≪インタビュー≫  聞き手・蛭田有一
支持する政党はありますか。
去年の衆議院選挙は民主党に投票しました。
今の民主党は田原さんの期待に応えていますか。
いやあ、答えていないですね。ただ、そんなには期待していなかったで
すけど。
ひとつは、初めて政権を取ったわけですね。だから政権政党とは何か
ということをまだよく分かっていないんでしょうね。つまり不慣れというの
が一番大きいと思います。
司会者、ジャーナリストとして特に意識している使命感、こだわりはありますか。
僕は司会者じゃなくてジャーナリストであり、ディレクターだと思っていま
すが、常識を疑うということです、基本的には。
世の中の常識というのは大体間違っていることが多いんで、それを疑う
というのが基本だと思っています。
常に視点を底に置くと。
そもそも僕の原点というのは、小学校5年の夏休みに日本が戦争に負
けたんですね。
5年生の1学期までは、先生たちがみんなこの戦争は正しい戦争だと
君らは天皇陛下のために死ねと、君らの寿命は20歳だというように教
えられてきて、そう思っていました。
そしたら戦争に負けて2学期になったら、同じ先生の言うことが180度
変わって、戦争をやるなんて犯罪者だと。
つまり1学期までの英雄が犯罪者になったわけですね。それで、もし君
は戦争が起こりそうになったら、身体を張って戦えと。平和が大事だと
教えられたんです。
1学期までは、学校で式があると、講堂の一番正面に昭和天皇の写真
を飾って、これを御真影といったんですけが、その御真影の額の下の
縁から目線を上にやるなと、天皇の顔を見たら目が潰れると教えられ
て、目線を下の縁から上には上げないできた。
それで2学期になるとその天皇の写真を焼くわけですからね。
つまり価値観が本当に変わっちゃうんですよ。
それから高校に進学した年に、朝鮮戦争が始まって、戦争は悪だと言
ったら、あいつは共産党だという話になって、これ追放ですね。
だからそういうことが僕の一番の原点にあって、とにかく世の中の常識
は疑わなきゃいけない。
偉い人が言うことは大体は疑わしいというのが基本にあります。
日本は先の戦争で得た教訓とは。
一番の教訓は日本人が自分で考えることを止めたということです。
自分で考えるとろくなことはないと。だからアメリカの言うことを聞いてい
ればいいんじゃないかと。
戦後ずっとアメリカの言うことを聞いてきた。これが生きる知恵だと日本
人は思ったと思います。
早稲田大学での大隈塾の教頭として、今どんなリーダーを育てようと
しているんですか。
自分で考えるという人間に育てたい。自分で考える。大体世の中で生き
るには自分考えない方が便利なんですよ。考えるとろくなことはない。
小学校から大学までは、受験にいかに受かるかを考えるわけでしょう。
受験に受かるには、自分で考えると受かりませんから。
つまり出された問題を解いていくということですからね。社会に出て、今
度は企業に入ると仕事が上からどんどん来るわけで、それをこなして
いればいい。
だからなかなか自分で考えるチャンスがないんですよ。
下手をすると自分で考えないまま、定年になっちゃった人が随分いると
おもいますよ。
だから自分で考える、そういう人間にしたいと思います。
リーダーに必要な条件とは。
リーダーという言葉は元々軍事用語なんですね。命を懸けるんですよ。
命を懸けて引っ張っていくということですから。
命を懸けないのはリーダーシップとは言わなくて、これはマネージメント
なんですね。だからリーダーというのは命を懸けるということが基本にな
きゃいけない。
戦後、日本ではエリートはタブーだったんですよ。エリートを作るのは
よくなかったんですね。エリートになることもよくなかった、タブーですよ。
僕は今、エリートは必要だと思っているんです。
エリーって何かというと、ひとつは自分で企画できる。二つ目が企画を
実現できる。三つ目は失敗したら責任を取る。故おみっつを備えている
のがエリートだと思っています。
今の官僚の最大の問題は責任を取らない、鳩山さんも責任を取らない
でおこうとしている。ここが一番抜けていると思います。
リーダーといのは、やっぱり失敗したら責任を取らないといけない。
