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TOP mook 動物ジャーナル バックナンバー 動物ジャーナル77・先進国って何? (二)

シリーズ「先進国って何?」

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■ 動物ジャーナル77 2012 春  

先進国って何? (二)

 英国篇 その二

保護施設の実情(ブリストル大学調査)/RSPCAの安楽死処分終了宣言

青島 啓子


 もう遠い昔のような気がします、おぞましい奴隷制度おさらいと共に、第一回を書きましたのは。
二〇〇八年春号(動物ジャーナル61)、四年も前のことでした。
 あらためてその前書きを見ますと、「現今いわゆる動物愛護運動における欧米礼賛一辺倒の有様は如何なものか、欧米の現実が正確に伝えられているか疑問である、という立場から、当会〈仮称先進国検証グループ〉の調査に基づきシリーズとして企画する」という趣旨が述べられています。その検証はイギリス、アメリカ、ドイツを予定し、英国から始めました。奴隷制度にあえて及んだのは、私どもの「人間に優しくない人は動物にも酷く当る」という基本認識から、欧米の人身売買を確認し、その後の動物の扱いを眺めようと考えたからです。
 ようやく今回イギリス篇二回目として、最新情報をご紹介します。ほんとについ最近、二月四月の間に英国において報道発表されたものです。

ブリストル大学獣医学部の研究論文

 同大学ニュースとして二〇一二年四月三日にプレスリリースされた論文のタイトルは、
Are we really a nation of animal lovers?
(英国はほんとうに動物を愛する人々の国なのだろうか)
これは、同大学獣医学部紀要(三月二十八日発行)に掲載された、コリーナ・クラーク博士ら三人の研究者による
Number of cats and dogs in UK Welfare organisations (英国の動物福祉団体にいるねこと犬の数)を紹介したものです。
 今ここでは、プレスリリースの方を適宜省略しながら紹介したいと思います。

 この新しい調査では、二十六万以上のねこと犬が二〇〇九年一年間に救済団体の保護下に入ったと見ている。
 この調査の目的は、現在福祉団体にケアされているねこと犬の数、これら団体が収容能力一杯になった時期の比率・推移、及びこの十二ヶ月の間にこれら施設に入って来た数を把握することであった。
 ねこと犬は英国ではポピュラーなペットであるので、飼われている数は大体のところ、ねこ一千三十万・犬一千五十万と見込んでいた。
 今回の研究に協力した「英国福祉組織」は、ブルークロス、キャッツプロテクション、ドッグズトラスト、RSPCA、USPCA、SSPCAの他、純血種繁殖所救助をも入れた個人の施設を含むが、これら一千五百五十以上の組織が二〇一〇年十一月から二〇一一年六月までの間に、研究者から手紙・電子メール・電話で問合せを受けた。その内容は、最近保護・受入れたねこと犬の数、収容能力一杯で活動しているかどうか、この年の満杯であった時期、09年中に保護されたねこと犬の数は何匹か、これらについて詳細を答えてほしいというものであった。
 回答から得られたことは以下の通り。
二〇〇九年中にこれら福祉組織に保護された数は、ねこ十三万七十、犬十二万九千七百四十三。つけ加えれば、回答された組織の中、ねこを保護した施設の66%、犬を保護した施設の47%が、09年間十二ヶ月を通して満杯であったとしている。

