたいとか、そういうことを
許さない社会になっている。そこが問題です。
地域で人が当たり前に働いて、当たり前に子供を産んで、当たり前に歳
をとっていくという環境を急速に奪っている。
地方に行けばお医者さんがいない。岩手県遠野市では、2002年から産
婦人科医がゼロなんですよ。
そこは公設助産院を作って、助産師さんを公務員にしたり、モバイル検
診によってネットで9ぐらいの病院とネットワークを組んだりとかで、現場
の医療の崩壊や産婦人科不足をみんなが必至で支えている。
現場に行くと捨てたもんじゃないと感じますが、そこまで人を追い込んで
いる政策とか政治を変えたいと本当に思っています。
そういう社会をリードした自民党をどんな政党と思っていますか。
一握りの人間が一握りの人間のために政治をやって、恬として恥じない
というふうになっているんじゃないか。
一つは、政官業癒着。やっぱり政治を牛耳っている一部の人達は、自分
たちの権益のためにやっているということを国会では痛感するんですね。
自分たちの大きな票田のところで事業をやり、そこから献金を受ける構
図。みんなのための政治というよりは一握りの人のための政治になって
いる。
だから今の自民党は利権という面と、もう一つは小泉さん、安倍さん、福
田さんと続く構造改革の中で、強い者が勝つという政治を作っちゃった。
この両方が合体しているので、ひどい状況になっていると思いますね。
だから今の自民党政治を変えなくては、私たちの社会は変わらないと思
っています。
民主党についてはどう思っていますか。
民主党の中には仲間や話のできる人は沢山います。
でも自民党よりもある意味で幅があるか。右から左まで。ですから社民
党は民主党を変に右に追いやらないために、きちっと働きかけて歯止め
をかけるというのも大きな役割だと思っています。
ただ社民党しかできないことが三つあります。一つは平和の問題。
自衛隊派兵恒久法を作らせない、憲法9条を改悪させないこと。
二つ目は社会民主主義。ヨーロッパのように社会民主主義的な、人々が
共に生きる社会を作ること。
三つ目は、脱原子力をはじめとした環境政策。この三つは社民党しか担
えないと思っています。
公明党、共産党についてはどうですか。
公明党は残念ながら今与党ですが、本当の意味で自民党の歯止めに
なっているかどうか。
この間、国会で多くの法案が強行採決されましたが、それには公明党の
連帯責任があると思います。
ただこれまでの公明党自身は平和の党、福祉の党、人権の党という面も
あって、弱い人たちの立場に立つ部分もあったので、できれば自民党と
ではなく、違う立場で連携が取れればとは思いますね。
共産党は政策面では共通の部分が大変大きいです。ただ共産党は唯一
共産主義を目指す政党だと言っています。
社民党は社会主義ではなく、社会民主主義を目指す政党なので、究極
的に目指す社会というのは共産党とは違うのかもしれません。
社民党が政権を取ったら日本はどんな国になりますか。
私は単なる大きな政府に大きな社会保障とは思っていないんです。
政府があって、NGOやNPOや色んなグループの力を発揮してもらいた
いと思っています。
社民党が政権を取れば、憲法9条を変えないことがまず第一点です。
軍事が突出していくような社会ではない社会。本当に命が大事にされる
社会にもっとなると思っています。
二つ目は、社会民主主義で労働法制を規制したい。普通の人は長時間
残業するよりはワークライフバランス。
女性も男性も、望む人は働き続けながら子供を産んで育てられるような
安心して歳を取りたいと思えるような社会にしたいと思うんですね。
手本となる国はありますか。
規模は違うけれどスエーデンやノルウエー。それからヨーロッパの多くの
国は社民党が政権党ですから、そういう国を目指していますね。
デンマークをはじめ、ヨーロッパはみんな大学の授業料はタダじゃないで
すか。
デンマークは生活費も渡すんですよね。親のライフスタイルや資産に関
係なく、子供には手当を出して、病院はタダ、医療費はタダで安心して歳
を取ることができる。
社会保障を充実させる、労働法制のある種の規制、それから地方自治、
民主主義という点では、学ぶべき点が沢山あると思っています。
そういう政策は国民も歓迎するはずなのに、なぜ支持率が低いので
しょうか。
一つは、二大政党制、小選挙区制という制度に問題があると思っていま
す。今の小選挙区制では、51対49で49は切り捨てられるわけじゃない
ですか。
それだとどうしても、社民党みたいな政党は、二大政党制度の中では霞
んでしまいます。
二つ目は、もっと社民党の考えを分かり易くPRする努力が必要だと思っ
ています。それから社民党自身も高齢化し、連合などの労働組合の大
きな支持もないということで、アピールも不足しています。
若手を育てるという努力も含めて、いろいろ克服しなければならない点は
あると思っています。
福島さんが党首になって社民党はいい方向に変わりつつありますか。
努力です。中特に女性、青年を育てようと頑張っています。
先日、伊豆大島ツアーに若者たちと行ってきたんです。心優しき平和を
愛する若者もたくさんいます。そこに対してもっと働きかけをやっていきた
いと思っています。
社民党の主張をマスコミは取り上げてくれますか。
一つは福田さんや小沢さんの二大政党ばかり取り上げないで、もっと政
策や新しい目も注目してほしいなと思っています。
自民党も民主党も憲法9条を変えるという点では一緒なんです。
自衛隊派兵恒久法を作りたいという点ではかなり共通していますね。
こ、れでは選択肢はありません。
マスコミが二大政党制ばかり取り上げるから、国民には二大政党制しか
目に入らず、必然的に二大政党論が強まっています。
恣意的に取り上げてくれないと感じることはありますか。
二大政党制を作りたいと思っている人たちが多いように感じますが、ただ
マスコミの悪口を言っても仕方ないので、それはこちらの内在的なアピ
―ル不足とチャーミングに訴える方法の工夫が必要だと思っています。
また、政治って汗をかいてなんぼで、非正規雇用問題や格差拡大の是
正は、社民党が一番初めに主張しました。
日雇い派遣の問題もずっと交渉を続けてやってきたのは社民党なので
す。額に汗して共に頑張ってきたことを忘れずにもっと頑張りたいです。
社民党は全国展開の政党ですから、党全体がダイナミックに動いて、市
民や労働者のみなさんに強く訴えられるように党の足腰強化も私の仕事
だと思っています。
社民党のイメージには国際性がほとんど感じられません。国際政治の
舞台で活躍する姿が伝われば、社民党のイメージは大きく変わると思い
ます。福島さんが首相だったら今度の洞爺湖サミットで世界に向かって
どんなメッセージを発信しますか。
社民党は「もう一つの洞爺湖サミット宣言」を発表する予定です。
環境、平和、人権の三つが柱です。
先ず平和について、武器輸出禁止を維持し、クラスター爆弾や劣化ウラ
ン弾をなくす努力を今社民党がやっているんですが、武器輸出禁止、軍
縮、核兵器廃絶などを日本は主張すべきだと思うんですね。
環境でいえば、地球温暖化防止と自然エネルギーの促進、脱原子力で
すね。
人権については、アジアはビルマ、バングラディシュフィリピン、インドネ
シァなど、たくさん人権問題を抱えているので、アジアの人権問題の解決
を洞爺湖サミットでは、日本はアジアの一員として言うべきだと思ってい
ます。
それから国際政治の取り組みでは、洞爺湖での宣言以外に三つあって
一つ目は、北東アジアにおける安全保障というのを、土井さんの時代か
ら言ってきました。
モンゴルに行ったり韓国に行ったり中国に行ってきました。
六か国協議の議長の武大偉さんがわざわざ社民党に来て、六か国協議
の決議の中に、社民党が言っていた北東アジアにおける安全保障構想
をちゃんと決議として入れましたと言ってくれたんですね。
二つ目は、社会主義インターナショナル。
社民党は社会民主主義ですが、世界には南米を含め、スペインの社会
労働党や社会主義インターナショナルに加盟する政党が多いですよね。
そういうところと連携しています。
アメリカの新自由主義的な支配とは違う、もうひとつの世界の動きの中に
社民党はあると思っています。
三つ目は、ミャンマーの軍事弾圧やフィリピンのポリティカル、キリング
(政治的殺害)などいろんな人権、難民問題に取り組んでいるんです。
だからアジアや世界の人権問題に取り組んでいる政党だということをPR
したいですですね。
社民党が政権の一部に入ったとしたら、核兵器廃絶、或いは劣化ウラン
弾やクラスター爆弾を禁止することに頑張りたいと思っています。
政界再編の動きに社民党はどう対応しますか。
一つは社民党が塊として残ることが第一義的に重要だと思っています。
社民党の旗は降ろさない。つまり民主党と合流したり、埋没するというこ
とはない。
それは、さっき言った社民党独自の役割があるからです。
二つ目は国民の、自民党政治を変えてくれという願いをすごく感じるんで
すね。ですから新しくできる政権の中に、社民党が加わる可能性はある
けれど、その時の条件は、例えばその政権の間は憲法9条を変えない
などの、はっきりした獲得目標を打ち出します。
現在の参議院の与野党逆転は少なくとも社民党がないと成立しないんで
すよ。
そのための影響力は行使しているし、大いに行使したいと思っています。
他党との連立はあっても合流はないと。
合流することはあり得ないですね。共産党以外に、憲法9条を変えないと
いう政党が国会の中に無くなったら困るというのが、私が10年前国会議
員になった最大の理由なんですね。
やっぱり一つしかないと、それが潰されたらアウトじゃないですか。
だから社民党が残って、広げていくように頑張りたいと思っています。
今後の政治家としての目標は。
命を大事にする政治の実現ですね。
具体的には憲法9条を変えないで、平和を実現していくことです。
また自民党憲法草案には、軍事裁判所を設けるとあるので、憲法が変わ
ったらなんにも表に出てこなくなりますよ。
非公開で検察官や裁判官が軍人で、なにひとつ事実が表に出てこない、
そんな社会は全く望まないので、やっぱり憲法9条を変えず平和を実現
する。
二つ目は、社会民主主義の実現。
競争はあっても、社会保障や雇用のセーフティネットがあり、誰もが生存
権や幸福追求権が尊重される社会、平等や公正、誰がどんな親の元で
生まれようと生きていける社会を作るべく頑張りたいと思っています。
頑張ってください。
ありがとうございます。
 Copyright (C) 2006 YUICHI HIRUTA. All rights reserved.
2008.1   千代田区平河町、都道府県会館前
岡田克也 民主党、衆議院議員
≪インタビュー≫  聞き手・蛭田有一
人間として好きなタイプは。
あんまり好き嫌いはないんです。
僕はいろんな人がいていいという考えなんです。多様な生き方があっていい
というのが前提なので、人についてあんまりいいとか悪いとか言うつもりは
ないんですね。ただ一生懸命生きている人は好きです。
一番大切に思っているものは何ですか。
個人的には家族ですね。政治家としては、やっぱり国民の生活ですね。
真面目人間という岡田さんに対する評価をどう思いますか。
世の中でそう言っていただくのはありがたいですけど、政治家に対して真面
目だというのは、いい評価の場合とそうでない場合がありますよね。
真面目と言われるのはそんなにうれしくないと。
いえ、そんなことはないですけど時と場合によりますね。
戦後の政治家で特に尊敬できる人はいますか。
政治家の場合は特に直接接した人でないとわかりません。本などに出てい
ても自分の目で確認できませんのでね。
伊藤正義さんとか後藤田正晴さんという政治家は、政治改革で、僕の自民
党時代の短い期間にご一緒しましたが、優れた政治家だと思います。
内外を問わず強く影響を受けた政治家はいますか。
ノーコメントですね。それは共感を覚えない人を答えることになってしまい
ますからね。(笑)
過去に党の代表を経験して何か学んだことは。
組織というのは、組織がまとまらないとトップは力を発揮できないというこ
とです。
組織をまとめるのもトップの仕事と思いますが。
もちろんそうですけど、だけどその組織を構成する一人ひとりの国会議員が
自覚を持たないといけないと思いますね。
僕が代表をやめたときに申し上げたのは、誰が代表であっも選んだ以上、
その代表を支えきる、そういう組織であってほしいと。
そうでないと代表がいくら力があっても、力量を発揮できないです。足元が
ぐらぐらしているわけですから。
そういう意味ではつらい経験をされたと。
つらいというか、まだ未熟だったですよね、当時の民主党は。
だいぶ良くなってきたと思いますが、常にそのことは若い人に言っています。
その若い人たちは成長していますか。
ええ、一人ひとりは非常に優秀だし、楽しみな政治家は多いです。
現に成長しているしね。
しかし中には自己評価が高すぎて、全体のためにしっかり役割を果たすと
いう視点では、首をかしげる人もいるということですね。
みんながまとまらないと政権は取れないです。
岡田さんは国民の立場に立った政治をやりたいと言われていますが、どう
いう国民をイメージしていますか。
一人ひとり一生懸命生きている人たちですね。
国民にも裕福な人、生活に困窮した人、その中間といろいろいますが。
上はほっといてもいいわけですから。やっぱり一生懸命やっているにも拘ら
ず、生活に困るというような社会であってはならないです。
政治家としてのこだわりはありますか。
正直でありたいと思いますね。
政治の世界は正直だけでは通用しないイメージがありますが。
時に痛い目にあって学習したりしますけどね、言い方とかそういうことで
は。だけど基本的には正直でありたいと思っています。ウソを言う政治家
には絶対なりたくないですよね。
政治家としての自己実現のためにも是非首相になりたいと思いますか。
それは私が決める話ではないだろうと思いますね。
チャンスがあればやってみたいと思いますけど、そのために政治家をやっ
ているとは思っていないです。
基本的に僕がやりたいことは、政権交代をきちんとできる体制を作るという
ことです。二大政党が競うような政治ですね。
そのためにも民主党がまず政権を取る。自民党は野党になって、改革を進
めてもらって、自民党もいい党になって政権を取る。
また民主党も政権を取り返すというこのワンサイクルを10年くらいやれば
政権交代が定着したと言えると思うんですね。そういうことを是非実現した
いと思います。
自民党と民主党の決定的な違いは。
自民党は既得権を守るために存在している政党です。
既得権者というか、守るべきものがある人たちのための政党で、民主党は
そうじゃなくて、既得権にとらわれず、ある意味で既得権を壊す、それが民
主党の役割ですから。そこが最大の違いです。
だから自民党が改革するというのは論理矛盾です。
小泉さんは自民党をぶち壊すと表現したんですけど、それは本来ありえな
いことですから。
現に小泉さんが5年間やって自民党は何も壊れていないし、経世会は壊れ
たかもしれないけど、それに代わって森派が強くなったわけだし。
本当の改革は民主党でしかできないと思います。
今後二大政党に収れんしていく場合、どんな思想、価値観でわかれるのが
望ましいですか。
それは保守と革新でしょうね。
安倍さんの最大の矛盾は、保守でありながら改革を言ったことですよ。
小泉さんも改革を言ったけど、本当の改革は当然できなかった。
やっぱり自民党は保守党であり、民主党は改革政党だということです。
ある民主党の政治家が政権を取った後、権力に心を奪われ自民党の二の
舞になることを心配していましたが。
うん、そういうことになればまた政権が代わるということです。
今、民主党議員は改革政党として一枚岩ですか。それともいい加減な人も
いるんですか。
まあ、いろんな考えはあると思いますが、それはリーダーの考えでしっかり
まとめていき、選挙があればマニフェストをきちんと考えてやるわけですか
ら、そう心配はしていません。
二大政党に関する素朴な質問ですけど、日本人が真っ二つに分かれるほ
どの価値観の違いって本当にあるんでしょうか。
それはアメリカだって一緒ですよね。イデオロギーの対立の時代じゃない
ですから。
相対的な違いで対立するわけです。現状をそのまま維持し、古いものを大
事にするという考え方と、改革とか進歩という考え方があって、そのような
方向性が違えば十分じゃないですか。
ゴミの不法投棄など様々な分野で日本人のモラルの低下が社会問題にな
っています。この状況は政治家も無関心ではいられないと思いますが。
ただそれが政治の話かどうかですよ。その上で言えば、ものごとを見るとき
にそういう見方もありますけども、ゴミの分別収集などはほとんどの人は
きちっとやる。こんな国は珍しいと思いますよ。
子供の環境意識も高いし、一方でそういうモラルの崩壊ああるけども、そう
いう面だけじゃないと僕は思いますけどね。
そう目くじら立てるほどではないと。
そうですね。まあ政治が号令をかけてやるような話ではないと僕は思います
けど。何でもかんでも国の政治がやる話じゃないんでね。それは地域の中
でやったり、社会運動でやったりしてね。
政治がやるのは基本的に法律を作って規制していくという話ですから、あん
まり政治の守備範囲を無限定に考えない方がいいと思います。
政治家として最大の目標は。
政権交代のある政治を作ること。もう一つは日本が衰退しないこと。
つまり国民が平和で豊かに生きられることですね。
ありがとうございました。
 Copyright (C) 2006 YUICHI HIRUTA. All rights reserved.
2010.3.19  於千代田区永田町、憲政記念館 
細野豪志 民主党、衆議院議員
≪インタビュー≫  聞き手・蛭田有一
どんな人物に魅力を感じますか
思いの深い人というか信念の強い人、そういう人に私は惹かれます。政
治家であれば何をしたいのか、それが何となく滲み出ますよ。
政治家以外にもいろんな職業の方と出会っていますけど、その人が明
確に言葉で表せなくても、この人はいろいろ思いがあって、それぞれの
ことに取り組んでいるんだなと感じる人には魅力を感じます。
例えば政治家ではどんな人がいますか。
この人はすごく信念が強いなと思うのは小沢幹事長です。
菅副総理も非常に強いです。それから仙谷大臣もそうです。そういう人
達にはすごく惹かれるんです。
性格的に合う合わないとか、立場がどうというのを越えて、何かを学べ
るんじゃないかと思って付き合っていただきました。
政治家を目指した原点は。
親がサラリーマンで政治家との接点は全くなィ家庭で育ちましたから、
そういう思いを持ったのは、学生の時です。
学生時代に障害を持っている方との出会いがあって、そのお手伝いを
したことが一つのきっかけでしょうか。
それと、学生時代に阪神淡路大震災があったんですが、もう少し行政と
か政治が本当の意味で決断して、責任を持って対応できていればなと
言う思いがあったのも大きかったです。
私の場合は、決して環境に恵まれていたということではありませんでし
たので、その実現性はどうかなと思っていたんですけが、丁度その頃、
93年の総選挙で細川政権が誕生したんです。
当時、前原さんとか枝野さん当選したのを見て、自分でもやれるかなと
思ったんです。
ですから政治の世界に関わってみたいと思ったのと、そういう政治の世
界に大きな動きが起きたのが、丁度同時だったというのが最終的にこう
いう道へ進むきっかけになったと思います。
尊敬する政治家はいますか。
政治家と言えるかどうかはわかりませんが、吉田松陰が好きです。
時代の先見性とか初めに申し上げた信念の強さというのは、歴史上の
人物の中でも卓越していると思うんです。
あとはそうですね、尊敬するというと全面的にその人物に傾注するという
ことですが、みなさんいろんな面がありますから、賛同できる面もあれ
ば、若干違和感を感じる部分もある中でのお付き合いですから。
今、一緒に政治をやっている中では、冒頭申し上げた小沢幹事長、菅
副総理、仙谷大臣何なんかは非常に惹かれる人物ですね。
若手では、前原さんは私が政治に入る大きなきっかけになった人です
ので、いい目標ですね。
副幹事長として、小沢さんの下で一緒に仕事をして、すごいなと感じた
ことは。
重要な判断をしなければならない場面というのは、政治家にはあるんで
すね。その時に一拍の溜がある、それが小沢幹事長の強みでしょうね。
即決、即断することにこしたことはないんだけども、その判断に誤りは許
されないですからね。
しっかりそこで溜を作るというのはすごく大事だと思うんですね。
今は、こういうスピードの速い時代に入って、携帯電話やメールが行き
交う時代ですから、そこできちっと溜を作って判断を間違いなくするとい
うのは非常に難しくなってきているんです。
下手をすれば決断力がない、或いは拙速だと言われますね。
ですから一拍置いて、当然情報も集めるし、いろいろお考えになるでしょ
う。時が来ると決断するわけです。
決断するとそこはもうぶれない。そのことが政治家としての重みにつな
がっていると思うんです。そこはすごく大事だと思います。
今、吹き荒れている民主党に対する国民の逆風の要因は。
半年経って期待されていたような成果が出ていないトいうこともあると思
うんです。ただ私が全国を歩いて聞こえてくる声というのは、もともと政
権が変わってもすぐに成果が出るとは思っていなかったんだと。
そこに失望しているのではなくて、むしろ腹が座っていないというか、右
往左往しているように見える。その辺のすわりの悪さというのが見透かさ
れている感じがするんです。
もう少しどっしり腰を落ち着かせてやればいいと思うんです。
これだけ景気を含め状況が大きく動いているわけだから、今、こういう事
態になっているのは、こうなんだと率直にやればいいと思うんですが、
選挙での大勝というのがありますから、そこを引きずってしまってできな
いというのがひとつあると思います。
マスコミの民主党バッシングも要因のひとつと思いますか。
そこは与党政府の宿命だと思うんです。ですから、いろいろご批判があ
れば、それを受け止めなければならないです。
もうひとつは、我々が本来持っていたはずの謙虚さみたいなものが、ち
ょっと失われているんではないかと思うんです。
権力を持っているのは事実だし、いろんな政策決定をしていかなければ
ならないというのも事実ですけど、一方で政治的な経験でいえば与党経
験のある人は極めて少ないわけだし、権力をどう適切に行使すべきかと
いうことについても、みんな逡巡しながらやっているわけです。
今は、とにかくひとつずつ成果を出そうと努力しているんだけど、その辺
が伝わっていないです。
もう少し民主党自身が謙虚にコツコツ努力くしている姿を見せないといけ
ないと思います。
マスコミはその辺をあまり取り上げてくれない。
どうですかね。このところ閣僚のみなさんも、そういう意識をすごく持つよ
うになってきているような気がするんです。
ひとつはやっぱり長崎で負けたというのが大きくて、衆議院選挙で全勝
した選挙区で、今度の知事選挙では負けたんですから。
そういう意味では長崎をひとつのきっかけに、もう一度原点に立ち返って
どこが至らなかったのか、どこをどう変えていかなければならないのか
と、ここ半年を反省して再出発するきっかけにできるんじゃないかと、ま
たしなければならないんじゃないかと思っています。
従来の民主党のイメージを小沢さんが一人で壊しているように見え
ますが。
小沢幹事長は、かつての民主党にはなかったいろんな文化を民主党に
持ち込んだことは間違いないと思います。
私が10年前に民主党に入ったときは、こんなに自由な政党なのかと思
いました。まだ今ほどに人数も多くはなかったけれど。
当時の代表が鳩山さんで、そのあと菅さんとか岡田さんになりましたけ
ど。
一年生議員でも平気で代表にくってかかってもよかったし、バンバン法
律も出せたし、発言の機会もいくらでもありましたね。そういう中で我々
は育ってきたんです。
逆にそういう環境でなければ、当時沢山いた20代、30代の若手が切磋
琢磨して育っていたかというと、そうでなかったかもしれない。
ですからそういう文化は民主党のいいところだったと思います。
ただ当時のことを思い出すと、みんなワーッと盛り上がっていい時はい
いですけど、なにかひとつ綻びが出るとガタガタになる。
ダメになってまたよくなって、ということを繰り返してきたんです。
だから、あの状態で政権を取れたかというと、私は難しかったんではな
いかと思います。
小沢さんが民主党と合併して、徐々に民主党の中で重きをなして、リー
ダーシップを取られるようになって明らかに変わりました。組織としての
体をなしてきた。
党内でいろんなことがあっても、中では議論するけど外向きには組織の
人間として行動するという、組織としての強さは出てきたと思います。
この文化は両面必要で、人が育つには自由闊達な部分もないといっけ
ない。
ただ危機になったときには国を動かしているわけですから、内部崩壊す
るわけにはいきませんので、しっかりまとまってやていかなければなら
ないと思います。
そういう意味では小沢幹事長が持っている文化も必要だし、民主党がも
ともと持っていた文化も必要で、そのバランスをどうしようかというので、
今、民主党の中に揺らぎが出てきたのかなとと思うんです。
国民からはそれが異質なものとはっきり見えているだけに、その対立が
強調され過ぎて、民主党どうしたんだとという話になっているという気が
します。
日本の政治はこの先二大政党制に向かうのでしょうか。
私も4回選挙をやりましたが、4回とも政権交代、政権交代と言いながら
初めの3回は政権交代が実現しなかったんです。
だから日本では政権交代が根付かないのではという迷いがずっとありま
した。
ただ去年の総選挙でこれだけドラスティックな結果が出ましたので、歴
史的な判断を日本国民はしたんだろうと思うんですよ。
我々は国民のみなさんが政権交代を選択したことによって政権を取って
いる当事者です。
今はとにかく二大政党制を根付かせて、自民党が50年やってきたこと
を考えれば、我々は石にかじりついてでも10年くらいはやらないと成果
は出ませんから。
大きな制度変革を実現することに力を注いでいきたいと思っています。
二大政党という意味では、自民党のみなさんにも頑張って頂きたいです
そこはお互いに競い合う状況を作ることが、民主主義を本当に機能させ
るのに重要なことではないかと思っています。
日本の政治を二つに分けるとしたらどんな対立軸がいいですか。
いくつか対立軸になりうるテーマはあると思うんです。
そのひとつは、例えば国の役割と地方の役割をどうかんがえるか。
民主党はもともと相当急進的な地域主権型㋨政党なんですよ。
国の役割はもっと限定すべきだという理念を持っているんです。それは
裏返すと、国会議員の仕事が少なくなるということですから、配れる予算
も少なくなるし、利権も少なくなるし、与党のうま味も小さくなるというこ
となんです。
民主党はまだ政権を取って僅かな期間しか経っていませんから、その
うま味を享受するとこまでいっていないです。だからこそ逆にできると。
自民党も理念としては地方分権と確かに言っていますけれども、彼らは
長く権限と予算を持つことで選挙に勝ってきているから、本気でやろうと
しているのは正直見えないです。
ですから長く与党にいて、地方分権というものに消極的であった自民党
と、そこを思い切ってやろうとしている民主党というのは、ひとつの対立
軸としてあると思っています。
ただ自民党も野党となりましたから、逆にそういうことをこれから言える
ようになってくる可能性はあります。
もうひとつは社会保障に対するスタンスです。
ナシ官に頼らず、ョナルミニマムをどこまでみるか、公的な役割をどう考
えるかです。
どきちらかというと民主党は社会保障を配慮すべという議員が多いです
ね。一方、自民党は比較的小さな方向を望む人が多いかもしれません
鳩山総理が新しい公共と言っているんですが、官に頼らず、NPOやい
ろんな企業も含めた民間のみなさんにも一定の公的な役割を果たして
もらって、全体として社会を安定的に持っていこうという手法を今我々が
投入しつつありますから、相対的な対立軸と言えるかもしれません。
外交を争点にする人もいますが、私は外交や安全保障はあまり与野党
で鮮明な争点にはしない方がいいと思います。
特に日本のように国際社会の中で生きていかなければならない国家は
メリカとも強固な同盟関係にしなければならないし、東アジアに対しても
開かれた国であることの必要性は論を待ちませんから、そこはあまり
対立軸にしない方がいいんじゃないかと思っています。
日本の長期にわたる衰退の原因は、バブル崩壊以降の日本人の
人間力の低下が根底にあるのでは。
私の世代は、ある程度ッ経済的に成長した後に生まれ育っていますの
で、豊かさを求める意欲は少ないのは少ないです。
現状に安住する気質がなくはないように思います。ただそろそろ、そうい
う状況から脱して危機感を持たなければならないし、もう20年もGDPが
ほとんど伸びていないわけですから。
世界における相対的な経済力も落ちている状況で、本当に今の生活水
準を維持できるかという危機感をそろそろ持つべきだと思います。
ただ今のままだと結構厳しいと思うんですよ。
というのは、人口が決定的に減っていきますし。日本人の気質がまた、
ガラリと変わるかというとなかなか考えにくい。
そこで一歩前に踏み込むべきひとつの大きなテーマは、例えばFTAを
積極的に推し進めて、自由貿易を実現して世界ともう一回競争していく
環境をつくるということがあります。
その更に先には、職業によっては外国人に入ってもらっての本の社会
自体に活力を与えてもらうということ。
そこが日本人を活性化する起爆剤になるもしれないと思っているんです
かつて明治時代に外国人が来て、日本人を覚醒させるきっかけにもなり
ましたし、戦後も一部そうですよね。
そういったことに踏み込むことも日本の社会全体にとって必要なことで
はないかなと思っているんですが。
今、少し日本人が自信を無くして、そういうものに恐れをというものを感じ
てきていると思う。内向きの発想になってしまって、社会全体にもなにか
閉塞感をもたらしているし、経済の閉塞感につながっていると思います。
そうじゃなくて、むしろ開かれた国家であることが、日本の経済も社会も
よくするんだという発想に何とか立てないものかなと思っているんです。
それは政治家の大切な仕事になりますね。
そうですね、政治家の大事な役割だと思います。
FTAの政策とか外国人労働者の問題というのは、大衆受けする政策じ
ゃありませんが、それをどれくらいテーマとして取り上げていくのかという
のは、政治家にとって非常に難しい問題ですが、大きなテーマでもあり
ます。
細野さんはどんな国づくりを目指していますか。
どういう国づくりというと大上段の話になってしまうので、私の役割として
申し上げると、最低限国が生きていき、国民が生きていくために政治が
やらなければならない役割を先ずしっかり果たすことだと思うんです。
例えば戦争を起こさないような安全保障の仕組みを作るとか、エネルギ
