≪インタビュー≫  聞き手・蛭田有一
政治家の前にどんな人間でありたいと思いますか
ありきたりですけどウソを言わないとか筋を通すとか、子供が見て親父頑張
ってるなと思ってくれるような人間でありたいとは思っています。
特に好きな言葉はありますか。
座右の銘はといわれるとありませんと言っちゃう方ですから(笑)。
これだけは人に負けないと自負するものは。
真面目なとこですかね。
今の時代、真面目な人はあまり評価されないですね。
真面目にコツコツやっている人が、評価されるというのがすごく大事じゃない
かな。
要領がよかったり、調子よかったりというのも大事かもしれませんけども、そ
れだけが過大評価されちゃうというのはまずいかな。本当にコツコツ努力して
くれる人がいるから社会がもっているわけで、そういう人を大切にすることが
大事です。
政治家の家系として4代目になるんですね。
そうですね、曾おじいさんが県会議長で政治家をやった最初です。
3代の中で特に影響を受けた人はいますか。
昔、親父が新自由クラブを作って自民党を飛び出したことがありまして、その
とき日本中をグルグル回ってあまり家にいられなくなったんです。
僕が中学1,2年のときですけど、真夏のある日に家に帰ってきて、なんで手
一緒に風呂に入ったら、親父が手袋しているんですね。
袋して入るのって聞いたら、えって怪訝な顔をするんです。
それでよく見たら、いつもマイクを握って演説していますから、手が真っ黒に
日焼けしているんですよ。
それを見て親父のやっているすごさ というのが分かって、やっぱり真面目に
一生懸命頑張らにゃいかんなと思いました。
それは今でも鮮烈に印象にありますね。
河野さんは政治家としてどう評価されたらうれしいですか。
政治家の評価というのはそれこそ50年、100年経って決まるんでしょう。
いま人気投票みたいなもんですよね。
あれだけ人気があった安倍晋三も麻生太郎もそうですが、評価はいろいろ言
われて変わります。
それより50年、100年経って振り返ってどうだったのというのが一番かな
という気がしますね。
今の評価は気にしてもしょうがないと。
その時々の評価はマスコミに取り上げられる。取り上げられないで変わって
きますし、それもひと月経ったら麻生さんみたいに、ぱっと手の平返されちゃ
ったりもしますので、あんまり気にしてもしょうがないでですね。
アメリカの衰退による世界の多極化と、チェンジを強調したオバマ大統領の
誕生によって日米関係は変わりますか。
オバマ大統領になったから日米関係が変わるかといえば変わらないと思い
ます。
大統領が代わったから変わるほどやわな同盟じゃないと思っています。
戦後60数年、その間ずっとアメリカの基地を日本に置いて、そのお蔭で平
和は維持されていますけども、独立国が100年、他国の軍隊の基地を置い
ておくというのもあまり例のないことで、このあり方をいつまでやるのってい
うことをそろそろ考え始めないといけないのかなとという気はします。
それがこの10年、20年の間に来るかどうかもまだ分かんないですけども、
そういうことは考えておかないといけないとと思うんですけどね。
沖縄にはまだ多くの基地がありますが、いつまでもこんな状況を続けてはい
けないと。
日米同盟で半世紀以上平和が保たれていますから、それはそれで良かった
と思います。
ただそれで未来もずっとやっていっていいのかというのとはまた別問題だと
思うんですね。いやそれでもいいということかもしれませんし、それは違うだ
ろうということかもしれませんけども。
今までやってきたのは全然間違ってがっていないし、その日米同盟をこれか
らも強くしていくにはどうしたらいいのかという議論は当然しなきゃいけませ
ん。その一方で、よーく考えると、他の国の軍隊がずっといるというのはいい
のかというのは1回問いかけないといけないだろうなと思います。
日本の安全を丸投げしている限り、アメリカとの従属関係の解消は難しいと。
アメリカ軍を置かないで自分で守りますと言うなら、軍事費はいくらかかりま
す、それを補うのにどうしますと言わなければなりません。そうしなきゃ議論
が始まらないじゃないですか。
アメリカがいるのはけしからんと言うけど、じゃアメリカがいなかったらどう
するのという話はしないで、ワーワー言ってるだけというのは、なにかの戯言
でしかありません。
外交ですからもの言いは慎重に、しかし言うべきことは毅然と主張しないと
友達に注意するとき、第3者に分からないようにやるのと同じで、日本政府が
アメリカにそこはおかしいからこうした方がいいよというのをマスコミの前で
