被団協新聞

トップ >> 日本被団協について >> 被団協新聞 >> 非核水夫の海上通信

非核水夫の海上通信

このコラムは、川崎哲氏(ピースボート地球大学)によるもので、「被団協」新聞に2004年6月から掲載されています☆☆

2016年12月 被団協新聞12月号

日印協定 核拡散の助長に

 11月、安倍首相とインドのモディ首相は日印原子力協定に署名した。NPT非加盟の核保有国インドに原発を輸出し核技術の協力をしていくということは、核不拡散体制を根幹から揺るがすものだ。
 政府は、インドが核実験を行えば協力を停止するという。だが核実験は国連の制裁対象であって、協力停止は当たり前だ。包括的核実験禁止条約への署名を約束させるべきだった。さらに日本は、インドによる使用済み燃料の再処理を認めた。これは、核兵器材料物質の生産支援ともいえる。南アジアの核軍拡競争に火を注ぐ行為だ。
 これを北朝鮮はどう見るだろう。核開発を強行し非難を受けても、やがて国際社会は受け入れてくれると見るのではないか。まさに核拡散の助長である。
 国会での批准承認に向け、徹底的な論議が必要だ。

2016年11月 被団協新聞11月号

もんじゅ 廃炉を決めても…

 高速増殖炉もんじゅ(福井県)の廃炉が固まった。95年の大事故以降、数々の隠蔽や不正が明らかになり、1兆円を費して成果なく終わる。核燃料サイクルの要たる施設が幕を下ろすことは、日本の原子力政策の大転換点になる、はずだった。
 ところが政府は「高速炉」開発を進める方針を打ち出した。あくまで核燃サイクルを続けるという。使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し再利用するという核燃サイクルは、もともとは高速増殖炉ありきの計画だった。だがそれが困難になると、MOX燃料利用が推進された。今回もんじゅ廃炉が決まってもまた延命策なのか。
 既に日本はプルトニウムを48トン抱え、国際的な懸念の的だ。技術的見通しも経済的合理性もない延命ではなく、核燃サイクル政策そのものを終わらせる英断が必要だ。

2016年10月 被団協新聞10月号

北朝鮮 冷静なビジョンを

 北朝鮮が今年すでに2回の核実験を行なった。そのたびに制裁強化が語られる。しかし経済制裁とは、そもそもあった経済関係が閉ざされるから効果がある。米国や日本にはもはや閉ざすべき関係すらない。だから中国が制裁を厳しくすべき、となるが、中国にとって北朝鮮は対米緩衝地帯である。どのような秩序をこの地域に作るのかというビジョンなしに対北朝鮮政策もない。
 中国が議長の6カ国協議による2005年の共同宣言がもっとも現実的な出口を示している。北朝鮮の核放棄と経済協力や国交正常化を組み合わせるのだ。
 オバマ政権は北朝鮮に無関心、無策だった。だがこれ以上の放置は許されない。北に刺激され韓国では核武装論、日本では安保強化と改憲論が大手をふるっている。もっと冷静な地域安全保障ビジョンがいま必要だ。

2016年9月 被団協新聞9月号

安保理決議 実験禁止だけでなく…

 オバマ政権が核実験禁止を求める国連安保理決議を提案する方針だという。96年に核実 験を全面禁止したCTBTは未発効のままだ。米国と中国を含む8カ国が未批准だからであ る。オバマ氏は批准したいが議会が承認しない。米国がしないから中国もしない。
 安保理決議が実現すれば、米中を含んだ核実験禁止の国際規範ができるという意義はある 。だが安保理はそもそも5大核保有国が拒否権をもち支配する機関であり、差別的な国際関 係の象徴だ。これまで核実験をくり返してきた保有国はもうする必要はないが、他の国には 核実験をさせず新規開発国の手をしばろうというわけだ。核不拡散の発想である。
 保有国側の課題も問わねばフェアでない。安保理決議するなら、核実験だけでなく核の使 用禁止と廃絶義務を宣言すべきだ。

2016年8月 被団協新聞8月号

先制不使用 日本政府の態度は

 オバマ政権が核の先制不使用政策を検討していると米紙が報じた。予断は許されないが、早ければ本コラム掲載前にも決定が下されるとの見方もある。先制不使用とは、核攻撃に対してのみ核を使うという役割限定政策だ。とても小さく不十分な一歩だが、広島を訪問したオバマ氏が最後に何か形を残そうとしている証かもしれない。
 注目すべきは日本の対応だ。オバマ大統領が2009年に核政策を見直した際、日本政府は先制不使用に難色を示した。抑止力が弱まるというのだ。これに対し国会議員200人強が先制不使用支持を表明し、当時の岡田外相も積極姿勢を示したが、政府は支持しなかった。
 今回も政府内では反対論が大勢だという。先制不使用すら賛同せずに核なき世界を「必ず実現する」(広島で安倍首相)とはよく言うわ。

2016年7月 被団協新聞7月号

オランダ 市民が議会を動かす

 オランダ政府は、核兵器禁止条約の交渉開始に積極的に関わらなければならない。このような動議が5月、同国議会で大多数の賛成により採択された。これは、オランダの平和団体PAXが4万5千人以上の署名をえた市民提案を行ない、議会が4月にこれを討議し、その結果採択されたものだ。このほか国内に置かれた米国の核に関する密約を解明する、核の近代化を不要とし核軍縮を推進する、米国との協議で核の任務を拒否するという3つの動議も採択された。
 オランダは日本や豪州と同じ核の傘下の国であり、核兵器禁止条約には一貫して否定的だ。それでも議会が政府に命じれば、政府は従わなければならない。禁止条約交渉から政府が逃げることは許されなくなった。そのような動きを市民が作った。日本でも同様の動きは作れないものか。