生前、後藤田さんに尊敬に値する人とはと尋ねたら、言下にそれは
責任感のある人と答えていました。
ところが人間というのは、生きる上でいかに責任を取らないかというの
がひとつの生きる技術になっていますよ。
例えば企業で会議が多いでしょう。責任を取らないためのものを会議
会議というんです。
つまり会議をすればみんなの責任だと、俺は取らなくていいんだと。
これまでに接した政治家で高く評価している人は。
ます鯉は特に政治家をバカにすることを商売にしていますからね、
新聞もテレビも。
だから割と政治家をおちょくったりしますけど、私は日本では責任を取
る身構えを相当持っているのが政治家だと思っています。だって選挙
で落選したら終わりですから。
選挙で当選するということは有権者から信頼されるということでしょう。
信頼の裏側は責任ということですよ。
戦後の総理大臣でなかなかの力を発揮したと、或いは信頼できるのは
5人いると思っています。
順番で言うと、吉田茂さん、岸信介さん、田中角栄さん、中曽根康弘さ
ん、小泉純一郎さんだと思っています。
その中で、特に好きな政治家は。
それは田中角栄さんですね。やっぱり小学校卒で総理大臣になったと、
いまはなれるかもしれないけれど、田中角栄さんまでは東大、京大
つっまり旧帝大を出て高級官僚になるというのが必須条件でしたから。
彼はその何もないわけですから、そういう田中角栄には僕はとても親近
感があるし、何度もあっていますしね。
今の若手政治家の中でいいなと思える人は。
沢山いますよ、それは。特に民主党に多いですね。自民党にはなかな
かいないんだけども。
例えばどんな人ですか。
民主党で言えば、仙谷由人さんとか枝野幸男さん、大塚耕平さん、
細野豪志さん、前原誠司さん、それから玄葉光一郎さんもいいですね。
女性では民主党の蓮舫さんでしょう。
それから自民党にはなかなかいないんですが、例えば河野太郎さん
とか菅義偉さんとか、塩崎恭久さん、茂木敏充さんもいいですが。
20年続く日本の衰退を食い止めるには、その根源的な原因を解明し
なくてはと思いますが。
それは割と簡単なことです。つまり成長の時代は終わったということで
す。今、中国にしても韓国にしても、日本で言えば高度成長の時でして、
例えば中国がこの5月1日から万博やりますね。ちょうど中国は日本の
70年ですよ。
日本は1970年に大阪で万博をやりました。
だからどの国でも上手くいけば成長はするんです。ところが成長は、
結局は成熟に入るんですよ。成長は終わるんです。
日本の成長は、実は1980年代には終わっているんです。バブルがあ
りましたが、これをほとんどの日本人は成長と勘違いしています。
バブルがはじけたのが1991年から1992年、これは宮沢内閣です。
ここで成長の時代は終わったんですよ。
これはしょうがないですね。成長の時代というのは企業が儲かります。
大きくなります。
だから国への税金がどんどん入ってくる。税金の使い道に困っちゃう。
だから自民党の内閣は、集まった税金を国民に還元したんですよ。
ひとつは減税、それから福祉をどんどん高くした。
ところがバブルが弾けて景気が悪くなった。そうすると国に入ってくる
がどんどん減ってくる。
一方では高齢化社会を迎えて、福祉やなんかの金がどんどん必要に
なってくる。そこで入ってくる金よりも出ていく金の方が多くなっちゃった。
これは宮沢内閣の終わりからですね。
入ってくるのが少なければ、負担の配分をしなきゃいけない。負担の配
分とは増税ですよ。
だから消費税を上げましたね。それから福祉を落とさなきゃいけない。
それから首切りもしなきゃいけない。
こうなると国民は、やっぱり政府に対する不満を持ちますよね。そこか
ら政府に対する不信感が強まってきた。
そのため、いってみれば宮沢政権より後の自民党政権は全部ごまかし
てやってきた。民主党も今そのごまかしの延長にある。
ごまかしは何かというと、入ってくる金は少ないでしょう、出る金は多い
んですよ。
安倍内閣のときに入ってくる金が約50兆、出ていく金が約80兆。する
と30兆足りないんですよ。本当ならば入ってくる金を増やさなきゃいけ
ない。これは増税なんですね。それができない。
