独立総合研究所というシンクタンクの最高責任者としての使命感とは。
ちょっと長めに話してもいいですか。
独立総合研究所、略称は独研というのですが、株式組織のいわば本格的なシ
ンクタンクです。
ぼくの個人事務所と誤解されることが日本ではよくあるのですが、全く違い
ます。
日本よりもロンドンやワシントンDC、パリなど海外での方が独研の仕事と
役割の中身について思い込みなくよく理解されていますね。
特に民主主義諸国の危機管理、安全保障部門やインテリジェンス部門の政府
機関には知られています。
英語の社名のJapans Independent Instituteと言うだけで、「あぁ、ヒモが
付いていないシンクタンクですね」とすぐ分かってもらえます。
株式会社であるのは自立のためであって、利益が第一の目的ではありませ
ん。ぼくが独研を立ち上げたのはある種の偶然というか、天に命じられる
ままここまで来たという感じなんですね。
共同通信の記者を20年にわたって務めていたとき、ペルー日本大使公邸人
質事件という日本が初めて経験した国際テロ事件がありました。
そのペルー事件をきっかけに記者を辞めようと考えているときに、たまたま
三菱総合研究所とご縁があったんです。
ちょうどその時期に、三菱総研が国家安全保障をハード面だけではなく、
ソフト面から、つまり装備だけではなく日本自前の基本政策として考えられ
る人材を探していたんですね。
今までそういう政策は、アメリカにお任せだったけれども、自前の安全保障
の理念とか哲学とかを考える時代に入るらしいということでぼくとご縁がで
きて、それで三菱総研に移ったんです。
シンクタンクを良く知らなかったぼくが、三菱総研の4年3か月の間に、民
間の道を選ぶのが難しい知恵がないと国家というのは本当に正しいという事
実に目を開かされました。
そして『日本にも全くヒモが付かない、裏で繋がっていない、民間なのに国
家国民のために動く、民間なのに利潤が第一目的じゃなくて、この国をどう
するんだということを目的にする、そういう組織が必要だな』と思いました。
そこで、最初は三菱総研で出会った仲間と共に、たった4人で独立総研を始
めたんです。
今は役員と社員でざっと20人になりましたけれども、ずっと独立独歩で、
まさしく国家安全保障の実務に取り組んできました。
イギリスとかアメリカとかフランスとかドイツとか、そういう日本と同じ民
主主義諸国の政府というのは、ちゃんと裏打ちと実力があれば民間シンクタ
ンクでも国家機密まで共有して連携します。
面白いというか不可思議な事実としてあるのは、先進国からテロ対策を学ぶ
ために日本政府の代表団が行ったときに、相手側に言わせると『日本の政
府の代表たちが来てもほとんど話し合いらしい話にならない。』と指摘され
る現実です。
『日本の弱点はここで、日本の本当の問題はここで、ここをどうにかしたい』
とありのままに出してもらえば、他の民主主義諸国も、我々は我々の弱点を
どうやって克服しているか、ということをテーブルの上で付き合わせて話が
できるのに、日本の官僚たちは手の内を見せないというのですね。
政治家の場合はもっとひどくて、そもそも日本の弱点を理解も検証もしてい
ない人が平気で来たりするそうです。
独研は政府の下請けじゃありませんから、ここは弱点だということをテーブ
ルの上にフェアに出します。
そうすると諸外国も『国家の機密だけども、本当はここはこうやっている』
ということを出してくるんですね。
それを日本国民のために、守秘義務のある政府機関に伝えるというのが、独
研の日本ではあまり知られていない大きな仕事の一つです。
例えば2008年、夏の洞爺湖サミットは事前にテロや騒乱への工作をめぐ
って厳しいインテリジェンス(情報)があったにも拘らず、テロを完全に防
ぎ切って開催されました。
ただし洞爺湖サミットが近づいたときに独研が懸念したのは、空、陸そして
水上の警備は万全でしたが、水中の警備は全くなかったということです。
この国で水中の警備がないうのは驚くべきことです。
拉致事件では多くの日本国民が、水中からやってきた北朝鮮の工作員によっ
て誘拐されているのですから。
本物のテロリストは陸から、或いは水上からだけ来るんじゃなくて、見えな
い水中からくる。日本は四方を海に囲まれ、国民を拉致された現実があるの
に、洞爺湖サミットのときにその警備がない。
水中警備はすでに諸外国では大きな課題になっていて、例えばアテネオリン
ピックでは水中ソナーをたくさん配備してずっと水中を監視した。それ
を学んでいない。
例えばニューヨークでも港の守りは水上よりも水中なんですね。それで独研
から日本政府に提案して洞爺湖サミットに水中ソナーを導入したんです。
ほぼ無償ベースでした。
独研は公的機関から仕事が来るのを待っているのではなく、こちらから国民
の立場に基づいて提案するのを本文にしています。 |
自衛隊に任せたんですか。
違います。東京大学の生産技研が研究開発してきた水中ソナーに独研の意
見をも取り入れてもらって実用化し、警察庁に提案して連携を練り上げて
入れたんです。
先ほども言いましたように、この洞爺湖サミットについては実質的にほぼ
無償です。独研は7年間ずっと黒字経営ですが、無償の仕事もありますか
ら、ぼくの講演やテレビ出演などのフィーは全て独研に入れて、ぼくの懐
には一銭も入れません。
僕はよく評論家とかジャーナリストとかいろんな肩書を勝手につけられる
んですけど、実務を預かっているシンクタンクの社長です。
あるとき経済産業省の局長さんから『株式会社というのは儲けるためにあ
るのに、儲けを第一目的にしないというのは困る』と言われたんですね。
独研は何故株式会社でいるのか。それは自立するためであって、自分の食
い扶持は、自分で稼いでこそ誰にでも自由にものが言える。そのための株
式会社であると答えたんです。
そしたらその局長が『儲けが目的じゃないんだったらNPOやNGOにし
てくださいよ』と言うので、『いや、うちは国家に税金を払いたい。自分で
喰うだけじゃなくて、国家に税金を払って初めてみんなにものが言えるの
が本来の姿です』と答えました。
しかしそう答えつつ内心に、かすかな不安が生まれました。
『確かに法で、株式会社とは利潤を追求するためにあると定められている。
独研の在り方を一度考えてみるべきじゃないか』と思ったのです。
だけど天はいつもよく見ているなと思うんですけど、偶然テロ対策の仕事
で、高知県警本部に行く機会がありました。