やるのがいいとは限りません。
経済危機に直面するアメリカは自分のことで精一杯となり、日本は否応なく
自立しなければ成らなくなったと言う人がいますが。
今までも何かあったらいつもアメリカが助けてくれたわけじゃありません。
オバマになったから日米関係はどうのこうのというのは、世の中を斜めに見
ているとしか思えないですよね。
アメリカの基地があるからとか、アメリカと日本の力の差が違うから、日本は
アメリカの言うことを聞いているんだみたいなことを言う人がいるけど、それ
は現実と違うんじゃないかと思いますけどね。
強大化しつつある中国は覇権的傾向がみられるだけに、将来の日中関係が
心配ですが。
日米同盟がちゃんとしていればそんなに心配する必要はないと思います。
日本も中国がなければやっていけないけれども、中国だって日本やアメリカ
がなければ経済的には全くなりたちっません。
攘夷みたいに外国はみんな嫌いだみたいな見方をする人もいますけども、
中国は悪いやつだと大声で言ってみたって何の問題解決にはならないわけ
で、それこそ中国には環境に気を付けて、エネルギーを無駄使いしないよう
にときちっと言って助けてやることが必要なんじゃないかと思います。
日本はアジアの発展のために、今後どんなアプローチが必要ですか。
これから先のことを考えると石油だってなくなるでしょうし、温暖化対策だっ
て経済成長しながらどうやって解決していくのか、食料の問題もあるし、それ
はもうアジアに限らず、とにかく地球に限界があるということをみんなで共有
して、日本の技術を使ってその限界を超えないようにしていかないといけな
いでしょうね。
そのことを日本は世界に積極的にアプローチしているんですか。
もっと明確にやった方がいいと思いますね。
それだけの技術があるわけですから。例えば温暖化対策だって、日本の電
力会社の圧力でやるべきことをちゃんとやっていない。
政治家が電力会社から献金もらったり、電力会社の票をもらったりして電力
会社が別格みたいになっているのはよくないですね。
実は、日本は世界に冠たる資源大国で、日本近海にはメタンハイドレードと
いう天然ガスが年間消費量の250年分埋蔵されており、これを開発すれば
もう中東から言い値で石油を買う必要はなくなるという話をご存知ですか。
メタンハイドレードだって全く無尽蔵ではないです。
要するに、石油や石炭やウランに頼らないでどうやっていくのというのがエネ
ルギー問題の鍵だと思います。
100パーセント再生可能エネルギーで必要なエネルギーをまかなっていくと
いうのが人類共通のゴールであるべきです。それは太陽光であり、風力であ
り、波の力であり、地熱であろうと。
これから中国、インドが経済成長すれば、かつて10年で使っていたものが
1年で無くなっちゃうかもしれないわけですから。
石炭が石油になりました、ウランになりました、天然ガスになりました、メタ
ンハイドレードになりましたといっても結局は同じ話で、そんなことを言って
るようじゃダメなんだと思うんですね。
そうじゃなくて、再生可能なエネルギーで、いかに全部まかなっていくかとい
うのが、今やらなきゃいけないことだと思うんですよね。
メタンハイドレードの話は日本人が自信を取り戻すきっかけになるのではと
思いますが。
メタンハイドレードが沢山あるのは事実ですけど、それは無尽蔵にはないわ
けで、使えば減ります。
メタンハイドレードを燃やせば二酸化炭素が出ますから温暖化につながりま
すし、メタンというのは温暖化ガスですから、それを使えばいいというのは全
く解決策になっていないですね。
テレビなどで麻生政権は崩壊寸前で、次の選挙後は自民党自体もなくなる
という人がいますが。
自由民主党って何だというと、資本主義であり、民主主義であり、日米同盟
だったんですね。
自民党というとまず共産主義でない人、社会主義でない人の集合みたいな
ものだったんです。
55年体制は共産党や社会党のの勢力が強かったですから、そこと自民党
は闘っていたんだと思います。その結果、共産主義はなくなって自民党が勝
ちました。
今共産党も社会党も議会の中では数パーセントしかいませんから、もう9割
以上が昔自民党が言っていた資本主義、民主主義、日米同盟には賛成です
ということになりました。
小選挙区でやれば共産党も社会党もほとんど当選する人はいないわけです
から、第一ラウンドは自民党が圧勝しました。今や日本には資本主義に疑い
を持つ人はあまりいないし、民主主義に異論をはさむ人もいないし、日米同
盟も大多数の人は支持します。
要するに自民党がいっていた通りになって第一試合は終わりました。