出ていく金を減らさなきゃいけない。福祉とかいろんなものを減らさなき
ゃいけない、それもできない。借金ですよ。
だから今、借金が870兆もできちゃった。GDPの175パーセント、こん
なの世界にない。
なんでこんなことになったかというと、政府が国民に媚びてきた。
世論迎合の政治をやってきたから。
増税するのは国民反対ですね。福祉を削るも反対ですね。結局借金
積んできた。民主党も借金積んでいる。
だからどうするかということで、今やっとね、やっぱり入る金を増やそう
と。ということは増税ですよ。消費税を上げなきゃいけないと。
それが分かっているんだけど、消費税を上げると選挙に負けると思って
あげられなかったんですね。
それから景気を良くするにはどうするか、法人税を減税する。これもね、
大体、企業というのは共産党をはじめとして企業は悪だと思っている人
が多いんですね。
法人税を減税すると国民に怒られる。選挙に負ける。だから日本の法
人税は世界一高いんですよ。こんな国はないです。
例えば日本は約40パーセント、アメリカは30パーセント、ヨーロッパは
大体30以下ですね中国は25パーセント、香港は17パーセント、韓国。
は23.7パーセント。
だから本当はもっと下げないといけないけど、これが下げられない。
消費税もこんなに安い国はないですね。例えばドイツやフランスとか
ヨーロッパの国大体、18~19パーセントですよ。
日本は5パーセントですからね。日本が理想の国といっているスエーデ
ンは25パーセントですから。
要するに世論迎合をやってきたと。じゃあそこをどうするか、今まさにそ
こが一番問われていると思います。
人物写真家としてずっと気になっているのは、20年ぐらい前から日本人
の顔が変わってきたと。
どう変わってきた?
以前は街中で時々人格者を思わせる顔に出会いましたが、特にここ
10数年ぐらい、日本人の顔から求心力が消え、軽さがとても目に付く
ようになりました。
軽いというよりやわらかいんですよ。
例えば土門拳という写真家がいます。彼が炭鉱の子供たちを撮ってい
ます。あの頃の子供たちの顔はもうないです。
今、東南アジアに行くとそういう顔はありますよ。要するにそれは貧しさ
なんです。
特に後藤田さんとか僕もそうだけど、敗戦を体験していますね。敗戦て
何もないんですよ。つまり食うや食わず。
後藤田さんも本当は死んでいたんですよ。あの人は、自分が本当は死
ななきゃいけないのに死なないで終わっちゃったという、非常な責任を
感じているんですよ。申し訳ないと。
あの人は戦争中台湾にいたんです、軍人で。当然米軍は台湾をまず
やっつけて、そして沖縄へ来ると思ったら台湾を抜けて沖縄に来ちゃっ
た。台湾は無傷だったんですよ。
だから本当は死ななきゃいけないのに死なないで、大勢の人が自分の
代わりに亡くなったと、そういう責任感、申し訳ないと。
だからそういう多くの亡くなった人のために体を張ってこの国を良くしな
きゃいけないと、そういう気持ちが後藤田さんにはあった。
金を儲けるなんてどうでもいいと、金もいらない、名誉もいらないよと。
やっぱり自分の代わりに亡くなった大勢の人達のために、この国を良く
しなきゃいけないんだという思いがあった。
多かれ少なかれ僕らの世代まではそういう気持ちがあるんですよ。
僕は小学校5年でしたから、軍事工場へは行きませんでしたけど、僕ら
よりも数年前の人達は予科練に行き、亡くなっている人もいますから、
やっぱりあの戦争のために亡くなった300万人の代わりに、この国を
良くしないといけないという気持ちが僕らの世代まではあると思います。
日本人が変わったとしたらそれは何故だと思いますか。
豊かになったからですよ。もう体を張る必要はなくなったんです。
豊かになって日本人の人間力が落ちたと、
それは落ちたんじゃない。幸せになったから必要がなくなったんですよ。
要する日本が40年間も高度成長を続けた。大成功ですよ。
戦後日本は大成功したんですよ。大成功したからみんな豊かなんです
よね。
だから体を張って何とかしなきゃいけないということに遭遇していない。
ただアメリカは豊かですが人間力は今でも、