たまたま話が延びて乗る飛行機に遅れちゃったので、高知県警本部の目の
前の高知城にふらっと入ったら、ちょうどそこで坂本竜馬の展示会をやっ
ていたわけです。
その中に亀山社中の説明がありました。竜馬が長崎で作った亀山社中は
日本で最初の民間会社です。
亀山社中は儲けを目的にしたんじゃなくて、自分たちの食い扶持は全部、
自分たちで稼いで、幕府に対しても殿様に対しても、ものを言うんだとい
う理念で作ったんですね。
その展示を見たときに、ああ、まさしく独立総研の根っことは現代の亀山
車中そのものだと、僭越ながらぼくは思いました。
亀山社中と同じように、自分たちの食い扶持は自分たちで稼いで、この国
の一切の利害関係から自由に、それが右でもなく左でもなく、まっすぐ真
ん中から変革する。
そして独研という組織を通じて、私利私欲じゃなくて自分の持っている知
力とか体力とか感性とか、ありとあらゆるものをこの祖国日本と民衆のた
めに捧げ尽すんだという思いでやっている。
そこが亀山社中と独研は共通すると、思い至りました。
そして、ご質問なさった最高責任者としての使命感と言う意味では、もち
ろん最後の責任は一切合切ぼくが取る。命を含めてその覚悟はあります。 |
私利私欲のない政治家が少しでもいればと思います。青山さんが独研党を
立ち上げたら、多くの支持者を集めるのでは。
独研の一つの特徴は右でもない、左でもないということです。
冷戦が終わって20年近くにもなるのに、いまだに右翼だ左翼だと言ってい
るのは日本ぐらいですから。
レフトウィング、ライトウィングのじだいじゃないんです。まっすぐ真ん中
からというのがうちの一番の特徴であり、だから実務なんですよ。だから
政党じゃなくてシンクタンクなんですよ。
日本は今や政治三流、経済三流、モラルも学力も三流と言った政治家が
いました。官僚の体たらくには言葉もありません。日本人がこうなった原因は。
蛭田さんのご質問自体は興味深く拝聴しました。確かに政治家も官僚も評論
家も、年中お互いにそう言い合っていますね。
しかし、ちょっと待ってください。仕事で海外を広く歩いていきますと、日
本ほど沢山のアドバンテージ、良い面を持っている国は他にないなと気づき
ます。だから簡単に三流と言ってほしくない。
『ひょっとしたら、そうやって祖国を貶めるあなたこそが三流じゃないでし
ょうか』と、ある評論家ご本人に、心の中で非礼をお詫びしながら申し上げ
たこともあります。
一例を言いますと、日本の総理がころころ変わって、ここ四半世紀近い間、
長くやったのは中曽根康弘さんの5年と小泉純一郎さんの5年半だけで、他
の総理は国際的な水準には達しないと言えるぐらい在任が短いですね。
だから日本の政治はダメだと、いつも言われています。
もちろんダメな面もあります。しかし日本の内閣というのは、辞める時には
必ずと言っていいほど、歴史的使命を終えているんです。
例えば中曽根さんは5年やりました。どうして長かったかというと『官から
民へ』という歴史的転換をやったから時間がかかったわけですよ。
官業のうち、国鉄をはじめ三公社五現業を民営化していきましたね。
いわば官から民への最初のドアを開けました。
この国の官って、ざっと1300年以上も続いてきた官僚制度です。だから
最低でも5年やらなきゃドアも開かないです。
その中曽根政権の後の竹下政権はあっという間につぶれたけれど、竹下さん
も歴史的使命をひとつ果たしているんです。それは初めて消費税を導入した
ことです。税率、たった3%だけど。
その消費税を導入した本来の目的は、消費税を3%とか5%とかじゃなくて、
15%から25%にして、その代わりに日本の所得税をゼロにして法人税
もぐんと下げて、日本の個人と企業の働き甲斐を新しく作るというのが本来
の消費税の意図でした。
それが実現するのなら、逆に食品などは非課税にするんですね。
本来は志のある話で、有権者がそれを理解していなくて、政治家も選挙に落
ちるのが怖くて言い出せないだけです。
短命に終わった竹下政権も、その最初のドアを開けたんですよ。
その歴史的使命をちゃんと果たしたから政権交代した側面もあります。
竹下政権はリクルート事件で崩壊したとだけ言われます。
それもありますし、それが目立ちますが、もっと深い部分では歴史的使命を
果たした以上総理は辞めてもいいのです。
それが日本国です。永い時間をかけて私たちが築き上げてきた文化に基づく
日本国の個性です。
なぜなら日本は内閣総理大臣の上に憲法上も揺るがない権威がいらっしゃる
わけですね。権力じゃなくて権威です。それは天皇陛下です。
世界の皇室から見ても、日本の天皇陛下がいかに私利私欲がなくて、それは
先の昭和天皇だけじゃなくて、それこそ仁徳天皇のときからです。
仁徳天皇がいらっしゃった古代の時代は、世界中の王様は自分のことばかり
です。自分だけが永遠に生きたいからといって、配下も国民も総動員して不
老不死の薬を探させた皇帝が中国にいたり、自分が死後も生きたいからと民
衆を駆り出してピラミッドを作らせたファラオがエジプトにいたりですね。
ところが仁徳天皇は、民の竈(かまど。煮炊きの設備。転じて食事の支度の
こと)を心配した。
民の竈から煙が出ていないから、自分の宮殿の屋根を葺かなくていいとおっ
しゃり、租税を免除された。
あの古代の時代に、これが仮に伝説であるとしても奇跡のような話です。
そういう私利私欲じゃない存在があるから、内閣はひとつ使命が終わったら
どんどん変わっていくんですよ。これが私たちの固有の文化なんです。
もうひとつだけ言うと、例えば村山政権の成立について、大学の政治学講義
でも、政治史として恥じるべきであるという講義ばかりが行われているよう
です。自民党と社会党が結びついたことはモラルの崩壊であり、世界に対し
て顔向けできない、恥ずかしいということしか指摘されていません。
ぼくは日本の近現代史をどう見るかについて、村山さんとは真っ向、意見が
違います。
意見が違うだけでなく、村山さんが首相当時出した、先の大戦に関する『村
山談話』は間違っていると思います。
例えば『侵略』とは何かを定義しないまま、あるいは『国策の誤り』とは具
体的に何を指すのかをまったく示さないまま、とにかく反省、というのは逆
に歴史への責任感が欠けています。リアルな国際政治としても、拙劣な外交
です。
外交といっても別段、高級な話ではなく、同じ人間のやることですから、基
本は庶民生活と全く変わりません。みんなの生活で、何かあると自分のどこ
がどう悪いのか全く言わないまま、とにかく謝ってしまい、それでよしとす