ーであるとか、食料は最低限確保すとか、これは国としての最低限の役
割です。
ところがそれが、21世紀の世界を見ると結構難しくなってくると思うんで
す。そこを少なくてもしっかりと確保するのが私のひとつの役割だと思っ
ています。
後は、これはあくまでもイメージの話なんですが、国民が政治に関心を
持っていただきたいと思う反面、政治に関心を持たないと生きていけな
い国家というのは不幸なんです。
ですから社会がそういう状況にならないように、どう政治が先回りして手
立てをしていくかということが私どもの役割だと思っているんです。
ですから私は大きな政治は求めない。政治が前面に出て、政治家の指
導力のもとに国民が一方に行かなければならないような状況は決して
幸福なことじゃない。
むしろ存在としては必ずしも大きくはないけれども、きちっと国民を支え
ているというのが私のイメージとしての政治の姿なんです。
そこの下支えができるような政治家になれればいいなと思っているんで
す。
時間が来てしまいました。ありがとうございました。
すいません、ありがとうございました。
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2007.10.24  於国会議事堂正面前
鳩山由紀夫 民主党代表、衆議院議員
≪インタビュー≫  聞き手・蛭田有一
民主党を誇りに思う点は。
まだ党自体完璧になっていませんので、完全には誇れないと思います。
私が民主党を作りたかった最大の理由は、今の政治家が国民の皆さんの信
頼を失っているということで、なんとしても信頼をもう一回取り返さなけれ
ばならないと思ったからです。
政治家がいいことを言っても、最終的には自分のために政治をやっているん
じゃないかと見透かされて信頼を失っていると思っているんです。
私が西郷隆盛さんの遺言の一節を常に、民主党を作るときに主張し続けた
のも、自分のために政治はあるんじゃないよと、身を捨てて初めて政治家と
して国民の皆さんのために政治ができるんだよということでした。
私心を捨てる政治を行いたい、それが結党の理由でした。とにかく私心を捨
てた政治を徹底させたいんであって、それを誇りに思えるような民主党にし
たいということです。
それが自民党との一番の違いになるんじゃないかと思います。
やはり権力の座に長く居座ってしまうと、そこに澱がたまってまさに政官業
の癒着体質そのものになってしまう。もっと言えば官僚に任せた政治になっ
てしまう。
無私になることによってはじめて、自分たちが国民のために政治を起こすん
だという気概を作り出すことが出来ると思ってます。
自民党の長期政権のもたらした全く評価できない部分に対して、我々は新鮮
な光を与えることができるし、そのことをもっと誇りに思えるような民主党
にしたいということです。
そのためには選挙の公認の際、私心を捨てた人かどうか厳しく見極める必要がありますね。
理想としては全くおっしゃる通りだと思います。
ただしそういう方が必ずしも選挙に強いかどうかという、違う尺度なるもん
ですから、有名人の方がいいみたいな話になりがちなところがあります。
民主党自体が、まだ本当にシビアに誇りに思えるような資質を持った人たち
ばかりを集めた党にはなり切っていないので、自民党との違いが見えにくく
なっていることはあると思いますね。
今の話ですと、この先も誇りある民主党にはなりそうもないということですか
いや、一人ひとりの政治家の資質は、訓練によって鍛え上げることが出来る
と思っていますから、私は事あるごとにそういう話を申しているつもりです
し、若い人材を育て上げることによって自民党の政治家には無い特筆を民主
党に持たせることは出来ると思っているんです。
新人議員に対する教育、啓蒙にかかってるということですね。
それ以上にリーダーや、執行部など、外に向けてメッセージ性を持っている
人たちが、今私が申し上げた誇りを持てる人材であることが望まれるわけで
すね。
その人の影響力は大きいわけですから。またその人たちの発する言葉によ
って政治家を変えていくことが出来るわけですから、全員が最初からという
こと以上に中心的な役割を持っている人たちがそのような思いを強く外に向
けて打ち出すことで、民主党自体をもっと輝く存在に仕立てあげることはで
きると思いますね。
道途上ですけれども、私は不可能では無いと思っているんです。
ただ政権を取ったときにそのような考え方を持続できるかどうかというのが
もっと大事なんですよ。
政権を取るとですね、権力というものは大変協力ですから、欲望があります
とそこに心を奪われてしまうということは十分ありうる話です。
ここはシビアに見ておかないといけない話だと思っているんです。
政権を取った後のほうが大変だと。
そうです。小泉さんが一時、表面的ですけど評価されたのは自民党をぶっ壊
すと、要するに自民党のために、俺はやってんじゃねえよということを非常
に分かりやすく表現した。
この人には欲が無いと、国民のために奉仕してくれる人ではないかという期
待感を与えたことは事実ですよね。
それを本気でやれるような政治家でなければならないと思うんですけどね。
小沢一郎民主党代表を政治家として、また人間としてどう評価していますか
政治家としてはめったに現れない人物だと思いますね。
私と小沢代表の決定的な違いは、政治的な経歴の違いがもたらしたものだ
と思っているんですが、若い頃から政治の道のど真ん中を歩いてこられた方
だけに、政治的なセンスとか駆け引きとかに関してはとても太刀打ちできな
いものを持っておりますね。
いかにして選挙に勝つかという戦略の立て方などは、我々から見てはとても
真似が出来ない。
例えば代表だったら一番人の多いところに行って演説したがるもんですが、
敢えて人の一番いないところに行って演説を始めると、それを貫いたんです
よね。
結果として参議院に勝ったわけです。そこまで信念を曲げないで自分が正し
いと思ったことを貫き通すというのは大したもんだなと思うんですよね。
ただ一方で、普通の人間からすると政治家の鋭すぎる感性みたいなものが
逆に一般の常識人からすると、とても理解しがたいところも出てくるのでは
と思っていて、今回の大連立劇を見ておりますと、我々のようなある意味で
経験のない人間の方が一般の国民の常識に近いもんですから、それが上
手くいったとしても国民の皆様には理解されない。
理解されなければ結果として選挙に勝てるわけがないじゃないかという部分
で、今回大きな違いが出てきたわけですね。
一般的な常識人のサイズの発想と政治のまさにど真ん中で経験を積み重ね
てきた人の戦術の違いが今回表面化したんじゃないかと思ってまして、どっ
ちが正しいということではないと思うんです。
ひょっとしたら小沢代表の主張のほうが正しくて、民主党を政権に近づけた
のかもしれない。
だから逆に、両者を上手く融合させながら回答を見出していくということ
で、民主党がこれからも国民の皆さんに期待されながら大胆な行動も打っ
ていける政党であればと思うんですけどね。
一人の人間としてはどうですか。
一人の人間としては、あの人も非常にシャイなところがあって、それが時と
して誤解を招いているわけですが、ただ二人だけで酒を飲んでいる時などは
実に気持ちがいい。
あの表情とは裏腹に、飲んでいて非常に楽しい存在であることは間違いない
んです。酒好きのおっちゃんという感じですね。
酒飲んで小沢代表の生の姿を見た人はファンになる人多いんじゃないでしょ
うか。私はそう思いますよ。
改憲派として自主憲法制定にかける思いとは。
アメリカに押し付けられたからなんとしても変えなければならないという発
想ではなくて、憲法は時代とともに変わって当然なんです。
この国が機能不全に陥っているような時に、その機能を回復させるために必
要な、憲法の改正議論を堂々と行うべきです。
アメリカに作られた憲法だから反対だという力みから申し上げているわけで
はないんです。
ただ、いまの憲法はアメリカのお膳立てによるものに違いないですね。
それはアメリカが押し付けてきたことは間違いないです。ただそうであっても
も、例えば民主主義というものを日本に定着させる、或いは二度と戦争を起
こしちゃいけないという戒めを含めて謳う。
そういった部分を現憲法の評価すべきところとして持つことは正しい話であ
って、アメリカから押し付けられたから変えなきゃいけないという話になる
べきじゃないんじゃないか。
中身がよければそれはそれで評価されていいのではないかと思うんです。
その評価すべき中身を自らの手で活字化するというプロセスが日本人の意識改革に是非とも必要と思うが。
ただ、今私が申し上げた憲法のいい部分の他に、どうもアメリカから押し付
けられて出来たんじゃないかなという部分があって、名誉ある地位を占めた
いと思う、という憲法の前文の言葉ですが。
私は国が他の国々にいい子ちゃんになって、世界の国々から喜ばれて名誉
ある地位を占めたいなんてなんていう発想ではなくて、それこそ自分の手で
この国を作り上げて、国の尊厳を日本人みんなが自覚するような、そういう
国にしていきたいと思っているんですが、そこにはまだ憲法で言い足りない
部分があると思っているものですから、憲法の前文などは大きく変えたいと
思っているんです。
鳩山さんの政治家としての究極の目標は。
尊厳ある国家を作るということですね。
今は日本自身が尊厳を失ってしまっている。そこで様々なトラブルや事件が
頻発していると思ってます。
外交においてはアメリカに寄りかかっていればいいと、内政に関しては官僚
に寄りかかっていればいいというように自分自身の自立心を失って依存心ば
かりが強くなってしまっている。
自分が何をやりたいかという発想を一人ひとりがもっと強く尊厳を持って自
覚できるような国に変えていかなきゃならない。
私がまさに一番政治家としてやりたいのは尊厳のある国家と国民を作り上げ
ていくということなんです。
それには一人ひとりの力を引き出すために地域主権、地域が中心となる日
本にしたいと、官僚が国のど真ん中に座って、それに政治家がおんぶに抱っ
こみたいな形でもたれあっているという中央集権国家ではなくて、地域の一
人ひとりが尊厳を持って生きることができる、自分たちで自分の故郷を作る
んだという気概をを持つことができるような制度に変えていくことが一番大
事で、先ず、最初にやらなきゃならない仕事はそこではないかと思っている
んです。
制度を変えることで国民の自立心が芽生えると。
そういうことです。要するに地域に権限を与える、戻すと言うべきかもしれ
ませんが、戻せばその与えられた権限を行使するために一人ひとりが今ま
でのように寄りかかっていてはいけなくなるわけです。
市町村や都道府県が国の政府に陳情合戦を毎年繰り広げるのは本当にさ
びしい姿でありましてそうではなくて市町村に人たちが自らの思いで町の将
来を描いて、それが実現できるように、国はそれとなくサポートするような
国と地方の関係を逆転させることが大事で、そのように制度を変えることで
尊厳を持った国民を作り上げていくことができると思っています。
権限を与えられればその責任を果たそうと最大限の創意工夫を試みるはずですね。
私はそう思います。国の外に関してもそうだと思いますね。
アメリカの方向ばっかり向いていれば責任がなくて済んでしまいますけど、
今日本は国としてほとんど尊敬されていないという現実をもっと我々は直視
すべきですよね。
国の外にも、国の中に関しても、もっと責任を持った国の制度に変えること
が私は大事だと思いますね。
その思いを達するためにも次の選挙は勝たなければなりませんね。
思いを達するには政権を取ってからが勝負だと思ってましてね、政権取るの
が目的になったらあべこべなんで、取ってから何をするのかの方がはるかに
重要なんですけどね。
とってダメだったら国民にすぐ見放されるわけですからね。
そうです。それでいいんです。そういうギッタンバッコみたいなシーソーゲ
ームみたいなことが日本ではあまりにもなさ過ぎていることがこの国の最も
不幸な政治の側面じゃないでしょうか。
とはいえ選挙には勝たなければなりませんね。
そうなんです。やっぱりそこにたどり着いちゃうんですよね。
勝ちながら誇りを持てるような政党にしていくことが大事だということですね。
民主党の中に自民党的な人がいますね。どうしてかなと思うときがありますが。
あるんですよね。でもそういう人を追い出すわけ行かないでしょう。難しい
ですよね。
追い出したら民主党株がドーンと上がるかもしれませんよ、自民党との違いが分かったって(笑)。
ハハハハハ、そうかもしれない(笑)。
ありがとうございました。
いいえ、とんでもございません。
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2008.12   於港区東新橋1丁目 イタリア公園  
枝野幸男 民主党、衆議院議員
≪インタビュー≫  聞き手・蛭田有一
尊敬に値する人間とは。
媚びない人ですね。権力とか権威とかに媚びない人。
例えば第二次世界大戦中の非推薦で選挙をやったような人たち。
斎藤隆夫とか尾崎顎堂とかですね。
どんな政治家でありたいと思っていますか。
政治家以前に媚びない人間でありたいと思っているわけですが、これって
政治家にとってひとつの軸ではないでしょうか。
もうひとつは、僕は合理的な人間でありたいと、つまり時流や感情に振り回
されないでいたいと思っています。
情と理でいうと理の方を取ると。
私は国民大衆の感情まで含めて、合理的に考えるのが本当の合理的で
あって、感情や情の世界を考慮に入れられないのは合理的ではないと思
っているんですけどね。
理と情は対立概念ではないと思うんですけど。
今まで接した中で、特に評価する政治家はいますか。
やっぱり菅さんでしょうね。
直接会ったことのある政治家なら菅さんですね。哲学より、政治家として
の技量かな、評価するのは。
私の見る限りでは官僚に言うことを聞かせる唯一の政治家ですよ。
官僚が嫌がることを政治の力で無理やりやらせた唯一の政治家ですね。
具体的に菅さんの何が優れていたんですか。
官僚と同じ知的水準にあるということですね。
同じ知的水準になければ戦えっこないですよ。だからこそ菅さんは、薬害
エイズで戦えたと思うんです。そこが決定的だと思いますよ。
知的水準が対等であれば政治家の絶対勝ちですから。負けてる政治家は
いかに知的に劣っているかということだと思います。
知的レベルが同じなら権力を持っている政治家の方が強いと。
官僚は政治家が決めたことに従うのが仕事なんですが、今、実態がこん
な風になっているのは、政治家が官僚を使えるだけの知識だとか政策だと
か、判断能力を持っていないからなんです。
官僚と同じ水準になれば、分かりました、意見が違うけどそれはそれでひ
とつの考え方ですからそれに従いますと、必ずそう言います。
知的レベルの他に、菅さんの持つ人間的強さ、喧嘩強さもあったのでは。
いや、知的な喧嘩をするんですから、大きな声を上げて机を叩くだけでは
いうことを聞かないし、その喧嘩は勝てない。
例えば菅さんは、薬害エイズのときに誰がどこを調べるかについて固有
名詞で割り振るぞとやったんですよ。
そうすると後で見つかった時に誰の責任かハッキリするから、言うことを聞
かざるをえない。
こういう喧嘩の仕方をするわけです。だって大きな声上げて机を叩くんだっ
たら、自民党にもっと強い人が沢山いますけど、この人たちは全部手玉に
取られているわけですから。
政官業に留まらず日本人全体のモラルの低下の根源的な原因は。
ふたつあります。
ひとつは社会における当事者意識が希薄化した。これはある意味必然で、
情報、通信、交通が発達して、日々接している世間はテレビを通じての世間
であって、自分が当事者ではない。
ゴミの不法投棄だって、その投棄された後をどうするかについての当事者
じゃない。最近のモンスターペアレンツとかクレーマーの話もそうで、社会
を自分とは別世界のクレームをつける対象と考えている。
自分も社会の中では、クレームを受ける立場にもなるはずなのに、あまりに
もその距離が遠いために、当事者意識がなくなっている。
これはひとつの社会の必然として生じている現象だと思います。
情報のマス化は今更止められないわけで、それに代替するような小さなコ
ミュニティーを再構築するしかないです。
小さなコミュニテーで当事者意識を持たざるを得ないようにしていくしかな
いですね。
もうひとつは太平洋戦争の総括をちゃんとしていないこと。そこで誰も責任
を取っていないということだと思います。
日本は世界でどんな国家と見られていると思いますか。
非常に分かりやすい。お金持ち、それ以上でもそれ以下でもないと思いま
す。逆を見たらいいわけで、例えば我々はアラブの産油国の文化について
ほとんど関心がないし知らないように、世界の国々から見れば日本も一緒
です。
中東は油を持っているからお金持ちであって、日本は一生懸命働いて技術
力あるからお金を持っているだけで、それ以上でもそれ以下でもない。
世界の誰もそんなに日本のことなんか注目してないです。
お金の面以外では。
日本人が自立心にかけるのは、自国の安全を他国に丸投げしていることに
もかんけいあるのでは。
全く関係ないと思います。だって自国の安全を自国だけで守られている国
は多分世界中でアメリカしかないでしょう。
ヨーロッパの国々だってNATOを通じてアメリカの恩恵を受けているし、
世界には全く自衛の軍的組織を持たずに安全保障を他国に依存している国
も沢山あるわけです。
日本みたいに、こんな小さな弱い国が自国を自分だけで守れるはずがない
と思いますが。
アメリカに守ってもらっているとしても余りに基地が多すぎたり、米兵に
よる問題が多すぎますね。
アメリカに守ってもらっていることが問題ではなくて、一方的に守ってもら
っていると勘違いするのが問題なんです。
アメリカはボランテアで守ってくれているわけじゃなくて、アメリカの都合
でアメリカの利害、国益に叶うから守ってくれているに過ぎないということ
をちゃんと受け止めなければ。
それを前提にすれば日本はアメリカにもっとハッキリものが言えるのでは。
もっと言えますよ。それがいやならアメリカに帰れと言ったって困るのは
アメリカですから。
それが分かっていて何故アメリカに言えないのでしょうか。
そこが問題なんですよ。守ってもらっていることが問題なんじゃなくて、守
ってもらっていることに卑屈になっていることが問題なんです。
そういう日本人の受け止め方を変えることはできますか。
変わらざるを得ないと思いますね。というのはアメリカの国益にとって日本
を守る必要性が小さくなっている上に、守るだけの力がなくなってきている
からです。
アメリカが頼るに値しない存在になってくるので、日本は否応なく自立せざ
るを得ないと思っています。
そうすると基地の縮小は好機ですね。
そうです。
沖縄の人達にとって米軍基地はメチャクチャ多すぎますから。
だけど下手すると5年後くらいにはアメリカの基地を沖縄の市町村が誘致
するっていう話になるかもしれません。
出て行けって言っても出ていかないと思っているだけで、本当に出ていった
ときに、じゃあ経済はどうやって成り立たせるのか。
アメリカは出ていくと思いますので、むしろ出て行った後どうするかの方が
これから重要課題なんです。
出て行ったら暮らしが成り立たないということになりますからね。このまま
行けば。
そういう時期なんですか、今は。
だと思います。これからの5年10年というはそういう変化の気がする。
枝野さんは「日本台湾友好議員懇談会」の事務総長を務めたり、「チベット
問題を考える会」の会長としてダライ・ラマ氏と会談するなど、中国にとっ
ては厳しい態度を取るのは。
結果的に相手が中国だったということです。
人権や民主主義が世界中で迫害されているけれども、近隣でいうとチベッ
ト、次に台湾。ただチベットや台湾とミャンマーや北朝鮮と違うのは国際問
題と内政問題の違いです。
チベットと台湾は国際問題です。ミャンマーと北朝鮮は内政問題なんです。
内政問題は、基本は国内自らで決めるべきと思う。
重要なのは、国際的に人権が侵害されているということ。それに対しては
国際社会でサポートする必要があると僕は思っています。
そうするとミャンマーよりも北朝鮮よりも実はチベットなんです。
結果的に抑圧する側が中国ということであって、別に中国が嫌いなわけで
もないし、むしろアジアの中では相対的に中国は頑張っているなと、ミャン
マーとか北朝鮮とかに比べれば。
だけどおかしいところはおかしいと言おうねと、それだけの話です。非常に
シンプルです。
今後、中国を中心とした北東アジアの推移をどう見ますか。
最大のリスクは中国の崩壊です。
順調に大きくなって脅威になるというリスクより、内部矛盾が拡大して中国
が内部崩壊、体制崩壊するときの周囲に与えるマイナスの影響の方が大
きいだろうと思いますけど。
それはいつごろだと予想しますか。
早ければ2、3年、長ければ20、30年だと思います。
やっぱり経済の混乱から生じると思いますが、どういうシナリオを取るかは
読み切れないところがあるんですよね。
オバマさんの勝利宣言には感動しましたが、彼のような政治家が日本に
生まれないのは日本の政治風土に関係ありますか。
風土じゃなくて政治システムそのものが生みにくくなっているんです。
というのはオバマの勝利宣言演説のような場面って日本にはあんまりない
んです。
それは議会システムもそうだし、メディアシステムもそうだし、政党システ
ムもそうなんです。
例えば選挙の結果、政権を担うことになった首相が国民に向かって演説
するとか。
戦前の議会は本会議中心主義で、有名な斉藤隆夫の演説なんて2時間
とか2時間半やっているんです。
この間私1時間45分本会議で演説したら大ひんしゅくをかいました。
長い演説自体が、そもそも普段やっていないですよね。例えば総選挙終わ
った晩にやるのは記者会見なんですけど、記者会見の前に演説をするべ
きですよね。
カストロさんは相当長い演説ですね。
今はそういう場もないし、場がないからトレーニングされてないし、そうい
う悪循環だと思いますね。
ただ少し変わりつつあるのは僕らの世代位から下の、2世3世出ない都市
部の議員は演説を一生懸命やっているんですよ。僕はちょっと期待してい
るんです。
もし私が党首だったら、総選挙の夜は記者会見の前にテレビ演説します。
求められるのはその人の生き方とか人間性がにじみ出た演説ですよね。
そう、俗に哲学といわれている部分のところをちゃんと話さないとダメです
ね。野田佳彦さんなんか上手いですよ。
現在、首相に最も相応しいと思う人はいますか。
いません。それを自分だと思えない人は政治家をやるべきじゃないという
ことです。(笑)
そうすると小沢代表は首相として相応しくないと。
理想的な人がいないときは相対的に誰がよりましかという選択をするのが
政治ですから。
小沢さんを政治家としてどう評価しますか。
僕は時代の狭間にいるが故に気の毒だなと思いますけどね。
小沢さんが育ってきた土壌は55年体制ですよ。
彼がリーダーとして今、プレイしているのはポスト55年体制です。
そのヤップはものすごく大きいですが、そういう端境期のリーダーはその
ギャップを越えないと上手くいかないわけです。そういう意味では苦労され
てるなと思いますけどね。
自民党の60代くらいの政治家は、金をたくさん集めて派閥の子分を増やし
て総理大臣を目指すという55年体制の中で育ってきた。
ところがこの15年くらい、そういうことをやっちゃだダメだということに
なり、逆に子分よりも国民大衆の人気どう得るかの方がずっと大事になっ
て、そういうことを全然やらなかった小泉さんが総理になったわけです。
加藤紘一さんとか山崎拓さんは気の毒だなと思いますよ。
総理になるにはそういうことをしなきゃいけなかったからそうしてきたの
に、やってきたら梯子を外されちゃったみたいな感じでしょう。
それは小沢さんも同じですが、それでも基礎体力があって頑張れるっから
余計そのずれを抱えていますよね。
本人はあまり表に出ずに裏で権力をコントロールする、これが権力の本当
の姿だとずっと思って育ってきたんじゃないですか。
ところがそんなに権力を握りたいなら党首をやって自分で総理になれと迫
られて党首をやらされているわけですよ。気の毒だなと思います。
気の毒だけどしょうがない。時代の変化ですから。
とはいえ、そういう小沢さんを担ぐのは小沢さんの力に頼りたい人も多いと。
なんでしょうね。推している方はね。(笑)
小沢さんは時代が変化したのに生き残っているということは、基礎体力が
強いんですね。それはやっぱり評価すべきだし、そこを頼りにする議員が
いることは理解します。同意はしませんけど。
菅さんは小沢さんとは本質的に合わない印象がありますが、今小沢さんを
ずいぶんサポートしていますね。
やっぱり敵の敵は味方ですよ。私もそういう意味では小沢さん許容ですか
ら。この間一度も小沢降ろしをやっていないし、ダイレクトで小沢批判はし
ていないです。
小沢氏と距離があるという先入観から小沢批判を繰り返しているように誤解
されますけど、全部エクスキューズして、小沢批判はしていないです。
それは敵の敵は味方ということで、みんなが小沢代表でやりたかったら、
しょうがないと思っているんです。
今の情勢ですと小沢さんが勝利して首相になる可能性がありますが、
本心はイヤですか。
いや、首相にんってもらわないと困るんで、自分が首相になりたくないか
ラ、そこで変なことをやられたら困るんです。
次の衆議院選挙の後に、どんな政界再編を希望しますか。
私自身は政界再編は怒らない方がいいと思っているし、起こらないだろう
と思っています。
起こらないほどに民主党は圧勝するという意味ですか。
というよりも、きれいに二大政党にで政策でわかれるなんてあり得ないん
です。小選挙区制度を前提にすれば、選挙区の事情でなかなか行ったり
来たりしにくいんですよ。
それから勝っている側は絶対割れませんから。割れるのは負けた側なん
ですね。
だから隅っこの方で何人か行ったり来たりがあっても、自民党が真っ二つ
に分かれるというのは、僕は一貫して幻想だと思っているんです。
民主党が政権を取ったらまず最初に実行する政策とは。
一番最初にやるのは、役所のみなさん、今までやってきたことはゼロベー
スですよ、いやなら辞めてねということ。
予算にしろ、去年までの予算付いてますから、今年もやりますというのは
ありませんよと。今までここまで進んできたからやって下さいはありませ
んよと、全部ゼロベースですよということを役所に迫って、言うことを聞か
せるのが一番大事だし、それをやらなければ意味はないと思いますけど。 
外交はあまり変わらないですか。
外交は日本の都合だけでは変わらないですね。
変わるとしたらどういう点ですか。
イラクから自衛隊が帰ってくるというのはテクニカルな小さな話で、大きな
話で言えば、アメリカにものをもっと言えるようになるのかな。
ものを言えるようになるのは、実は日本の事情だけではなくて、オバマ政
権になれば向こうも、オイ、もうちょっと日本はものを言っていいから、そ
の代わり自前でやれよみたいな姿勢になってくると思いますけどね。
その分、大変にもなりますね。
僕はあんまり大変だとは思わないですけど。
大変だとすれば東アジアですよ。拉致とか北朝鮮は大変です。
これからアメリカは、東アジアとはもうあまり関わらんという感じだと思い
ますよ。
政治家としてどんな理念、哲学を大切に国づくりを目指しますか。
多様性です。多様性が許容される、多様性が評価される、そういう社会が
僕は望ましい社会だと思っているし、日本の置かれている状況からすれ
場、そういう社会になった方がいろんな問題を解決しやすいと思う。
僕の希望でもあるし、なおかつこの国の条件にも合っているので、僕の
発想は大きな方向性として常にこの多様性にたどり着きます。
ありがとうございました。
すいません、ありがとうございました。
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2008.8.20  於港区六本木、六本木ヒルズ
鳥越俊太郎 ジャーナリスト
≪インタビュー≫  聞き手・蛭田有一
人間・鳥越俊太郎が嫌悪感を覚える対象は。
「権力をかさに着たり、権力を正しく行使するのはいいんですけど不正に行使
するのはイヤですね。
例えば警察であるとか、検察とか裁判所とか、いろんな行政官庁もそうですけ
どね。」
ジャーナリストとして大事にしていることは。
「僕はジャーナリストと自分で呼んだことはないんですけど。
ジャーナリストというのは日本ではまだちゃんとした市民権を得ていません。
意味もよくわからないのでそういう言葉は使いたくないんです。
大事にしていることは、まず第一に現場に立つこと。それから自分の直観力
を大事にすること。好奇心を常に失わないこと。人と同じことは絶対にしない
という強い気持ちを続けることですね。
それから人間観というものを自分なりにちゃんと持ってものを見るということ。
歴史的に物事を考えるということ。
絶対的に正しいとか、絶対的に正しくないということはないないと思っている
んですね。だから絶対性を言い立てる人がいると反発したくなりますね。」
いま日本の社会に噴出する様々な問題の裏に何があるんでしょうか
「それは日本が豊かになっていろんな問題が出てきたということですね。
豊かさです。豊かさという病だと思います。
明治以来日本人は西欧の豊かさを追いかけて一生懸命努力してきた。
1980年代から90年代にかけて、日本は豊かになったわけです。
世界の有数の、ひよっとしたら一番かもしれないという豊かさの中には、
安全、便利、清潔という三つの要素を含んでいるんですが、その豊かさを実現
していく過程で、同時に豊かさという名の病が日本人を蝕み始めたわけです。
いろんな変な事件はそういう豊かさの中で起きたいる。
少年が人間を殺してみたいと思って殺人事件を起こす。そういうことは貧しい
時代にはありえなかった。昔はみんな生きることに必死だったけど、今は必
死な時代じゃないですね。
お金さえ出せばなんでもありますから。そういう時代の流れですからどうしよ
うもないですね。だからそこから出てくるいろんな社会的な病巣にひとつづつ
対処していくしかないですね。」
国民の政治への関心をどう思いますか。
「政治は全然ダメでしょう。政治の最終的な責任は国民にあるわけですよ。
国民が政治家を選んでいるわけですから。
投票率は首長選挙ですと50パーセント切りますね。衆議院選挙でも60パー
セント切っていますね。
若者20代の場合はおそらく投票率20パーセントか30パーセントですよ。
税金を払って自分たちの国の運営を政治家や行政官庁に委託しているわけ
ですね。
それが上手くいっているかどうかをちゃんと監視していないと、税金がいい加
減に使われたり、無駄使いを一杯されるわけです。にも拘らず国民はそれに
無関心です。投票率が低いわけです。
これが日本の政治の一番根源的な問題なんです。これでは本当の意味の
ちゃんとした政治家は出てこないんですよ。国民の姿、形に似た政治家が出
てくるだけです。
国民のレベル以上の政治家は出てこないということですね。」
人心の荒廃は国の衰退にもつながりますね