アメリカは豊かじゃない。アメリカと日本の一番の違いは、日本で餓死
する人はいませんよ。アメリカは餓死者はいますよ。
アメリカはルールの国です。ヨーロッパも。ルールの国というのは、ルー
ルに外れた人間はだダメになってもしょうがないんですよ。
アメリカでは働かない人間はダメなんですよ。敗者というのはダメなん
ですよ。
だから敗者でいたくないならチャレンジしろと、再チャレンジしろというの
がアメリカなんです。
日本は敗者をやっぱり救わなきゃいけないと。だから生活保護とかで
敗者を救わなきゃいけないと。こんな暖かい国はないですよ、先進国で。
だから顔に鋭さがなくなってくるんですよ。
例えば最近の韓国と日本を比較すると、その人間力の違いに愕然と
します。
あっちはハングリーですよ。
例えば世界柔道連盟会長や国際サッカー連盟副会長、国連事務総長
などの国際的地位の獲得、冬季オリンピックの大躍進、衝撃的なUAE
の原発落札など、最後の決め手は人間力だったと思います。
目的完遂のためにとことん考え抜く知恵の力とか不屈のパッションの
差が結果に出たのでは。
こうなるとパッションじゃない。突破力、そういうものですね。
したがって長い長い高度成長の間に、日本は突破力が必要じゃなくなっ
ちゃったんです。
韓国は今やっています。例えばなぜUAEで日本が負けて韓国が勝っ
たのか。原子力発電所を作る技術は東芝が世界一です。2番目が日立
です。3番目が三菱重工です。
僕は東芝か日立が取ると思っていた。そしたら韓国に取られちゃった。
韓国は技術は何もないんですよ。なんで技術のない韓国が取るのか。
非常識な安さを提示したんですか。
いやそんなことはない、安くともなんともない。
韓国が安いはずがないんですよ。それは基本的に違う。もっと情けない
ことは、東芝がなんと韓国の下請けで入るんですよ。韓国ががっぽり儲
けてね。
なんでこんなことになるのか。それは売るとは何かという基本的な理念、
これが日本人に欠けちゃったんですよ。だからこのところ国際商戦、国
際ビジネスでは連戦連敗です。
例えば日本はUAEに原子力発電所を売ろうとした。韓国は違うんです
よ。電力を売る、どこが違うか。
例えば、韓国は60年間の電力を保証しますと。だから原子力発電所
だけじゃなくて、太陽エネルギーも風力も全部やりますと。更に原子力
発電所でいうと、作るだけじゃない。運転も全部やります。更に60年間
安全も保障しますと。
日本は何もやらなかったんですよ。原子力発電所を売るだけなんです。
こんなんじゃ勝負にならないじゃないですか。
それこそ知恵力というか人間力の違いだと思いますが。
それは高度成長で甘えたんですよ。つまり必死なんですよ。中国も必
死ですよ。
例だば僕はアセアンも取材しているんだけど、アセアンにどんどん進出
しているのは中国と韓国です。日本はほとんど行っていません。いや
なんですね、そんなところに行くのは。
外務省の若いのが外国に行きたくないというのと同じですね。
うん、商社マンだって外国に行くのを嫌がっていますからね。だって今
年のハーバードの入学生は、ついに日本人は一人になっちゃったんで
すよ。韓国は数十人行っていますよ。
今の日本の状況を打開する方法は。
今がチャンスだと思う。不況になってみんなこういうことが分かってきた。
さあ、何とかしなきゃいけないぞと。だから今は非常にチャンスだと思っ
ています。
例えば仙谷由人大臣が30日の晩に、上海の万博に鳩山さんの代わり
で行きました。
彼は上海からベトナムに行きました。何しに行ったのか。
ひとつはベトナムに原子力発電所を売りに行きました。それから新幹線
を売りに行きました。
それからもっと大事なことは、日本は、石炭火力は世界一の技術を持っ
ている。中国なんかどうしようもない。
これを売れば中国でもどんどん売れる。だから石炭火力と新幹線と
原発のために仙石は行った。
新幹線を売るために前原国土交通大臣もベトナムで一緒になりました。
やっと危機の中でそういう気持ちが出てきたんですよ。大臣がセールス
マンになると。
韓国はそれをやったと。
とっくに。やっとそうなってきた。僕はチャンスだと思っています、今ね。
これまでの日米従属関係は日本の恥か、それとも国益のためには
