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TOP mook 動物ジャーナル バックナンバー 動物ジャーナル95・先進国って何?(十六・完) 

シリーズ「先進国って何?」

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 シリーズ・特別編 1

 ■ 動物ジャーナル96 2016 冬         『動物ジャーナル96 2016冬』掲載記事のweb用増強版

 ドイツに倣えば 日本の動物も人も幸福になれるか?

先進国検証グループ

 第一章 「リードの着用が義務付けられているでしょう !!」
ベルリンに本部を構え、隣国スイス、オーストリアもカバーするニュース専門放送局N24が、僅か1分半で、ベルリン犬事情の有りのままを伝えたニュースをご覧下さい。

YouTube N24公式チャンネルより  配信開始日2012年10月16日
以下、青字は訳文です。解り難い部分は※で補足します。
0:00〜0:03 [言い争い]
リードの着用が義務付けられているでしょう!」…
※激しいやり取りの為、言い争いの全てを聞き取れませんでした。

0:03〜0:16 [モデレーター]
ドイツでは、犬を巡る争いが日常茶飯事のように起こっています。
  
「遊んでいるつもりなんですよ」等という飼い主の発言を聞くたびに、ベルリン在住のマーティン・ゴールドバッハ氏(※画面中央の男性)は怒りを覚えると言います。

ゴールドバッハ氏は、自身の娘が犬に襲われた経験から、このような状況を変えなければないと考え、「ベロ・ダイアローグ」と呼ばれる協議会に参加しています。

0:17〜0:27 [ゴールドバッハ氏]
犬の飼い主は、子どもが向こうからやってくるのが見えたとしても、犬をそのまま自由に、呼び戻すこともなく、とにかく、そのまま走らせたりします。
もう少し理解というか、もうちょっと周囲に対する配慮を持ってもらいたいと思います。

0:28〜0:48 [モデレーター]
それというのも、実際には法律で定められたルールがあるのです。
※犬のリード着用義務標識

※ノーリードの首輪を付けた飼い犬、  右は、犬のリード着用義務標識 

例えば、犬を(子ども専用の)公園に連れて入ることは禁止されています。
歩行者専用区域や指定された場所では、リードの使用が義務付けられていますし、
「危険犬種」とされている犬には口輪を装着しなければなりません。
左→ 犬の進入禁止、 例:公園
中→ 所定の時期・場所でのリード着用義務
右→ 危険犬種に対する口輪装着義務

しかし、このようなルールは犬好きの人にとっては厳格過ぎ、反対意見の人々にとっては、
緩過ぎるのです。「フィフィ」や「ベロ」のためにどのような改善がなされるべきか、協議会の
場で激しい議論が交わされています。
※フィフィ(Fifi) ベロ(Bello)は、ドイツで、よくある犬の名前

0:50〜0:53 [協議会場内]
犬が誰かに迷惑をかけているわけでもないのに、緑地でのリード着用が義務付けられるなんて我慢なりません。

0:53〜0:57 [協議会場内]
更なる法律、新たな法律の制定で終わらないことを、とにかく願うばかりです。

0:53〜0:59 [協議会場内]
そうですね、私は基本的にリード着用義務に賛成です。

1:00〜1:05 [モデレーター]
犬の飼い主たちは口を揃えて、リード着用だけでは何の効果もないと言います。
犬が飼い主の命令に従順かどうかが重要だと言うのです。

1:05〜1:10 [公園内]
犬の飼い主が皆、まずは、この問題に敏感になり、基本知識を身に着けることができるように「飼い主免許」を義務付けるのが良いと思います。

1:10〜1:13 [公園内]
犬というのは、その大きさを問わず、全く危険でないということは絶対にありませんからね。

ベルリン州の年次報告書(2011〜最新の2015 年版)によると、ベルリン州内の対人咬傷事故では、飼育数が多いダックスフントが、大型犬のドーベルマンとほぼ同数の加害犬であり、「大きさを問わず」は十分根拠がある話。

1:13〜1:16 [公園内]
リードの着用義務が必ずしも状況を改善するとは思いません。
むしろ、犬のしつけ次第です。

1:17〜1:26 [モデレーター]
これから6カ月にわたり議論と解決策の模索が続けられ、その提案がベルリンの犬に関する新たな法律に取り入れられる予定です。
※訳文ここまで

さて、いかがでしたでしょうか?
このニュースで映っていた犬のリード着用義務標識は我が国で公共放送局を名乗るNHKが、複数の番組で紹介してきたグリューネヴァルトGrünewald)内に設置されているものです。

この標識の右下には、標識の設置者として、グリューネヴァルトの南西部を管理する区名※が、記されています。
※シュテーグリッツ=ツェーレンドルフ区(Bezirksamt Steglitz-Zehlendorf)

また、リード着用義務標識の上には、保護された緑豊かなエリア(Geschützte Grünanlage)を示す、別名チューリップ標識も設置され、これらの2枚の標識は、ノーリードの犬が緑地を自由に走り回り、荒らすことを防止するためのものです。
別名 チューリップ標識


つまり、グリューネヴァルト全域が「ノーリードOK」ではないことになり、その理由は、グリューネヴァルトがベルリン州法やドイツ連邦法に加えて、EUの生物多様性戦略(ナチュラ2000)の下、厳格に管理されている自然保護区だからです。

 ナチュラ2000のシンボルマーク

因みにEUが公開しているナチュラ2000ビューワー※でグリューネヴァルトを見てみると以下の
ようになります。
 ※ http://natura2000.eea.europa.eu/ (サイトが重いので表示まで少々時間を要します)

わかりやすいように地図のみで表示させています(和文は当会で加筆)

上の地図では、現状で規定されている自然保護区、風景地保護区、自然公園、SPA(鳥類の生息に重要な場所)等が色分けで表示されています。

ご覧のようにグリューネヴァルトは「犬のための公園」ではなく、自然公園、自然保護区であり、あくまで決まりが守れるという条件で、犬の同伴が許されているに過ぎません。

よって「全域ノーリードOK」、「リードの着用は飼い主の判断に任されている・・・」等の話は、真っ赤なウソということになります。

ベルリン州による犬の規制区域ガイド(2017年最新版)より 和文は当会で加筆

ベルリン州によるナチュラ2000とグリューネヴァルトの解説  https://goo.gl/wRW9pV

尚、ベルリンに於けるリード着用等については、先ほどご覧頂いた動画に登場していた、ベロ・ダイアローグという協議会を経て、昨年、議会で犬の新しい条例が成立、段階的に施行されます。

よって、今後、犬の立ち入り禁止区域の変更等が予想され、仮に犬と共にベルリンを訪れる場合は、決して我が国のメディアや自称専門家等が流布してきた、「ノーリードOK」を鵜呑みにせず、ベルリン州観光案内HPをご覧になることを強くお勧めします。


ベルリン州観光案内HP https://www.visitberlin.de/en/berlin-dog
同サービスセンター nfo@visitBerlin.de
同外国人観光案内所 hallo@visitBerlin.de
[第1回 終]

ドイツに倣えば 日本の動物も人も幸福になれるか?

(『動物ジャーナル96 2016冬』掲載記事のweb用増強版)