「歴史的に、ローマ帝国から始まって豊かさの頂点に立つと、必ずそこから衰
退が始まるんですよ。つまり人間が豊かさの中でダメになっていくんですよ。
貧しいときは必死に生きなきゃいけないから、真摯にものごとに対処し、一生
懸命に生きていく。
所が豊かになってくると、少年の変な事件も起きてくるわけです。
満月は必ず欠けるんです。これは英国病もアメリカ病もそうだし、いま日本で
は、日本病です。日本も満月のように満ち足りて、今やどんどん欠け始めてい
るわけでものごとってみんなそうですよ。頂点に達したら衰退が始まるんで
す。止められません。」
真面目で礼儀正しいといわれた日本人が、何故こうも急激に荒廃したのか。
「それは短時間に豊かになったからです。その中でみんな育っているわけです
から。昔の貧しい時代は守らないと、礼儀とかあマナーとかルールをちゃんと
守らないとやっていけない社会だったから、みんなそれを守りながら生きてき
た。
今は社会規範を守らなくても、フリーターであるとか、ホームレスであると
か、要するに自由に生きられるんですよ。ものが一杯あるから。
昔はちゃんとルールに乗っといて生きてないと社会から放り出される。そうす
ると死ななきゃいけない。
だからみんな我慢してルールや規範や礼儀を守りながら、我慢するところは我
慢して、つまりセルフコントロールができたわけですよ。
いま日本人はセルフコントロールの能力をほとんど失っているんです。
欲望を満つためにとことんやっちゃう。そういう社会になっちゃった。だから
もう落ちるとこまで落ちないとダメですね。」
最近そういうことを言う人が増えていますね。
「これね、家庭教育がどうとか、学校教育がどうとかいろいろ言うけどね、
教育で何とかなると言うほど簡単な問題じゃないです。
もっと根源的な社会の最も根深いところで起きている崩壊現象ですから、これ
は止められません。
まあ、落ちるとこまで落ちてみんなの目が覚めて、やっぱりこれではいかんの
だと、やっぱり真面目に働こうと、ルールはちゃんとッ守っていこうというふ
うに、みんなが我に帰らないとダメなんです。」
日本が落ちるとこまで落ちる姿は見たくないですね。
「でもね、まだまだ日本人は捨てたもんじゃなくて、ちゃんとした日本人も一
杯いるんですね。僕もカメラを始めて写真集を作りたいと思っているんです。
日本の職人さんをね。
日本の職人100人とかね。そういうのを僕はやりたいなと思っているんで
す。素晴らしい職人が、誰にも知られずに町の片隅でこつこつと仕事をしてい
いる。
もう10年、20年経てばこの人たちはいなくなる。そうするとこの技もなく
なってしまう。伝承する人がいない。
職人がやっているような仕事を若い人たちがやりたがらない。ITだとか、金融
だとか、ちょっと恰好いいところに行きたがる。ホリエモンなどというバカ者
が若者にとんでもない幻を植え付けたもんでね。」
最近、街中から人格を感じさせる顔が消え、人格者という言葉も死語になりつ
つありますね。
「それはきっと人格者を滅ぼすのは欲望なんですよ、誘惑して。
大分県の汚職問題があるでしょう。学校の先生は一応人格を求められるわけ
じゃないですか。ところがみんなお金で自分の職場の仕事を買ったり、汚職が
起きてるじゃないですか。
あれは日本人の姿ですね。今の日本人の醜い姿ですよ。お金を出せばなんで
もできると思っている愚かな日本人の姿です。
あれは大分県だけじゃないと思いますね。ああいう考え方は日本中に蔓延して
いますね。」
15
最悪なのは日本の支配者である官僚が絶対責任を取らない集団であるという
ことですね。
「そうですね。責任を撮らないことの具体例が日本の借金です。
いま800兆を超える国の借金があるでしょう。これは官僚が予算を作って無
駄使いをしてその責任を先送りしたままだれも責任を撮らなかったから借金が
増えたわけですよ。
そのツケは全部国民に回される。それを放置してきた政治家やマスコミ。その
大借金は僕らが言ったぐらいではどうにもならない。
責任を取らない一つの証拠が日本が抱えている大借金です。無責任ですよ、
全く。
人の金だからジャブジャブ使うんですよ。道路をつくるよりも先に大事なこと
があるだろうと。いっまだったら介護の問題とかね。これから高齢化社会でど
んどん老人が増えていくわけですよ。
ところがそれに対応する介護をしてくれる若者は少子化でどんどん減ってい
る。しかもそういう仕事はしたくないと。だから介護は今、インドネシアとか
フィリピンとか外国の人達にやってもらおうと、こないだからやっているで
しょう。バカじゃないかと思うんですよ。
先ずね外国人に頼る前に日本人が同じ日本人の介護をする。つまり自分たち
を育ててくれた、自分たち国を守ってくれた親や、またその親の世代の最期を
看取っていくということはやらなくてはいけないんです。これは責任ですよ。
それをやらないでインドネシア人やフィリピン人にやってもらう、これほど無
責任なことはないですよ。」
僕の娘夫婦もやっていますが本当に過酷な労働環境です。
「その割には報酬が安いでしょう。もっと介護にお金をつぎ込んで報酬を高く
して介護についている人の社会的なステータスを上げないとダメですよ。そう
しないと介護の事業は成り立たないです。
10年間で59兆円道路の整備計画に使うと言っているんです。道路は砂利道
でいいからこの59兆円を介護の事業に回して下しと僕は言いたいです。
59兆円で介護についているヘルパーさんとかデイサービスをやっているヘル
パーや介護福祉士とか、そういう人たちの給料をせめて月に30万40万ぐら
いは保証すると。
今介護に関わる人で月に20万にも達しないじゃないですか。結婚できないで
すよ。これじゃ介護は成り立たない。」
役人の介護に携わる人たちへの蔑視が根底にあるのでは。
「そこは変えないといけないですね。やっぱり介護に携わる人が社会的に尊敬
されるように変えていく。そのためには報酬を上げないとダメです。
報酬が高くなるとそれだけ社会的な地位も高くなる。今低いから蔑視されるん
ですよ。本当は重要な仕事をしているにも拘らずね。
だから先ずね、道路整備の59兆円、悪いけど道路は砂利道でそのまま放っと
いていいです。舗装しなくていい。
その59兆円はまるまる介護事業に振り向けてくださいと、それがいま私が一
番言いたいことです。」
日本はアメリカに従属して、とても独立国家とは言えないと言い切る政治家が
少なからずいますが。
「世界でこんなに米軍基地を持っている国はないでしょう。
ドイツよりも多いですよ。イタリアよりも多い。敗戦国の日本とドイツとイタ
リアはアメリカの基地を持たされました。その中で、占領時代そのままに、
こんなに基地があるのは日本だけですよ。
日米同盟という美名の下で、日本の政治家がそれを改善しようと思わないの
に、僕は腹が立つ。
沖縄に行ってごらんなさいよ。沖縄の真ん中の重要な所を全部米軍基地で押
さえているじゃないですか。そこの地主さんには我々の税金から時代を払って
いるんですが、これを使っているのはアメリカですから。こんな不自然なこと
はもうやめなきゃ。
だからね、早く自民党じゃない政権ができて、日米同盟という対米従属同盟を
一回ご破算にして対等な日米同盟を結ぶ政権を作らなきゃだめですよ。
基地をもっと整理して、どうしても必要な基地だったらしょうがないとして
も、大半の基地はもう全部返してもらいますと。」
その際、アメリカからの厳しい圧力、反発があるでしょうね。
「圧力があったといってもね、日本がアメリカのドルを一杯買っているんです
よ。これでアメリカの経済が成り立っているんですよ。いざとなったら日本は
ドルを売りますよと。
橋本龍太郎の時それをやろうとしたんですが、アメリカはものすごく慌てたん
です。」
国益のためにはどんな手も使ってくるアメリカに屈しない覚悟と強い意志が
日本人にあるか試されますね。
「それは急に変わることは出来ないでしょうけどね。国民がそういう覚悟を持
って、そういう政治家を選んで、そういう内閣ができれば行政官庁は最終的に
は従いますよ。
だから民主党の政権になって、どこまで対米関係を変更できるか。僕はそれを
注目しているんですけどね。
恐らく次の選挙で自民党は負けるでしょう。公明党がまた自民党から離れて民
主党にくっついてきますからね。公明党も入れて民主党、社民党、共産党、国
民新党㋨政党が連合して政権を撮る。
その中でどこまでそういうことができるか、それは簡単ではないでしょうね。
民主党の中にも今の日米同盟を指示している前原なにがしのような人がいま
すからね。」
今のねじれ国会をどう評価していますか。
「ねじれ国会は結構なことですよね。国民の意思がちゃんと現れているわけで
すから。ある意味でチェックが効くわけですからね。
衆議院選挙の時、小泉マジックで圧倒的多数を自民党は作った。しかしその夢
から覚めた国民は参院選では野党の方に多数を与えた。つまり国民の思考の
プロセスがそこに現れているわけですから、これは結構なことですね。
もう自民党は昔のように勝手に何でも自分の好きなようにはできないんです
よ。要するにね、参議院選挙の結果、国民は自分たちの一票で政治が変わる
んだということを学んだわけですね。」
どんな理念、哲学を対立軸にした政界再編が望ましいですか。
「やっぱりできるだけ平等な、格差のあまりない社会ですね、北欧のように。
もともと人間の能力には格差がある。能力の格差は経済的な格差になり、社会
的な格差になる。
ただその格差をほっといたら治安が乱れ犯罪が多くなる。だからそういうもの
を出来るだけ小さくしようと、それをセイフティーネットと呼んでいる。
政府がそういうセイフテーネットを維持して格差をできるだけ少なくするとい
うことを歴史的にヨーロッパはやってきている。
日本もそういうヨーロッパ型の道を選ぶしかないと思うんですね。そうすると
これは大きい政府になりますよね。といっても昔のように只無駄使いをする大
きい政府じゃなくて、できるだけ格差のない平等な社会を目指す。
それからアメリカとは対等な関係を結ぶ。中国とも対等な関係を結ぶ。」
そうするともう一つの軸は小さな政府ということですか。
「小さな政府というのは聞こえはいいけどね、それは競争一点張りなんです
よ。政府は全然介入しないで自由競争に任せるわけですから。
自由競争というと聞こえはいいけれども、アメリカのようにものすごい格差の
できる社会、つまり優勝劣敗、弱肉強食ですね。
生産力を上げるために競争は必要かもしれない。しかし競争力だけが原理と
なっている社会は危うい社会ですね。アメリカ見たらわかる。アメリカは競争
原理で成り立っている。
アメリカにはワーキングプアが3700万人いるんです。日本では今500万
人ぐらいかな。年収200万に達しないワーキングプア。一方ではものすごい
高級取りがいる。」
護憲か改憲か、鳥越さんはどちらですか。
「僕は護憲ですよ。憲法9条は日本が世界に誇る宝物だと思います。
憲法9条は何としても守る。これは日本国民だけでなく、アメリカも含めて世
界中の人々の英知が生み出したひとつの結晶なんです。
武力で国際紛争を解決することはやめましょうと、すべて話し合いでやりまし
ょうと、そのための武力を持つことはやめましょうと。これが理想なんですよ。
日本は理想を掲げて、理想とは違う自衛隊を持っている。
しかし自衛隊はあくまでも専守防衛型だから、攻めて来られたら守るけれども
こちらから攻めていくことはやらない。
だからこれまでの自民党政府といえども集団的自衛権は否定してきた。
ところが最近はイラクに派兵したり、会場の給油をやったり、一歩踏み出して
いるわね、集団的自衛権を。
これは非常に誤っていると思いますね。小泉政権がやった最大の過ちです。」
若者たちに一番訴えたいことは。
「自分たちが支払っている税金の使い道について厳しく見てくださいと、それ
が一番大事なことです。
税金の使い道について何も考えない、そういう国はダメになります。
昔は農民からの年貢、もうちょっと前は租庸調、中世になると年貢米、明治か
らは税金。
税金で国が成り立ち、社会が成り立っているわけです。でもその自分たちが出
した税金について日本は天引き制度だったために、サラリーマンはどう使われ
ているか全く関心を持たないで戦後生きてきたからこんな国になっちゃった。
もっと自分たちが払った税金の使い道に関心をもって厳しく見ていけば政治の
状況も変わるでしょう。
国と国民との関係、社会の成り立ち、すべてのスタートはそこからです。そこ
に一番関心を持っていただきたいなと思いますね。」
ニュースの職人として今後どんなことに力を注いでいきたいですか。
「僕は癌をやってあと何年生きているかわかりませんから、そんなに将来につ
いて考えたことはありません。
まあ写真集を作りたいなとか、本はもちろん書きたいなとは思うんですけど。
あとは娘と二人でコンサートを今やってますから、全国ツアーをもっとやりた
いなと、今年だけでももう7回ですよ。
そういうことはやりたいなと、それは楽しみの方ですが。」
病気を抱えながらもぜひ実現したことはありますか。
「いやもう先は長くないですから、そんなにね。日本の国はやっぱり職人の国
ですからね。職人というものの存在をもっとアッピールするような仕事はして
みたいですね。
それから若い人が職人の仕事を受け継いで喜んでするような、そういうことに
ちょっとでも携われればいいかなと。大それたことは考えていません。
いや、そりゃあ日本からアメリカの基地をなくしたいですよ、本当は。でもそ
んな簡単にできないじゃないですか。
沖縄から米軍を叩き出したいですよ。そういい続けることは必要ですけどね。
そうすると、そんなことしたら日本は核武装しなきゃいけないとか言う人がい
るけど、バカじゃないかと思うんですね。
米軍がいなくなったら、なんで日本が核武装しなきゃならないのか。北朝鮮が
核のミサイルを撃って来たらどうするんだとかバカなことを言う。」
お疲れのところ長時間本当にありがとうございました。
ハイ。
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2010.5.26  於文京区本郷、東京大学
姜尚中 政治学者
≪インタビュー≫  聞き手・蛭田有一
近年、大躍進を続ける韓国の強さはどこにあると思いますか。
韓半島と日本の根本的な違いは、日本はやっぱり島国ですし地政学的に
大陸から離れていますから、基本的には日本という国は歴史的にも温和な
国だと思います。
戦国時代という時代がありましたけれど、基本的にはこの国は文明の段階
に入って以来、地形も天候もある種温和な場所にあって、国民性もどちらか
というと温和、だから極端を好まない。
そういうものの軸心に天皇制というものがあったと思うんですね。これがある
お蔭で極端に走らない。
ところが韓国は、よく政界は一寸先は闇と言いますけど、韓国もまさしく同じ
状況で、一寸先は見えない。どうなるか分からない。
それから外側から海の力、大陸の力がせめぎ合っていますしね。
これは不可逆的に歴史がアップダウンするんですね。非常に極端に。
唯一それが何とか保たれたのは、李氏朝鮮時代。
江戸も200数十年の歴史で、ある種平和な時代だったわけですね。
中国も明から清にという形で東アジアはある程度安定していた。
その時に現在の韓国のいろんな文化も栄えたんですけど。
韓国の基本的な宿命は、政治によっていろんなものが変わってしまう。
政治が変わることで一挙に経済、社会、文化が変わってしまう。
解放後の韓国は全てが政治問題に左右される。南北の対立、冷戦の前線
基地ですから。
だから全て政治が優先するんですよ。そうするとパワーエリートも政治を
第一義的に考えざるを得ない
ところが日本の場合には秩序が安定していますから、町工場からソニーや
松下、いろんな経済的な工夫、技術的な工夫、こういうことをコツコツ積み
重ねていける。
韓国はずっと80年代までそれが出来なかったわけです。ですから政治で
アップダウンし、社会はスウィングしていくわけですね。そんな時に技術
的な蓄積もできないわけです。経済的に何かに専念することが社会的に
難しい。
それから今もそうですけど若者が兵役ですから、日本の企業が青田刈り
してすぐに企業に馴染ませて、その中で年功序列できちっと働かせて、とい
うことができないですね。
いってみれば、安定的に官僚的な思考で、ものごとを考え実行することが
できない。
韓国は絶えずトップダウンで何かを決めていくという思考にならざるを得な
いんですね。
88年のオリンピック以降、民主化が一応終わって、政治が経済、社会、文
化に介入する度合いが少なくなってきたと思います。
ということは国民の持っている様々なポテンシャル活かせる状況になった。
政治だけにとらわれずに経済や社会や文化やいろんなことに自由度が出
てきた。
兵役に行っても一応義務は果たすけど、かつてのようにヘビーなものでは
なくなってきた。そうして人々の活動のエネルギーは政治以外に向けられ
て、今こういう形で花開いていると思うんですね。
組織とシステムとしては、トップダウンが各社会に根付いていますから、
グローバル化の中で、できる限り時間を短くしていろんな政策決定をして
いかなきゃいけないときに、それがヒットしたわけですね。
日本の場合はどうしても何かを変えようとすると積み上げ方式で、なかなか
トップダウンではできない。それから膨大な既得権益がありますから。
韓国はまだ新しい国で、そういう点で小回りが利く。それが今のグローバル
化の中ではプラスに作用していると思います。
国家主導が成功の源になっていると思っていました。
よく日本ではそういう解釈が出てくるんですけど、確かに愛国心は強いと
思うんです。
ただ今の若者はそういうナショナリズムを持ているかというとかなふぃ違い
ますね。あまり日本では知られていないかもしれませんが、離婚率は韓国
の方が高いです。
それから今、自殺率は大体日本と同じです。つまり、韓国社会は、言って
みれば前近代、近代、ポストモダンがいっぺんにあるような社会なんです。
韓国の若者の政治離れは今すさまじくて、その点では普通の日本の若者
と変わらないです。
最近、村上春樹とか吉本ばななとか大変人気ですね。
政治と書くにとか愛国とか、そういう前の世代の大きな物語は若者になか
なか通じなくなっている。ですから国のためというよりは、かなり個人主義
的になっているんですね。
ただ中年以降の世代は日本と比べても非常に愛国心が強いと思いますね。
それは企業とか社会に浸透していますね。だから韓国の方が日本より世代
間の断絶、葛藤が劇的ですね。
日本が韓国から学ぶ点は。
韓国の人が、或いは僕の母、父親の世代がよく言っていたのは、日本の
人々はとにかく我慢強いと、その我慢強さを我々は学ぶべきだと。
もし日本が韓国に学ぶものがあるとすると、要するに韓国は不幸だったん
ですよ、長い間。
不幸の連続、というのは事件があまりにもたて続けにあって、安心して暮ら
し向きを設計できなかった。一つ言えることはその分タフになったと思いま
す。
日本は60年間戦争ひとつありませんでしたし、政権交代しても自民党の
中のコップの嵐で済んでいましたから。 みんなが年功序列、企業内労働
組合で右肩上がりを考えて、将来に投資をしておけばいいと。
韓国はつい最近までベトナム戦争にまで兵隊を送りましたしね。
今、38度線で何が起きたも不思議ではない。いってみれば不幸によって、
度重なる不運によって鍛え上げられたと思います。だから少々のことでは
パニックにならなくなったんですね。
例えば何か事件が起きて、日本では大変だと騒いでいるときも、意外と
ソウルに行くとみんなあっけらかんとしている。
つまり、いろいろな不幸な事件や予測できない事柄に対して、少しタフに
なっていると思う。そのタフさを日本の場合、少し学習した方が。
それはどうやってできるのかと考えると、あまり未来に対してすぐ過剰反応
して、これが起きたら大変だとか、すぐにパニックに成りやすいというか、
例えばパンデミックや口蹄疫や経済的破綻や、これが起きるとみんな身震
いしちゃうというんでしょうかね。
韓国の場合には、97年にIMFの危機があって、経済が破綻しています
から。
だからそんなに世の中はうまくいかないと。ギリギリ破綻が起きても何とか
やっていけるんじゃないかという、やや開き直ったような豪胆さがあると思う
んです。そこが必要なんじゃないでしょうか。
近年、日本人が変質したと感じることはありますか。
近年、特に感じることは冷戦崩壊のときに、私はいろんなとこに書いたんで
すけど、あまりにも成功物語が予想以上に当たって、成功した話しか体験
してこなかったということが、逆に失敗に対して、そこから学ぶことに非常に
臆病になったんじゃないか。
戦後60年、これだけの経済大国を敗戦の廃墟の中から作ってきた国とし
てドイツと日本が比較されますよね。でもドイツは東西に分断されていま
した。
ところが日本は、戦後あまりに成功に慣らされ過ぎたんじゃないか。
個人でも企業でもそうですけど、成功ばかりやってきたから、いったん左前
になるとどうしていいか、逆に自分たちを変える力が萎えちゃうと思ううんで
すね。
自分たちが持っているものをいかに守るか、そこでどうしても大胆な行動な
行動に出れない。萎縮してしまう。そして内向きになる。それは守りなんで
すね。
戦前、軍部が跳梁跋扈したのは間違いでしたけど、でもあの時は持たざる
国が持てる国にチャレンジするんだというのが合言葉だったわけです
よね。ところが日本は完全に持てる国になっている。
持てる国の問題点は、持っているものをなんとか守ろうと、そう思う人が増
えてきているということでしょう。
現在、世界で高く評価している政治家はいますか。
僕が注目しているのは、オーストラリアのラッド首相ですね。
彼は中国留学組でオーストラリアの中でもとりわけ東アジア通ですね。
彼は前の首相のときと違って、脱米入亜というんでしょうか、アメリカ一辺
倒じゃなくて、アジアに入ろうと。
彼は意外とアジアの間の対立の調停役として、例えば日中、日韓、中韓
いろいろお互いにアジアの中にいるからこそ、過去の経緯もあって対立す
るときがありますよね。
そういうときに、オーストラリアがその間に入って仲介役になると。
ラッドという人が首相になったことはとてもいいことだと思います。彼は中国
語がペラペラですから。日本語も少ししゃべれるんじゃないでしょうか。
韓国にも詳しい。これは僕は注目していますけど。
韓国の政治家では。
今、正直言って韓国は政治家不作の時代ですね。
これまででは、僕はどうしても金大中氏を挙げてしまいますね。ただ北朝
鮮との関係で評価は変わってきますけど。
彼がひとつよかったのは日本に対する文化開放をやりましたね。
私にズバリ何と言ったかというと、世界で日本の文化を受け入れない国
って恥ずかしいと。
世界中見渡しても、なんで日本の文化を受け入れないのか。そんな18
世紀の鎖国政策をやっている国が自分の祖国だというのは恥ずかしい
と言った。
日本に文化開放をして日本に飲み込まれるんだったら、それもいいじゃな
いかと。それぐらいのことしかできない国民だったら自分はそれでいいと。
でもわが国はユーラシア大陸の東側に盲腸のように張り出しているけど、
一度も中国に飲み込まれたことはないと。
わが国は200年以上の歴史を持ている。日本に植民地化されても結局
飲み込まれなかったし、だからいいじゃないかと。
それには僕は目を見開かれましたね。
日本の政治家では。
僕はやっぱり一人は後藤田さん。
どういうところが。
彼は基本的にはリベラルの人で、しかし警察官僚ですから社会の裏側を
よく知っていたと思います。
だからカミソリ後藤田と言われましたけども、彼は参謀として日本の社会
が極端にぶれないで、何とか戦後のいい面を残そうと、ですから彼は絶え
ずバランサーとして動いたと思います。
それ以外では。
一番尊敬しているのは石橋湛山です。短命に終わりましたけど。
ただ彼は東洋経済新報の中で、昔から小国日本論を説きましたね。
彼の基本的な発想は、自由貿易によって日本は富んでいくと、剣の力で
はなくて。
だから植民地政策をするなんて、そんな無駄なことはやめて、自由な貿
易を通じて、アジアの中で日本の富を大きくしていく。日本という国はそう
言う国だと。
だからへんに大国志向で軍事力をつけようとか、そういうことは戦前から
彼は一貫して否定していた人ですね。
ネットで姜さんが、田中真紀子さんを評価する書き込みを見たことが
ありますが。
(笑)ずっと前でしたけど、田中さんが外務大臣になる前だったかも知れ
ません。
私は彼女の持っているある種の大衆政治家としての感覚ですね。そこに
名参謀が付けば意外と花開くんじゃないかと。
一回対談したことがあるんです。また二回ほどお食事したこともあります。
ただ外務省の持っているいろいろな問題について、あのとき田中さんが
脇を固める名参謀がいればもうちょっと落ち着いてできたかなと。
ですから田中さんが持っている大衆政治家としての可能性はまだあるん
じゃないかと思います。
鳩山さんはどんな政治家だと思いますか。
2週間ほど前に鳩山さんに会いました。
2時間半ぐらいでしたが赤坂の料亭で。友愛とか、普通、政治の世界では
あまり思いつかないような言葉、感性というものを大真面目に考える人だ
と思いましたね。
ただそれが今のところ現実政治の中に物質化されていないですね、具体
的な形で。ただ新しい政治家だと思いました。
それを究極のKYだとか、宇宙人だとか言う人がいますけど、政権交代が
起きたのが去年9月ですからね。私はまだ判断を下すのは早いんじゃな
いかと。
やっぱり55年体制がそれこそ50年以上続いたわけですから。もう少し
有権者は任期満了まで見るべきじゃないかと。
だから僕はお会いして、率直に先ず任期満了まで続けることが鳩山先生
のミッションだと。とにかく何が何でも任期満了を成し遂げると。
鳩山さんまで途中で投げ出してしまうと、もう日本の信用はがた落ちだと
思うんですね。
マニフェストとか普天間問題も非常に大きいですけど、大切なことは任期
満了を成し遂げること。
これで鳩山由紀夫という政治家の評価も定まるし、今、鳩山先生が辞め
るということは、政治家としての最期の一番肝心要のところで、自ら投げ
出すことになって、これはもう歯を食いしばってでも任期満了を続けると
いうことを率直に申し上げました。
参議院選挙を前に、マスコミの鳩山・民主党批判が異常なほどエスカ
レートしていますね。
ものを見るにはなんでも正面から見るが、側面から見るか背後から見る
かによって実像が変わってきますからね。
最近一般の人が少しバッシングに食傷しているんじゃないでしょうか。
だから私は鳩山政権の評価はもう少し待たなければ、拙速に評価する
必要はないんじゃないか。
見方によって迷走と試行錯誤と両方ありますよね。
ある人は迷走と言えば、いやそれはガラス張りで我々が知るようになった
んで、試行錯誤だと、トライアンドエラーでね。
だから政治には一面だけでは見れない面があるので、なにはともあれ、
日本の国の利益のためには、やっぱり任期を満了するということがなけ
れば。
これだけ大きな国ですから、その国が一年も持たないというのは。
このまま行けば、僕の言葉で言えば政党難民が増えてしまう。
どこもいけないという政党難民が増えると、ある種の政治的な無力感が
蔓延するんですね。そうすると誰も選挙に行かなくなる。
そういう時に社会がおかしくなっていくんです。折角変えても、いくらも経
たないうちにこれもダメと言うんだったら次に何があるのか。
これはもう液状化した状況に向かうんじゃないかと思いますけどね。
小沢一郎さんをどう評価しますか。
私は去年、衆議院選挙の前に雑誌で、小沢さんは歴史的使命を自覚され
て、お辞めになった方がいいと書いたんですね。
それは衆議院選挙で小沢さんが辞めないと政権交代が起きないのではと
巷間言われていましたから。
小沢さんの歴史的役割、彼は15年以上にわたって小選挙区比例代表並
立制を引いて政権交代を考えてきた人ですね。その手法について、いろい
ろ問題があるが、彼抜きには政権交代は起きなかったと思う。
だからそのとき、私は政権交代を起こすために、自ら身を引くことが政権
交代につながるならそうした方がいいと書いたんです。
いったん止められましたよね。衆議院選挙の前に。
それで選挙対策に専念されて結局政権交代が起きたわけです。
今も私は、小沢さんはある歴史的役割を果たしてきたと思います。
ただ小沢さんは確か68歳だったと思いますから、小沢さんが歴史に残る
政治家たろうとするには、参議院選挙が終わって来年の統一地方選挙が
終わったら身を引いてもいいんじゃないかと。
つまり小沢一郎という政治家は、権勢を求めても地位は求めないというの
が、彼の存在理由だったと思うんですね。
多分小沢さんの役割は来年の地方選挙で終わるんじゃないかと思います。
日本の政治がどんな理念、政策を対立軸にして分かれたらいいと
思いますか。
共通して言えることは、名目成長率3パーセントで財政を健全化する、
プライマリーバランスを。
同時に所得再配分もあまり格差がないように、その点では自民党も民主
党もある程度共通地盤があると思うんですね。
問題は三つありました、ひとつは憲法。憲法と同時に防衛、安全保障につ
いてどう考えるか。これは日米安保の位置付けの仕方ですね。これは両
党で微妙に違う。
二番目は価値観の問題です。例えば夫婦別性とか或いは外国人地方参
政権とか、その価値をめぐる問題についてどう考えるか。
三番目は地方主権、分権という問題についてどういうスタンスを取るか、
この三つだと思います。
一番目の防衛、安全保障はアジアとの関係をどうするのか、日米安保を
どうするのか、そこが憲法と関わってくるわけですね。
二番目は価値をめぐる問題。これは今後、アメリカのように同性婚とか
或いは未婚の母の問題とか家族の問題とか夫婦別性、外国人地方参政
権、或いは移民問題、こういう社会のDNAを変えるような問題にどう対応
するのか。
それから三番目は地方分権をどう考えるかですね。
その三つの理念を軸に再編が進むとしたらどんなプロセスが考えられ
ますか。
僕は二つあると思います。ひとつは相変わらず民主党、自民党がなんとか
存続しながら大体の極はできて、そこにもう一つ緩やかに何かができる。
或いは完全にシャッフルしてぐちゃぐちゃになった状態で政界再編成が
理念的に起きるかですね。
民主党もその問題については党内で一致していません。自民党も一致して
いません。
ですから同じ三つの問題について理念を同じくするような集団に党派を超
えてまとまっていくかどうかですね。これは選挙次第だと思います。
もし民主党がそう負けないで、参議院選挙、地方選挙を乗り切れば民主党
は安泰だと思いますね。
でも自民党はかなりピンチになります。そうすると自民党が割れて、その
中で野党がまた結びついて保守党ができる可能性もあります。
いくつかのシナリオが今後考えられますね。
20年後のアジアの姿をどう想像しますか。
私自身は、東アジアはEUみたいにはならないと思います。なる必要も
ない。
ただ間違いなく朝鮮半島、韓半島と日本は大きく変わっていると思います。
ひとつは、ドーバー海峡のトンネルと同じように、玄界灘にトンネルと高速
道路が出来ていると思います。
今の南北は20年後にはほぼ統一しているだろうと。どういう形かは別にし