2016年6月 被団協新聞6月号

国連作業部会 日本政府熱弁の中身

 5月の核軍縮国連作業部会を傍聴した。議場は核兵器禁止条約の交渉を求める多数国と、反対する核の傘下国の二派に分かれ、前者をメキシコが、後を日本が率いる構図だった。
 日本の佐野軍縮大使は初日から禁止条約への牽制を強力に展開した。議長が用意した文書が禁止条約派よりだと批判してみたり、「北東アジアの安全保障環境は厳しい」「核兵器国抜きで議論すべきではない」等とくり返した。
 これに対しメキシコは、核の傘下国が主張する段階的な手法は「現状維持」でしかないと批判し、両国が激しく応酬する場面もみられた。
 日本政府は日頃「核兵器国と非核兵器国の橋渡しをする」と言っている。だがジュネーブで展開されたのは他でもない、日本が核兵器国側の主張を、欠席する彼らに代わって熱弁する様だった。

2016年5月 被団協新聞5月号

G7外相会合 翻訳での姑息な誇張

 G7外相会合が4月に広島で開かれた。平和公園を訪問した7カ国外相は広島宣言を発表。そこには原爆投下が「甚大な壊滅と非人間的な苦難」をもたらしたとされた。岸田外相は会見でその言葉を成果として強調した。
 だが「非人間的な苦難」というのは誤訳だ。英語原文は「human suffering」すなわち「人間の苦しみ」。人間が苦しんだという客観表現であり「非人間的」が持つ道徳性の含意はない。被団協は原爆の「反人間性」という語を用いているが、そのような価値観を伴う表現ではないのだ。
 むろん米国を含む外相らが「人間の苦しみ」を認めたことに意義はある。だが翻訳で誇張するのは姑息だ。政府は被爆地世論にアピールをしたかったのだろう。ならば言葉をごまかすのではなく、実際の核廃絶への行動で示すべきだ。

2016年4月 被団協新聞4月号

危険なお荷物 日本のプルトニューム

 東海村にある331キロの研究用プルトニウムが米国に返還される。これはオバマ大統領が進めている核物質管理強化の一環だ。サバンナリバー施設まで船で運ばれるが、核兵器50発分にも相当する量の物質が海上輸送されるのだから、大変に危険だ。それでも核テロ防止と核不拡散のためには必要だという。
 一方で日本は原発の使用済み燃料から出たプルトニウムを48トン保有している。さらに今後六ヶ所村の再処理施設を稼働させて増産する予定だ。少し返還してみても、それ以上に増やしたら意味があるまい。
 米国のカントリーマン国務次官補は3月、議会公聴会で、日本や中国が再処理を進め韓国もそれに続こうとしていることは核拡散上の「懸念」だと述べた。日本のプルトニウムは世界の危険なお荷物になっている。

2016年3月 被団協新聞3月号

脅威とは何か ミサイルとロケット

 北朝鮮が1月の核実験に続き2月にミサイル実験を行なった。人工衛星打ち上げロケットと主張している。
 ロケットとミサイルは燃料で推進する飛翔体という意味では同じだ。衛星を載せていればロケット、軍事用弾頭を載せていればミサイル。用途で呼び方が変わる。
 国家のロケット開発を規制する国際法はなく、各国が事前通告を行なうのが慣習だ。北朝鮮の発射もこれに沿っていた。ただし北朝鮮は国連決議で核・ミサイル実験を禁じられており、これに違反したことは明らかだ。
 北朝鮮は、ロケットは国産だと誇らしげに強調した。
 ドラマ「下町ロケット」を思い出す。「北朝鮮がミサイルを発射しました」とテレビ各局が絶叫する一方、H2Aロケット発射は国民を挙げて歓喜する日本。滑稽ですらある。
 脅威とは何か冷静に考えたい。

2016年2月 被団協新聞2月号

国連作業部会 核禁止の法的措置検討へ

 核兵器のない世界のための「法的措置」について検討する国連作業部会が2月、ジュネーブで始まる。これは昨年10月の国連総会第一委員会にメキシコなどが提案した決議によって設置されたものだ。核兵器禁止条約について議論する場になる。
 核の非人道性に関する過去3回の国際会議を踏まえ、昨年のNPT再検討会議には核兵器禁止条約のさまざまな選択肢の提案が出されていた。今回の作業部会はこの流れを受けたもので、核なき世界を達成し維持するための法的な措置、規定、規範を実質的に討議するものとされる。禁止条約の中身を具体的に議論する好機だ。すべての国に開かれ、市民社会の参加も認められる。2月、5月、8月の3回に分けて計15日間開催され、10月の国連総会に報告する。
 作業部会で禁止条約の具体像を描いた上で、来年は条約交渉開始へもっていきたい。

2016年1月 被団協新聞1月号

日印政府合意 核軍拡の悪循環

 12月に安倍首相が訪印しモディ首相と原子力協力「合意」を発表した。なんたる暴挙か。
 そもそも福島の原発事故が収束すらしていない中で原発輸出を進めるのは倫理にもとる。
 さらにインドの場合はNPT非加盟の核保有国だ。政府は、協力は平和目的に限定するというが、何の保証もない。包括的核実験禁止条約への批准や、兵器用の核物質の生産停止などの約束すらない。
 仮にインドが核実験をしたら協力を止めるというが、そんなことは当たり前であって歯止めにはならない。
 原子力供給国グループ(NSG)にインドが入ることを支持するとまで言っている。インドの特権的地位を固定する内容だ。隣国パキスタンだって同等の地位を求めるだろう。核軍拡の悪循環だ。日印政府の具体的合意内容は明らかにされておらず、これから国会で徹底的に追及しなければならない。