る人を一体誰が信用しますか。
しかしその無残な謝りの談話を出してしまった村山政権であっても尚、負の
面だけではないのです。
大学の政治学の先生に、ぼくが実際に問うたのは『先生、あなたは、村山さ
ん本人に、どうして総理を引き受けたんですか、権力が欲しかったんですか
と、そうお聞きになりましたか』ということです。
『学問であっても、アクチュアルな現在の政治を扱っていて、しかも当事者
が健在であれば、取材、ヒアリングの労を取るべきではありませんか』とも
尋ねました。案の定、全く聞いていない。
もう一度申しますが、当事者が健在でアクセス可能なら、その現代政治史を、
いわば現場で見るために、村山さんに会って、聞いてから分析し論じて欲
しいと思います。
村山さんとの出会いでぼくが驚いたのは、その場所でした。
国会には参議院食堂と衆議院食堂という豪華な赤ジュウタンがふかふかの食
堂があって、議員になった人は嬉しくてそこで飯を食うわけです。
一方、国会の地下には中央食堂、ぼくらは人民食堂と呼んでいるんですが
ちょっとジメジメしていて、ゴキブリがたまに這い回っているような食堂が
あって、シャケ定食とかノリ定食とか本当に安く食えるところがあります。
そこで食っているのは当時のぼくを含む記者か、国会職員課、日本共産党の
議員なわけです。
ところが、一人だけ日本社会党の国対委員長がそこでいつも飯を食っている。
日本社会党の委員長って、あまりに現金を渡されるから、背広に内ポケッ
トが複数あった人がいたというぐらい、お金が入る立場なのに人民食堂で
食っている。それが村山さんんですよ。
興味を持ちましたが、ぼくは自民党の担当でしたから控えていたんです。
ある日、我慢できなくなって村山さんにいきなり『社会党の国対委員長がな
んで議員食堂じゃなく、ここでメシ食っているんですか』と聞いたら、村山
さんは驚きもせず『わしはああいう議員食堂みたいな偉そうなところはいや
じゃ』と言われた。
ぼくは、それがきっかけになって村山さんと個人的な付き合いをするように
なったんです。
自社政権のきっかけを作ったのは、本当は元官房長官の梶山清六さんでした。
梶山さんが同じ九段の議員宿舎に住んでいた村山さんの人柄を信頼して、
『総理をやりませんか。自民党と組んで首班指名選挙に出て、自民党を離党
した小沢一郎さんが立てる海部俊樹さん(元首相)と戦いませんか』と秘か
に持ち掛けた。
村山さんは迷いに迷って、最後に引き受けると決心したとき、九段の議員宿
舎の廊下の隅っこで、村山さんが爪の先まで真っ白になったように見えま
した。生気が抜けて幽霊みたいになった。
村山さんが、これで社会党は潰れると思ったからでした。
社会党が自民党と政権を組むということは、社会党が長年守ってきた大原則、
例えば、『自衛隊は違憲だ』、『日米安保はすぐ解消だ』、そういう主張を諦
めなきゃいけない。
社会党は終わりだと、オレのお蔭で社会党は潰れると、村山さんは考えた。
しかし、そのためにこそ受けたんですよ。
1989年にベルリンの壁が壊れ冷戦が終わって、世界ではもう『右だ左だ』
の時代じゃないのに、日本は90年代半ばになっても、ずっと冷戦構造の自
社対決のまま世界から取り残された日本だった。
日本は、村山という個人のお蔭で冷戦構造を潰すことが出来たのです。
社会党は自社政権に総理と閣僚を出すことによって、社会党であることを失
っていきましたね。
そして村山政権の最後、村山首相の辞任についても、大学では『村山首相は
理由もなく辞めた。自社政権はその意味でも最低の、世界に恥じる政権だ』
とだけ教えています。これは違う。
村山さんは、村山談話という間違った遺産を残してしまったけれど、もとも
と権力には興味なかった。
社会党がこれで歴史的使命が終わったことを確信したので、彼は政権を本来
の橋本龍太郎に渡したわけです。
『総理がころころ変わるから、日本は政治三流だ』と簡単に言うけれども、
そうじゃない。最悪と言われる村山政権ですら、一つの歴史的使命を果たし
てだからこそ倒れている。
内閣がどんどん倒れても、日本の社会が基本的には無事でいたのも、その上
に清潔で質素な暮らしをなさり常に本心から国民のことを考えている天皇と
いう存在があったからであり、その皇室は国民が努力して支えてきた存在
です。
国民の尊い財産とも言えます。すなわち、日本の政治はまず国民が支え維持
してきた伝統による安定的な権威があり、その下に内閣があるからこそ、ひ
とつの歴史的使命を果たせば、総理が独裁者と化すことなく後退してきた。
ぼくが学者に『現場を踏んでください。自分でちゃんと当事者に確認しまし
たか』と、僭越ながらあえて問いかけるのも、『日本が世界の三流だなんて、
どの国と比べてですか。日本の現状を客観的にもう一回、見てください』と
申し上げたいからです。
しかし同時に日本が、かつての日本と比べて、衰退が始まっているの事実で
す。その衰退の根源の原因は、たったひとつだけだと考えています。
この国には目標がないんです。
1945年8月14日までは、間違った戦争をしていても目標があった。
ぼくは間違った戦争と言うから『右』からもいろいろ攻撃されますが、あの
戦争間違っていました。どうしてか。侵略戦争なのか、防衛戦争なのかとい
う話じゃありません。
二つ理由があります。まず負けた戦争だったからです。戦争やるなら勝たな
きゃいけないんで、負ける戦争をやっちゃいけない。それから昭和天皇の御
意思に逆らっていたからです。
昭和天皇は日米開戦前の御前会議で突然、明治天皇御製の歌を二回、繰り返
して、詠まれました。
その御歌は、『四方(よも)の海 みな同胞(はらから)と思う世に など波
風の立ちさわぐらん』。日本の周りに住んでいる人たち、朝鮮も中国もアメリ
カも、南方の諸国も、みな兄弟だと思うのに、なぜ波風が立ち騒ぐのか、誰
がこんなに波を騒がせるのだという意味合いですね。
昭和天皇が、この明治天皇の御歌を二回も口にされたということは、開戦反
対じゃないですか。事実、近衛文麿首相から、首相の私邸でこれを聞いた
山本五十六連合艦隊司令長官は『では、陛下は日米開戦に反対ではないか』
と叫んでいます。
昭和天皇の本当のお気持ちは、陛下のお言葉を記録した書物などを読むと、
大英帝国やアメリカのような民主主義国家と日本は組む方がいいというお気
持ちだったと拝察できます。
イタリアやドイツのようなファシズムは一時的な熱狂であり、それと組んで
も良いことはないというのが昭和天皇の御意思だったと考えています。