て、人口は7000万人を超えます。
日本と合わせると1億8000から9000万、約2億です。この結びつき
は、私たちの想像を超えるほどに凄い交流と経済圏が出来ていると思い
ます。
両国の真の友人関係を築くために、日本にこれだけはやってくれという
ことはありますか。
それは例えば、領土問題はアメリカとカナダの間でもあります。
だからといってアメリカとカナダが上手くいかないか、というとそんなことは
ないです。
歴史の問題も、ドイツだってフランスだって歴史を一致させることは難しい。
じゃあ何が問題なのか。
何かアクションを起こさないといけませんね。
それはどうしても韓国側は日本側から何かをして欲しいと。やっぱり自分
は辛い目にあったんで。
そこでできることは何かというと、ひとつの例として、かつて西ドイツのウィ
リー・ブラント首相がポーランドやフランスでやったことをやればいいと思
うんです。
ウィリー・ブラントという人はポーランドのワルシャワに行って、ワルシャワ
の慰霊碑でぬかずいたんですね。ポーランド国民はびっくりしました。
感動しました。そこでドイツ国民を受け入れたんです。
だから私は、一国の首相が向こうであるジェスチャーなり、なにかひとつの
シンボリックなことをやる必要があると思います。
それはお金の必要もないし、政治的に何かを決定する必要もない。
韓国の国民の心を掴むんです。
シンボリックなこととは。
例えば韓国の独立記念館とか、韓国人が一番聖なると思っている場所で、
植民地支配について韓国国民に与えた苦痛を今自分たちは心に銘記した
いと。そこで何か儀式的な動作ですね。
例えば向こうの独立運動の中心人物だった人に何かを手向けるとか、いろ
んなことができると思うんです。
日本の有力な政治家にその話をしたことがありますか。
あります。今後政権を取りそうな人に。
それはウイリー・ブラントを学んでほしいと。ブラントがやったことで
ドイツとポーランドは一挙に前に進みました。
日本の首相がそれをやった後で、それを打ち消すような一部の政治家の
言動が心配ですが。
それについて僕が考えたのはですね、一国の首相が政治的な決断をもっ
て韓国でそういう行動をやると陛下が行きやすいと思うんです。
今の陛下がずっと前に、自分の祖先は武寧王との関係があるとか、桓武
天皇との関係があると言われた意味は、平成天皇ご夫妻が昭和時代の
後始末をきちんとやりたいということだと思います。
ご夫婦で中国に行かれたわけですね、それから戦禍のひどかったサイ
パンやいろんなとこに巡礼に行かれたわけです。
ところが肝心要の韓国に一度も足を運ばれていない。
やっぱり天皇家と韓半島との結びつきは半端じゃありません。お身体が
いい内に訪韓したいというお気持ちは多分持っていらっしゃるんじゃないか
と。
そうすると政治家がきちっとそういうところを始末しておかないと。
やっぱり天皇というのは一国の象徴ですから、そこで発言する言葉という
のは政治的にたががはめられるわけですね。
だから政治家がそういうところを地ならしして、それで陛下が行って言葉を
発せられるとなれば、それを普通の政治家が打ち消すことはできませんね。
これはもう大変なことになりますから。
中国に行かれるときもいろいろ問題ありましたよね。
いろんな人がいて、やっぱり陛下は行くべきじゃないとかいろいろありました。
韓国に行けないというのも、過去のわだかまりが韓国の国民にあるからで、
それを解消するのが政治家の役割だと思う。
政治家が最高首脳として、きちっとブラントのように問題を整理する。
そうすると一国の象徴である陛下が、向こうに行ってお言葉を発せられる
わけですよね。
それは韓国国民に通じる。そうすれば一般の政治家がそれを翻すような意
見は到底吐けなくなると思います。
それを今の政権でやってもらいたいですね。
そうですね。陛下のお言葉を皇室に丸投げするということは大変な政治的
利用にもなるし、これは絶対に避けなきゃいけない。
政治の責任を皇室に転嫁するというのは一番最悪で、政治がきちっと問題
を解決する。
その上で、象徴である陛下に訪韓ということにしないと、韓国側がどんなに
訪韓を要請しても日本側はそれに応えられないと思う。
ですから日韓の本当の未来志向的な象徴として、陛下が行かれて、例えば
独立記念館に足を運ばれたり、そういうことは充分にできるわけですから。
決して象徴の矜持が崩れるような発言をされる必要もありません。
天皇は天皇として、きちっとした自分の矜持に基づいたご発言をされるで
しょうし、その基礎工事をやっぱり政治がやらなきゃいけない。
日韓が真の友好関係を作れば、もし中国がアジアで覇権を求めても
その抑止力になりますね。
僕は20年前から日韓の関係は米中に対して非常にいい作用をすると。
今、500万人が行ったり来たりしていますから。
世界中探しても、二国間関係で500万人の人が交流しているのはないで
すよ。ヨーロッパ見ても、ドイツとフランスの間でも500万人も移動してい
ないです。だから日韓関係を盤石にする。
その上で中国に対してもアメリカに対しても相互に協力できることがあれば
やると。二つの国が
日本の優秀な技術と、例えば韓国の家電製品、デザイン力や、或いは
コンテンツを合体して海外に。
だからあまりお互いが競合しないで、むしろ協力して無駄なコンフィクト
(衝突)をなくしてですね。
僕は韓国に行っても、もう領土問題はそのままほっとけばいいと。
韓国が自分たちの島、自分たちの領土だというなら言っておけばいいと、
日本にしても、日本は日本の自主法があるから、あれは固有の領土だと
言っておけばいいと。それでなんの差し障りがあるんですかと。
領土問題は声高に言わないことが最大の大人の解決で、あんな岩礁みた
いのを後生大事に、二つの国が決裂するようなことはばかばかしいことだ
と思います。
韓国のある政治家が昔、あれをダイナマイトで爆破しろと言ったわけで
すね。それは極端だけども。
歴史問題はどうか。これは独仏ですら今もある問題ですから、時間をかけ
てやっていけばいいと思う。だから僕は、日韓の間で敵対的な矛盾はない
と思うんですよ。
あとは心理的なわだかまりを解く。そのためには政治家が一歩踏み出して
ブラントのようなことをここでやると。
こうすれば陛下も来年ぐらい、再来年ぐらい、お身体が丈夫なうちに行ける
わけですから。それで終止符を打つということでしょうね。
在日二世という立場で意識する使命感はありますか。
それはないわけじゃありませんね。
もう父親も母親もいなくなりましたけど、やっぱり遺言みたいなもんで、
熊本のために何かやることをやってくれと。やっぱり熊本が僕の故郷です
から。墓もそこに作りましたね。
あとは一言でいうと、産みの親は韓国ですけど育ての親は日本ですから。
どちらを選べと言われたって、それは産みの親も大切だし、とはいえ育て
の親があって初めて大人になったわけですからね。
だから僕がよく言うのは産みの親と育ての親、これが仲が悪いときに子供
はどうしますかと。
それは産みの親がいいと言う人もいるかもしれないし、いや産みの親よりは
育ての親を大切にしたいというのが普通の感情だから、我々の使命はどち
らかを選ぶんじゃなくて産みの親、育ての親、それがいい関係になるように
やっていくしかないんじゃないかと。
今後、特に力を入れていきたいことは。
6月5日、ここ(東大)に現代韓国研究センターができるんです。
僕がセンター長になるんですが、鳩山さんにセレモニーへの出席を
お願いしたんですけど、来たいとはおっしゃっているけど今の政治状況で
は難しいでしょうね。
今後はここのセンターが日韓の学術交流、人的交流のひとつのコアに
なればいいなと思います。それが僕の役割だと思いますね。
頑張ってください。ありがとうございました。
いえいえ、とんでもありません。
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2010.4.27  於中央区佃一丁目
田原総一朗 ジャーナリスト
≪インタビュー≫  聞き手・蛭田有一
支持する政党はありますか。
去年の衆議院選挙は民主党に投票しました。
今の民主党は田原さんの期待に応えていますか。
いやあ、答えていないですね。ただ、そんなには期待していなかったで
すけど。
ひとつは、初めて政権を取ったわけですね。だから政権政党とは何か
ということをまだよく分かっていないんでしょうね。つまり不慣れというの
が一番大きいと思います。
司会者、ジャーナリストとして特に意識している使命感、こだわりはありますか。
僕は司会者じゃなくてジャーナリストであり、ディレクターだと思っていま
すが、常識を疑うということです、基本的には。
世の中の常識というのは大体間違っていることが多いんで、それを疑う
というのが基本だと思っています。
常に視点を底に置くと。
そもそも僕の原点というのは、小学校5年の夏休みに日本が戦争に負
けたんですね。
5年生の1学期までは、先生たちがみんなこの戦争は正しい戦争だと
君らは天皇陛下のために死ねと、君らの寿命は20歳だというように教
えられてきて、そう思っていました。
そしたら戦争に負けて2学期になったら、同じ先生の言うことが180度
変わって、戦争をやるなんて犯罪者だと。
つまり1学期までの英雄が犯罪者になったわけですね。それで、もし君
は戦争が起こりそうになったら、身体を張って戦えと。平和が大事だと
教えられたんです。
1学期までは、学校で式があると、講堂の一番正面に昭和天皇の写真
を飾って、これを御真影といったんですけが、その御真影の額の下の
縁から目線を上にやるなと、天皇の顔を見たら目が潰れると教えられ
て、目線を下の縁から上には上げないできた。
それで2学期になるとその天皇の写真を焼くわけですからね。
つまり価値観が本当に変わっちゃうんですよ。
それから高校に進学した年に、朝鮮戦争が始まって、戦争は悪だと言
ったら、あいつは共産党だという話になって、これ追放ですね。
だからそういうことが僕の一番の原点にあって、とにかく世の中の常識
は疑わなきゃいけない。
偉い人が言うことは大体は疑わしいというのが基本にあります。
日本は先の戦争で得た教訓とは。
一番の教訓は日本人が自分で考えることを止めたということです。
自分で考えるとろくなことはないと。だからアメリカの言うことを聞いてい
ればいいんじゃないかと。
戦後ずっとアメリカの言うことを聞いてきた。これが生きる知恵だと日本
人は思ったと思います。
早稲田大学での大隈塾の教頭として、今どんなリーダーを育てようと
しているんですか。
自分で考えるという人間に育てたい。自分で考える。大体世の中で生き
るには自分考えない方が便利なんですよ。考えるとろくなことはない。
小学校から大学までは、受験にいかに受かるかを考えるわけでしょう。
受験に受かるには、自分で考えると受かりませんから。
つまり出された問題を解いていくということですからね。社会に出て、今
度は企業に入ると仕事が上からどんどん来るわけで、それをこなして
いればいい。
だからなかなか自分で考えるチャンスがないんですよ。
下手をすると自分で考えないまま、定年になっちゃった人が随分いると
おもいますよ。
だから自分で考える、そういう人間にしたいと思います。
リーダーに必要な条件とは。
リーダーという言葉は元々軍事用語なんですね。命を懸けるんですよ。
命を懸けて引っ張っていくということですから。
命を懸けないのはリーダーシップとは言わなくて、これはマネージメント
なんですね。だからリーダーというのは命を懸けるということが基本にな
きゃいけない。
戦後、日本ではエリートはタブーだったんですよ。エリートを作るのは
よくなかったんですね。エリートになることもよくなかった、タブーですよ。
僕は今、エリートは必要だと思っているんです。
エリーって何かというと、ひとつは自分で企画できる。二つ目が企画を
実現できる。三つ目は失敗したら責任を取る。故おみっつを備えている
のがエリートだと思っています。
今の官僚の最大の問題は責任を取らない、鳩山さんも責任を取らない
でおこうとしている。ここが一番抜けていると思います。
リーダーといのは、やっぱり失敗したら責任を取らないといけない。
生前、後藤田さんに尊敬に値する人とはと尋ねたら、言下にそれは
責任感のある人と答えていました。
ところが人間というのは、生きる上でいかに責任を取らないかというの
がひとつの生きる技術になっていますよ。
例えば企業で会議が多いでしょう。責任を取らないためのものを会議
会議というんです。
つまり会議をすればみんなの責任だと、俺は取らなくていいんだと。
これまでに接した政治家で高く評価している人は。
ます鯉は特に政治家をバカにすることを商売にしていますからね、
新聞もテレビも。
だから割と政治家をおちょくったりしますけど、私は日本では責任を取
る身構えを相当持っているのが政治家だと思っています。だって選挙
で落選したら終わりですから。
選挙で当選するということは有権者から信頼されるということでしょう。
信頼の裏側は責任ということですよ。
戦後の総理大臣でなかなかの力を発揮したと、或いは信頼できるのは
5人いると思っています。
順番で言うと、吉田茂さん、岸信介さん、田中角栄さん、中曽根康弘さ
ん、小泉純一郎さんだと思っています。
その中で、特に好きな政治家は。
それは田中角栄さんですね。やっぱり小学校卒で総理大臣になったと、
いまはなれるかもしれないけれど、田中角栄さんまでは東大、京大
つっまり旧帝大を出て高級官僚になるというのが必須条件でしたから。
彼はその何もないわけですから、そういう田中角栄には僕はとても親近
感があるし、何度もあっていますしね。
今の若手政治家の中でいいなと思える人は。
沢山いますよ、それは。特に民主党に多いですね。自民党にはなかな
かいないんだけども。
例えばどんな人ですか。
民主党で言えば、仙谷由人さんとか枝野幸男さん、大塚耕平さん、
細野豪志さん、前原誠司さん、それから玄葉光一郎さんもいいですね。
女性では民主党の蓮舫さんでしょう。
それから自民党にはなかなかいないんですが、例えば河野太郎さん
とか菅義偉さんとか、塩崎恭久さん、茂木敏充さんもいいですが。
20年続く日本の衰退を食い止めるには、その根源的な原因を解明し
なくてはと思いますが。
それは割と簡単なことです。つまり成長の時代は終わったということで
す。今、中国にしても韓国にしても、日本で言えば高度成長の時でして、
例えば中国がこの5月1日から万博やりますね。ちょうど中国は日本の
70年ですよ。
日本は1970年に大阪で万博をやりました。
だからどの国でも上手くいけば成長はするんです。ところが成長は、
結局は成熟に入るんですよ。成長は終わるんです。
日本の成長は、実は1980年代には終わっているんです。バブルがあ
りましたが、これをほとんどの日本人は成長と勘違いしています。
バブルがはじけたのが1991年から1992年、これは宮沢内閣です。
ここで成長の時代は終わったんですよ。
これはしょうがないですね。成長の時代というのは企業が儲かります。
大きくなります。
だから国への税金がどんどん入ってくる。税金の使い道に困っちゃう。
だから自民党の内閣は、集まった税金を国民に還元したんですよ。
ひとつは減税、それから福祉をどんどん高くした。
ところがバブルが弾けて景気が悪くなった。そうすると国に入ってくる
がどんどん減ってくる。
一方では高齢化社会を迎えて、福祉やなんかの金がどんどん必要に
なってくる。そこで入ってくる金よりも出ていく金の方が多くなっちゃった。
これは宮沢内閣の終わりからですね。
入ってくるのが少なければ、負担の配分をしなきゃいけない。負担の配
分とは増税ですよ。
だから消費税を上げましたね。それから福祉を落とさなきゃいけない。
それから首切りもしなきゃいけない。
こうなると国民は、やっぱり政府に対する不満を持ちますよね。そこか
ら政府に対する不信感が強まってきた。
そのため、いってみれば宮沢政権より後の自民党政権は全部ごまかし
てやってきた。民主党も今そのごまかしの延長にある。
ごまかしは何かというと、入ってくる金は少ないでしょう、出る金は多い
んですよ。
安倍内閣のときに入ってくる金が約50兆、出ていく金が約80兆。する
と30兆足りないんですよ。本当ならば入ってくる金を増やさなきゃいけ
ない。これは増税なんですね。それができない。
出ていく金を減らさなきゃいけない。福祉とかいろんなものを減らさなき
ゃいけない、それもできない。借金ですよ。
だから今、借金が870兆もできちゃった。GDPの175パーセント、こん
なの世界にない。
なんでこんなことになったかというと、政府が国民に媚びてきた。
世論迎合の政治をやってきたから。
増税するのは国民反対ですね。福祉を削るも反対ですね。結局借金
積んできた。民主党も借金積んでいる。
だからどうするかということで、今やっとね、やっぱり入る金を増やそう
と。ということは増税ですよ。消費税を上げなきゃいけないと。
それが分かっているんだけど、消費税を上げると選挙に負けると思って
あげられなかったんですね。
それから景気を良くするにはどうするか、法人税を減税する。これもね、
大体、企業というのは共産党をはじめとして企業は悪だと思っている人
が多いんですね。
法人税を減税すると国民に怒られる。選挙に負ける。だから日本の法
人税は世界一高いんですよ。こんな国はないです。
例えば日本は約40パーセント、アメリカは30パーセント、ヨーロッパは
大体30以下ですね中国は25パーセント、香港は17パーセント、韓国。
は23.7パーセント。
だから本当はもっと下げないといけないけど、これが下げられない。
消費税もこんなに安い国はないですね。例えばドイツやフランスとか
ヨーロッパの国大体、18~19パーセントですよ。
日本は5パーセントですからね。日本が理想の国といっているスエーデ
ンは25パーセントですから。
要するに世論迎合をやってきたと。じゃあそこをどうするか、今まさにそ
こが一番問われていると思います。
人物写真家としてずっと気になっているのは、20年ぐらい前から日本人
の顔が変わってきたと。
どう変わってきた?
以前は街中で時々人格者を思わせる顔に出会いましたが、特にここ
10数年ぐらい、日本人の顔から求心力が消え、軽さがとても目に付く
ようになりました。
軽いというよりやわらかいんですよ。
例えば土門拳という写真家がいます。彼が炭鉱の子供たちを撮ってい
ます。あの頃の子供たちの顔はもうないです。
今、東南アジアに行くとそういう顔はありますよ。要するにそれは貧しさ
なんです。
特に後藤田さんとか僕もそうだけど、敗戦を体験していますね。敗戦て
何もないんですよ。つまり食うや食わず。
後藤田さんも本当は死んでいたんですよ。あの人は、自分が本当は死
ななきゃいけないのに死なないで終わっちゃったという、非常な責任を
感じているんですよ。申し訳ないと。
あの人は戦争中台湾にいたんです、軍人で。当然米軍は台湾をまず
やっつけて、そして沖縄へ来ると思ったら台湾を抜けて沖縄に来ちゃっ
た。台湾は無傷だったんですよ。
だから本当は死ななきゃいけないのに死なないで、大勢の人が自分の
代わりに亡くなったと、そういう責任感、申し訳ないと。
だからそういう多くの亡くなった人のために体を張ってこの国を良くしな
きゃいけないと、そういう気持ちが後藤田さんにはあった。
金を儲けるなんてどうでもいいと、金もいらない、名誉もいらないよと。
やっぱり自分の代わりに亡くなった大勢の人達のために、この国を良く
しなきゃいけないんだという思いがあった。
多かれ少なかれ僕らの世代まではそういう気持ちがあるんですよ。
僕は小学校5年でしたから、軍事工場へは行きませんでしたけど、僕ら
よりも数年前の人達は予科練に行き、亡くなっている人もいますから、
やっぱりあの戦争のために亡くなった300万人の代わりに、この国を
良くしないといけないという気持ちが僕らの世代まではあると思います。
日本人が変わったとしたらそれは何故だと思いますか。
豊かになったからですよ。もう体を張る必要はなくなったんです。
豊かになって日本人の人間力が落ちたと、
それは落ちたんじゃない。幸せになったから必要がなくなったんですよ。
要する日本が40年間も高度成長を続けた。大成功ですよ。
戦後日本は大成功したんですよ。大成功したからみんな豊かなんです
よね。
だから体を張って何とかしなきゃいけないということに遭遇していない。
ただアメリカは豊かですが人間力は今でも、
アメリカは豊かじゃない。アメリカと日本の一番の違いは、日本で餓死
する人はいませんよ。アメリカは餓死者はいますよ。
アメリカはルールの国です。ヨーロッパも。ルールの国というのは、ルー
ルに外れた人間はだダメになってもしょうがないんですよ。
アメリカでは働かない人間はダメなんですよ。敗者というのはダメなん
ですよ。
だから敗者でいたくないならチャレンジしろと、再チャレンジしろというの
がアメリカなんです。
日本は敗者をやっぱり救わなきゃいけないと。だから生活保護とかで
敗者を救わなきゃいけないと。こんな暖かい国はないですよ、先進国で。
だから顔に鋭さがなくなってくるんですよ。
例えば最近の韓国と日本を比較すると、その人間力の違いに愕然と
します。
あっちはハングリーですよ。
例えば世界柔道連盟会長や国際サッカー連盟副会長、国連事務総長
などの国際的地位の獲得、冬季オリンピックの大躍進、衝撃的なUAE
の原発落札など、最後の決め手は人間力だったと思います。
目的完遂のためにとことん考え抜く知恵の力とか不屈のパッションの
差が結果に出たのでは。
こうなるとパッションじゃない。突破力、そういうものですね。
したがって長い長い高度成長の間に、日本は突破力が必要じゃなくなっ
ちゃったんです。
韓国は今やっています。例えばなぜUAEで日本が負けて韓国が勝っ
たのか。原子力発電所を作る技術は東芝が世界一です。2番目が日立
です。3番目が三菱重工です。
僕は東芝か日立が取ると思っていた。そしたら韓国に取られちゃった。
韓国は技術は何もないんですよ。なんで技術のない韓国が取るのか。
非常識な安さを提示したんですか。
いやそんなことはない、安くともなんともない。
韓国が安いはずがないんですよ。それは基本的に違う。もっと情けない
ことは、東芝がなんと韓国の下請けで入るんですよ。韓国ががっぽり儲
けてね。
なんでこんなことになるのか。それは売るとは何かという基本的な理念、
これが日本人に欠けちゃったんですよ。だからこのところ国際商戦、国
際ビジネスでは連戦連敗です。
例えば日本はUAEに原子力発電所を売ろうとした。韓国は違うんです
よ。電力を売る、どこが違うか。
例えば、韓国は60年間の電力を保証しますと。だから原子力発電所
だけじゃなくて、太陽エネルギーも風力も全部やりますと。更に原子力
発電所でいうと、作るだけじゃない。運転も全部やります。更に60年間
安全も保障しますと。
日本は何もやらなかったんですよ。原子力発電所を売るだけなんです。
こんなんじゃ勝負にならないじゃないですか。
それこそ知恵力というか人間力の違いだと思いますが。
それは高度成長で甘えたんですよ。つまり必死なんですよ。中国も必
死ですよ。
例だば僕はアセアンも取材しているんだけど、アセアンにどんどん進出
しているのは中国と韓国です。日本はほとんど行っていません。いや
なんですね、そんなところに行くのは。
外務省の若いのが外国に行きたくないというのと同じですね。
うん、商社マンだって外国に行くのを嫌がっていますからね。だって今
年のハーバードの入学生は、ついに日本人は一人になっちゃったんで
すよ。韓国は数十人行っていますよ。
今の日本の状況を打開する方法は。
今がチャンスだと思う。不況になってみんなこういうことが分かってきた。
さあ、何とかしなきゃいけないぞと。だから今は非常にチャンスだと思っ
ています。
例えば仙谷由人大臣が30日の晩に、上海の万博に鳩山さんの代わり
で行きました。
彼は上海からベトナムに行きました。何しに行ったのか。
ひとつはベトナムに原子力発電所を売りに行きました。それから新幹線
を売りに行きました。
それからもっと大事なことは、日本は、石炭火力は世界一の技術を持っ
ている。中国なんかどうしようもない。
これを売れば中国でもどんどん売れる。だから石炭火力と新幹線と
原発のために仙石は行った。
新幹線を売るために前原国土交通大臣もベトナムで一緒になりました。
やっと危機の中でそういう気持ちが出てきたんですよ。大臣がセールス
マンになると。
韓国はそれをやったと。
とっくに。やっとそうなってきた。僕はチャンスだと思っています、今ね。
これまでの日米従属関係は日本の恥か、それとも国益のためには
従属もよしか。田原さんはどちらですか。
それは大いによしだと、今までは。
国際問題、国際政治に日本は一切口を出さない。全部アメリカに任せ
っぱなし。冷戦のときも。
だから国際社会ではソ連がいいとか悪いとか、アメリカがいいとか悪い
か言わない。そのために日本は西側のアメリカとかフランスとかイギリ
スとかみんなマーケットにできた。
それだけじゃなくてソ連もマーケットにできた。東欧に行っては、ああ共
産主義はいいですねと言って東側も全部マーケットにできちゃった。
西も東も、こんな国はないですよ。大成功なんですよ。だから高度成長
なんですよ。
要するにアメリカに従属することで、日本はすごく得をしたんです。
これはいまだに続いている。だけどそういう時代は終わったんですよ。
冷戦が終了して終わった。
普天間に関する鳩山さんの対応をマスコミはこぞって非難していますが
長期的には今の日米間の緊張は悪いとは言えないのでは。
あのね、日本の安全保障の専門家たちが一番恐れているのは、アメリ
カが沖縄から全面撤退することです。
本当は、アメリカは撤退してもいいと思っている。今、海兵隊が沖縄に
いる必要はあまりないんですよ。でも今までの習慣からいるんですね。
実は撤退して困るのは日本ですよ。
いま、日本は日米同盟でアメリカの核の傘に守ってもらっているんです
よ。安全保障もほとんどアメリカ任せです。だから安いんですよ。
それを撤退してもらって、日本が独自に安全保障をやるとなると大変な
ことになる。
核を持つみたいな話が選択肢として出てくる。当然自衛隊ではダメで
軍隊にということになりますね。
やっぱりこのままの形の方が、日本は安全保障の防衛費は随分安く
済むんですよ。
田原さんはこのままがいいと。
うん、アメリカに沖縄にいてもらうことで日本がアメリカに従属していると
言うのは全く違う。
今、日本はアメリカの国債を随分買っていますよ。これを日本が売った
アメリカは大変ですよ。
だからそういう意味では事実上、経済では対米従属ではないんですよ。
そこを今まで対米従属でずっと上手くやってきたから、できれば自民党
はそのままで行きたいと思っている。
ところがどうもそれではいけなくなっている。
今の日米関係は冷戦のときにできた関係なんですよ。冷戦終わっちゃ
たんです。同盟は大事です。
だから新しい日米関係を再構築しなきゃいけないですよ。
僕は鳩山さんにもそのことは言っている、最近も。それがなんで普天間
についてあんなことを言っちゃったんだと。
そうじゃないと、もっと新しい日米関係の再構築のために首脳同士が
じっくりと時間をかけて話し合うべきじゃないかと。おっしゃる通りですね
と言っていますよ。
日米安保をやめて平和友好条約がいいと言う人もいますが。
いやいやそう簡単には行きません。日米安保条約にはひとつ重要な点
がある。
日本がどこかを襲われて危機になったら、アメリカが全力で日本を救う。
ところがアメリカが危機になったときに日本は救うとは全然入っていな
い。こんな都合のいい安全保障条約ってありますか。だからこんなのは
変える必要はないでしょう、別に。
その代償をどこかで払わされているのでは。
払ったっていいじゃないですか。
やはり日米安保はそのままで、
だからそうじゃなくて、安保も含めてなんですが、やっぱり新しい日米
関係の再構築が必要だと。
それを普天間でギクシャクやっていてバカだねと言ったんですよ、鳩山
さんに。
その日米の再構築の中身とは。
今、アメリカが国連ビルを建て直さなきゃいけない。金がないんです。
困っているんですよ。
日本に持ってくればいいじゃないかと、例えばね。極端に言えば沖縄に
持って行ったっていいじゃないかと。そんなこと一杯あります。
20年後の日本のアジアにおけるプレゼンスをどう想像しますか。
いい形になると思う。20年後といわなくても10年後にはアジアが世界
の中心的マーケットになる。人口から言っても。
アメリカもヨーロッパもアジアと取引きしないとやっていけなくなる。
日本はそのアジアにあるんですから、いかにアジアのコーディネーター
になるか。
中国、インド、韓国、インドネシアなどアジア諸国の発展で日本の存在
がかすんでしまいそうですが。
だから仙谷という人がベトナムに行ったんじゃないですか。どんどん行
き始めているわけだから。
そんなに心配ではないと。
いやいや、やらねばならないと言っている。
今月、田原さんはブログに、上海を目の当たりにして「凄いなぁ」「怖い
なぁ」と思ったと書いていますが、何が怖いと思ったのか。
いやもう日本を抜くでしょうね、確実にね。
今、上海は世界一の大都市です。ニューヨークもロスアンゼルスも抜き
ました。
上海の人口は2000万人、東京の2倍です。今、日本人が世界のどの
町に一番多くいるかといえば、ニューヨークもロスアンゼルスも抜いて
今は上海です。
日本人は8万人。上海にある日本人学校の生徒は2000人いる。
これも世界一です。
そういう中国と長期にわたって対等で安定した関係を築くには、どう付き
合うべきか。時々中国の傲慢さが気になる報道がありますが。
それは中国が嫌いな新聞が書いたことですよ、産経新聞とかね。
僕は、技術力は日本の方がはるかに高い。中国は欲しくてしょうがない。
それから省エネ技術なんかは日本がはるかに発達している。だから
中国は日本のそういうものを学びたい。
何よりも40年も高度成長するなんて考えられない。だから中国はまだ
まだ日本から学びたいものは沢山ある。
だから日本は十分対等で日中関係を深めていけると思っています。
尖閣諸島の領有問題が時々浮上しますが。
これは簡単にケリは付きません。
例えば上陸された場合は。
上陸して何するんですか。全然関係ない。それよりも東シナ海のガス
油田、これは日中が共同で開発すべきだと私は思う。これはやんなき
ゃいけない。
日本は以前から提案していますが。
もっと強く。これは命を懸けるべきだと思います。
日本で二大政党制が定着するとしたら、どんな対立軸を望みますか。
今のところ自民党と民主党の対立軸はないですよ。ほとんど同じです。
アメリカの場合はハッキリしているんですよ。
アメリカは日本と違って、キリスト教が本当に心の底まであるんですね。
共和党というのはキリスト教に対して忠実な政党です。これを保守的と
言ってもいいんだけどね。
民主党というのはキリスト教から自由になろうとしている政党です。
例えば民主党は女性と女性の結婚もOK、男性と男性との結婚もOK
したい。当然中絶もOKしたい。共和党は全部反対ですから。
だから非常に対立軸がハッキリしている。
日本はそういう対立軸がなくて、僕はもっと自民党がしっかりしろと言い