従属もよしか。田原さんはどちらですか。
それは大いによしだと、今までは。
国際問題、国際政治に日本は一切口を出さない。全部アメリカに任せ
っぱなし。冷戦のときも。
だから国際社会ではソ連がいいとか悪いとか、アメリカがいいとか悪い
か言わない。そのために日本は西側のアメリカとかフランスとかイギリ
スとかみんなマーケットにできた。
それだけじゃなくてソ連もマーケットにできた。東欧に行っては、ああ共
産主義はいいですねと言って東側も全部マーケットにできちゃった。
西も東も、こんな国はないですよ。大成功なんですよ。だから高度成長
なんですよ。
要するにアメリカに従属することで、日本はすごく得をしたんです。
これはいまだに続いている。だけどそういう時代は終わったんですよ。
冷戦が終了して終わった。
普天間に関する鳩山さんの対応をマスコミはこぞって非難していますが
長期的には今の日米間の緊張は悪いとは言えないのでは。
あのね、日本の安全保障の専門家たちが一番恐れているのは、アメリ
カが沖縄から全面撤退することです。
本当は、アメリカは撤退してもいいと思っている。今、海兵隊が沖縄に
いる必要はあまりないんですよ。でも今までの習慣からいるんですね。
実は撤退して困るのは日本ですよ。
いま、日本は日米同盟でアメリカの核の傘に守ってもらっているんです
よ。安全保障もほとんどアメリカ任せです。だから安いんですよ。
それを撤退してもらって、日本が独自に安全保障をやるとなると大変な
ことになる。
核を持つみたいな話が選択肢として出てくる。当然自衛隊ではダメで
軍隊にということになりますね。
やっぱりこのままの形の方が、日本は安全保障の防衛費は随分安く
済むんですよ。
田原さんはこのままがいいと。
うん、アメリカに沖縄にいてもらうことで日本がアメリカに従属していると
言うのは全く違う。
今、日本はアメリカの国債を随分買っていますよ。これを日本が売った
アメリカは大変ですよ。
だからそういう意味では事実上、経済では対米従属ではないんですよ。
そこを今まで対米従属でずっと上手くやってきたから、できれば自民党
はそのままで行きたいと思っている。
ところがどうもそれではいけなくなっている。
今の日米関係は冷戦のときにできた関係なんですよ。冷戦終わっちゃ
たんです。同盟は大事です。
だから新しい日米関係を再構築しなきゃいけないですよ。
僕は鳩山さんにもそのことは言っている、最近も。それがなんで普天間
についてあんなことを言っちゃったんだと。
そうじゃないと、もっと新しい日米関係の再構築のために首脳同士が
じっくりと時間をかけて話し合うべきじゃないかと。おっしゃる通りですね
と言っていますよ。
日米安保をやめて平和友好条約がいいと言う人もいますが。
いやいやそう簡単には行きません。日米安保条約にはひとつ重要な点
がある。
日本がどこかを襲われて危機になったら、アメリカが全力で日本を救う。
ところがアメリカが危機になったときに日本は救うとは全然入っていな
い。こんな都合のいい安全保障条約ってありますか。だからこんなのは
変える必要はないでしょう、別に。
その代償をどこかで払わされているのでは。
払ったっていいじゃないですか。
やはり日米安保はそのままで、
だからそうじゃなくて、安保も含めてなんですが、やっぱり新しい日米
関係の再構築が必要だと。
それを普天間でギクシャクやっていてバカだねと言ったんですよ、鳩山
さんに。
その日米の再構築の中身とは。
今、アメリカが国連ビルを建て直さなきゃいけない。金がないんです。
困っているんですよ。
日本に持ってくればいいじゃないかと、例えばね。極端に言えば沖縄に
持って行ったっていいじゃないかと。そんなこと一杯あります。
20年後の日本のアジアにおけるプレゼンスをどう想像しますか。
いい形になると思う。20年後といわなくても10年後にはアジアが世界
の中心的マーケットになる。人口から言っても。
アメリカもヨーロッパもアジアと取引きしないとやっていけなくなる。
日本はそのアジアにあるんですから、いかにアジアのコーディネーター
になるか。
中国、インド、韓国、インドネシアなどアジア諸国の発展で日本の存在