民主主義はアメリカが戦後に持ち込んで初めて生まれたのではなく、日本に
も昭和天皇が皇太子でいらっしゃった大正時代に、大正デモクラシーという
日本独自の民主主義の芽生えがあったのですから、戦前に民主主義国家群と
組んでいても不思議ではありません。
あの戦争の間違いの最たるものは、昭和天皇の御意思に逆らったことです。
あの時は明治憲法ですから、国家主権は天皇にあった。それに逆らった戦争
がどうして正しいんですか。
話を戻しますが、その間違った戦争であっても、それに負けて全面降伏する
1945年8月14日までは、日本には国家としての目的はあった。
国家が目標、目的を見失ったら、自ずから理念も哲学も失う。そうするとみ
んながなんのために働くかと言えば、私利私欲になって行ってしまいます。
戦争に負けて10年、20年、30年はとにかくあの悲惨な戦争から蘇るこ
とが隠れた目標としてあった。
しかし蘇った後は何をするのか。新しい日本国は何を目標とし、その根っこ
にどんな哲学を置くのか、それを打ち立てない限りは、こうやって必ず滅び
ていきます。
だから日本の理念とはなんなのか、私たちの目標とは何なのか、みんなが共
有できる哲学とはなんなのかを考えていく。
その時に戦前派とか戦中派とか戦後派とか戦無派とか、わずか1億2千万し
かいない人間を切り分けるんじゃなくて、同時代人として共有できる理念、
目標は何なのか、それを定めることが日本を衰退から救うたった一つの道だ
と思います。
お隣の中国は公称13億、実際にはもうとっくに14億を越えています。
私たちの日本は、やがて1億を下回っていきます。小さな器の中で、自分か
ら分かれて割れて、せめぎ合っている場合じゃないとも考えます。
官僚の意識を根本から変える方法はありますか。
わたしたちが国家の目的を定めるのが先です。
官僚だけ要求するんじゃなくて、わたしたちがこの国の主人公ですから。
2千年の長い歴史の中で、わたしたちは初めてこの祖国の主人公になってい
るんですから。
官僚や政治家に決めてもらうのじゃない、決めさせるのじゃない、ぼくたち
がこの国の目標を定めて、『その目標に向けて官僚が努力しなさい』と求め
る。それが先決です。
官僚も政治家もこの祖国の不可欠の一因であり、それらに指示して国を動か
すのが主権者である国民であって、それが国民国家なのですから。
ぼくも記者時代は、この国の衰えは役人と政治家のせいだと考えていました。
ところがこうやって今、安全保障や海洋資源の実務を担うシンクタンクの社
長として仕事をしていて分かるのは、この国の本当のガンは役人や政治家だ
けじゃない。
この国の本物中の本物のガンは、その官と政にぶら下がって、『民の誇り』を
失い、国家の税金を吸い出してもらって、自分たちの利益に使っている民間
企業です。
役人が作っている天下りや旧・特殊法人、現・独立行政法人その他の仕組み
というのは、役人が利するようになっている。しかし、それだけがなぜ成り
立つのか。
官僚主義社会の官僚といえども万能じゃない。役人に天下りとか、旧特殊法
人と現・独立行政法人とか美味しい餌を与える代わりに、分捕った税金の分
け前をこっちに寄こしてもらい、いらないダムやら何やらを造っているのは
民間企業じゃないですか。民間の誇りはどこに行ったんでしょうか。
ぼくは評論家のような立場で、こうしたことを言うのではありません。記者
を辞めて、実務家に転じて、そこで初めて知った事実を、同じ主権者の国民
に知ってほしいのです。
先ほどダムの問題を出したのは、共同通信記者を辞めて、三菱総研(三菱
グループのシンクタンクである三菱総合研究所)に移ったとき、ダムの建設
現場に三菱総研生え抜きの研究員たちと一緒に行ったんですね。
そのとき、ある研究員から『三菱総研が国の委託で、このダムの基本設計を
したとき、もっと上流に造る計画で、コストも低く抑えていたんです。
ところが、国が予算が余ったということで、もっと下流に大きなダムを作っ
て呉れと言ってきて、計画を変更したんです。
下流に造ると川幅が広くなって、土砂から何から増えて、コストが膨らむわ
けです』という証言を聞いたところから、ぼくなりにこの国の官と民の癒着
の実態現場でを知ることが始まったのです。
そして、もっと重大な問題の例に、エネルギー問題があります。ぼくたちは
みな、どんな世代でも『日本は資源小国だ』と教わってきたし、例えばぼく
の息子たも、今現在も学校でそう教わっています。
ところが、ぼくや独研の自然科学部(独立総合研究所の研究本部には、社会
科学部と自然科学部がある)が仕事で接触する諸国のエネルギーを担当する
高官たちは、日本を『隠れた資源大国』と呼んでいます。
中国、韓国、インドアメリカ、カナダ、イギリス、フランスといった国々で
すね。アメリカのDOE(エネルギー省)などには『隠された資源大国』と
呼んでいる人すらいます。
なぜか。埋蔵資源のうち石炭から始まって石油、そして天然ガスまでは、確
かに日本の埋蔵量は少ない。
ところが第4の埋蔵資源があります。それがメタンハイドレードです。
メタンハイドレードは、一般にはまだ馴染みが薄いですが、ちょっとも難し
い話じゃありません。そもそも天然ガスの主成分は、メタンですからメタン
ハイドレードも要は天然ガスの一種です。
メタンガスが海底にあるために、水圧がかかって温度も低く、ハイドレード、
すなわち水和物、早い話がシャーベットみたいになっているだけです。
科学教育の世界では『燃える氷』と表現しています。
このメタンハイドレードは、他の埋蔵資源の比べて、燃料効率が最良く、地
球温暖化ガスの排出が最も少ない。
海底の地震の巣に多く埋蔵されているから、中東にはなく日本に大量にあり
ます。
独研の自然科学部と東京大学理学部の最先端の共同研究では、これまで、
『世界最大級の埋蔵量』と言ってきたのが『世界第一の埋蔵量』らしいとい
うことも分かってきています。
具体的に言うと、日本が一年で消費する天然ガスの、ざっと250年分埋蔵
されている可能性が強いのです。
これを適切に開発していけば、日本は、例えば中東などの独裁国家から言い
値で買っている石油や天然ガスが要らなくなる。ビックリでしょう。
日本という国家は、『資源小国だから、資源を海外から調達する道を断たれ
れば滅びる』といって、あの負ける戦争まで起こした。それが賄えるのです。
それ本当の話ですか。
本当の話です。独研の科学部長と東大理学部の教授は、すでに何度も国際学
会で発表していますし、ぼくは本にも書いて公表し、資源エネルギー庁の幹