たいんだけど。
民主党はやっぱり格差をなくす、福祉を重くすると。これが民主党だと
思います。自民党はもっと経済は成長すべきだと。
自民党は小さい政府ということですか。
小さいんじゃない。経済成長、成長発展するということ。
市場原理的な考えを積極的に取り入れると。
どっちかといえば。自民党は成長がなきゃ福祉もないと言うべきだと思
う。そこを今の谷垣さん大島さんが怖くて言えない。
成長と言うと、もっと格差が大きくなっていいのかと言われるので。
田原さんはそのふたつのどちらに与(くみ)したいですか。
両方いると思う。成長でドーンといくと必ず格差が起きる。
そしたら今度は格差を是正しようという政権ができて、格差に取り組ん
でいると経済が悪くなるから、また成長をやると、こういう二大政党だと
思います。
心情的にはどちら側ですか。
心情的には両方必要だと思っている。だから成長と言いながら、自民党
の成長の仕方が間違いだったら、間違いだと言いますよ。
やっぱりこの国がよくなってもらわなきゃ。この国というのは国民がです
ね。国民にとっていい政治をしてもらわなきゃ困るんです。
長年日本の政治を目の当たりにしてきて、今強く感じていることは。
高度成長が終わって借金がどんどん増えているでしょう。面白いです
よ、この時期は。
今こそ政治家がリーダーシップを発揮すべき時期なんですよ。つまり
今、目標がみんな分かんないんですよ。 だから龍馬が受けるんだと
思う。
やっぱり龍馬みたいな人間が必要だとみんな思っているんですよ。
今後の田原さんの抱負は。
龍馬を探したいですね。龍馬を探したい、育てたいと思います。
是非探してください。ありがとうございました。
ハイ。
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2010.1   於渋谷区千駄ヶ谷  日本共産党本部
小池 晃 日本共産党、衆議院議員
≪インタビュー≫  聞き手・蛭田有一
人間として大事にしていることは
個人的なことなんですけど、子供が6歳なんですね。子供が生まれてから子
供たちが殺されているニュースを見ると、とても他人事ではないし、胸が締
めつけられるような思いがするようになりましたね。
やっぱり子供たちの命と未来を本当に守っていくことが、政治家以前に一人
の親になったということも含めて、大切なことだと思うようになりましたね。
政治家としての使命感は。
私は元々医者をやっていましたので、自分の原点はそこにあると思います。
今、医療現場では本当に苦闘している仲間もいるし、今の医療制度の下で
まともに医療や介護を受けられない患者さんたちを見てきました。
は演説会で自己紹介をするとき、私は永田町国会病院出日本の病気を治
療していますと言っています。
本当に人の命を守るということを政治の根本に据える。
それは憲法で言えば、9条を守るということにもなるし、25条には生存権
の保障というのもあるし、やっぱりそこを本当に実現していくということで
すよね。
何よりも命を大切にする政治を実現することが、医療現場から永田町国会
病院に来た自分の一番の仕事だと思っています。
日本の政治は少しは良くなっていると思いますか。
去年、自民党と公明党の政権が終わったというのは一歩前進だと思う。
ただ本当の意味で、命を守ることに徹する政治になっているかというと、
まだ不十分な点が多いので、治療はまだまだ必要ではないかと思ってい
ます。
今の日米関係で特に改めるべき課題は。
直面する課題では、やっぱり普天間基地の問題ですね。
世界で最も危険な基地という通り、基地の周りに本当に多くの人々が住んで
いるし、病院もあるし、保育所もあるしね。
やっぱり基地は撤去すると。この点で今の内閣は抑止力は必要だという立
場なんですね。
ただ海兵隊というのは抑止力ではないんですね。歴史的に見ても海外に戦
争をしかけるための軍隊で、ベトナム戦争でもイラク戦争でもそういう役割
を担ってきたわけです。
だからアメリカとの従属的な関係を打破する第一歩として、日本を守る軍隊
でもない、アメリカを守る軍隊でもない、侵略のための海兵隊の基地を撤去
するっていうのが第一歩になるだろうと思います。
今年は安保条約を改定して50年目になります。中曽根さんも去年の年末に
日経新聞のインタビューで、日米安保は存続か改定か廃止かという激論が
起こる年だとおっしゃっていますね。
戦後60年も経っているのに、外国の基地があるのが当たり前のように日本
の政治はやってきたけれど、本当にそれでいいのかということを正面から問
いかけていきたいし、その第一歩として海兵隊の基地を撤去すると。
今、話がこんがらかっているのは移設条件付き返還、撤去ということで始め
たから、移設先を日本の方であれこれ用意してあげなきゃいけない。
これはアメリカの侵略のため軍隊で、日本の安全保障と関係ないんだから、
もう無条件撤去なんだと。
引っ越し先は自分で見つけてくださいというのが私は一番正しい解決だと思
っています。
そもそもあそこの土地は強奪した土地ですし、土地代お払っていませんし、
家賃だって一回も払っていないんですから。
引っ越し費用も自分で払って、引っ越し先は自分で見つけて出て行っていた
だくと。
別に共産党はアメリカとの関係を悪化させようとか、アエリカと敵対しよう
と言っているんじゃないんです。
戦前は敵対関係で戦争までいった。戦後はなんでもかんでも言いなりの従
属的な関係になった。本当の意味で対等、平等な21世紀の新たな日米時
代を作っていくと。
フィリピンでもやったような道を歩んでいくべきではないかと思っているん
ですよね。
大な在日米軍基地をなくすというのは難しいことですか。
いやそんなことはないと思いますね。
世界の流れで見ると軍事同盟に頼るとか、軍拡を進めていくというのは時代
遅れになってきているわけです。
軍事同盟だって、米ソ対立の時代は世界中軍事同盟だらけでしたけれど、
今はどんどんなくなってきています。
いま、残っているのはNATO、それから米豪、米韓の軍事同盟と日米安保
条約、この4つだけになっちゃったわけですね。
世界は軍事同盟から非軍事の平和の共同体という方向になってきているわ
けです。
NATOの中でもイラク戦争の時には、フランスもドイツも加担しない流れ
になってきているし、オーストラリアとの軍事同盟だって中東に攻めていく
ための軍事同盟じゃない。
日米安保条約だけがアメリカの世界戦略の意のままに基地を提供し、そこ
から中東へどんどんと侵略戦争ですよね。世界から見ると異常なわけです。
日本の政治家とテレビで議論すると、すぐ軍拡だという話になるんですけ
ど、今どき他国が攻めてくるから軍事拡張しなけりゃなんていう議論を真面
目にしているような国ってないと思うんですよね。
そういう意味では今の議論っていうのは世界の流れからみて本当に異様だ
と思っていますし、そのことがもっとはっきりしていけば今の状況を変える
ことができると思っています。
小池さんは日本の安全保障はどんな形がいいと思いますか
日本が世界にとって大事な国だということがはっきり分かるような国にする
のが一番大事だと思うんですよね。
日本の優れた技術とか文化とかを世界に知らしめていく。あるいは日本の医
療技術の水準は高いですから、例えばアジアの国々や発展途上国に日本
から医者が出て行って、医療活動を広めるとかね。
そういう中で信頼関係を作って、やっぱり日本という国は大事な国なんだと
いうことを、周りの国に共通認識を持ってもらうと。
今、国際社会から見て、日本て何をやっているかわからない。アメリカの子
分みたいでいる限り、本当の意味での日本の安全保障にならないと思いま
すから。
なくてはならない国だという存在感を世界に示すことが、一番長い目で見て
大事なことだと思うんですね。
将来、軍事力で日本の安全を根底から脅かすような国が現れますか。
日本の安全保障ということでいうと、やっぱり話題になるのは北朝鮮、中国
のことですよね。
ただ北朝鮮が日本を組織的に攻撃する力があるかというと、埼玉県と同じレ
ベルの経済力の国なわけでね。本当に小さい国ですが、ただ暴発ということ
はあるかもしれません。
みなさんが非常に不安感を抱くようなことをやっていることは許せないです
けども、リアルに冷静に見れば、北朝鮮が組織的に日本を攻撃してくること
はありえないことだと思います。
また中国にしても、今経済発展していますけども、これは日本との経済関係
がなければ、中国の経済発展なんてないわけで、そういう中で中国が攻撃を
しかけてくるなんてちょっと想像できない話ですね。
防衛省ですら防衛白書の中で、今日本を組織的に侵攻するような国は存在
しないと言っているんですよ。
やっぱり国際関係というのはリアルに見ることがまず必要だと思う。
やっぱり日本がこの地域の中で、どうしても必要な国なんだという存在感を
高め、尊敬されるような国になっていくことが一番この面でも重要だと思う
んですけどね。
日本の外交で欠落していると感じることは。
外交でいうと結構いい仕事押しているんですよ。
例えばアフガニスタンの戦争が起こる前は、タリバンが政府を持っていたわ
けですね。
実は西側の国の中で当時、タリバンと正式な政府の関係を持っていたのは
日本だけだったんですよ。だからカザフで日本の技術者が誘拐された時に
は、タリバン政府を通じて日本政府は仲介を依頼したりした。
なんでタリバンと日本政府とで関係があったかというと、ヨーロッパは十字
軍の歴史があり全く受け付けないし、アメリカともソ連とも敵対関係です。
そういう中でイスラム教を弾圧したことがない日本に対しては信頼感があっ
て外交をやっていたんです。
ところがアメリカが9.11で戦争だと、アフガンを空爆するんだと決めた
途端に、これまでの外交努力が全部吹っ飛んでしまった。
今まではアメリカがこう決めたとなった途端にそれまでの努力が全部消えて
行くような仕組みになっているんじゃないかと思いますね。
長期にわたる日中友好関係を築くために今、双方が努力することとは。
かつての小泉さんの時と違って、今はかなりそういう障害は取り除かれてい
ると思いますね。
日本側の努力ということでいうと、やっぱり過去の侵略戦争の歴史について
覆すようなことは言わないと。それが大事だと思うんですね。
もう謝罪は十分していると。
公式にはしているのに、誰かそれをひっくり返すようなことを言っちゃうか
らこじれてくるわけで、そういうことを前提にしたお付き合いをやっていく
べきだと思います。
中国側の努力ということで言うと、これだけ情報が発達した日本の社会でど
う受け止められるのかということを、よく思んばかっていろんなことに対応
すると。
いろんな問題が起きたときに、中国の国民に対しても、日本の国民に対して
もきちんと説明していくことが本当に大事じゃないかと思いますね。
東シナ海のガス田開発、尖閣諸島への上陸、潜水艦の領海侵犯、排他的
経済水域への事前通告なしの通過等々は今後も続けば日中友好にはマイ
ナスにはなりませんか。
日本はマスコミも発達しているし、すぐニュースで流れるわけで日本の軍拡
に口実を与えるようなこととか、日本人に不安感を与えるようなことについ
ては、よく考えて対応してもらいたいと思いますね。
それらについて国際法違反だとは我々は思っていないんで、ここについて
あげつらうつもりはないんですけども、全体としてはきちんと説明して変な
誤解を与えるような行動はとらないようにした方がいいんじゃないかと。
例えばガス田の問題なんかは、中国だけで絶対開発できないわけで、パイ
プラインを通そうとしたら、日本に通すのが一番いいわけで、やっぱり共同
開発するしかないわけです。
そういう環境づくりを、日本も必要ですが、中国側もやっていく必要がある
んじゃないかなと思いますね。
中国経済が大発展して、まるで資本主義経済を目指しているように見える
中国共産党の今の体制をどう評価しますか。
今の経済の運営の仕方は工夫しているように思うんですね。
資本主義という時代を経ないで、いきなり封建社会から共産主義社会になっ
たところがあるのでね。
ソ連もそうでしたが、そういう意味では非常に遅れた部分があるわけです。
共産主義っていきなり全部集団農場だとか、財産取り上げるみたいなイメー
ジがあるわけですが、そうではなくてね。
市場経済でもいいところがあるわけですよ。を競争してできるだけいいもの
を作っていく。
その中で貧富の格差が拡がったりとか、いろんな弊害が勿論あるけども、や
っぱり経済発展させていく力はあると思うんですね。
市場経済を通じて、共産主義社会を目指して行こうというのが中国の進め方
だと我々は理解しているし、中国もそう主張しているわけです。
そういうやり方は、私は一つの方向性として注目しています。、
やっぱり資本主義の過程をあまり経ないで共産主義になった国だけに、市場
経済をしっかり行き渡らせるなかで、市場の限界を越えていくのはやっぱり
社会主義、共産主義なんだということで、進んでいこうとしていることに非
常に注目しているんですね。
中国は今、資本主義国家みたいな雰囲気に見えますが。
手法として市場経済を使うことは、別に資本主義を目指しているということ
じゃないと思うんですよ。
大分格差も出ているようですが。
市場経済になるとどうしてもそういう面は出てくると思うんですね。
それが行き過ぎたものになるかどうかはよく見ておかないといけないと思う
んですけど、ただ格差という点でいうと、中国全体ではものすごい貧困だっ
たわけで、それが今はものすごい勢いで上がって来ている中での格差なん
ですね。
日本は逆に、右肩下がりになっている中で格差が拡がっているわけです。
上に進んでいくときに、若干の格差が生まれてくるのは市場経済を導入すれ
ばやむを得ないと思います。
ただこれから先どうなっていくのか手放しで楽観はできないと思いますね。
世界全体の資本主義の多国籍企業の渦の中でやっているわけだから、中国
だって揺さぶられてそういう方向に流れて行ってしまう危険性もないわけじ
ゃない。
今の中国の共産党の幹部はそういう中で、あらためて原点の共産主義につ
いてどういう探求の道があるかという議論が始まっているし、日本共産党と
もいろいろ意見交換しているんですよ。
そういう意味では、我々は非常に注目しながら見守っています。
決して楽観しているわけでもないです。でもこれは新しい21世紀への挑戦
ではないかと思っています。
今起こっているのは、南米のべネズエラとかエクアドルとかボリビアとか、
そういったところでアメリカの多国籍企業の呪縛から、自国の経済発展を実
現するには、社会主義しかないんじゃないかと。
それはソ連型ではない新しい民主主義を土台にした社会主義だという議論
が始まっているんです。
私は21世紀はそういう方向に進む流れが、世界の中で増えていくような予
感はしています。
日本の敗戦の責任はどこにあると思いますか。
それは戦争を進めていった当時の軍部、財閥、そしてその頂点にいた天皇
ということだと思います。
誰か一人が責任を取ればいいという問題ではなくて、そういうところがきち
っと責任を取るべきだったけれども、きわめて中途半端に終わったと思い
ます。
財閥解体といっても結局、企業グループは住友、三井、三菱みたいのは残っ
たわけですし、地主の問題だって山林なんかはそのまま手つかずで残って
しまったわけですし、天皇については戦争責任をずっと否定しつづけたと思
います。
そういう意味では非常に中途半端に終わってしまった。
典型はやっぱり政治家ですよね。あの時戦犯として問われた人たちで獄に
入った人はいますけども、その後復活して岸信介さんは首相にまでなったわ
けですからね、永久戦犯がね。
かつて自民党政治の時代に、戦前の政治に戻ったかのような自民党の政治
家による発言が度々ありましたけれども、戦争に対する総括の不十分さが
その後まで引きずってしまった原因だと思いますね。
アジアに向けて謝罪しても
すぐにひっくり返したりとかね。
結局いつまで経ってもけじめがつかないと。
そういうことだと思いますね。ただ我々が靖国派の政治みたいに言っていま
したけれども、一時期出ていた復古主義的な動きは今はちょっと収まってき
ているとは思います。
それは自民党が大敗した後からですか。
そのちょっと前からですね。小泉政治が終わり、安倍さんが退陣した後ぐら
いから、そういう色彩は大分抑えられてきているんじゃないかと思います。
勿論いつなんどきまた出てくるかわかりませんが、今の時点ではかなり抑え
られてきているかなと思います。
共産党が政権を取って国民生活が一番変わると断言できることとは。
暮らしでいうとやっぱり医療費ですね。資本主義国の中でもいろんな常識が
あるんですけども、日本ではまだ全然そうなっていないものがいろいろあり
ます。
例えば病院の窓口でお金を払いますが、ヨーロッパではほとんど無料です
ね、あるいは極めて低額。
病院に行って3割も医療費を取られる国なんて世界で日本しかありませんか
らね。やっぱり窓口医療費ゼロ。
それから有給休暇なんて全然消化できないじゃないですか。
有給休暇はヨーロッパ並みに20日間くらい、夏はバカンスで休みを取ると
かね。サービス残業もなくす。長時間労働も是正していく。
男性も女性も正社員もパートも同一賃金。同一の待遇というように、とにか
くヨーロッパ水準で行われている当たり前の社会保障や雇用のルールを
しっかかり実現するというのを、我々が政権を取れば真っ先にやらなければ
ならないことですね。
今とは大分変わりますね。
いやグンと変わると思いますよ。今、日本ではあり得ないと思っていても、
ヨーロッパに行けば常識なことって一杯いあるわけですから。
庶民の側に立つ共産党が、選挙で多くの支持を得られない理由は。
言い訳になっちゃいけないと思うけど、支持の比率と議席が必ずしもパラレ
ルじゃなくて、もし比例代表制の選挙だったら、国会で20,30の議席は
得ているわけです。
そういう選挙制度の問題はどうしてもつきまとってくる。ただそういう限界
を突破して伸びるところまでいっていないので、国政選挙では前進できて
いないんです。むしろ議席を後退させてきている。
なんでかというと共産党は現実的でない政策を出しているとか、力がない
とか、かつてのソ連のようなイメージとか、堅苦しいとか、そういうイメー
ジを打破することに成功できていないということですね。
何十年かかってもそのイメージを払拭するのは難しいと。
いろんな形で努力しているんですけど、共産党の政策を素直に見てもらえ
ば、中身的には多くの賛同を得られると思うんですが、そこに行きつかない
で共産党というところでストップしちゃう。
党を改変してでも政権を目指すより、党の路線を堅持する方が重要と。
政党である以上、政権を取っていく、多数を作っていくということはどの政
党だって持っているし、我々もそういう構えでやっています。
だからこそ地域に根を張って、地方議員もたくさん抱えてやってきているわ
けですね。
そういう努力もなかなか選挙に結びつかないと。
例えば小選挙区というのは、なかなか突破ができないですよね。
都議選なんかは3人区、4人区になるけれども、日本共産党が議席を取り
そうだとなった途端にいろんな勢力がつるんで、いろんな動きが出てくるわ
けです。
共産党の議席を増やしたくないと考える人たちがいますから。
共産党にいかに取らせないかということで、票を流したりとかいろんな協力
行われるんです。
小選挙区だって、我々がとりそうになると、他の政党が全てまとまってきま
すね。
今度の選挙でも、例えば参議院では京都で定数2だと。民主党はどの選挙
区も複数立てるんですが、京都は絶対立てない。民主党が2人立てたら共
産党に取られてしまうから。
だから本当に共産党を抑え込もうという大きな力が働いているんです。
たそれを打ち破るだけの我々側のパワーとか宣伝戦略に成功しきれていな
いところは率直に反省しなきゃいけない。
党内の政策決定では、時にテーブルを叩くほどの自由闊達な議論もされる
んですか。
やっていますよ。ただ基本政策が全然違うわけじゃないからね。
だって憲法9条を変えようという人たちがいるわけじゃないですから。そう
いうところは一致しているので、根本的な違いはないですからね。
ただそうはいってもいいろんな政策ってありますから、やっぱり意見のぶ
つかり合いは当然ありますし、机を叩くまではあんまりないですけど、それ
に近いぐらいの口角泡を飛ばして激論するなんていうことはありますよ。
結構微妙な法案があるんですよ。明らかに反対とも賛成とも言えないとい
うのが。そういうようなときなんかはね。
ものごとを決める場合は全会一致ですか、それとも多数決ですか。
基本的には全会一致ですが、多数決もありますよ。ただめったにないです
けどね。
議論を尽くして合意を得ていくということでやっています。ただ多数決も排
除してはいないです。ただ決まれば、異論があったとしてもみんなでやって
いくと。
それが正しかったかどうかは実際にやってみて証明していくと。
間違っていれば改めて検討しなおすということですね。
政治家として今後の決意、抱負は。
先ほどご質問を頂いた、共産党はいいことを言っているのになぜ支持を得
られないのかといろんな方から言われますし、それは本当につらいことで
あって、やっぱり選挙で勝たないとね。
政策がいくら正しくても、やっぱり選挙で勝って力にしなければいけないと
思っています。
私自身は今年の選挙で、東京選挙区で立候補する予定になっているんで
すけども、やっぱり東京選挙区の激戦に勝ち抜いていくことが、共産党は
いいことを言っているけども、なかなか支持は得られないということを突き
破っていくひとつのきっかけになると思っていますし、日本共産党の支持を
広げる上でも役割を果たすと思っているので、とにかく今年の選挙で勝ち
抜くことが私の今の時点での一番の目標ですし、そのためにやれることは
全てやりきっていこうと思っています。
長時間ありがとうございました。
いえいえ、どうもありがとうございました。
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2009.1.27  於文京区大塚、拓殖大学国際教育会館
森本 敏 拓殖大学、海外事情研究所所長
≪インタビュー≫ 聞き手・蛭田有一
世界中が注目したオバマ大統領の就任式をどうご覧になりましたか。
アメリカの熱狂的な風景の背後には、アメリカやイラクやアフガン戦争
で傷つき、金融危機で経済が低迷し、アメリカの国力がここまで落ち
て、アメリカンドリームを全く享受できなくなったという、歴史的に見て
も相当深刻な危機感がありましたね。
アメリカ人はこの状況を救ってくれるリーダーとしてオバマ大統領を選
択したわけですが、救世主を迎えるといった何か宗教的な感情でこの
就任式に参加したんだと思います。
あの寒い中、私も2回ワシントンで就任式を経験しましたが、今回集ま
った人の多くはマイノリティーですよね。
ヒスパニック、黒人、移民、もともとアメリカは移民の国ですがどちらか
というと、今まであまり社会の赤でいい生活ができなかった人たちが、
アタラシイリーダーの出自に自分の運命とか、自分の生活を結び付け
て、新しい時代が来たという強い感動があの熱狂的な反響になったん
だと思います。
演説そのものも宗教的な内容が強く、受け取る人も全く新しい政治指
導者が出たというより、むしろ新しい救世主が出てきたという感情が、
ああいう熱狂的な就任式になったと思いますね。
私が経験した就任式とは大分雰囲気が違いました。
オバマ大統領の就任は多くの国々も歓迎的でいたね。
そうですね。世界を見ると先進国というのは僅かで、ほとんどは途上国
ですから。
途上国の地域の人たちは、熱狂的にこの新しいリーダーを歓迎したん
だと思います。特にヒスパニックアメリカのマイノリティーの最大の人口
ですから。
それからアフリカ、中東湾岸、アジア。つまり西ヨーロッパと日本を除く
ほとんどが途上国ですよね。
先進国は割合冷静に対応したでしょう。日本はちょっと違うんですけど。
日本は何故他の先進国と違うんですか。
日本人の持っている事情は、宗教的な背景ではないんです。
世界的に見て最も凋落しているのはアメリカと日本なんです。ここまで
日本の経済が落ち込んだ時ってないんです。
日本の政治指導者はどうも日本社会を救ってケレそうにないけど、アメ
リカと日本は、ある種一蓮托生の経済関係にあるんで、もしかしたら新
しいリーダーが我々の生活を良くしてくれるかもしれないと期待して歓迎
したんだと思いますね。
ブッシュの言いなりになってこの有様なのに、今度はオバマに頼ろうと
いうのは情けないですね。
そうですね。これは日本人の情けないところです。
彼はインドネシアで子供のときに過ごし、ハワイでおじいさん、おばあさ
んに育てられたとはいいながら、本当にアジアを知っているのかと冷め
た感じにいずれなると思います。
日本人は熱しやすく冷めやすいですから、急速に冷めてくるしかし初め
はこういうもんです。
日本は政治的にどんな国と世界から見られているでしょうか。
日本が国際社会の中で、期待されている部分は大変大きくて、それは
二つの面があります。
ひとつは日本が持っている高い技術があり、日本は技術立国だと多く
の人が思っているわけです。つまり世界に出回っている製品を見て日
本人を感じるわけです。
エレクトロニクス、車といった素晴らしい技術。これが日本人の発想だ
ということで、それを通して日本人を見ようとするわけですね。
もうひとつは、世界の国連拠出額もアメリカに次ぎ、ODAも世界有数
で、世界中で困っている人を助けているのに、その日本があんまり政
治的に強いリーダーシップが取れないのはなんでだろうか、日本は
どういう国になろうとしているのか、という不透明なイメージ、これが、
日本に持っている彼らのイメージなんです。
つまり素晴らしい技術を持っているのに、なんで彼らは世界に出て
リーダーシップを発揮しないんだろう、もっとやればいいのにという期
待が途上国にはある。日本の憲法とか仕組みを彼らは知りませんか
ら。
彼らが日本に持っているイメージは豊かな国、お金持ち、技術がある
しかし政治的には役割を果たしてくれない日本、そういうイメージじゃな
いかと思いますけど。
つまり非常に素晴らしい技術を持っているのに、なんで彼らは世界に
出てリーダーシップを発揮しないんだろう、もっとやればいいのにとい
う期待感が途上国にはある。日本の憲法とか仕組みを彼らは知りませ
んから。
彼らが日本に持っているイメージは豊かな国、お金持ち、技術がある、
しかし政治的には役割を果たしてくれない日本、そういうイメージじゃ
ないかと思います。
いつまで経ってもアメリカとの従属関係を解消できないのは何故ですか。
それは非常にはっきりしているんです。先の大戦で日本が敗戦国として
極東裁判を受けた後、アメリカから与えられた憲法、その草案は誰が
書いたかというと、マッカーサー司令部だということはハッキリしている
わけです。
その日本国憲法によって、日本は戦後軍事力を持たないという普通の
くにとしては、非常にバランスを欠いた憲法を持たされてここまで来た
んです。
その結果、国家の安定をアメリカに依存して戦後の経済復興をしてきた
わけです。いわば番犬を飼って豊かになってきたわけです。
今頃になって、いや日本は独立国家になるべきだと言う人がいますが、
それには先ず自らの手で憲法を改正して、日本は軍事力をきちっと持
てるという風になってから言ってくださいと言うんですけども、それは
いやなんですよ。、日本人は。
再軍備をすると過去の道を歩むことになるので、一切いやだと言いな
がらこれだけ豊かになった自分の国の利益、国民の生命財産を誰が
守るんですかと言うと自衛隊だと言う。
ところが自衛隊は核兵器を持ちませんし、攻撃兵器も持ちませんし、
北朝鮮からミサイルが飛んできても自分では守れないんです。
国家の生存の一番基本になるところをアメリカでに依存した形でずっ
といるものですから、結局アメリカにものが言えないということになる。
森本さんはどうしたらいいと考えますか。
日本は核を持つ必要はないが、憲法を改正して自国の軍隊を憲法で
明記して、日本と日本の周辺の安定を維持するために軍事力を行使
できる国になって初めて同盟というか、イコールパートナーということ
があり得るんだと思いますね。
そのためにはどうしても乗り越えなければならない憲法改正に、手を
染めないといけないと思っています。
憲法改正して軍事力が行使できるようになって初めて独立国に
なれると
戦後、こんなにアメリカに依存しておいて、今頃になって日本は独立国
ではないと言う人は僕は卑怯だと思うんですよ。
自分たちできちんと憲法を改正して、独立国としての軍事力を持つべき
だとまず言って、しかしそれがなかなか実施できない、国民も理解しな
い、それはおかしいではないか、だから日本は独立国ではないんだと
いう論理だったら分かるけれども、やるべきことをやらずに日本は独立
国ではないと言っているのは、家で寝っ転がってテレビを見ながら、俺
のところは貧しいのに周りが豊かなのはけしからんと言っているのと
一緒で、僕は非常に卑怯だと思いますよ。
20年後の日本のアジアにおける姿をどう予想しますか。
日本の人口はこれからゆっくりと減って、今世紀の中ごろまでには一億
を切り、労働人口も8千万人を切ると思うんです。
高校卒業生が今120万人ですが100万人を切る。その内80%が大学
及び専門学校に進学すると、残りの20%しか高校卒、中学卒で就職す
る人がいないわけですね。
仮に卒業生を80万人として、その20%だと16万人ですよね。16万人
が日本の第一次産業を支えるのかということですね。
漁業や農業、いろんな職人さん、お蕎麦屋さん、花屋さん、それから自
衛隊員だって年間3万人近くの新隊員が必要なんですけど、そういう基
礎的な仕事をしてくれる人は16万人では到底まかなえなくなります。
周りの新興国がどんどん人口が増えていくのに、日本は人口が減って
老齢化し、国力が衰え、経済力も落ちていくわけです。
そういう状態になったときの日本の在り方として理想的なのは、小さくて
も豊かで安全で、アジアの国がみんな日本に家を持ちたい、日本に子
供を教育に出したい、日本に別荘を持ちたい、日本で週末を過ごしたい
という安全で環境によく、健康によく、しかも極めて快適な国になること
だと思いますね。
国力や軍事力は大したことはないが、技術や文化のセンターとして、
みんなが望ましいと思うような国に、今世紀の末までに日本を持っていく
ことができれば、これが日本の理想なんですよ。
その時に周りの国から脅威を受けることがないように、アメリカよりはむ
しろアジアの国々との協力関係において、日本がセンターになるというこ
とです。
その場合、一緒に協力できるというのは、ライクマインデッドな国、
つまり価値観を共有できる国です。
つまり資本主義だとか平等、人権、自由、民主主義、自由貿易体制とか
そういうものをきちっと享受できる国と一緒になって、ひとつのアジアの
大きな協力の枠組みを作って、その中で相互依存で発展していくという
ことです。
一緒にやれるうにとして今、私の頭の中にあるのはオーストラリアです。
その次がニュージーランド、それからインド、アセアンの中でもシンガポ
―ル、やがてはタイ、それから韓国もあがってくるかもしれない。
