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TOP mook 動物ジャーナル バックナンバー 動物ジャーナル95・先進国って何?(十六・完) 

シリーズ「先進国って何?」

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 シリーズ・特別編 1

 ■ 動物ジャーナル96 2016 冬         『動物ジャーナル96 2016冬』掲載記事のweb用増強版

 ドイツに倣えば 日本の動物も人も幸福になれるか?

先進国検証グループ

 はじめに
相も変らず、我が国のメディアやネットの世界では「動物愛護の先進国ドイツ」という軽い
神輿が練り歩き、それに釣られて観衆も「ドイツに倣え!ワッショイ!わっしょい」のようです。

しかし、皆様お気付きでしょうか?
我が国でのドイツ動物愛護事情を伝える報道等は全て『和製』。
せっかく現地を取材しているのに、現地の実情をじかに伝えるものではありません。

ドイツにも当然 新聞、テレビ、ラジオがあり、インターネットに特化した報道もあります。
更に我が国同様、飼い主向けサイトや犬好き猫好きが集う掲示板も存在し、動物に関する問題は、議会でも議論されています。

しかし、これらを我が国で紹介したものは殆ど存在せず、我が国のメディアが伝えてきたドイツの動物愛護事情は端的にいって、実態とは異なる「メルヘン」です。

海外の動物愛護事情を「メルヘン」化して伝えることは我が国の歴史的!因習であり、長年、我が国で語られてきた英国のRSPCAに関する紹介もその一つで、「メルヘン」になってしまうのは、語り手がRSPCA 発の情報だけを耳にして論ずるからです。

スコットランド動物虐待防止会(SSPCA)による新聞意見広告(2009年2月)
 
※活動をしていないスコットランドで「動物を救います!、寄付をお願いします!!」とRSPCAが
宣伝をしていた為、地元のSSPCA(1839年創立)が、たまりかねて広告を出しました。
関連報道:英ガーディアン紙 https://goo.gl/nzgVbd

因みに昨年、英国中央政府の環境・食料・農村委員会では、犬猫の販売や動物虐待を巡る長年の問題を根本から討議し、答申を出しましたが、この中で過去に司法長官が「古代の権利」※と称した、
RSPCAによる私人訴追の権限の見直しを求めています。
※2013年1月29日 英国下院議事中継より

これは、動物虐待事案をRSPCA が今までのように独自に起訴して裁判に持ち込むのでなく、RSPCA が動物虐待を認知したら、検察庁(CPS 1985 年創設)へバトンタッチすべきという判断で、これまで幾度かあったRSPCA に対する指摘の中で、最も厳しいものになりました。

このことは、RSPCA が動物虐待だと判断した飼い主の動物を許諾なく持ち去り殺害したり、動物を渡さない飼い主には訴追すると詰め寄る等の、いわば彼らの動物福祉向上を願う信念に基づく長年の行動が、そのまま容認される時代ではなくなったという背景を示します。また、寄付者の個人情報を不適切に扱い、データ保護法違反で、罰金を科されたことも同様です。

つまり、ダイアナ妃が亡くなった際、宮殿に半旗を掲げたことに始まり、国民に寄り添うべく王室が行ってきた自らの改革と同様の取組みを、RSPCA はしてこなかった、若しくは手法に誤りがあったと言えるかもしれません。

従って、「RSPCAが狐狩に反対した為、これに怒った保守系特定議員が私人訴追の権限剥奪を主張している」と市民に説明する学者がいるようですが、これは単純すぎて賛同できません。

英国の情報コミッショナー(ICO)による2016年12月9日付RSPCAへの罰金通知書
https://ico.org.uk/action-weve-taken/enforcement/rspca-cmp/

また、練りに練った法律が、なぜ現場で機能しないのか、その方策は何かを議論した、この委員会のような取組みは、我が国はもちろんドイツでも行われていません。

更にメモや事務方に一切頼らず、自分の言葉で繁殖やネット生体販売について話す担当大臣(45)。

EUとわたりあう農水系議員ながら、過去に漢方薬向け中国の熊牧場の解体に寄与し、英国内動物保護の実情にも詳しい委員長(60)等、この委員会の質疑過程は永久保存に値するもので、中継録画を含めて、いずれ紹介したいと思います。

家庭動物の福祉に関する英国中央政府の環境・食料・農村委員会の答申書
 
さて、話をドイツに戻します。ドイツの動物愛護事情が「メルヘン」として広まる構図も先のRSPCAのケースと同様です。30年以上前のことですが、歌舞伎ファンのバイエルン人とスコットランド人から「日本人は音楽や美術、料理以外、欧州のことを殆ど知らない」「だから欧州を美化し過ぎる」「もっとしたたかになれ!」と指摘されたことがありました。それぞれ自らは「ドイツ人」「英国人」ではないと主張する個性の強い方々でしたが、「美化し過ぎる」は的を射た指摘だったと今にして思います。

「メルヘン」の語り手は、以前は愛護団体でしたが、近年では議員や行政職員という新人も出現しており、こうなると、公金の無駄遣い=明確な実害と言えるでしょう。

本稿は、これらメルヘンに抗し、現地発直接の情報にもとづく実情をお伝えするものです。
その情報は、先輩たちの欧州行き南周り航路による西独視察(1960年代)、当会有志による西独視察(1985年)、更に現在の在独者からの意見等をベースに、独特の語り口で動物愛護事情を伝えるドイツメディアの報道に敬意を払いつつ、ドイツ行政発の情報をも含むものです。
これらを出来る限りそのままに紹介し、読者諸兄姉にご判断頂きたいと思います。

なお、内容は多岐にわたり、分量も膨大になるので、今回を第1回として、数回に分けて発表します。そのため、全体を先ずつかんでいただきたく、以下に[目次]と、少々の説明を加えて記しておきます。

ドイツに倣えば 日本の動物も人も幸福になれるか?

(『動物ジャーナル96 2016冬』掲載記事のweb用増強版)