がかすんでしまいそうですが。
だから仙谷という人がベトナムに行ったんじゃないですか。どんどん行
き始めているわけだから。
そんなに心配ではないと。
いやいや、やらねばならないと言っている。
今月、田原さんはブログに、上海を目の当たりにして「凄いなぁ」「怖い
なぁ」と思ったと書いていますが、何が怖いと思ったのか。
いやもう日本を抜くでしょうね、確実にね。
今、上海は世界一の大都市です。ニューヨークもロスアンゼルスも抜き
ました。
上海の人口は2000万人、東京の2倍です。今、日本人が世界のどの
町に一番多くいるかといえば、ニューヨークもロスアンゼルスも抜いて
今は上海です。
日本人は8万人。上海にある日本人学校の生徒は2000人いる。
これも世界一です。
そういう中国と長期にわたって対等で安定した関係を築くには、どう付き
合うべきか。時々中国の傲慢さが気になる報道がありますが。
それは中国が嫌いな新聞が書いたことですよ、産経新聞とかね。
僕は、技術力は日本の方がはるかに高い。中国は欲しくてしょうがない。
それから省エネ技術なんかは日本がはるかに発達している。だから
中国は日本のそういうものを学びたい。
何よりも40年も高度成長するなんて考えられない。だから中国はまだ
まだ日本から学びたいものは沢山ある。
だから日本は十分対等で日中関係を深めていけると思っています。
尖閣諸島の領有問題が時々浮上しますが。
これは簡単にケリは付きません。
例えば上陸された場合は。
上陸して何するんですか。全然関係ない。それよりも東シナ海のガス
油田、これは日中が共同で開発すべきだと私は思う。これはやんなき
ゃいけない。
日本は以前から提案していますが。
もっと強く。これは命を懸けるべきだと思います。
日本で二大政党制が定着するとしたら、どんな対立軸を望みますか。
今のところ自民党と民主党の対立軸はないですよ。ほとんど同じです。
アメリカの場合はハッキリしているんですよ。
アメリカは日本と違って、キリスト教が本当に心の底まであるんですね。
共和党というのはキリスト教に対して忠実な政党です。これを保守的と
言ってもいいんだけどね。
民主党というのはキリスト教から自由になろうとしている政党です。
例えば民主党は女性と女性の結婚もOK、男性と男性との結婚もOK
したい。当然中絶もOKしたい。共和党は全部反対ですから。
だから非常に対立軸がハッキリしている。
日本はそういう対立軸がなくて、僕はもっと自民党がしっかりしろと言い
たいんだけど。
民主党はやっぱり格差をなくす、福祉を重くすると。これが民主党だと
思います。自民党はもっと経済は成長すべきだと。
自民党は小さい政府ということですか。
小さいんじゃない。経済成長、成長発展するということ。
市場原理的な考えを積極的に取り入れると。
どっちかといえば。自民党は成長がなきゃ福祉もないと言うべきだと思
う。そこを今の谷垣さん大島さんが怖くて言えない。
成長と言うと、もっと格差が大きくなっていいのかと言われるので。
田原さんはそのふたつのどちらに与(くみ)したいですか。
両方いると思う。成長でドーンといくと必ず格差が起きる。
そしたら今度は格差を是正しようという政権ができて、格差に取り組ん
でいると経済が悪くなるから、また成長をやると、こういう二大政党だと
思います。
心情的にはどちら側ですか。
心情的には両方必要だと思っている。だから成長と言いながら、自民党
の成長の仕方が間違いだったら、間違いだと言いますよ。
やっぱりこの国がよくなってもらわなきゃ。この国というのは国民がです
ね。国民にとっていい政治をしてもらわなきゃ困るんです。
長年日本の政治を目の当たりにしてきて、今強く感じていることは。
高度成長が終わって借金がどんどん増えているでしょう。面白いです
よ、この時期は。
今こそ政治家がリーダーシップを発揮すべき時期なんですよ。つまり
今、目標がみんな分かんないんですよ。 だから龍馬が受けるんだと
思う。
やっぱり龍馬みたいな人間が必要だとみんな思っているんですよ。
今後の田原さんの抱負は。
龍馬を探したいですね。龍馬を探したい、育てたいと思います。
是非探してください。ありがとうございました。
ハイ。