そういう国と一緒になっていくということです。
あまりアメリカやヨーロッパに依存せうに、膨大なこの地域の人口の中
で、資金と金融と経済を動かして、みんなで豊かになっていくというシス
テムをアジアの中に作る。
そのセンターに日本がなるというのが我々の理想だと思います。
日本が衰退を続ける一番の原因は。
いろんな理由があって、まずは女性が結婚して子供を産まなくなったか
らですね。つまり結婚する年齢がものすごく高くなった。
世の中が豊かになって、独身で人生を楽しみたいと思う女性が増えた
のでは。
豊かさだけではないと思うんです。豊かでも本当に豊かだったら結婚し
て豊かな生活をして、子供を何人でも埋めるんですけども、豊かでない
部分があるわけです。
だから結婚できないわけです。自分の生活のレベルを落とさないため
には、結婚しない方がいいわけです。
結婚して男性の給料で生活すると途端に貧しくなるというのは、本当の
意味で豊かでないということなんですね。
本当に豊かであったら結婚しますよ。子供を何人も生みますけど、それ
をしないわけです。
37、8の土壇場になって結婚するから子供が一人しかできない。
だからものすごい勢いで出生率が下がっていますね。しかも子供を育
てるのに昔のように大家族で育てないので、親子関係が疎遠になって
精神構造も荒廃するんですね。
先週、北陸銀行の頭取とこの種の対談をしたんですけが、その前の
秋田銀行の頭取との懇談でも同じ話題が出たんです。
それは、文部省による全国の学力調査というのがあるんですが、実は
そのナンバーワンは10年連続で秋田なんですよ。
秋田、石川、富山、新潟など日本海に面する県なんですよ。
北陸5県のうち4県がトップファイブの中に入っています。その理由を
この二人の頭取は、それはおじいさん、おばあさんに育てられている
からだというんですよ。
大阪は橋本知事が学力低下、体力最低といって怒り狂っていますよ
ね。何故かというと両親が働かざるを得ないわけです。疲れて帰って
くるから、子供に教える時間がないし、教えるとやっぱり感情的になる
わけです。
ところがおじいさん、おばあさんは決して孫を怒らないです。
丁寧に子供に接して、肝要ですから、彼らは。難しいことは分からな
いけれども、国語や社会や歴史だとか丁寧に教えるから、すごい勢い
で学力が高くなるんですよ。
やっぱり日本の社会構造が都会化することで、我々の親子環境が非
常に疲弊してしまう。
犯罪に関わった多くの子供ってみんなそういう家庭環境ですよね。
本当に豊かな大家族の中で育てられた人って、決してそういうことは
しないでしょ。
アメリカの衰退の中、軍拡にまい進する中国は、将来日本の安全に
かなりの脅威になりますか。
それは日本がどう振る舞うかなんです。
ただ現実に中国は日本の主権を様々に侵害していますが。
それは彼らには彼らの事情があってですね、反中感情を刺激するよう
にメディアが過剰に反応するからなんです。彼らは日本に脅威を与え
ようと思って東シナ海の油田を開発をしているんじゃないです。
もちろん油が欲しいからだと思いますが。
何故、油が欲しいかというと、彼らは経済発展するとき、どうにもならな
い状態に追い込まれているわけです。
中国は日本の目の前で油田を開発していますが、それなら日本は何
故開発しないのかというと理由があるんです。
中国は開発を損得抜きに国がやるわけです。出ても出なくても誰も文
句は出ないんですけども、日本の企業は必要な開発経費をかけて、
出なかったら誰が責任を取るかという話になる。日本のビジネスのや
り方は常にリスクを負わないんです。
中国はけしからん、ストローで吸うように日本の鉱脈から吸ってんじゃ
ないかと言っても、それは日本の論理です。
中国の論理から言うと、それなら日本側も出てくればいいじゃないか
ということになる。
日本の経済産業省が企業に出て来ませんかと、一生懸命やったけど
みんなノーなんですよ。
リスクの高いところを開発してお金をかけるよりも、中東湾岸から買っ
た方がはるかにやすい。どんな石油が出るのか出ないのかも分から
ない。開発費が出なかったら誰が責任を取るのか。
そんなビジネスには手を付けられない。結局日本の産業構造が非常
に官僚的で、その結果として中国に持っていかれるということです。
中国の原子力潜水艦は脅威になりますか。
戦略原潜を一隻持っていますけど、それは失敗作だと言われていま
す。原子力潜水艦には、推進が原子力というのと、核ミサイルの搭載
という二つの意味があるんですね。
推進が原子力だったら、日本も作ろうと思ったら簡単に作れます。
ただ攻撃兵器が単に魚雷だというだけです。
中国は推進が原子力でしかも核ミサイルを搭載している潜水艦を一隻
持っているんですが、上手く運用できていないんです。
仮にそれが日本にとって脅威だとしても、ハッキリ言って日本海から
ミサイルを日本の領域に飛ばすにはちょっと不適当です。
ミサイルで隣の家を攻撃するようなものですから。
つまり10万キロぐらい上げてから隣に落とすということですから、論理
的にできないんです。
10万キロぐらい飛ぶというと、丁度アメリカのワシントンまで飛ぶ弾道
ミサイルですから、戦力兵器なんです。
だから軍事的に言うと、彼らは日本を狙って持っているんではないん
です。明らかにアメリカやロシアから手を出されないようにするための
抑止力として持っているのです。
もっとハッキリ言うと、やがて空母を持とうとするときの空母を守るため
に、先に原子力潜水艦を建造したということですね。
中国は長期的に軍事力を調整しようとしていることは確かです。
それが我々にとって脅威になるかもしれないです。
だけどもそれほど心配していないのは、日本も確実に日米協力をやっ
て、最新の技術をどんどん作って、核兵器はアメリカに依存しながら
国の安全を維持できるんです。
仮にアメリカに依存しない場合、自衛隊の本当の実力は世界の中で
はどの程度のものですか。
日本の防衛の総合力の中で、部隊の指揮だとか、戦闘能力だとか、
技術の能力というのはおそらく世界一級の軍隊に匹敵する能力を持っ
ていると思います。
アジアの中でこれ以上の軍事力を持っている国はないと思います。
ところがこれを実際に運用するときに、最大の問題は、日本の領域外
で攻撃作戦に従事したことがないために、そのための訓練とかノウハ
ウがないんです。
ないので指揮官は昔の軍隊と違ってものすごくリーガルにものを考え
て、兵員と部隊を指揮する習慣がついてしまっている。
例えば今、ソマリアへ海賊対策に行きます。海賊が向かってきても、
警察官職務執行法に基づいて、正当防衛と緊急避難以外の武器使
用はダメですとなっているんです。
だからどこまで自分たちが法律の範囲内で武器の使用ができるかと
いうのは、ケースバイケースで全部頭の中に入れないと部隊を指揮で
きないです。法律に縛られているんです。
軍隊というのは本来は法律がない世界なんですよ。軍事活動はいか
なる人を殺そうが、騙そうが国家の防衛のためにはなんでも許される
というのが軍隊のありようなんです。古代からずっと。
ところが日本の自衛隊は全部法律で縛られているので、日本の中で
はいいですけど、外ではどこまでができるのかテストしたことがないん
です。
だから陸上自衛隊がサマワに行ったときも、決して武器を使うケース
に巻き込まれないように、細心の注意を払って部隊活動をやったので
一発も撃たれず、一発も撃たないで全員が帰ってきたんですよ。
これは軍隊として奇跡です。
アメリカは4000名以上の兵員が死んだわけです。毎日10万発以上
の玉を打ち込んで、自分の身を守っているわけですけど、日本は一発
も使わなかった。
一発も撃たれることなく、誰も擦り傷もせず帰ってきてるわけです。
それくらい軍隊の運営上、法律的にきちっとコントロールしながら作戦
を行っているので、そういう軍隊がいざというときに自分たちが持って
いる能力を100パーセント発揮できるかどうか、ここが最大の問題な
んですよ。
なんでもやっていいのであれば、世界第一級の軍隊だと思います。
自衛隊員の士気は高いですか。
非常に士気は高いですね。とにかく誰一人として規律違反はしない。
世界の見本というか、世界中が自衛隊の規律の正しさにビックリする
んです。
イラクに行ったときに、アメリカ軍の指揮官が陸上自衛隊の指揮官に
お前たちはどうしてイラクの人に憎まれないで部隊の任務を遂行でき
るんだと、その秘密を教えてくれと言うわけですよ。
例えば土地の部族長と応対するときに、アメリカの指揮官はパッパと
歩いて行って上から握手する。後方の機銃に守られながら。
ところが日本は機銃を遠く離して、部隊指揮官が地べたに座って、這
って行くんです。決して彼らの頭よりも高く握手しない
それは現地流の挨拶ですか。
いや、現地の部族長に対する挨拶ですよ。決して彼らの上から握手
しない。だから彼らは日本人というのは、こういう人種なのかと思うわ
けなんですよね。だから接し方が全然違うんです。
選挙が近づいていますが正直、自民党はお終いという印象ですか。
うん、私は選挙が終わって民主党が勝利したら、自民党は当の名前
がなくなるくらい党の支持基盤が壊滅的な状態になると思います。
そこまで行きますか。
はい、どうしてかというと、地方の支持基盤が壊れてしまっているから
です。だから完全に新しい組織をもう一度作り直さないと、自民党そ
のものが消滅する感じになると思います。
全く新しいコンセプトに作り直さないとこの党は将来がないと思います。
何故そうなってしまったんでしょうか。
一番悪い体質は、公明党の票をバックに当選している人が多いという
こと。それから伝統的な自民党の組織である中小の業界とか、農協と
か、そういうところが小泉改革で公共投資のお金が落ちなくなって、も
う自民党を支持しても意味がないということを知ってしまったということ
です。つまり自民党の支持基盤が壊れてもうないわけです。
今、言われているのは150人くらい落選すると。
その人たちは今までの伝統的な自民党の組織におぶさって、ずっと当
選してきた人たちですね。
もう有名な政治家ばっかりですよ。だから支持母体からもう一度考え
直さないといけない時期に来ているんだと思います。
選挙後はどんな状況が予想されますか。
民主党は単独で過半数になるかどうかは選挙をやってみないと分から
ないですけれども。
今の自民党議員の中にも、民主党と一緒に組んででも新しい政治をや
ろうという人がいるわけで、そういう人たちがグループを組んで民主党と
一緒になると相当大きな勢力になります。
ある種安定政権になるっていう可能性もありますね。僕は民主党支持者
じゃないんだけれど、そういう風に思います。
森本さんが、この人なら日本の将来を託せると思う政治家は。
自民党議員の中で将来を託せる人は谷垣貞一だと思います。
どういうところがいいですか。
政治家っていうのは自己顕示欲が非常に強くて、自己の名声とか権力
に非常に拘っている人がいるんですけど、あの人はそういうものを全く
感じさせない非常に不思議な政治家で、生まれ育ちがいいだけでなく、
非常にクリーンなんですね。
また割合リベラルな感じの人ですよね。また大変経済とか金融とか財
政に強い人で、私が専門とする分野についてはあんまり沢山ご存じな
いですが。
自民党の年配の人では、あんまり信用できる人はおいでにならないで
すよね。
若手の政治家ではいますか。
若い方では石破さんとかいますけども、むしろその年代で良いなと思う
のは民主党に多いですね。
僕は民主党の人と付き合ってみて、この人は日本のためにどうしても
置いておきたいと思うのは、前原氏と長島昭久氏ですね。
この二人は何党であれ、党と関係なく日本の政治のためにどうしても
置いておきたい政治家ですね。
国の責任の一端を担ってもらわないといけない政治家で、非常に恵ま
れた資質を持っていると思います。
やっぱりこれから大事なのは、国際感覚が豊かで、しかも自分を捨て
て国民のために何かしらやってみようと真剣に考えている人でないと
長く政治家を務めることはできないですね。
そういう政治家がもっと増えることを期待したいですね。
そうですね。最後は自分だという人所詮はダメですね。
そういう意味では、海外で研修して帰ってこられた人の中にいい人が
おられますね。
若いときにどこの国であれ一度海外できちっと勉強して、できたら修士
ぐらいは取って帰ってくるという方が、日本の将来のためにもいいと思
いますけどね。
我々は常に周りの国との相関関係で出来上っているわけですからね。
お忙しい中をありがとうございました。
いえいえ、とんでもないです。
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2008.9.1  於港区白金台五丁目
森田 実 政治評論家
≪インタビュー≫  聞き手・蛭田有一
政治評論家としての森田さんの信念とは。
戦争反対ですね。どんなことがあっても再び戦争を政府にやらせてはい
けない。戦争に反対して平和を守るというのが政治評論家として第一の
信念です。
そういうことを口にする評論家は最近少ないですね。
この頃は少なくなったのではないでしょうか。
戦争体験者の中には多かったと思うのですが、あまりそのことを明確に
口にしなかったと思います。
私が中学一年生の時に戦争が終わりました。私は最後の最年少学徒動
員体験者です。
その時から戦争だけはさせてはいけないということで生きてきました。
言論活動を始めた後も、このことが終始一番大事な信念です。
そういう思いに至った経緯にはどんなことがあったんですか。
私は7人兄弟の6番目でした。家業は江戸時代からの建築業でした。
代々大工の棟梁の家だったのです。
一番上の兄は私が生まれる前に病死しました。二番目の兄は家を継い
だ後に召集され、戦地でそのまま行方不明になりました。
戦争が終わり半年ぐらい経って、お宅の息子さんが死にましたと、駅に
息子の復員を迎えるために毎日通っていた母親が復員兵の一人から知
らされたのです。
忘れもしない1946年3月15日でした。母親が家に駆けこんできました。
岸壁の母ならぬ駅頭の母でした。
戦争が終わってから毎日、息子が帰ってくるのではないかと駅に通って
いたのです。復員兵の中の一人から知らされたのです。
ばあさん、お袋、姉たちの慟哭を、私は近くでじっと見ていたのです。
言いしれぬ怒りがこみ上げてきました。
その後、私の母と同じ境遇の母親が多くいたことも分かりました。
こんなに人を苦しめる戦争は何なんだと。その時から反戦が私の原点と
なりました。
その後、編集者になってからも反戦が原点でした。著述業になって40年
近くなりますが、ずっと反戦平和が原点です。
今の日本の状況で特に心配していることは。
今の日本は進路をアメリカに決められています。アメリカに言われれば
日本の指導層は全部イエスです。
国民に公表できないものは秘密にして、国民が起こらないものだけ公表
しながら、全くアメリカの言う通りやっています。
アメリカは最近たちが悪くなり、日本に戦争させようとしています。
かろうじて憲法第九条が防波堤になって、アメリカの言う通りになってい
ないのですが、危ない状況です。
日本は自主的判断ができないのです。日本はアメリカに利用されていま
す。日本の指導層は風にそよぐ葦です。アメリカという風で日本は自由に
動かされている。
このまま行けばアメリカは日本を食い尽すと思います。メチャメチャにな
って日本はアメリカの奴隷国として滅んでいくという恐れがあります。
このことに日本の指導層が気づかなければいけないと思うのです。
今は、一般の国民の方が政治家より健全です。
指導層はアメリカに言われればついて行きます。一般国民は違う。
だから一般国民のセンスで日本の政治を作り直さないとダメではないか
と思っています。
日本は独立国とはとても言えませんね。
日本政府は日本国民に対しては独立国のように振る舞ってきましたが、
実際は完全にアメリカの言いなりの国です。
小泉首相が言い続けた自由競争と自己責任。これ実はブッシュ米大統領
のスローガンと同じです。
つまり全てを市場にゆだねよう、規制緩和で行こう、小さな政府で行こう
それから公的な支出は減らそう、新自由主義の経済競争理念を、ブッシュ
は『自由競争と自己責任』という言葉で強調し叫び続けたのです。これを
小泉が同じように叫び続けました。
競争を自由にするというのは、強い人間が勝つということです。
だjから自由競争主義は強い人間を保護する論理です。
新自由主義の公的関与をなくして、社会福祉を減らそうというのは弱者切
り捨ての論理です。
小さな政府というのも弱者切り捨ての論理です。自由競争にゆだねれば、
強い人間が勝ち、弱者が負けます。
これは大資本の論理を露骨に推進するアメリカ政府の政策だったのです。
これをアメリカはグローバリズムと称して世界も同じことをやらなければ
いけないと世界各国に押し付けたのです。
しかし新自由主義を実行した国はどこも事実上潰れました。
これらの国々は犯罪社会になり、階級社会になり、貧しい人が増えて社
会がガタガタになった現実に世界中が気づきました。
新自由主義を批判する本が欧米で何冊か出版されています。
日本の指導層だけが気が付いていないのです。日本のマスコミと学者も
全くダメです。本当に日本は危機だと思います。
マスコミはそういうことも伝えてほしいですね。
結局、国民が目を覚ますしか危機を打開する方法はないのです。
私自身、新聞とテレビとラジオなどで発言してきました。雑誌や単行本で
も発言し、アメリカと新自由主義の危険性を全国民に知らせる努力をして
きました。
ところがマスコミがアメリカ化しているものですから、アメリカ批判者は
排除されてしまいました。
私もマスコミで発言できなくなりましたからインターネットを使って主張
を発信してきました。日本語の評論は毎日書き、英文でも週に一度出し
ています。
その結果、アメリカの出版社が『日本のアメリカ中毒を治療する』という
タイトルの本を7月に出版してくれました。こういう形で、私はアメリカ
批判を続けています。あたかも手工業で超近代工業に立ち向かっている
ようなものですが・・・
ある時、テレビから森田さんの姿が消えて、一体どうしたんだろうと
思っていましたが。
小泉構造改革が出てきたとき、あぁこれは日本を破壊するなと思いまし
た。日本は和と助け合いの国です。そこに完全な自由競争を持ち込みま
した。
これはみんなが敵になるシステムです。その上、最後は自己責任という
論理です。『和と助け合い』の破壊です。つまりアメリカの論理です。
これをやったら日本は崩壊すると思いました。
小泉のやり方で、先ず地域から崩壊していきました。弱者切り捨て、地域
切り捨て、福祉切り捨てです。
これでは日本はどうしようもなくなると考えて、小泉が登場する瞬間から
私は小泉批判を続けてきました。
2005年8月8日に小泉が郵政民営化のために衆議院を解散した翌日
(9月9日)の朝、私はフジテレビの『めざましテレビ』という番組で、
私が、担当してきたコーナーに生出演して発言する機会がありました。
この時、これは天の助けかと思いました。
そこで私が発言したのは、小泉は憲法違反をしたということでした。
日本は議会制民主主義の国であり、議会が法律の決定権を持っている。
憲法第41条は、国会は国権の最高機関であって、唯一の立法機関で
あると決めています。
その国会が郵政民営化法を否決したのに、内閣総理大臣が納得できな
いといって、国民投票に代わる衆議院選挙で決着を付けようとしたのは、
内閣総理大臣が従わなければならない国会の決定を踏みにじって、首
相を国会の上に置いたことであって、これは明らかな憲法違反であると
私は言ったのです。
小泉首相は重大な憲法違反をしたので直ちに責任を取るべきだという発
言をしました。
これが私のフジテレビ生番組最後の出演になったのです。その後出演の
依頼はなくなりました。
内部から非公式の情報が入ってきましたが、政治の方から相当なプレッ
シャーがあったそうです。
それから8月16日だったと記憶しているのですが、TBSのお昼の芸能
番組から出演依頼がありました。
私は芸能番組には出ないことにしていたのですが、少しでも発言の機会
があれば出演しようと考えました。テーマは静岡7区の選挙に関わること
なので割合おとなしい解説をして帰ってきたのです。
そうしましたらその夕方でした。私を呼んだアシスタントディレクターが
電話をくれました。『実は森田さんが出演された直後に、TBSの官邸記
者クラブの政治部記者二人が飛んできました。
それで急きょ会議が開かれて、今後は森田には依頼するなと言われまし
た』と。
TBSの政治記者が官邸から飛んできたというのは、その記者が官邸から
何かを言われたのだと思います。
これが本当の東京のテレビ出演の最後になりました。
私に限らず、小泉を批判し郵政民営化を批判した人は、ほとんどテレビ
から一掃されました。ある意味、政界に起こった小泉パージがマスコミに
おいても起こったのです。
1950年のレッドパージのようなことが起こったのだと思います。
その後は東京のテレビ局、東京の大新聞は私との連絡を絶ちました。
ちょっと怖い話ですね。
戦前の軍国主義の時代と同じですね。マスコミの危機です。
10人の記者がいて、そのグループの中に一人だけ間違ったことは絶対
したくないという記者がいればブレーキになります。
私は先ほど、信念は反戦、平和と言いましたが、もうひとつあります。
それはストイシズムです。禁欲主義です。徹底的に禁欲主義で生きて
きました。
禁欲主義者が一人いれば、周りの人々のブレーキになります。
新聞記者の世界でも、多くの記者の中に悪いことは絶対しないという人
が一人いれば、他の9人を抑制する効果があります。
批判者がいなくなることは社会のブレーキがなくなるようなものです。
悪いことは絶対しないという人間がいなくなった社会になることは恐ろし
いです。
いったん、規律とかモラルとか、悪いことはしないという論理が消える
と、歯止めがなくなるのです。ですから今のジャーナリズムはもの
すごい危機です。批判者を排除したら社会は暗くなります。
日本のマスコミが本当に心配ですね。
ワシントンタイムスが1ページに亘り、私がどうしてテレビから姿を消し
たかについて私のインタビューを載せたことがあります。
その記事を書いた記者はテレビ局に連絡を取り質問書を送ったそうで
す。ところがどこもちゃんとした回答をしなかったそうです。
私を出演させなかったのは、テレビ局のトップの意思だったと思います。
その裏側にあったのは政治権力の圧力だったと思いッます。
こういうこともありました。小渕内閣の頃だったと記憶していますが、
新井将敬という大変良い政治家が自殺した事件がありました。
新井将敬さんは一度離党して、その後自民党に戻りましたが、気の毒な
ほど自民党内でいじめられていました。これはよく知られていました。
こういうことも彼が追い詰められた原因の一つではないかと思っていま
した。
私がテレビに出演しているときに、新井将敬さんの自殺についてのキャ
スターの質問に、今の政界が冷たすぎる、自民党が冷たすぎる、そこに
も一つの原因がある、新井さんのような真面目な人間を助ける必要があ
った、と答えました。
その直後、自民党本部に抗議の電話が殺到したそうです。
その時の幹事長か幹事長代理の野中広務さんが、テレビ局に抗議の電
話をしたそうです。野中さんはすごい人です。プロ中のプロの政治家で
です。
私が発言した『ザ・ウィーク』という番組のプロデューサーが私のところ
へ電話をかけてきました。
『野中さんからきついお叱りを受けて困っています』と言うので、君は野
中さんに『野中は切る』と提案しなさいと、僕を『ザ・ウィーク』から切
れば、『ザ・ウィーク』は守られるし、君の立場も守られるからそう
しなさいと言ったのですが、結局『ザ・ウィーク』という番組そのものが
すぐになくなりました。
野中さんが猛烈に抗議した結果だったと聞きました。
野中さんにやられたという人は非常に多いです。野中さんは闘う人でし
た。ただオープンでした。小泉パージのときは裏でやりました。
実は2005年5月頃のことでした。
アメリカのウォール街から帰ってきた人から聞いたのですが、アメリカの
保険業界が多額の政治献金を集めて、共和党系の大広告会社に日本で
の広告プロジェクトを依頼したと。
その巨大広告メディアが日本の独占的巨大広告会社の電通に対して
5000億円で日本国民の頭を『民営化が善で、官営は悪だ』というよう
に切り替える広告プロジェクトを出したというのです。
2005年初め頃から各テレビ局から一斉に、いろんな番組の中で
『民営化が善で、郵政は民営化しなければ日本が潰れる』という考えを、
あらゆるニュースやもろもろの番組で流したのです。
そこで私は各方面を打診して、500億ではない、兆の額だという証言を
得たものですから、ホームページにそれを書いたのです。これは大反響
がありました。
そうしたらテレビ局の知り合いから電話が来ました、『森田さん、申し訳
けないが森田さんには仕事は頼めません。マスコミで仕事をしていて電通
を批判するというのは、マスコミ人としての自殺です。
電通を批判した人間はマスコミには登場できないのです。申し訳ないが
森田さん、さようなら』という電話がかかりました。
私も覚悟の上でやっています。仕事がなくなることは覚悟していました。
それ以上に、自分が電通批判をやることで、電通という会社がどんなに
すごい独占体かを知ることが出来たのです。
実は小泉首相が衆議院を解散した一週間後に、米国の巨大な広告会社
のボスが首相官邸で総理大臣の小泉と会っています、官邸の中で。
こういう大掛かりなことが行われて、郵政民営化法が成立したのです。
それを私が暴いたのです。私には悔いはないです。
現代社会における広告の巨大な力を知ることが出来たのです。
アメリカの巨大広告会社の後ろにはブッシュがいるわけですね。
そうだと思います。根本はブッシュから出ているのです。
アメリカの保険業界はたちが悪いのです。日本の政治はアメリカにシッポ
を振っていると、アメリカ政府が言えば日本政府はなんでも従うことをよ
く知っています。
そこでアメリカ政府に献金してアメリカ政府を動かし、アメリカ政府を通
じて日本政府を動かして、日本政府から保険はアメリカを優遇せよとい
うことをやらせてきたのです。
今は、がん保険などの中間分野の諸々の保険は、アメリカが取ってしま
ったのです。
そして最後に残っている簡易保険と医療保険に狙いを付けて、郵政改革
と医療改革を要求してきて、日本をメチャメチャにしてしまったのです。
これが郵政と医療をメチャメチャにするきっかけになったのです。
一体、政治家はどこ向いて政治をやっているんでしょうか。
今の政治家はアメリカの属国の政治家なのです。
イギリス全盛期のイギリス植民地の国々の政実家と同じです。
フランスの植民地のときのベトナムの政治家と同じです。
日本民族の歴史の中で、今日ほど日本人の心が荒廃した時代は
なかったのでは。
私は、日本社会のバランスが崩れた結果だと思います。
第二次世界大戦後の高度経済成長で産業に人が足りなくなり、そこか
ら農業社会が崩れました。
それと共に大家族制度が崩壊したのです。モラルは大家族制度によっ
て保たれていたのです。大家族制度は主婦の大変な忍耐で保たれて
きました。
その忍耐がモラルの基本だったのです。兄弟の多い大家族の中で
みんなで教育し、助け合いながら福祉、教育まで全部大家族内でやっ
ていたのですずっと長い間そうでした。。
それが産業中心主義の高度成長でいっきに崩れました。
地域と大都会、工業と農業、企業と家庭、そういうバランスが崩れて企
業に偏重していく。そうすると企業の論理が幅を利かす。
企業の論理とは儲けの論理です。企業内では理性と合理主義だけが
尊ばれます。
しかし人間というのは感情とか情念が基盤にあって理性があるのです。
そして非合理についての対応能力があって、合理主義があるのです。
非合理を否定し、情念を否定した社会では宛然な人間の情念は育たな
い。産業経済中心の行き方は、非合理を否定して本当のモラルとか
知恵が育たない社会を作ったまま、反省することなく走ってきたのです。
今の社会は全て合理主義です。全て理性です。
情念の価値は認めないし、非合理の価値も認めないのです。
ただし人間の社会は非合理な社会なのです。
非合理の社会であるから人間の知恵や力を超えたもの、個人がそれぞ
れの神を信じながら、自己を規制して生きたいるのです。
伝統的な社会のバランスを崩して、産業資本主義が社会全体をを支配
するようになったことがモラル崩壊のもとになっているのです。
更に悪いことに、アメリカを中心に極端な自由競争主義がこの30年間
世界を支配してしまいました。
ただ勝ちさえすればいい、金さえあればいい、という論理がまかり通る
ようになりました。
自分さえ良ければ主義、これはジョージ・ソロスの言葉なのですが、
一昨年彼が出した本で、アメリカは自分さえ良ければ社会になって、
指導層もみんな自分さえ良ければになってしまった。
こんな社会が長持ちするはずがない、必ず崩壊すると警告した本です。
みんな自分さえよければ主義になってモラルは崩壊しました。
政治家もモラルなき行動を非難されても責任を取らず、けじめがつかな
くなりました。
この傾向がどんどん蔓延して、今日の惨憺たる姿の原因になったと思
います。ただしこれはみんなが気が付けば治るのです。すぐ治ります。
どうしたら気が付くでしょうか。
私は週の6、7割は地方に講演に行っています。
公演をした後、懇談会に出ます。みなさんと名刺交換しますと『何々塾』
という名刺の人が増えています。
それは経営者など企業人に多い。『塾』は企業人の助け合いの関係を
守るための会です。
自由競争と自己責任の論理で競争社会を導入したために人間関係が
壊れた。自由競争主義は友情も破壊しました。
競争原理では人間の絆が崩れていくのです。そこで、生きる上では
人間の絆の方がはるかに大事だということに気が付くのです。
それで多くの方々が地域的に塾を作り始めたのです。
地域に影響力のある人が塾をつくる、宗教指導者が塾を作る、教育者
が塾を作るというように各種の塾が生まれ、『塾運動』ともいうべき運動
が始まりました。
モラルの崩壊、人間関係の崩壊、助け合い思いやりの崩壊、これを直
そうと自由な人の繋がりを作って、日本を道徳的に再建していこうという
動きが全国で始まっているのです。
たとえて言えば、人間の身体が衰退したときに体の各部分で細胞が動
きだして人間の身体を蘇らせるのと似たような動きが始まっているので
す。
私も友人から勧められてこの4月から森田塾をやりますとホームペー
ジに書いたところ反響がありました。
私は生きているうちに全国各地に一万の塾を作り、その塾をインター
ネットで結んで草の根から新たな道徳復興運動を起こすことにしました。
堕落したマスメディアに潰されないようなネットワークを作っていこうと
考えています。
共通しているのはもう少しまともな日本をつくろうと、また考えることに
しようと、もう少し真っすぐに生きようということです。
テレビの時代は考えない時代です。これが人間を堕落させているの
です。こういう場としての『塾』を無数に作っていこうと。
目の黒いうちに堕落した東京のマスメディアに対して一矢報いなければ