 これらのことから考えて、現実に助けを必要としているねこと犬の数は、予想された数をはるかに超えていたようだ。常に満杯である施設にとって、収容率は、収容場所を増す必要性よりも、新たに家庭へ出す率によって調整されているためと考えられるからである。
 クラーク博士(動物福祉・行動学科)はこの調査報告にコメントして、次のように述べた。
「報告の公刊によってこの大きな難題に脚光をあてると同時に、この研究は、毎年々々望まれぬ動物を世話し、迎え入れる家庭を探している福祉施設──そこは多く無償のボランティアに支えられている──の多大な努力を実証するものである。
 私たちは、これら施設がこなしている驚くべき作業を、私たちとこれら施設との協働によって支え続けたいと思う。例えば、これら動物の世話をする最上の方法や縁付けの率をどうすれば上昇させられるかなどを研究することによって。
 私はこの研究に関った成行きで、救出され保護されていた子犬を養子にした。そしてこういう状況をもっと世間に気付かせることによってもっと多くの人が救助動物を養子にするよう働きかけたいと思う。しかし今、私たちは切実に、何故こんなにたくさんの動物がレスキューでしか終れないのか、或いは何故もともとの場所で打捨てられたのか、その理由をしっかりお知らせしなければならない。」
 この調査での質問の一つは、何故人々がペットを放棄したかということであった。
 調査者は、その放棄理由を施設が必ずしも常に記録してはいない上に、放棄した飼主の説明が常に正確ではないらしいと感じさせられた。しかしながら、得られた答からは、家政状況の変化と動物の問題行動の二点を特に考慮しなければならないことが明白になった。
 この研究は以下のような問題点、すなわち、救助される犬ねこの数が相当大規模なものであるという現実があり、その打開のためには、地区において不妊手術率を上げるための資金提供、犬において特に目立つ〈問題行動〉を減らすこと、責任ある飼主となる見込みのある人への教育と継続的助言、これらが必要だということを浮び上がらせている。

 救助された動物数について詳しく調査されたのは初めてのことである。それ故この調査内容は動物の健康・福祉にかかわる専門家たち(動物福祉団体をも含めて)にとって、家庭を必要とするねこと犬の数の傾向を見極めるのに有用であろう。
(紹介ここまで)

 次に、二〇一二年四月二十八日にイギリスのスカイニュース・電子版にアップされた
RSPCA Cases Soar Amid 'Rising Tide Of Cruelty'(王立動物虐待防止協会は〈虐待事件増加傾向〉のただ中にある)をご紹介します。

昨年中の虐待や放置による有罪判決は前年数の四半分を加えるほど上昇

 王立動物虐待防止協会の統計表によれば、実刑判決が27%増加している。
 この協会のインスペクター(検査官)ウッドリー氏は「残念ながら二〇一一年の統計は、虐待と福祉上の問題とが上昇傾向にあり、それは犬、ねこ、馬、及び家畜に一律的に及ぶ。」と語った。
 同協会が受けた電話の回数は前年の13%増、百三十万件に及ぶ。また動物の福祉に関する十六万件の通報を調査した。
 同氏はまた「動物を引受けるべきでない時に飼ってしまう人がいる。しばしば環境の変化はあるし、おそらくは経済上の理由から打捨てられた動物を、当会はたくさん保護している。彼らはたぶん動物を最優先事項としていないのだと思う。」と言う。
 結果として、同協会は激増した仕事量になんとか対処しようと努力中である。年間十二万頭の世話をしているが、一方で人目につかないが増加しつつある個人への有罪判決をとり付けている。
 同じくウッドリー氏の言、「我々はアドバイスするし警告も発する。警告は非常に効果的である。その助言は従わねばならない法律的なものだから、事例の90%は受入れてくれる。しかし、我々はなお法的行為を起さなければならない。動物たちが、娯楽や虐待のために意図的に傷つけられているところでは、その人たちを見つけ次第告発する。」

 最近の判決にはこのようなものもある。ノースヨークシャーの或る男が、罠にかかったキツネに向って二匹の犬をけしかけ、キツネが死ぬまで戦わせた。この全ての経過が携帯電話に録画されていたので、治安判事の法廷により十六週間(筆者注:たった四ヶ月)投獄されることになった。
 犬に関係する有罪判決は22%の増加を見る。馬に関して有罪を克ち得た数は三百八十六件から四百二十八件に増えた。
 RSPCAは、近時五百頭以上の馬の世話をしていて、そのことが資金的に大きな枯渇をもたらしている。これらの動物はしばしば獣医にかける費用がないために、放棄されるのである。
 RSPCAの主任管理官グラント氏は「当会は危機の限界点にまで来ている。我々は法廷や議会、警察、そして英国の虐待される動物のために公正を得ようと立上がる協力者を必要としている。」と述べた。
 家畜も、同協会の統計値によれば残酷に扱われる件が増加している。先週当スカイニュースの調査によってその残酷さが明るみに出た件で、二人の家畜工場従事者が反動物福祉罪で有罪を認めた。
 その報道記事は驚くべき内容で、あらゆる危機をしのいで生き残ってきたらしい、よろよろと歩く犬に対し、この二人はその背中を殴り、野菜の皮むき器を突き刺し、投げ捨て、死ぬままに放置したというものである。
 動物好きの国と言われるのに、人々がこんなに多くの悲痛亊に悩まされるのは、気がかりな傾向である。 (紹介ここまで)