部、或いは主要官僚や経済産業省の官僚トップや大臣にも、直接話しています。
それなのになぜ国民には知られていないか。国民だけでなく国会議員も、ご
く一部の熱心な議員以外は、与野党を問わずまだ知りません。
例えば武見敬三・参議院議員(当時)等は良く調べて事実を知っていました
が、こういう人に限って落選したりします(武見氏は2007年夏の参院選
で落選)。国民や多くの議員がなぜ知らないのか。それはまさしく隠されて
いるからでです。
『日本は資源小国である』という、実はもう国際社会では過去の定義になり
つつある話を、今もそれが絶対の真実であるかのように装い、『の本は資源
大国になることが出来る』という可能性を、国民の目から隠し、権力争いに
忙殺されている国会議員にも隠している。
国会では、百年一日のごとく『日本は資源小国なんですから』と議員が前置
きして質問していますね。
一体なぜ隠しているか。それは日本が自前の資源でやっていけるとなると、
現在は中東などの独裁国家群と、日本の利権政治家、それから保身が常に優
先する官僚と、更に商社や石油会社をはじめとする企業が、事実上の結託をし
て、『日本は資源がない国なんだから、独裁国家から資源を言い値で買うこと
が、日本の権益確保である』、『そのような難しい仕事を仲介するのだから、実
力のある政治家が多少の利権を追うのはやむお得ない』。
『官僚も、資源を海外から買える国であり続けるようにすることが任務であ
るから、いろいろ秘密もある』、『エネルギーに関する日本企業は、こうした
政治家や官僚と、特別な関係を持ち、国民が知らないところで、税金をテコ
に使って利益を上げていても問題ない。』という、これまでの構造が根っこか
ら崩れるからです。
日本は資源がない国なんだから、資源を海外から調達するためには、理研だ
ろうが戦争だろうが許されてきたし、敗戦後は戦争こそ忌み嫌われているけ
ど、勝者のアメリカにぶら下がることを含めて、資源を海外から調達するルート
を守るためにこそ、日本の政も官も産業構造もある、ということが日本の根本
的な既得権益なのです。
ところが、『いや、日本は第4の資源であるメタンハイドレードの発見と開発
によって、もはや埋蔵資源については海外から買う必要がなくなる』となる
と、その既得権益が、まさしく根底から崩れるわけです。 |
その認識は日本の上層部にはあるんですか。
一部の高級官僚らには、あります。
ある高級官僚から『青山さん、あなた、命に関わることになりますよ』と言
われましたからね。
この国は資源小国ということを前提にして立件も仕事も全部、成り立ってい
るんだから、それが覆るとなると、あなたは命危ないですよとという意味で
す。その高級官僚が『われわれにとって、まずいというだけじゃない。
民間企業だって同じです』と言うから、ある超有名企業の社長を訪ねると、
『青山さん、命の問題になりますよ』と全く同じことをおっしゃったので、
驚きました。呆れました。
『うちの会社も、日本は資源小国だからということで、こうやって資源を海
外から調達して利益を上げているんです。
感もその目的でに沿って、こうやって結びついていたら利益が上がる。
わが社だけじゃない。これが日本の産業構造そのものだ。それが覆るとなっ
たら、あなた命危ないですよ』と言われた。だからこそ、先ほどのような話
もしたのです。
ぼくの憶測や推測で言っているんじゃないのです。ぼくがその時、その社長
に言ったのは『あなた、民間の誇りはどこに行ったんですか。民間企業のト
ップなのに、本当は役人にぶら下がっているだけじゃないですか』というこ
とでした。
この国の根幹の病は、『役人が悪い、役人が悪い』とばかり言ってきたけれど
本当は役人にぶら下がっている民間企業の体質も変えなきゃダメだというこ
とが、それで初めてぼくにも分かったのです。私たち自身が変わらなきゃい
けないんですよ。
役人を悪者にして、それで済ませていたらいつまでたっても変わらない。
民間が自らを変えて、そこから役人を変えていくのです。
日本が隠された資源大国というのは嬉しい話ですが、現実に開発が着手
されないのは、製品化にお金がかかるということか。
それは、メタンハイドレードを採取して実用化するにはコストがかかるから
難しいのじゃないかという話ですね。
週刊誌にも載っているし、れっきとした学者でもそう発言している人もいる
しエネルギー会社は役員から社員まで、実に沢山の人がそう言っている。
ところがそれは、現場の真実を知らずに語っていることであり、よくできた
言い訳でもあり、思い込みでもあり、そしてもっとハッキリ言えば、見てき
たようなウソです。
私たち独研と東大理学部は、これまで国がほとんど探索してこなかった日本
海で現実に探索し、『ハイパー・ドルフィン』という名の無人海底探査船で、
膨大なメタンハイドレードを撮影し、その実物も船上に引き上げ確認した上
で発信しているのです。
日本人が自信を取り戻すには最高の話ですね。
最高の話なんです。なぜ先ほどのような、『コストがかかりすぎてメタンハ
イドレードは実用化は無理』という話が出てくるのか、その本当の理由を、
それではお話しします。
実はこのメタンハイドレードは、同じ日本でも場所によって存在の仕方が大
きく違うんです。
今まで政府が、探索と開発に巨額の税を投じてきたところは、太平洋側の
南海トラフです。高知沖と和歌山沖の地震の巣ですね。
トラフというのは、海底のくぼみのことです。前述したように地震の巣にメ
タンハイドレードはできるから、その意味では正しい場所なのですが、この南
海トラフメタンハイドレードは海底からさらに深く埋まっていて、泥と砂と
に混じり合っているから、それを仕分けて取り出すのにお金がかかりすぎて
商業化ができないという話だったんですよ。
そこに10年間でざっと500億円もつぎ込んでまだ成果が出ていない。
しかし同時に、日本は資源小国であるという前提こそが日本の産業構造だか
ら、成果が出ていなくても、誰も文句を言わず、国会で質問が出ることもな
かった。
前にも申しましたが、独研が株式会社の組織であるのは、自立するためであ
って、利益のためじゃない。
幕末に坂本龍馬がつくった亀山社中は、日本で初めての民間会社だったけど、
それは私利のためではなく、自分の食い扶持は自分で稼いで、どんな殿様
や幕府のお世話にもならず、行動と発言の自由と自立を確保するためでした。
独研も前述しましたように同じです。そして学者のなかでも石油利権などに