ところが第二試合は何を主にするのかといったときに、それがないのがいま
の自民党だと思うんです。
要するに今度は主張を明確にして旗立てて、うちはこういう政党ですと言わ
なきゃいけないのにそれができていないというのが問題なんです。
みんな自民党を支持してほしいみたいなことを言っているから、全くメッセー
ジが出なくなっちゃった。
今やんなきゃいけないのは、自民党はガリガリと市場で競争して勝った者が
天下を取る。要するに、汗をより沢山かいた者が成功するのを保証する政党
なのか、それとももっとセイフティーネットを手厚くしましょうよと、多少経
済コストが高くなって中国との競争に負けても、みんなが同じようなら嫉妬も
ないからいいじゃないかという政党なのか、どっちなのかを明確に言わなきゃ
いけないのに、両方にいいようなことを言っているからダメなんです。
幸いなことに民主党も同じなんです。
だから自民党はこういうメッセージを出す政党だからこれに賛同する人は集
まって下さいと言わなきやいけないんです。
自民党は新たなメッセージを出せる政党に変われますか。
共産主義でない人、社会主義でない人は来てくださいと言って集めたら、9
割の人が来ちゃったわけです。
ところがその9割には、市場原理で伸ばそうという人も、規制で守られてる人
もみんな入っています。今度はその中でお互いに意見が合わなくなって、こ
の9割が今だんだんばらけてきている。
その9割の中のこういう人は自民党に来てくださいと言わなきゃいけないんで
す。
自民党と民主党の決定的な違いはどこにありますか。
ありません。だからすぐに大連立しましょうみたいな話になっちゃうし、選挙
に出ようと思ったら、自民党の現職がいたから民主党に行ったという話になっ
ちゃう。
次の選挙後、政界再編の動きは出そうですか。
たぶん出てこないと思いますね。
というのは民主党はこのままいくと圧勝しますから、別に再編しようという必
要性を彼らは感じないでしょう。
圧勝とは単独で政権を取れるということですか。
そうなるでしょう。単独で取るんじゃ無いですかね、このまま行けば。
そうすると再編する必要はないということで終わっちゃうと思うんです。
日本の政治がどんな理念で分かれたらいいと思いますか。
比例代表をやめて小選挙区にすると完全な二大政党になり、それで政権交
代すればいいと僕は思っています。
ひとつは競争に強い経済を作って海外の競争に勝とうという政党。
もうひとつは、そんなことよりもみんな平等でなるべくセイフティーネットを
手厚くしてやろうよという政党。
つまりガリガリ競争をやっているうちに、社会がバラバラになってくるんで、
そうするとセイフティーネットをきちっとしましょうという政党が政権を取る。
そしてコスト高になって競争に負けて経済が停滞するので、やっぱり経済は
伸ばさにゃいかんという政党に振れて経済を伸ばす。
伸びたけれども軋みが大きくなったので再び政権交代して軋みをなくすと。
河野さんはどちら側ですか。
どちら側と言えば、バリバリ行こうという方です。
河野さんが目指す日本の国家像とは。
日本はというより、もうこの地球はそろそろ限界にきていますね。
その限界を超えないで、80億にもなるといわれる人類がそれ以外の動植物
と一緒になって、この星の上で生きていくためにはどうしたらいいのという
と、たぶんエネルギーや色んなものを転換しなきゃいけないと思います。
ひとつは、これだけ技術がある日の政治家として世界の先頭を切って、価値
感変えましょうと。
変わらないとその限界を踏み超えちゃいますから。
日本をこうしたいというのも大事だけども、その前に限界を超えずに80億の
人間が食べていくためには、やっぱり世の中を変えなくてはダメですよね。
日本はこうやって地球を救って、みんなで共存していくぞと、日本に続けとや
っていかないとダメかなという気がしますね。
そういう理念を端的な言葉で言うと。
限界を超えない国づくりというか地球づくりですね。
限界を超えたら地球は崩壊しちゃいますから。温暖化問題やオゾンの問題
を考えると、もう一部限界を踏み越えているところがあるんで、この地球にど
こまで持続可能な社会を作って生き残れるかをやっていかないと。
そのりだーシップを日本がとるしかないのでは。
日本は取れると思いますか。
取らないと少なくとも孫の時代はないと思いますね。
これだけ急速に環境が悪くなっていますから、子供の時代だって心配だけど
も、孫の時代はそれこそSFみたいな世界になっちゃう可能性があるんじゃな
いかと思いますね。
ありがとうございました。