ならんと思ってやっています。
小泉純一郎と小沢一郎という政治家をどう捉えていますか。
共通しているのは二人とも人間の悲しみをあまり知らないということです。
自分自身に大きな失敗がほとんどありません。挫折がないです。
人間というのは失敗や挫折によってどん底を経験し、そのどん底から
社会を眺めて人間を知るのです。社会を知るのです。
政実家は、そういう経験を積んだ人でないとまともな政治家になれない
と私は思っているのです。
二人は本当の人間の悲しみを知らないと思います。だから二人とも非常
に傲慢です。
それと二人に共通しているのはアメリカ信仰です。小泉はブッシュと組
んでこの数年間を切り回しました。小沢もアメリカに弱い。
小沢さんもアメリカ信仰ですか。
小沢一郎の本を見れば分かるように、小沢一郎もアメリカ信仰です。
ただ小沢は1993年以来、野に下って与党に戻ろうとしてきたのですが
成功していない。
今度は民主党を率いて政権を取ろうとしています。
過去において、小沢さんは努力していいところまでいくのですが、ここが
勝負だという、いわゆる勝負時に失敗している政治家です。
例えばどういう場面ですか。
1993年に細川政権を作った、これは天才的でした。見事でした。
ですが小沢一郎が細川政権を潰してしまうのです。ほんの9ケ月でした。
2007年7月に参議院選挙で勝った。大勝利でした。
その直後に大連立工作をやったのですが、そこでつまずきました。
普通の政治家ならこれで終わりになるのですが、彼は蘇って今度の衆議
員選挙の指揮を執ります。
今度は勝つ可能性があります。これが彼の最後の勝負になると思います。
今まで彼は、ここぞというときに失敗しているのです。
それは何故か。それはチームを作ることが出来ないのです。人間、一人
の力は弱いものです。チーム力でないとダメなのです。
小泉もチームもチームは作れなかったのですが、竹中などのチームを
作りました。アメリカが作ってくれたのです。
一時期は小泉の勢いは良かったで。ただし今や、彼のやったことの結果
惨憺たるものです。だからこれから小泉純一郎は地獄を見ていくと思うの
です。
小沢一郎はまだ可能性が残っています。ここで勝つかどうか。
私は小沢政権ができる可能性の方が高いと思うのですが、しかし彼が
ちゃんとやるかどうか、危うさがあります。
小沢に独自の経済理論がない。あるのはアメリカの経済理論です。
これでは人類は不幸になるばかりです。
安全保障理論もむしろアメリカ依存の安全保障理論です。小沢は従米
的政実家です。
これからの社会は文明の衝突の時代です。文明の衝突を作り出したアメ
リカが中心であり続ける時代はもう終わります。これから世界は大混乱
期に入ります。心配です。
本当の悲しみを知り、地獄を経験し、地獄の底から社会を見て初めて社
会を理解する。それがトップリーダーの条件です。
これがないと謙虚さを欠き傲慢になる。権力を握った人間に謙虚さがなく
傲慢になるのは非常に危険です。
それと特に問題なのは、小沢がアメリカを崇拝していることです。
この点で小沢と小泉の二人は共通していると思います。ただ二人は仲が
悪い、敵対者だと言えると思います。
若い政治家の中で森田さんが期待する政治家はいますか。
私は若い政治家で批判精神と反抗精神のない政治家はダメだと思うの
です。
もちろん我慢することは大事です。忍耐力は大事ですが、忍耐力の限界
のときに戦わない政治家はダメだと思うのです。
今、若い政治家で戦い続けているのは浜松の城内実さんです。無所属
で頑張っていますから。
それから沖縄の下地幹郎さんです。彼ら二人は別々の道を進んでいま
すが、共通するのは小泉に嫌われて無所属で戦ったことです。
城内は僅差で敗れたが、下地は自公協力の公明党候補に小選挙区で
勝った。城内と下地には期待しています。
それから糸川正晃、国民新党の国対委員長をやっていますが、少数派
の道を進みながら、頑張っています。
民主党内にも少数ですが根性のある人間が出てきています。
惜しかったのが民主党の野田佳彦です。最後は代表選の立候補を断念
しましたが、例え小沢さんに勝てなくても民主党代表選に立つべきでした。
民主党にとって残念なのは、小沢代表派が小沢氏に批判的な次のリー
ダ~を潰しにかかっていることです。
自民党では後藤田正純さんが出てくる可能性があると思います。自分の
意見を持っていると思います。
正純氏が最初の立候補のときに選挙ポスター用の撮影をしたことが
あるんですが、短期間に政治家としての評価を得たというのは驚きですね。
今の自民党は損を覚悟で自分の意地を貫くという人はほとんどいなくな
りました。自民党の政治家はいったん得たポストは手放さなくなりました。
そんな中で後藤田だけがそれをやりました。辞職できないほど自民党の
政治家が衰えたということです。
アリストテレスが人間の職業は三つに大別できるよ言っています。
ひとつは政治家的職業、二つは実業家的職業、三つは学者的職業。
そしてこの職業を成り立たせているもの、失ったら成り立たないものとし
て、政治家においてはプライド、実業家においては利益、学者的職業に
おいては理想を挙げています。
2500年前の言葉ですが、今でも真理です。だからプライドのない政治
家は政治家といえないと思います。
次の選挙後、政界再編があるとしたらどんな形になりそうですか。
先ずどうあるべきかとということから話しますと、資本主義の政党と社会
民主主義の政党による二大政党がよいと思います。ただ実現は困難です。
日本が今の社会制度を取っている限りは、社会は二つの基準でなり立っ
ています。
政治的民主主義と経済的な資本主義の二つで成り立っています。
この二つがバランスしている社会は安定しています。
しかし崩すと大変です。自由競争だけ徹底して行って、民主主義を潰した
のはブッシュ政権や小泉の原理でした。この結果、社会は崩れた。
民主主義に重点を置くのが社会民主主義です。資本主義、自由競争に
重点を置くのが資本主義、自由主義です。
この二つの政党が競合するというやり方がよいと思います。
だが今、自由主義により重点を置く人が自民党にも民主党にもいる。
社会民主主義者は少なくなったが民主党にいる。自民党にもいる。
二つの路線が一つの党に渾然となっているから、二大政党制がうまく機
能しないのです。
ただ政治は理念だけで動いているのではありません。
しかし、『自由』に重点を置くなら『自由重視』の党へ、『民主』に重点
を置くなら『民主重視』の党に二分されるべきです。
ところが現実は、大連立というもたれ合い体制に向かう恐れが強いと思い
ます。
総選挙後の政界再編成の可能性は高いと思います。再編でも正義のた
めに戦う政治家の再編なら意味がある。例えば党の指導部が裏切ったら
断固離党して戦う、つまり少数党になっても戦うという再編ならば意味が
ある。
政権を維持したり、有利にするための政界再編には私は賛成できません
が、指導者が裏切ったときに戦う再編ならば大いにやってもらいたいとい
うのが私の意見です。
基本的には今の大新聞主導で行われている政界再編というのは、権力
を維持するための政界再編論ですから、これは間違っていると思います。
政界再編を念頭にいろんなグループができつつありますね。
しかし総選挙目前の動きにはパワーがない。
例えば運動を起こすには、資金を作る力がないとダメですが、資金がな
い。それ以上い同志的な団結を作る強烈な中心メンバーが必要なので
すが、これがない。
チームを作る力というのは同時に資金を作る能力でもあるのです。
そういう力を持った政治家がいなくなった。
総選挙前の政界再編成は大したものではないと思います。本格的な再
編成は、総選挙後になります。警戒すべきは大連立です。
今後、政治評論家として特に力を入れていきたいことは。
冒頭で平和のことを話しましたが、もうひとつは日本が失った独立。
つまり我々の100年後、300年後の日本人に対して今我々が遺してい
くものは従属国日本です。それは政治的、経済的、社会的にアメリカに
従属しているだけではない。精神的にも従属しているのです。
精神が腐っているのです。これがモラルの崩壊のもとでもあります。
私が一番重視しているのは平和と独立です。
日本はアメリカの従属国であってはいけないのです。
世界に200か国ありますが、他国に頼って生きていこうとしているよう
な国はほとんどないのです。日本だけです。
1億2700万人もいる大きな国なのに、自ら国を守ろうと考えずにアメ
リカに守ってもらおう、守ってもらうにはアメリカに、国の主権も富も
精神もアメリカに差し上げましょういうような、だらしない国はほとんど
ないです。
私はせめて後世の人に独立国日本を遺したいと思っています
憲法を守る立場として強く主張したいことは。
アメリカに従属している間は、日本人が戦争に巻き込まれないために、
憲法9条は絶対に必要です。
憲法9条があったから、アメリカが日本を戦争に巻き込むことが成功しな
かったのです。だからアメリカに従属している限り、憲法9条は守り続け
なければいけないのです。
私は今の憲法はよいものだと思いますが、憲法改正を行うとしたら日本
がアメリカから完全に独立した後で行えばよいと思う。
独立してアメリカに影響されない状況の中で、投票したらいいと思うので
すが、ただ従属している間は、アメリカが日本に戦争を肩代わりさせよう
としていますから、その唯一の防波堤の憲法9条は維持し続けないと、
アメリカの戦争に巻き込まれてしまいます。
今、日本は人心が荒廃し、国も衰退しています。この先希望が持てる
でしょうか。
私は、日本は再生に向かって、そして脱アメリカに向けて動き出したと思
うのです。
無数の塾が生まれつつある。あとは勇気あるリーダーが出てくることです。
時代を変えるためには吉田松陰とか坂本竜馬とか西郷隆盛のような自己
犠牲をいとわない指導者、勇気を持った指導者が必要です。
優秀な指導者の命を懸けた、命を犠牲にした行動が一般大衆の目を覚
ますのです。
一般大衆の教育のためには指導者が命を懸けなければダメだ思います。
そういう勇気ある指導者を出したいですね。そういうリーダーが出てくれ
ば日本の独立と再生への動きはどんどん広がっていくと思うのです。
そういう日本を作るためにも、もうひと踏ん張り頑張って頂きたいです。
私も老骨に鞭打って努力します。
これから10年は健康維持して頑張らないといけないと決意しています。
ありがとうございました。
本当にありがとうございました。
 Copyright (C) 2006 YUICHI HIRUTA. All rights reserved.
2008.9.12  於港区新橋三丁目
青山繫晴 (株)独立総合研究所代表取締役社長、主席研究員
≪インタビュー≫ 聞き手・蛭田有一
独立総合研究所というシンクタンクの最高責任者としての使命感とは
ちょっと長めに話してもいいですか。
独立総合研究所、略称は独研というのですが、株式組織のいわば本格的
なシンクタンクです。
ぼくの個人事務所と誤解されることが日本ではよくあるのですが、全く違い
ます。
日本よりもロンドンやワシントンDC、パリなど海外での方が独研の仕事と
役割の中身について思い込みなくよく理解されていますね。
特に民主主義諸国の危機管理、安全保障部門やインテリジェンス部門の
政府機関には知られています。
英語の社名のJapans Independent Instituteと言うだけで、「あぁ、ヒモが
付いていないシンクタンクですね」とすぐ分かってもらえます。
株式会社であるのは自立のためであって、利益が第一の目的ではありま
せん。
ぼくが独研を立ち上げたのはある種の偶然というか、天に命じられるまま
ここまで来たという感じなんですね。
共同通信の記者を20年にわたって務めていたとき、ペルー日本大使公邸
人質事件という日本が初めて経験した国際テロ事件がありました。
そのペルー事件をきっかけに記者を辞めようと考えているときに、たまたま
三菱総合研究所とご縁があったんです。
ちょうどその時期に、三菱総研が国家安全保障をハード面だけではなく、
ソフト面から、つまり装備だけではなく日本自前の基本政策として考えられ
る人材を探していたんですね。
今までそういう政策は、アメリカにお任せだったけれども、自前の安全保障
の理念とか哲学とかを考える時代に入るらしいということでぼくとご縁がで
きて、それで三菱総研に移ったんです。
シンクタンクを良く知らなかったぼくが、三菱総研の4年3か月の間に、民
間の道を選ぶのが難しい知恵がないと国家というのは本当に正しいという
事実に目を開かされました。
そして『日本にも全くヒモが付かない、裏で繋がっていない、民間なのに国
家国民のために動く、民間なのに利潤が第一目的じゃなくて、この国をどう
するんだということを目的にする、そういう組織が必要だな』と思いました。
そこで、最初は三菱総研で出会った仲間と共に、たった4人で独立総研を
始めたんです。
今は役員と社員でざっと20人になりましたけれども、ずっと独立独歩で、
まさしく国家安全保障の実務に取り組んできました。
イギリスとかアメリカとかフランスとかドイツとか、そういう日本と同じ民主
主義諸国の政府というのは、ちゃんと裏打ちと実力があれば民間シンクタ
ンクでも国家機密まで共有して連携します。
面白いというか不可思議な事実としてあるのは、先進国からテロ対策を学
ぶために日本政府の代表団が行ったときに、相手側に言わせると『日本の
政府の代表たちが来てもほとんど話し合いらしい話にならない。』と指摘さ
れる現実です。
『日本の弱点はここで、日本の本当の問題はここで、ここをどうにかしたい』
とありのままに出してもらえば、他の民主主義諸国も、我々は我々の弱点
をどうやって克服しているか、ということをテーブルの上で付き合わせて話
ができるのに、日本の官僚たちは手の内を見せないというのですね。
政治家の場合はもっとひどくて、そもそも日本の弱点を理解も検証もして
いない人が平気で来たりするそうです。
独研は政府の下請けじゃありませんから、ここは弱点だということをテーブ
ルの上にフェアに出します。
そうすると諸外国も『国家の機密だけども、本当はここはこうやっている』
ということを出してくるんですね。
それを日本国民のために、守秘義務のある政府機関に伝えるというのが、
独研の日本ではあまり知られていない大きな仕事の一つです。
例えば2008年、夏の洞爺湖サミットは事前にテロや騒乱への工作をめぐ
って厳しいインテリジェンス(情報)があったにも拘らず、テロを完全に防ぎ
切って開催されました。
ただし洞爺湖サミットが近づいたときに独研が懸念したのは、空、陸そして
水上の警備は万全でしたが、水中の警備は全くなかったということです。
この国で水中の警備がないうのは驚くべきことです。
拉致事件では多くの日本国民が、水中からやってきた北朝鮮の工作員に
よって誘拐されているのですから。
本物のテロリストは陸から、或いは水上からだけ来るんじゃなくて、見えな
い水中からくる。日本は四方を海に囲まれ、国民を拉致された現実がある
のに、洞爺湖サミットのときにその警備がない。
水中警備はすでに諸外国では大きな課題になっていて、例えばアテネオ
リンピックでは水中ソナーをたくさん配備してずっと水中を監視した。それ
を学んでいない。
例えばニューヨークでも港の守りは水上よりも水中なんですね。せれで独
研から日本政府に提案して洞爺湖サミットに水中ソナーを導入したんです。
ほぼ無償ベースでした。
独研は公的機関から仕事が来るのを待っているのではなく、こちらから国
民の立場に基づいて提案するのを本文にしています。
自衛隊に任せたんですか。
違います。東京大学の生産技研が研究開発してきた水中ソナーに独研の
意見をも取り入れてもらって実用化し、警察庁に提案して連携を練り上げ
て入れたんです。
先ほども言いましたように、この洞爺湖サミットについては実質的にほぼ
無償です。
独研は7年間ずっと黒字経営ですが、無償の仕事もありますから、ぼくの
講演やテレビ出演などのフィーは全て独研に入れて、ぼくの懐には
一銭も入れません。
僕はよく評論家とかジャーナリストとかいろんな肩書を勝手につけられるん
ですけど、実務を預かっているシンクタンクの社長です。
あるとき経済産業省の局長さんから『株式会社というのは儲けるためにあ
るのに、儲けを第一目的にしないというのは困る』と言われたんで
すね。
独研は何故株式会社でいるのか。それは自立するためであって、自分の
食い扶持は、自分で稼いでこそ誰にでも自由にものが言える。そのための
株式会社であると答えたんです。
そしたらその局長が『儲けが目的じゃないんだったらNPOやNGOにしてく
ださいよ』と言うので、『いや、うちは国家に税金を払いたい。自分で
喰うだけじゃなくて、国家に税金を払って初めてみんなにものが言えるのが
本来の姿です』と答えました。
しかしそう答えつつ内心に、かすかな不安が生まれました。
『確かに法で、株式会社とは利潤を追求するためにあると定められている。
独研の在り方を一度考えてみるべきじゃないか』と思ったのです。
だけど天はいつもよく見ているなと思うんですけど、偶然テロ対策の仕事
で、高知県警本部に行く機会がありました。
たまたま話が延びて乗る飛行機に遅れちゃったので、高知県警本部の目
の前の高知城にふらっと入ったら、ちょうどそこで坂本竜馬の展示会をや
っていたわけです。
その中に亀山社中の説明がありました。竜馬が長崎で作った亀山社中は
日本で最初の民間会社です。
亀山社中は儲けを目的にしたんじゃなくて、自分たちの食い扶持は全部、
自分たちで稼いで、幕府に対しても殿様に対しても、ものを言うんだとい
う理念で作ったんですね。
その展示を見たときに、ああ、まさしく独立総研の根っことは現代の亀山
車中そのものだと、僭越ながらぼくは思いました。
亀山社中と同じように、自分たちの食い扶持は自分たちで稼いで、この国
の一切の利害関係から自由に、それが右でもなく左でもなく、まっすぐ真
ん中から変革する。
そして独研という組織を通じて、私利私欲じゃなくて自分の持っている知力
とか体力とか感性とか、ありとあらゆるものをこの祖国日本と民衆のため
に捧げ尽すんだという思いでやっている。
そこが亀山社中と独研は共通すると、思い至りました。
そして、ご質問なさった最高責任者としての使命感と言う意味では、もち
ろん最後の責任は一切合切ぼくが取る。命を含めてその覚悟はあります。
私利私欲のない政治家が少しでもいればと思います。青山さんが独研党を
立ち上げたら、多くの支持者を集めるのでは。
独研の一つの特徴は右でもない、左でもないということです。
冷戦が終わって20年近くにもなるのに、いまだに右翼だ左翼だと言ってい
るのは日本ぐらいですから。
レフトウィング、ライトウィングのじだいじゃないんです。まっすぐ真ん中か
らというのがうちの一番の特徴であり、だから実務なんですよ。だから政党
じゃなくてシンクタンクなんですよ。
日本は今や政治三流、経済三流、モラル三流、学力三流と言った政治家が
いました。官僚の体たらくには言葉もありません。日本人がこうなった原因は。
蛭田さんのご質問自体は興味深く拝聴しました。確かに政治家も官僚も評
論家も、年中お互いにそう言い合っていますね。
しかし、ちょっと待ってください。仕事で海外を広く歩いていきますと、日本
ほど沢山のアドバンテージ、良い面を持っている国は他にないなと気づきま
す。だから簡単に三流と言ってほしくない。
『ひょっとしたら、そうやって祖国を貶めるあなたこそが三流じゃないでしょ
うか』と、ある評論家ご本人に、心の中で非礼をお詫びしながら申し上げた
こともあります。
一例を言いますと、日本の総理がころころ変わって、ここ四半世紀近い間、
長くやったのは中曽根康弘さんの5年と小泉純一郎さんの5年半だけで、
他の総理は国際的な水準には達しないと言えるぐらい在任が短いですね。
だから日本の政治はダメだと、いつも言われています。
もちろんダメな面もあります。しかし日本の内閣というのは、辞める時には
必ずと言っていいほど、歴史的使命を終えているんです。
例えば中曽根さんは5年やりました。どうして長かったかというと『菅から民
へ』という歴史的転換をやったから時間がかかったわけですよ。
官業のうち、国鉄をはじめ三公社五現業を民営化していきましたね。
いわば官から民への最初のドアを開けました。
この国の官って、ざっと1300年以上も続いてきた官僚制度です。だから
最低でも5年やらなきゃドアも開かないです。
その中曽根政権の後の竹下政権はあっという間につぶれたけれど、竹下
さんも歴史的使命をひとつ果たしているんです。それは初めて消費税を導
入したことです。税率、たった3%だけど。
その消費税を導入した本来の目的は、消費税を3%とか5%とかじゃなく
て、15%から25%にして、その代わりに日本の所得税をゼロにして法人
税もぐんと下げて、日本の個人と企業の働き甲斐を新しく作るというのが
本来の消費税の意図でした。
それが実現するのなら、逆に食品などは非課税にするんですね。
本来は志のある話で、有権者がそれを理解していなくて、政治家も選挙に
落ちるのが怖くて言い出せないだけです。
短命に終わった竹下政権も、その最初のドアを開けたんですよ。
その歴史的使命をちゃんと果たしたから政権交代した側面もあります。
竹下政権はリクルート事件で崩壊したとだけ言われます。
それもありますし、それが目立ちますが、もっと深い部分では歴史的使命
を果たした以上総理は辞めてもいいのです。
それが日本国です。永い時間をかけて私たちが築き上げてきた文化に基
づく日本国の個性です。
なぜなら日本は内閣総理大臣の上に憲法上も揺るがない権威がいらっし
ゃるわけですね。権力じゃなくて権威です。それは天皇陛下です。
世界の皇室から見ても、日本の天皇陛下がいかに私利私欲がなくて、
それは先の昭和天皇だけじゃなくて、それこそ仁徳天皇のときからです。
仁徳天皇がいらっしゃった古代の時代は、世界中の王様は自分のことば
かりです。
自分だけが永遠に生きたいからといって、配下も国民も総動員して不老
不死の薬を探させた皇帝が中国にいたり、自分が死後も生きたいからと
民衆を駆り出してピラミッドを作らせたファラオがエジプトにいたりですね。
ところが仁徳天皇は、民の竈(かまど。煮炊きの設備。転じて食事の支度
㋨こと)を心配した。
民の竈から煙が出ていないから、自分の宮殿の屋根を葺かなくていいと
おっしゃり、租税を免除された。
あの古代の時代に、これが仮に伝説であるとしても奇跡のような話です。
そういう私利私欲じゃない存在があるから、内閣はひとつ使命が終わった
らどんどん変わっていくんですよ。これが私たちの固有の文化なんです。
もうひとつだけ言うと、例えば村山政権の成立について、大学の政治学
講義でも、政治史として恥じるべきであるという講義ばかりが行われてい
るようです。
自民党と社会党が結びついたことはモラルの崩壊であり、世界に対して
顔向けできない、恥ずかしいということしか指摘されていません。
ぼくは日本の近現代史をどう見るかについて、村山さんとは真っ向、意見
が違います。
意見が違うだけでなく、村山さんが首相当時出した、先の大戦に関する
『村山談話』は間違っていると思います。
例えば『侵略』とは何かを定義しないまま、あるいは『国策の誤り』とは具体
的に何を指すのかをまったく示さないまま、とにかく反省、というのは逆に
歴史への責任感が欠けています。リアルな国際政治としても、拙劣な
外交です。
外交といっても別段、高級な話ではなく、同じ人間のやることですから、基
本は庶民生活と全く変わりません。みんなの生活で、何かあると自分のど
こがどう悪いのか全く言わないまま、とにかく謝ってしまい、それでよしとす
る人を一体誰が信用しますか。
しかしその無残な謝りの談話を出してしまった村山政権であっても尚、負
の面だけではないのです。
大学の政治学の先生に、ぼくが実際に問うたのは『先生、あなたは、村山
さん本人に、どうして総理を引き受けたんですか、権力が欲しかったんで
すかと、そうお聞きになりましたか』ということです。
『学問であっても、アクチュアルな現在の政治を扱っていて、しかも当事者
が健在であれば、取材、ヒアリングの労を取るべきではありませんか』とも
尋ねました。案の定、全く聞いていない。
もう一度申しますが、当事者が健在でアクセス可能なら、その現代政治史
を、いわば現場で見るために、村山さんに会って、聞いてから分析し論じて
欲しいと思います。。
村山さんとの出会いでぼくが驚いたのは、その場所でした。
国会には参議院食堂と衆議院食堂という豪華な赤ジュウタンがふかふか
の食堂があって、議員になった人は嬉しくてそこで飯を食うわけです。
一方、国会の地下には中央食堂、ぼくらは人民食堂と呼んでいるんですが
ちょっとジメジメしていて、ゴキブリがたまに這い回っているような食堂があ
って、シャケ定食とかノリ定食とか本当に安く食えるところがあります。
そこで食っているのは当時のぼくを含む記者か、国会職員課、日本共産党
の議員なわけです。
ところが、一人だけ日本社会党の国対委員長がそこでいつも飯を食ってい
る。日本社会党の委員長って、あまりに現金を渡されるから、背広に内ポケ
ットが複数あった人がいたというぐらい、お金が入る立場なのに人民食堂で
食っている。それが村山さんんですよ。
興味を持ちましたが、ぼくは自民党の担当でしたから控えていたんです。
ある日、我慢できなくなって村山さんにいきなり『社会党の国対委員長がな
んで議員食堂じゃなく、ここでメシ食っているんですか』と聞いたら、村山さ
んは驚きもせず『わしはああいう議員食堂みたいな偉そうなところはいやじ
ゃ』と言われた。
ぼくは、それがきっかけになって村山さんと個人的な付き合いをするように
なったんです。
自社政権のきっかけを作ったのは、本当は元官房長官の梶山清六さんで
した。梶山さんが同じ九段の議員宿舎に住んでいた村山さんの人柄を信頼
して、『総理をやりませんか。自民党と組んで首班指名選挙に出て、自民党
を離党した小沢一郎さんが立てる海部俊樹さん(元首相)と戦いませんか』
と秘かに持ち掛けた。
村山さんは迷いに迷って、最後に引き受けると決心したとき、九段の議員宿
舎の廊下の隅っこで、村山さんが爪の先まで真っ白になったように見えまし
た。生気が抜けて幽霊みたいになった。
村山さんが、これで社会党は潰れると思ったからでした。
社会党が自民党と政権を組むということは、社会党が長年守ってきた大原
則、例えば、『自衛隊は違憲だ』、『日米安保はすぐ解消だ』、そういう主張
を諦めなきゃいけない。
社会党は終わりだと、オレのお蔭で社会党は潰れると、村山さんは考えた。
しかし、そのためにこそ受けたんですよ。
1989年にベルリンの壁が壊れ冷戦が終わって、世界ではもう『右だ左だ』
の時代じゃないのに、日本は90年代半ばになっても、ずっと冷戦構造の自
社対決のまま世界から取り残された日本だった。
日本は、村山という個人のお蔭で冷戦構造を潰すことが出来たのです。
社会党は自社政権に総理と閣僚を出すことによって、社会党であることを失
っていきましたね。
そして村山政権の最後、村山首相の辞任についても、大学では『村山首相
は理由もなく辞めた。自社政権はその意味でも最低の、世界に恥じる政権
だ』とだけ教えています。これは違う。
村山さんは、村山談話という間違った遺産を残してしまったけれど、もともと
権力には興味なかった。
社会党がこれで歴史的使命が終わったことを確信したので、彼は政権を本
来の橋本龍太郎に渡したわけです。
『総理がころころ変わるから、日本は政治三流だ』と簡単に言うけれども、
そうじゃない。最悪と言われる村山政権ですら、一つの歴史的使命を果たし
てだからこそ倒れている。
内閣がどんどん倒れても、日本の社会が基本的には無事でいたのも、その
上に清潔で質素な暮らしをなさり常に本心から国民のことを考えている天皇
という存在があったからであり、その皇室は国民が努力して支えてきた存在
です。
国民の尊い財産とも言えます。すなわち、日本の政治はまず国民が支え維
持してきた伝統による安定的な権威があり、その下に内閣があるからこそ、
ひとつの歴史的使命を果たせば、総理が独裁者と化すことなく後退してきた。
ぼくが学者に『現場を踏んでください。自分でちゃんと当事者に確認しました
か』と、僭越ながらあえて問いかけるのも、『日本が世界の三流だなんて、
どの国と比べてですか。日本の現状を客観的にもう一回、見てください』と
申し上げたいからです。
しかし同時に日本が、かつての日本と比べて、衰退が始まっているの事実で
す。その衰退の根源の原因は、たったひとつだけだと考えています。
この国には目標がないんです。
1945年8月14日までは、間違った戦争をしていても目標があった。
ぼくは間違った戦争と言うから『右』からもいろいろ攻撃されますが、あの戦
争間違っていました。どうしてか。侵略戦争なのか、防衛戦争なのかという話
じゃありません。
二つ理由があります。まず負けた戦争だったからです。戦争やるなら勝たな
きゃいけないんで、負ける戦争をやっちゃいけない。それから昭和天皇の御
意思に逆らっていたからです。
昭和天皇は日米開戦前の御前会議で突然、明治天皇御製の歌を二回、繰り
返して、詠まれました。
その御歌は、『四方(よも)の海 みな同胞(はらから)と思う世に など波
風の立ちさわぐらん』。日本の周りに住んでいる人たち、朝鮮も中国もアメ
リカも、南方の諸国も、みな兄弟だと思うのに、なぜ波風が立ち騒ぐのか
誰がこんなに波を騒がせるのだという意味合いですね。
昭和天皇が、この明治天皇の御歌を二回も口にされたということは、開戦
反対じゃないですか。事実、近衛文麿首相から、首相の私邸でこれを聞い
た山本五十六連合艦隊司令長官は『では、陛下は日米開戦に反対ではな
いか』と叫んでいます。
昭和天皇の本当のお気持ちは、陛下のお言葉を記録した書物などを読むと、
大英帝国やアメリカのような民主主義国家と日本は組む方がいいというお気
持ちだったと拝察できます。
イタリアやドイツのようなファシズムは一時的な熱狂であり、それと組んでも
良いことはないというのが昭和天皇の御意思だったと考えています。
民主主義はアメリカが戦後に持ち込んで初めて生まれたのではなく、日本に
も昭和天皇が皇太子でいらっしゃった大正時代に、大正デモクラシーという
日本独自の民主主義の芽生えがあったのですから、戦前に民主主義国家群
と組んでいても不思議ではありません。
あの戦争の間違いの最たるものは、昭和天皇の御意思に逆らったことです。
あの時は明治憲法ですから、国家主権は天皇にあった。それに逆らった戦争
がどうして正しいんですか。
話を戻しますが、その間違った戦争であっても、それに負けて全面降伏する
1945年8月14日までは、日本には国家としての目的はあった。
国家が目標、目的を見失ったら、自ずから理念も哲学も失う。そうするとみん
ながなんのために働くかと言えば、私利私欲になって行ってしまいます。
戦争に負けて10年、20年、30年はとにかくあの悲惨な戦争から蘇ること
が隠れた目標としてあった。
しかし蘇った後は何をするのか。新しい日本国は何を目標とし、その根っこに
どんな哲学を置くのか、それを打ち立てない限りは、こうやって必ず滅びてい
きます。