関わらず、メタンハイドレードだけを純粋に研究してきた学者は、利権などに
関わっていない。
石油と違って、まだメタンハイドレードはそういう段階ですから。
ここで独研は、そのような学者(東大理学部の教授)と連携して、政府がや
っていない日本海側で、お金のほとんどかからない新しい探索法でやって
みたのです。
この探索法は、独研の博士号を持つ自然科学部長が、特許を国内外で取得し
ていて、なんと魚群探知機を使います。
既存の魚群探知機から超音波を海中に発していくだけだから、特別な高価な
機械も作業もいらず、コストが圧倒的に安い。
この日本海の調査で、政府はほとんど予算を出しませんでした。
南海トラフには、毎年、10億ベースで予算をつぎ込んできたけど、この日
本海には、平成19年度で1000万円しか出さなかった。
研究船を1日出すだけで、燃料代だけで200万はかかりますから、独研や
東大の、先ほど述べた良心派の学者の研究室が、なけなしのおカネを絞り出
して足しても、数日しか探索できない。
ところがその数日で、日本海のごく沿岸に近い海域、佐渡島の南、直江津
(現・上越市)の北で、海底の表面い、まるで白いケーキのようにメタンハ
イドレードがそのままあることがわかった。
そこは掘る必要すらない。海底の下に埋蔵しているものもありますが、南海
トラフよりはるかに取り出しやすい状況にある。
ぼくはこの話をテレビでしたことがないし、これからもしないでしょう。
残念ながら日本では、私利私欲のための宣伝と誤解される恐れが強いから、
テレビではここは言いません。
しかし国際学会ではフェアに、ありのままに確証を示しつつ発表します。
だから前述したように、諸国から『日本は隠れた資源大国だ』と今、言われ
ているのです。
そして国際学会で発表する前に、もちろん日本政府にすべての情報を提供し
ました。
日本政府の南海トラフでのプロジェクトに関わってきた若手研究者たちは、
わたしたちが映し出したTRを見て、海底の表面に広くメタンハイドレード
が存在し、それを船の上に引き上げて、その実物もはっきりと確認できるの
を見て、『わぁ、メタンハイドレードの実物を見た』と叫びました。
これまで500億つぎ込んできた場所では、実物を見ることが出来なかった
のですね。そして、『なぜここでやらないのか』とも声を上げました。
ところが…よく聞いてください。あろうことか、翌年の、平成20年度は予
算がたったの300万円に減額されたのです。
成果が出たら予算が減らされる。こんな国は他にありません。国際社会でも
想像を絶することです。だから『隠れた資源大国』だけではなく、『隠された
資源大国』と呼ばれたりするのです。
ぼくのよく知る、ある高級官僚が『青山さん、これはまずいんだよ。500
億円出して成果が出ないのに、たった1000万円で成果が出るのは』と言
うから、ぼくは『いや、そうじゃない、500億円使っていた間は、まだ新
探索法はなかったんだし、世界はすべてトライアル・アンド・エラーであっ
て、本来責任を問われる事じゃない』と答えて、それから『もっと大切なこ
とは、日本が資源大国になるんだったら、あなたは仮に自分の首を差し出し
ても、本望じゃないですか。
一緒に入省した同期生は、もうほとんど役所に残っていない。あなたは功成
り、名を遂げたじゃないですか。最後は、まったくもって祖国と国民のため
だけの仕事にすればいいのではありませんか』と言いました。
さらに、実はこの泥と砂と混じっている南海トラフの方も、原油価格が1バ
レル、すなわち人樽70ドルか80ドルを越えたら充分にペイするとみられ
ています。
原油価格は、一時期1バレルが147ドルまでいき、現在は30ドル台まで
下がっていますが、IEA(国際エネルギー機関)は『やがて1バレル20
0ドル時代が来る』と明言した報告書を公表しています。
だから、わたしたちは南海トラフでの探索を責めているんじゃなくて、これ
からは予算を適切には配分しながら、一緒にやりましょうと言っているので
す。前述した『天然ガスの200年分はありそうだ』という話も、日本海側だ
けじゃなくて、太平洋側の南海トラフも合わせてのことなんですから。
南海トラフに近い和歌山に、っ関西電力が作った『エネルギーパーク』とい
う誰でも無料で入れるエネルギー博物館があります。
そこで独研の自然科学部長が、メタンハイドレード実物をみんなに無料で見
せることもしています。
このメタンハイドレードは、人口ですが自然界のものと基本は変わりません。
それになんの加工もせず、100円ライターを近づけるだけでボッと青い炎
を出して燃えます。だから燃える氷って言われるんです。
このメタンハイドレードを開発させまいという圧力は実に様々あって『メタ
ンハイドレードを海から取り出すと海底が崩れる』と言う人もいます。
では、北海油田や日本固有の領土である尖閣諸島の周辺で、中国が実用化し
てしまっている海底ガス田は、いったい何なのでしょうか。
メタンハイドレードはが地球温暖化を爆発的に悪化させると言う人もいます
が、これも前述したように要は天然ガスと同じなのに、天然ガスのように既
得権益となっているものについてはよくて、新しい、これまでの利権構造を
壊すものについては、実験も実証もせず、現場を踏むこともなく頭から否定
する。奇怪な話です。
さらに一部の新聞のように『これからは太陽エネルギーの利用だけやればい
いから埋蔵資源は要らない』と決めつけているメディアもありますが、エネ
ルギーは常にベストミックスが大事であって、太陽だけという発想はリアリ
ティーに著しく欠けています。
ぼくは先ほどの高級官僚にも言ったのです。『500億円を費やして成果がな
かったのかと問われれば、思い切って首を差し出してもいいじゃないですか。
自分の人生なんかあっという間に終わります。
どんなに長生きしても100年前後では終わるんです。この二千年国家であ
る日本を、これからどうやって子々孫々に渡すか、それだけが最後に考える
ことでしょう。命の本質は何かを考えてください。ミミズとかモグラとか虫
けらとか、あるいは鮭を見てください。
彼らの命はなんのためにあるのか。次の子孫に渡すためだけにあるんでしょ
う。ぼくらだって最後は同じです。子々孫々に渡せるかどうかだけなんですか
ら。もう、功なり名を遂げた後の自分の命は差し出せばいいじゃないですか』
似たようなこと、根っこが共通することは政治家にも独研の社員にも言って
います。
自分自身には、この10年、共同通信の記者を辞めてからずっと、朝にも夜
更けにも、秘かに言い続けてきました。
この国は、悪者を作るのが大好きです。役人が悪い、政治家が悪いと切り分
けてそれで済ませてきました。しかしどうして切り分けられるのか。
全部が絡んで繋がっているから利権構造も強固に存在してきたんでしょう。
先ずぼくたち民間人が、今までの日本の民間経済の在り方はなんだったのか、
実は官に依存しているんじゃないか、日本国民の税金に依存しているんじゃ
ないか、政治家もそのために使ってきたのじゃないか。
そこから考えることが大事だと思っているのです。
常にアメリカの顔色を窺う日本は世界からどう見られていますか。
確かにアメリカの属国とみられている面はあります。
特にアジアではそうですね。ただその背景にはジェラシーもあります。
『あれだけ戦争で叩きのめされた。それまでは本当に偉そうにしていた』と
考えているアジアの国は複数ありますから、日本が戦後に目覚ましい復興を
遂げて、一時期は世界第2位の大国にまでなり、そのために生じたジェラシ
ーというものを、中国や韓国を歩くと、強烈に感じますね。
ジェラシーはジェラシーとしいて見抜かなきゃいけない。
同時にぼくたちにも考えどころがあります。江戸時代の教育は、寺子屋でみ
られたように、違う年齢の子供を同時に教育して、上の子が下の子の面倒を
みて、そのために思いやりの心が自然に育まれ、下は上を尊敬する心が育ま
れる。
その素晴らしい教育方法だったのに、明治維新で『江戸時代は野蛮だった』
と決めつけて、同年配で輪切りにする西洋式の教育にしてしまい、人に対す
る思いやりを持てなくなったり、上を裏切ることをためらわない人間が、昭
和期の軍人になって戦争を遂行した。
アジアをはじめ多くの国が、その行動を夜郎自大とみていて、それが敗戦で
ペチャンコになった。
それで『ざまあ、みろ』と思っていたら、勝者のアメリカに付き従って、あ
っという間に復興した。それへの妬みもあって『属国』と評している面があ
ります。
一方で、ヨーロッパ諸国の中には、冷静に『日本はアメリカの力を上手に使
って戦後の復興を果たした』と見ている国もあります。フランスやイギリス
は、どちらかと言えばそうですね。
2008年9月15日にリーマン・ブラザースが破綻して、金融危機が始ま
りました。しかしその半年も前の3月に、アメリカの力は決定的に衰え始め
ました。
08年3月に、ドルが決定的に下落する相場が既にあり、ドルが『一極通過』
つまり世界でただ一つの基軸通貨、国際決済通貨だった時代の終わりが、
そこで始まりました。
しかもイラク、アフガンを見たら、アメリカの軍事力も21世紀型の脅威に
対しては、力を失っていることが分かるのですから、アメリカの言うことを
聞いていればよかった時代は、すでに終わっているんです。
だから、今までの歴史が属国かどうかということよりも、日本がこれから中
国ともアメリカともちゃんと対等に話ができる国になるにはどうしたらいい
か、ということが問題なんです。
すみません、もう(独研の本社から)羽田空港に向かわないと飛行機が出ち
ゃうんで、次の質問を。
中国は国益のためには手段を選ばない国に見えますが、中国と対等に
渡り合うキーワードは。
キーワードはあります。それは王道です。日本は王道で行く。
中国は覇道の国だからこそ、日本が王道の一を行くのなら、世界にとって値
打ちがある。
中国の覇道は、北京5輪を居れば誰でも分かりますね。オリンピックを、無
りやり成功させるためにはウイグルもチベットも徹底的に弾圧し、それから
偽装5輪もやってしまった。
開会式の口パク少女だけじゃなくて、深刻なのは体操競技への参加が禁じら
れている14歳の少女に、年齢を16歳と偽らせて参加させ、金メダルを取っ
た後に年齢詐称が暴露されると、国家が少女にウソをつかせて、ウソの
パスポートまで持たせて強弁し、金メダルを手放さない。
これは覇道そのものですよ。
日本はフェアに王道を行く。それでしか日本は中国に対抗することはできま
せん。中国の真似をしてミニ覇道国家になったらそれでお終いです。
王道を行く、それは聖徳太子が1400年ほども前に、隋(中国)の皇帝に
おっしゃった『日出ずるところの処の天子から日没するところの天子に』と
いう書簡の言葉にすでに表れています。
太子は、道義的に対等だとおっしゃったのです。国の大きい小さいじゃない。
人口が多い少ない、軍隊が大きい小さいでもなくて、道義的に対等だとおっ
しゃった。
それはまさしく王道の精神です。そういう態度を見て、中国も日本を侮れな
かったから、隋の皇帝は簡単に日本を侵略できなかったわけです。
その王道を貫くということが大事です。
20年後の日本を取り巻くアジアはどうなっていると思いますか。
中国とインドで世界の人口の過半を占めるアジアになりますから、その時
に日本は潰されると言う人がいます。とんでもございませぬ。
日本は王道を貫く限り、人口が仮に6千万人になっても大丈夫です。
中国、インドという両巨人がぶつかるときこそ、必ずその間にバッファ
がなければいけないわけですね。
日本の存在感が逆に高まり、日本しかできない役割は増えていくと、願望
ではなく、客観的に見ましょう。
ひとつ注目すべきなのは、インドの核保有をアメリカが完全に容認したこ
とです。北朝鮮が『アメリカへの攻撃ができないぐらいの最小限度の核を
保有する』ことも、アメリカは実質的に認めています。
6か国協議の本質は、むしろこれです。
すなわち、核拡散の時代が始まったのです。破綻国家である北朝鮮も、
NPT(核不拡散条約)に参加していないインドも、核を認められた。
そうすると、やがて台湾やインドネシアうあベトナムといった国々も核の
保有の秘かな検討を進展させることは、もはや避けがたい。
その時に、日本でも必ず核武装論が高まります。
高まりは今でもありますか。
今でもあります。
ぼくはつい最近、検察のトップクラスからも『私は実は日本の核武装に賛
成です』という話を聞きました。
ぼく個人は日本の核武装には反対なんです。兵に限って撃とうとするので
はなく、市民、国民を広く殺害することによって有利な立場に立とうとす
るのは、わたしたちの大切な魂である武士道に反します。
前に述べたように、ぼくらはぼくらの手で、この国の新しい理念、哲学を
創らねばならない。
その時に武士道が手本になる。だから武士道に反する核武装には賛成でき
ません。
しかし今、ぼくが『個人として核武装に反対』と声を出しているのは、
近未来の日本では核武装反対が、今とは真逆に必ず少数派になるからです。