だから日本の理念とはなんなのか、私たちの目標とは何なのか、みんなが共
有できる哲学とはなんなのかを考えていく。
その時に戦前派とか戦中派とか戦後派とか戦無派とか、わずか1億2千万し
かいない人間を切り分けるんじゃなくて、同時代人として共有できる理念、目
標は何なのか、それを定めることが日本を衰退から救うたった一つの道だと
思います。
お隣の中国は公称13億、実際にはもうとっくに14億を越えています。
私たちの日本は、やがて1億を下回っていきます。小さな器の中で、自分か
ら分かれて割れて、せめぎ合っている場合じゃないとも考えます。
官僚の意識を根本から変える方法はありますか。
わたしたちが国家の目的を定めるのが先です。
官僚だけ要求するんじゃなくて、わたしたちがこの国の主人公ですから。
2千年の長い歴史の中で、わたしたちは初めてこの祖国の主人公になってい
るんですから。
官僚や政治家に決めてもらうのじゃない、決めさせるのじゃない、ぼくたちが
この国の目標を定めて、『その目標に向けて官僚が努力しなさい』と求める。
それが先決です。
官僚も政治家もこの祖国の不可欠の一因であり、それらに指示して国を動か
すのが主権者である国民であって、それが国民国家なのですから。
ぼくも記者時代は、この国の衰えは役人と政治家のせいだと考えていました。
ところがこうやって今、安全保障や海洋資源の実務を担うシンクタンクの社長
として仕事をしていて分かるのは、この国の本当のガンは役人や政治家だけ
じゃない。
この国の本物中の本物のガンは、その官と政にぶら下がって、『民の誇り』を
失い、国家の税金を吸い出してもらって、自分たちの利益に使っている民間
企業です。
役人が作っている天下りや旧・特殊法人、現・独立行政法人その他の仕組み
というのは、役人が利するようになっている。しかし、それだけがなぜ成り立
つのか。
官僚主義社会の官僚といえども万能じゃない。役人に天下りとか、旧特殊法
人と現・独立行政法人とか美味しい餌を与える代わりに、分捕った税金の分
け前をこっちに寄こしてもらい、いらないダムやら何やらを造っているのは民
間企業じゃないですか。民間の誇りはどこに行ったんでしょうか。
ぼくは評論家のような立場で、こうしたことを言うのではありません。記者を
辞めて、実務家に転じて、そこで初めて知った事実を、同じ主権者の国民に
知ってほしいのです。
先ほどダムの問題を出したのは、共同通信記者を辞めて、三菱総研(三菱
グループのシンクタンクである三菱総合研究所)に移ったとき、ダムの建設
現場に三菱総研生え抜きの研究員たちと一緒に行ったんですね。
そのとき、ある研究員から『三菱総研が国の委託で、このダムの基本設計
をしたとき、もっと上流に造る計画で、コストも低く抑えていたんです。
ところが、国が予算が余ったということで、もっと下流に大きなダムを作って
呉れと言ってきて、計画を変更したんです。
下流に造ると川幅が広くなって、土砂から何から増えて、コストが膨らむわ
けです』という証言を聞いたところから、ぼくなりにこの国の官と民の癒着の
実態現場でを知ることが始まったのです。
そして。もっと重大な問題の例に、エネルギー問題があります。ぼくたちは
みな、どんな世代でも『日本は資源小国だ』と教わってきたし、例えばぼくの
息子たも、今現在も学校でそう教わっています。
ところが、ぼくや独研の自然科学部(独立総合研究所の研究本部には、社
会科学部と自然科学部がある)が仕事で接触する諸国のエネルギーを担
当する高官たちは、日本を『隠れた資源大国』と呼んでいます。
中国、韓国、インドアメリカ、カナダ、イギリス、フランスといった国々です
ね。アメリカのDOE(エネルギー省)などには『隠された資源大国』と呼ん
でいる人すらいます。
なぜか。埋蔵資源のうち石炭から始まって石油、そして天然ガスまでは、
確かに日本の埋蔵量は少ない。
ところが第4の埋蔵資源があります。それがメタンハイドレードです。
メタンハイドレードは、一般にはまだ馴染みが薄いですが、ちょっとも難しい
話じゃありません。そもそも天然ガスの主成分は、メタンですからメタンハイ
ドレードも要は天然ガスの一種です。
メタンガスが海底にあるために、水圧がかかって温度も低く、ハイドレード、
すなわち水和物、早い話がシャーベットみたいになっているだけです。
科学教育の世界では『燃える氷』と表現しています。
このメタンハイドレードは、他の埋蔵資源の比べて、燃料効率が最良く、地
球温暖化ガスの排出が最も少ない。
海底の地震の巣に多く埋蔵されているから、中東にはなく日本に大量にあり
ます。
独研の自然科学部と東京大学理学部の最先端の共同研究では、これまで、
『世界最大級の埋蔵量』と言ってきたのが『世界第一の埋蔵量』らしいという
ことも分かってきています。
具体的に言うと、日本が一年で消費する天然ガスの、ざっと250年分埋蔵
されている可能性が強いのです。
これを適切に開発していけば、日本は、例えば中東などの独裁国家から言
い値で買っている石油や天然ガスが要らなくなる。ビックリでしょう。
日本という国家は、『資源小国だから、資源を海外から調達する道を断たれ
れば滅びる』といって、あの負ける戦争まで起こした。それが賄えるのです。
それ本当の話ですか。
本当の話です。独研の科学部長と東大理学部の教授は、すでに何度も国
際学会で発表していますし、ぼくは本にも書いて公表し、資源エネルギー
庁の幹部、或いは主要官僚や経済産業省の官僚トップや大臣にも、直接
話しています。
それなのになぜ国民には知られていないか。国民だけでなく国会議員も、
ごく一部の熱心な議員以外は、与野党を問わずまだ知りません。
例えば武見敬三・参議院議員(当時)等は良く調べて事実を知っていました
が、こういう人に限って落選したりします(武見氏は2007年夏の参院選で
落選)。
国民や多くの議員がなぜ知らないのか。それはまさしく隠されているからで
です。
『日本は資源小国である』という、実はもう国際社会では過去の定義になり
つつある話を、今もそれが絶対の真実であるかのように装い、『の本は資源
大国になることが出来る』という可能性を、国民の目から隠し、権力争いに
忙殺されている国会議員にも隠している。
国会では、百年一日のごとく『日本は資源小国なんですから』と議員が前置
きして質問していますね。
一体なぜ隠しているか。それは日本が自前の資源でやっていけるとなると、
現在は中東などの独裁国家群と、日本の利権政治家、それから保身が常
に優先する官僚と、更に商社や石油会社をはじめとする企業が、事実上の
結託をして、『日本は資源がない国なんだから、独裁国家から資源を言い
値で買うことが、日本の権益確保である』、『そのような難しい仕事を仲介す
るのだから、実力のある政治家が多少の利権を追うのはやむお得ない』、
『官僚も、資源を海外から買える国であり続けるようにすることが任務である
から、いろいろ秘密もある』、『エネルギーに関する日本企業は、こうした政
治家や官僚と、特別な関係を持ち、国民が知らないところで、税金をテコに
使って利益を上げていても問題ない。』という、これまでの構造が根っこか
ら崩れるからです。
日本は資源がない国なんだから、資源を海外から調達するためには、理研
だろうが戦争だろうが許されてきたし、敗戦後は戦争こそ忌み嫌われている
けど、勝者のアメリカにぶら下がることを含めて、資源を海外から調達する
ルートを守るためにこそ、日本の政も官も産業構造もある、ということが日本
の根本的な既得権益なのです。
ところが、『いや、日本は第4の資源であるメタンハイドレードの発見と開発
によって、もはや埋蔵資源については海外から買う必要がなくなる』となる
と、その既得権益が、まさしく根底から崩れるわけです。
その認識は日本の上層部にはあるんですか。
一部の高級官僚らには、あります。
ある高級官僚から『青山さん、あなた、命に関わることになりますよ』と言わ
れましたからね。
この国は資源小国ということを前提にして立件も仕事も全部、成り立ってい
るんだから、それが覆るとなると、あなたは命危ないですよとという意味で
す。その高級官僚が『われわれにとって、まずいというだけじゃない。
民間企業だって同じです』と言うから、ある超有名企業の社長を訪ねると、
『青山さん、命の問題になりますよ』と全く同じことをおっしゃったので、驚
きました。呆れました。
『うちの会社も、日本は資源小国だからということで、こうやって資源を海外
から調達して利益を上げているんです。
感もその目的でに沿って、こうやって結びついていたら利益が上がる。
わが社だけじゃない。これが日本の産業構造そのものだ。それが覆るとな
ったら、あなた命危ないですよ』と言われた。だからこそ、先ほどのような話
もしたのです。
ぼくの憶測や推測で言っているんじゃないのです。ぼくがその時、その社長
に言ったのは『あなた、民間の誇りはどこに行ったんですか。民間企業のト
ップなのに、本当は役人にぶら下がっているだけじゃないですか』ということ
でした。
この国の根幹の病は、『役人が悪い、役人が悪い』とばかり言ってきたけれ
度、本当は役人にぶら下がっている民間企業の体質も変えなきゃダメだと
いうことが、それで初めてぼくにも分かったのです。私たち自身が変わらな
きゃいけないんですよ。
役人を悪者にして、それで済ませていたらいつまでたっても変わらない。
民間が自らを変えて、そこから役人を変えていくのです。
日本が隠された資源大国というのは嬉しい話ですが、現実に開発が着手
されないのは、製品化にお金がかかるということか。
それは、メタンハイドレードを採取して実用化するにはコストがかかるから
難しいのじゃないかという話ですね。
週刊誌にも載っているし、れっきとした学者でもそう発言している人もいるし
エネルギー会社は役員から社員まで、実に沢山の人がそう言っている。
ところがそれは、現場の真実を知らずに語っていることであり、よくできた言
い訳でもあり、思い込みでもあり、そしてもっとハッキリ言えば、見てきたよ
うなウソです。
私たち独研と東大理学部は、これまで国がほとんど探索してこなかった日
本海で現実に探索し、『ハイパー・ドルフィン』という名の無人海底探査船
で、膨大なメタンハイドレードを撮影し、その実物も船上に引き上げ確認し
た上で発信しているのです。
日本人が自信を取り戻すには最高の話ですね。
最高の話なんです。なぜ先ほどのような、『コストがかかりすぎてメタンハ
イドレードは実用化は無理』という話が出てくるのか、その本当の理由を、
それではお話しします。
実はこのメタンハイドレードは、同じ日本でも場所によって存在の仕方が大
きく違うんです。
今まで政府が、探索と開発に巨額の税を投じてきたところは、太平洋側の
南海トラフです。高知沖と和歌山沖の地震の巣ですね。
トラフというのは、海底のくぼみのことです。前述したように地震の巣にメタ
ンハイドレードはできるから、その意味では正しい場所なのですが、この
南海トラフメタンハイドレードは海底からさらに深く埋まっていて、泥と砂と
に混じり合っているから、それを仕分けて取り出すのにお金がかかりすぎ
て商業化ができないという話だったんですよ。
そこに10年間でざっと500億円もつぎ込んでまだ成果が出ていない。
しかし同時に、日本は資源小国であるという前提こそが日本の産業構造だ
から、成果が出ていなくても、誰も文句を言わず、国会で質問が出ることも
なかった。
前にも申しましたが、独研が株式会社の組織であるのは、自立するためで
あって、利益のためじゃない。
幕末に坂本龍馬がつくった亀山社中は、日本で初めての民間会社だった
けど、それは私利のためではなく、自分の食い扶持は自分で稼いで、どん
な殿様や幕府のお世話にもならず、行動と発言の自由と自立を確保する
ためでした。
独研も前述しましたように同じです。そして学者のなかでも石油利権などに
関わらず、メタンハイドレードだけを純粋に研究してきた学者は、利権など
に関わっていない。
石油と違って、まだメタンハイドレードはそういう段階ですから。
ここで独研は、そのような学者(東大理学部の教授)と連携して、政府がや
っていない日本海側で、お金のほとんどかからない新しい探索法でやって
みたのです。
この探索法は、独研の博士号を持つ自然科学部長が、特許を国内外で取
得していて、なんと魚群探知機を使います。
既存の魚群探知機から超音波を海中に発していくだけだから、特別な高価
な機械も作業もいらず、コストが圧倒的に安い。
この日本海の調査で、政府はほとんど予算を出しませんでした。
南海トラフには、毎年、10億ベースで予算をつぎ込んできたけど、この日本
海には、平成19年度で1000万円しか出さなかった。
研究船を1日出すだけで、燃料代だけで200万はかかりますから、独研や
東大の、先ほど述べた良心派の学者の研究室が、なけなしのおカネを絞り
出して足しても、数日しか探索できない。
ところがその数日で、日本海のごく沿岸に近い海域、佐渡島の南、直江津
(現・上越市)の北で、海底の表面い、まるで白いケーキのようにメタン
ハイドレードがそのままあることがわかった。
そこは掘る必要すらない。海底の下に埋蔵しているものもありますが、南海
トラフよりはるかに取り出しやすい状況にある。
ぼくはこの話をテレビでしたことがないし、これからもしないでしょう。
残念ながら日本では、私利私欲のための宣伝と誤解される恐れが強いか
ら、テレビではここは言いません。
しかし国際学会ではフェアに、ありのままに確証を示しつつ発表します。
だから前述したように、諸国から『日本は隠れた資源大国だ』と今、言われ
ているのです。
そして国際学会で発表する前に、もちろん日本政府にすべての情報を提供
しました。
日本政府の南海トラフでのプロジェクトに関わってきた若手研究者たちは、
わたしたちが映し出したTRを見て、海底の表面に広くメタンハイドレードが
存在し、それを船の上に引き上げて、その実物もはっきりと確認できるのを
見て、『わぁ、メタンハイドレードの実物を見た』と叫びました。これまで5
00億つぎ込んできた場所では、実物を見ることが出来なかったのですね。
そして、『なぜここでやらないのか』とも声を上げました。
ところが…よく聞いてください。あろうことか、翌年の、平成20年度は予算
がたったの300万円に減額されたのです。
成果が出たら予算が減らされる。こんな国は他にありません。国際社会で
も想像を絶することです。だから『隠れた資源大国』だけではなく、『隠され
た資源大国』と呼ばれたりするのです。
ぼくのよく知る、ある高級官僚が『青山さん、これはまずいんだよ。500億
円出して成果が出ないのに、たった1000万円で成果が出るのは』と言う
から、ぼくは『いや、そうじゃない、500億円使っていた間は、まだ新探索
法はなかったんだし、世界はすべてトライアル・アンド・エラーであって、本
来責任を問われる事じゃない』と答えて、それから『もっと大切なことは、日
本が資源大国になるんだったら、あなたは仮に自分の首を差し出しても、
本望じゃないですか。
一緒に入省した同期生は、もうほとんど役所に残っていない。あなたは功成
り、名を遂げたじゃないですか。最後は、まったくもって祖国と国民のためだ
けの仕事にすればいいのではありませんか』と言いました。
さらに、実はこの泥と砂と混じっている南海トラフの方も、原油価格が1バレ
ル、すなわち人樽70ドルか80ドルを越えたら充分にペイするとみられてい
ます。
原油価格は、一時期1バレルが147ドルまでいき、現在は30ドル台まで下
がっていますが、IEA(国際エネルギー機関)は『やがて1バレル200ド
ル時代が来る』と明言した報告書を公表しています。
だから、わたしたちは南海トラフでの探索を責めているんじゃなくて、これか
らは予算を適切には配分しながら、一緒にやりましょうと言っているのです。
前述した『天然ガスの200年分はありそうだ』という話も、日本海側だけじ
ゃなくて、太平洋側の南海トラフも合わせてのことなんですから。
南海トラフに近い和歌山に、っ関西電力が作った『エネルギーパーク』という
誰でも無料で入れるエネルギー博物館があります。
そこで独研の自然科学部長が、メタンハイドレード実物をみんなに無料で見
せることもしています。
このメタンハイドレードは、人口ですが自然界のものと基本は変わりません。
それになんの加工もせず、100円ライターを近づけるだけでボッと青い炎を
出して燃えます。だから燃える氷って言われるんです。
このメタンハイドレードを開発させまいという圧力は実に様々あって『メタン
ハイドレードを海から取り出すと海底が崩れる』と言う人もいます。
では、北海油田や日本固有の領土である尖閣諸島の周辺で、中国が実用化
してしまっている海底ガス田は、いったい何なのでしょうか。
メタンハイドレードはが地球温暖化を爆発的に悪化させると言う人もいます
が、これも前述したように要は天然ガスと同じなのに、天然ガスのように既得
権益となっているものについてはよくて、新しい、これまでの利権構造を壊す
ものについては、実験も実証もせず、現場を踏むこともなく頭から否定する。
奇怪な話です。
さらに一部の新聞のように『これからは太陽エネルギーの利用だけやればい
いから埋蔵資源は要らない』と決めつけているメディアもありますが、エネル
ギーは常にベストミックスが大事であって、太陽だけという発想はリアリティ
ーに著しく欠けています。
ぼくは先ほどの高級官僚にも言ったのです。『500億円を費やして成果がな
かったのかと問われれば、思い切って首を差し出してもいいじゃないですか。
自分の人生なんかあっという間に終わります。
どんなに長生きしても100年前後では終わるんです。この二千年国家である
日本を、これからどうやって子々孫々に渡すか、それだけが最後に考えること
でしょう。命の本質は何かを考えてください。ミミズとかモグラとか虫けらと
か、あるいは鮭を見てください。
彼らの命はなんのためにあるのか。次の子孫に渡すためだけにあるんで
しょう。
ぼくらだって最後は同じです。子々孫々に渡せるかどうかだけなんですから。
もう、功なり名を遂げた後の自分の命は差し出せばいいじゃないですか』
似たようなこと、根っこが共通することは政治家にも独研の社員にも言ってい
ます。
自分自身には、この10年、共同通信の記者を辞めてからずっと、朝にも夜更
けにも、秘かに言い続けてきました。
この国は、悪者を作るのが大好きです。役人が悪い、政治家が悪いと、切り分
けてそれで済ませてきました。しかしどうして切り分けられるのか。
全部が絡んで繋がっているから利権構造も強固に存在してきたんでしょう。
先ずぼくたち民間人が、今までの日本の民間経済の在り方はなんだった
のか、実は官に依存しているんじゃないか、日本国民の税金に依存してい
るんじゃないか、政治家もそのために使ってきたのじゃないか。
そこから考えることが大事だと思っているのです。
常にアメリカの顔色を窺う日本は世界からどう見られていますか。
確かにアメリカの属国とみられている面はあります。
特にアジアではそうですね。ただその背景にはジェラシーもあります。
『あれだけ戦争で叩きのめされた。それまでは本当に偉そうにしていた』と
考えているアジアの国は複数ありますから、日本が戦後に目覚ましい復興
を遂げて、一時期は世界第2位の大国にまでなり、そのために生じたジェラ
シーというものを、中国や韓国を歩くと、強烈に感じますね。
ジェラシーはジェラシーとしいて見抜かなきゃいけない。
同時にぼくたちにも考えどころがあります。江戸時代の教育は、寺子屋でみ
られたように、違う年齢の子供を同時に教育して、上の子が下の子の面倒を
みて、そのために思いやりの心が自然に育まれ、下は上を尊敬する心が育
まれる。
その素晴らしい教育方法だったのに、明治維新で『江戸時代は野蛮だった』
と決めつけて、同年配で輪切りにする西洋式の教育にしてしまい、人に対す
る思いやりを持てなくなったり、上を裏切ることをためらわない人間が、昭和
期の軍人になって戦争を遂行した。
アジアをはじめ多くの国が、その行動を夜郎自大とみていて、それが敗戦で
ペチャンコになった。
それで『ざまあ、みろ』と思っていたら、勝者のアメリカに付き従って、あっ
という間に復興した。それへの妬みもあって『属国』と評している面があり
ます。
一方で、ヨーロッパ諸国の中には、冷静に『日本はアメリカの力を上手に使っ
て戦後の復興を果たした』と見ている国もあります。フランスやイギリスは、
どちらかと言えばそうですね。
2008年9月15日にリーマン・ブラザースが破綻して、金融危機が始まり
ました。しかしその半年も前の3月に、アメリカの力は決定的に衰え始めま
した。
08年3月に、ドルが決定的に下落する相場が既にあり、ドルが『一極通過』
つまり世界でただ一つの基軸通貨、国際決済通貨だった時代の終わりが、
そこで始まりました。
しかもイラク、アフガンを見たら、アメリカの軍事力も21世紀型の脅威に対
しては、力を失っていることが分かるのですから、アメリカの言うことを聞い
ていればよかった時代は、すでに終わっているんです。
だから、今までの歴史が属国かどうかということよりも、日本がこれから中国
ともアメリカともちゃんと対等に話ができる国になるにはどうしたらいいか、
ということが問題なんです。
すみません、もう(独研の本社から)羽田空港に向かわないと飛行機が出ちゃ
うんで、次の質問を。
中国は国益のためには手段を選ばない国に見えますが、中国と対等に
渡り合うキーワードは
キーワードはあります。それは王道です。日本は王道で行く。
中国は覇道の国だからこそ、日本が王道の一を行くのなら、世界にとって
値打ちがある。
中国の覇道は、北京5輪を居れば誰でも分かりますね。オリンピックを、
無りやり成功させるためにはウイグルもチベットも徹底的に弾圧し、それ
から偽装5輪もやってしまった。
開会式の口パク少女だけじゃなくて、深刻なのは体操競技への参加が
禁じられている14歳の少女に、年齢を16歳と偽らせて参加させ、金メ
ダルを取った後に年齢詐称が暴露されると、国家が少女にウソをつかせ
て、ウソのパスポートまで持たせて強弁し、金メダルを手放さない。
これは覇道そのものですよ。
日本はフェアに王道を行く。それでしか日本は中国に対抗することはで
きません。中国の真似をしてミニ覇道国家になったらそれでお終いです。
王道を行く、それは聖徳太子が1400年ほども前に、隋(中国)の皇帝
におっしゃった『日出ずるところの処の天子から日没するところの天子に』
という書簡の言葉にすでに表れています。
太子は、道義的に対等だとおっしゃったのです。
国の大きい小さいじゃない。人口が多い少ない、軍隊が大きい小さいで
もなくて、道義的に対等だとおっしゃった。
それはまさしく王道の精神です。そういう態度を見て、中国も日本を侮れ
なかったから、隋の皇帝は簡単に日本を侵略できなかったわけです。
その王道を貫くということが大事です。
20年後の日本を取り巻くアジアはどうなっていると思いますか。
中国とインドで世界の人口の過半を占めるアジアになりますから、その
時に日本は潰されると言う人がいます。とんでもございませぬ。
日本は王道を貫く限り、人口が仮に6千万人になっても大丈夫です。
中国、インドという両巨人がぶつかるときこそ、必ずその間にバッファが
なければいけないわけですね。
日本の存在感が逆に高まり、日本しかできない役割は増えていくと、願
望ではなく、客観的に見ましょう。
ひとつ注目すべきなのは、インドの核保有をアメリカが完全に容認した
ことです。北朝鮮が『アメリカへの攻撃ができないぐらいの最小限度の
核を保有する』ことも、アメリカは実質的に認めています。
6か国協議の本質は、むしろこれです。
すなわち、核拡散の時代が始まったのです。破綻国家である北朝鮮も、
NPT(核不拡散条約)に参加していないインドも、核を認められた。
そうすると、やがて台湾やインドネシアうあベトナムといった国々も核の
保有の秘かな検討を進展させることは、もはや避けがたい。
その時に、日本でも必ず核武装論が高まります。
高まりは今でもありますか。
今でもあります。
ぼくはつい最近、検察のトップクラスからも『私は実は日本の核武装に
賛成です』という話を聞きました。
ぼく個人は日本の核武装には反対なんです。兵に限って撃とうとする
のではなく、市民、国民を広く殺害することによって有利な立場に立とう
とするのは、わたしたちの大切な魂である武士道に反します。
前に述べたように、ぼくらはぼくらの手で、この国の新しい理念、哲学を
創らねばならない。
その時に武士道が手本になる。だから武士道に反する核武装には賛成
できません。
しかし今、ぼくが『個人として核武装に反対』と声を出しているのは、近未
来の日本では核武装反対が、今とは真逆に必ず少数派になるからです。
今、偽善的な立場で、核武装反対と言っている評論家、政治家らは、あ
っという間に『日本は核武装しろ』と言い始めるでしょう。
核武装派が多数派になるから、ぼくは自分をあえて縛るためにも今から
声を上げているんです。
ただ同時に、日本で核武装を議論する、或いはかっく武装の論議が激し
くなることは完全に賛成です。
ぼく自身が早くから、中国やアメリカの現役の軍人に『日本がその優秀
な技術で核ミサイルを持てば、中国の核などものともしない核戦力にな
る。日本を侮蔑したり、軽んじたりすれば遠からずそうなる』と強調して
います。
日本の技術の高さを考えれば、議論するだけで随分と有効な抑止力に
なります。そして日本が核武装することは、やがて現実に可能になるで
しょう。
そのときは、地上発射核を持たず、潜水艦に搭載する核ミサイルだけを
持つことが、最善の選択肢になるでしょうね。
『日本なんて核を持てるはずがないから、核の論議も何も反対だ』と言う
人もいますが、それとぼくの立場は全く違います。
次の衆議院選挙の後、日本の政治はどう変わっていくでしょうか。
再編は必ず起きます。そして現在の政治家は、与野党問わず『二大政
党制』とよく言うし、ますメディアはそれが自明の理のように社説などで
論じている。ぼくはこれに賛成できない。
どうしてアメリカとイギリスの真似をするんですか。文化も政治の仕組
も違うんだから、日本は東洋の知恵として、二大政党じゃなくて三大政
党の道を選ぶべきだと考えます。
東洋には二つで支える発想はないでしょう。鼎立、すなわち三つで支え
るんです。その対立軸は憲法であるべきだと考えます。
すなわち改憲党、断固として改憲すべきという党と、護憲党、断固として
一字一句変えないという党と、その真ん中の第三の勢力、改憲の部分
もあれば護憲の部分もあるという、その三つの話し合いによって日本が
自前の憲法を持つ、それをぼくは望みます。
是非首相になってもらいたい人はいますか。
一人だけいます。中山恭子さんです。あの人は一番大事なもの、すな
わち国家の理念の原型を持っている。
こないだ、二人で話して同じ意見なので驚いたんですが、中、山さんは
拉致問題を同情心でやっているんじゃないですよ。
ぼくは戦後の60数年の日本の歩みを、平和国家の歩みと思ってはいま
せん。戦争はありませんでした。
だけども北朝鮮に、わたしたちのが同胞が八十人から百人ぐらい奪われ
たままです。
その被害者と家族凄まじいの苦しみ、尽きることのない悲しみが、北朝鮮
という、主権国家の、まさしく国家の行為として引き起こされながら、『戦争
がなくて平和な国家でよかったね』って、何でしょうか、それは。
国民が他国に奪われたままで、自分たちだけは安全だから平和国家など 
と称しているなら、主義主張を超えて、人間として恥ずべきことです。
最後の一人まで取り返さない限り、この国は国民国家とは言えなくなって
いきます。
中山恭子さんは『拉致問題が解決して初めて日本は平和国家になれる』
という趣旨をおっしゃっているのです。
ぼくは先に申しましたね。この国の理念とは何なのか、そこが一番大切で
すと。
わたしたちは二千年の歴史を積み上げてきて、きっかけは敗戦かもしれな
いっけれども、みんなで努力してわれらのオリジナルの民主主義を作って
きました。それは天皇制と両立する民主主義です。
平和国家とは戦争がなくて、自分が戦争で死ななくて済むという話じゃなく
て、国民の最期の一人まで、一緒に幸せになるんだというのが平和国家
であり、だから拉致問題を解決する。
そういう理念を語れる人だから、中山恭子さん奈良首相に迎えたいと思い
ます。
理念づくりがしっかりと始まれば、それに沿って新しい経済政策、ポスト・
アメリカ時代の危機に耐える経済政策やインドや中国の膨張をむしろ逆
手に取る新しい外交政策も、民と政、官がこれまでの利権構造を外して
連携して創っていくことがきっとできる。
だから宰相は、何よりまず理念を創る人であるべきだと思います。
生まれ変われるとしたら今度は何をやりたいですか。
少年時代の思いの中から、ひとつ挙げるならレーシング・ドライバーです。
今も、ロータスというレーシングカーに乗っているんです。と言っても、ほと
んド乗る暇はないのですが…
昔に取得して、いったん失効していたA級ライセンスを、こないだJAF(日
本自動車連盟)の公式記録に残る小さな記録会に出て、取り直したばかり
です。
徹夜で原稿を書いてサーキットに行きましたから、つらかったですが。
ぼくの生家は古い繊維会社なんです。繊維不況のために閉鎖した工場の
跡地を2か所、亡き父が社長時代に自動車教習所に転換したんですよ。
昔の教習所は日曜日が休みでしたから、小学生の頃から教習車をコース
で走らせて、車と一緒に育ちました。
だから自然にレーシング・ドライバーになろうとして、A級ライセンスも取っ
たりしたのですが、これをやると自分のことだけになっちゃって、世の中全
体をよくする仕事はできないと思って途中で諦めたんです。
それでも、今でもたまにロータスを短時間走らせただけで、その後ひそか
に心の中でじっと味わいながら仕事をしたりしますから、生まれ変われる
としたら今度はレーシング・ドライバーかもしれませんね。
作家かなと思っていましたが。
・・・それはすでに、プロの物書きでもありますから。おっしゃった意味は
小説家という意味ですね。
小説も、純文学の単行本を文藝春秋から出していますが、今のところ、
たった一冊ですから、確かにプロの小説家であるとは恥ずかしくて言えま
せんね。
もしも生まれ変わってr-シング・ドライバーになっちゃってたら、胴体視
力が衰えて引退した後には、小説書きだけをやりたいですね。テレビも
出ない、ノンフィクションは書かない、小説のみで。
もしも神様から『人間への生まれ変わりは駄目だよ』と言われたら、ぼく
はミミズになります。本気ですよ。
ミミズになって地を這い回って、自分の罪を償わせてもらいます。
生きている限りは、いろんな人を傷つけたかもしれないし、そういう罪を
償うためにミミズになって地を這い回ります。本気です。
ありがとうございました。
はい。
独研党を作ってはどうですか。(羽田に向かう車に飛び乗った青山氏を
追いかけて改めて質問)
・・・ぼくは正直、このごろ政治家が嫌いで仕方がないんです。
いや、それだからこそ、独研党を作ってはどうですか。
・・・考えてみます。
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