今、偽善的な立場で、核武装反対と言っている評論家、政治家らは、あっと
いう間に『日本は核武装しろ』と言い始めるでしょう。
核武装派が多数派になるから、ぼくは自分をあえて縛るためにも今から声を
上げているんです。
ただ同時に、日本で核武装を議論する、或いはかっく武装の論議が激しくな
ることは完全に賛成です。
ぼく自身が早くから、中国やアメリカの現役の軍人に『日本がその優秀な技
術で核ミサイルを持てば、中国の核などものともしない核戦力になる。
日本を侮蔑したり、軽んじたりすれば遠からずそうなる』と強調しています。
日本の技術の高さを考えれば、議論するだけで随分と有効な抑止力になり
ます。
そして日本が核武装することは、やがて現実に可能になるでしょう。
そのときは、地上発射核を持たず、潜水艦に搭載する核ミサイルだけを持つ
ことが、最善の選択肢になるでしょうね。
『日本なんて核を持てるはずがないから、核の論議も何も反対だ』と言う人
もいますが、それとぼくの立場は全く違います。
次の衆議院選挙の後、日本の政治はどう変わっていくでしょうか。
再編は必ず起きます。そして現在の政治家は、与野党問わず『二大政党制』
とよく言うし、ますメディアはそれが自明の理のように社説などで論じて
いる。ぼくはこれに賛成できない。
どうしてアメリカとイギリスの真似をするんですか。文化も政治の仕組も
違うんだから、日本は東洋の知恵として、二大政党じゃなくて三大政党の
道を選ぶべきだと考えます。
東洋には二つで支える発想はないでしょう。鼎立、すなわち三つで支える
んです。その対立軸は憲法であるべきだと考えます。
すなわち改憲党、断固として改憲すべきという党と、護憲党、断固として
一字一句変えないという党と、その真ん中の第三の勢力、改憲の部分も
あれば護憲の部分もあるという、その三つの話し合いによって日本が自前
の憲法を持つ、それをぼくは望みます。
是非首相になってもらいたい人はいますか。
一人だけいます。中山恭子さんです。あの人は一番大事なもの、すなわち
国家の理念の原型を持っている。
こないだ、二人で話して同じ意見なので驚いたんですが、中山さんは拉致
問題を同情心でやっているんじゃないですよ。
ぼくは戦後の60数年の日本の歩みを、平和国家の歩みと思ってはいませ
ん。戦争はありませんでした。
だけども北朝鮮に、わたしたちのが同胞が八十人から百人ぐらい奪われた
ままです。
その被害者と家族凄まじいの苦しみ、尽きることのない悲しみが、北朝鮮
という、主権国家の、まさしく国家の行為として引き起こされながら、
『戦争がなくて平和な国家でよかったね』って、何でしょうか、それは。
国民が他国に奪われたままで、自分たちだけは安全だから平和国家などと
称しているなら、主義主張を超えて、人間として恥ずべきことです。
最後の一人まで取り返さない限り、この国は国民国家とは言えなくなって
いきます。
中山恭子さんは『拉致問題が解決して初めて日本は平和国家になれる』と
いう趣旨をおっしゃっているのです。
ぼくは先に申しましたね。この国の理念とは何なのか、そこが一番大切で
すと。
わたしたちは二千年の歴史を積み上げてきて、きっかけは敗戦かもしれな
いっけれども、みんなで努力してわれらのオリジナルの民主主義を作って
きました。それは天皇制と両立する民主主義です。
平和国家とは戦争がなくて、自分が戦争で死ななくて済むという話じゃな
くて、国民の最期の一人まで、一緒に幸せになるんだというのが平和国家
であり、だから拉致問題を解決する。
そういう理念を語れる人だから、中山恭子さん奈良首相に迎えたいと思い
ます。
理念づくりがしっかりと始まれば、それに沿って新しい経済政策、ポスト
・アメリカ時代の危機に耐える経済政策やインドや中国の膨張をむしろ逆
手に取る新しい外交政策も、民と政、官がこれまでの利権構造を外して連
携して創っていくことがきっとできる。
だから宰相は、何よりまず理念を創る人であるべきだと思います。
生まれ変われるとしたら今度は何をやりたいですか。
少年時代の思いの中から、ひとつ挙げるならレーシング・ドライバーです。
今も、ロータスというレーシングカーに乗っているんです。と言っても、
ほとんド乗る暇はないのですが…
昔に取得して、いったん失効していたA級ライセンスを、こないだJAF
(日本自動車連盟)の公式記録に残る小さな記録会に出て、取り直したば
かりです。
徹夜で原稿を書いてサーキットに行きましたから、つらかったですが。
ぼくの生家は古い繊維会社なんです。繊維不況のために閉鎖した工場の跡
地を2か所、亡き父が社長時代に自動車教習所に転換したんですよ。
昔の教習所は日曜日が休みでしたから、小学生の頃から教習車をコースで
走らせて、車と一緒に育ちました。
だから自然にレーシング・ドライバーになろうとして、A級ライセンスも
取ったりしたのですが、これをやると自分のことだけになっちゃって、世
の中全体をよくする仕事はできないと思って途中で諦めたんです。
それでも、今でもたまにロータスを短時間走らせただけで、その後ひそか
に心の中でじっと味わいながら仕事をしたりしますから、生まれ変われる
としたら今度はレーシング・ドライバーかもしれませんね。
作家かなと思っていましたが。
・・・それはすでに、プロの物書きでもありますから。おっしゃった意味
は小説家という意味ですね。
小説も、純文学の単行本を文藝春秋から出していますが、今のところ、たっ
た一冊ですから、確かにプロの小説家であるとは恥ずかしくて言えません
ね。もしも生まれ変わってレ-シング・ドライバーになっちゃってたら、胴
体視力が衰えて引退した後には、小説書きだけをやりたいですね。テレビも
出ない、ノンフィクションは書かない、小説のみで。
もしも神様から『人間への生まれ変わりは駄目だよ』と言われたら、ぼくは
ミミズになります。本気ですよ。
ミミズになって地を這い回って、自分の罪を償わせてもらいます。
生きている限りは、いろんな人を傷つけたかもしれないし、そういう罪を償
うためにミミズになって地を這い回ります。本気です。
ありがとうございました。
はい。
独研党を作ってはどうですか。
(羽田に向かう車に飛び乗った青山氏を追いかけて改めて質問)
・・・ぼくは正直、このごろ政治家が嫌いで仕方がないんです。
いや、それだからこそ、独研党を作ってはどうですか。
・・・考えてみます。
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