 英国で酷い扱いを受ける動物が、かなりの数に上ることに驚かされます。
 ペットの保護施設(シェルター)も常時満杯のようですし、それは、無責任な飼主の多さを示すものでしょう。
 こういう資料に接すると、前回述べた「イギリスだって同じ」と伝えてくれた英国婦人の言葉が裏付けられた気がします。そして新たに、実状を隠したままにする、いわゆる愛護団体のいかがわしさを思わざるを得ません。
 次にもう一つ、「欧米では安楽死をしない」と喧伝される点も、くつがえすに足る資料がありましたので、以下にご紹介します。
 RSPCA=王立動物虐待防止協会ホームページにおいて、二月二十三日にプレスリリースされたものです。(中で使われるrehomeという語は「家庭から放棄され、保護されている動物を、再び別家庭に縁付けること」の意味ですが、適切な訳語を見出せないため、「リホーム」と片仮名書きのままにします。)

RSPCAはリホームできる動物たちの安楽死処分の終了を目指す

当協会はそのゴール達成のためにみなさんの助力を必要としている

 当協会は今後五年間に、保護中のリホーム可能な全ての動物の安楽死処分を終了させると誓う。そしてこの目標達成のために、みなさんが協力してくれることを期待している。
 動物は多いのに受入れられる家庭が少なすぎるために、我々はそれを嫌悪しながらも、動物たちを間々眠らせる以外に方策をもたなかった。
 しかし今日、我々国内最大の動物福祉慈善団体は、二〇一七年までに、保護下にあるリホーム可能の全ての動物の安楽死を終了させるという、思い切った計画を発表することにした。何百万ものペット、実験動物、家畜そして野生動物という、我々がその生活向上を約束していることの一端として。
 当協会伴侶動物部門の主任ジェイムズ・イェイツ氏は「何故動物たちが我々のシェルターに来るのか、何故たくさんの問題を抱えた動物たちを引受けることになってしまうのか、結局かれらを眠らさざるを得なくなってしまうのだが、その原因・理由について取組もうとしている。
 これらの問題に取組むことによって、理想を言えば、これらの問題をどんどん解決することで、資金状況から完全に自由になり、他の面に使うこともできるようになる。
 あなたの地方のRSPCA支部、あるいは本部と同じように、リホームに努力している団体をサポートするなど、この国の人々にできることはたくさんある。また、もしあなたが犬を飼いたいと考えているなら、子犬を買いに行かないでほしい。愛してくれる家庭を必要としている犬を飼ってみようと考え、救ってほしい。問題発生にくみするより解決する側に立ってほしい。」

 リホームの可能性のあったねこと犬の安楽死は、過去二十年の間に減少した傾向があるものの、二〇一〇年には09年に於けるよりも、犬では33%、ねこで28%多く眠らせなければならなかった。
 今後五年の間にこの数字を押し下げるために、以下の点を主眼とする。

元々のの居場所から救出される必要のあるねこ、犬、うさぎの減少。
(原文欠落)
動物を受入れてくれる条件のととのっている家庭の増加。
ペットとして当協会の動物を選んでくれる人々の増加。
安楽死させられようとする、リホーム可能の動物の数の減少。
 RSPCAは、眠らせねばならないリホーム可能動物の数を減らそうと、鍵となる四つの分野を重要視することにした。
我々とお付合いある人々へのケアを増進することによって、リホームさせる動物の数を増やす。
縁付け先へのよりよいサポートによって、本部・支部に返されてくる動物の数を減らす。
新しい家庭を求めている動物のための養育者探し計画を練り上げる。
迷子動物とその飼主を再会させる助けとして、マイクロチップ埋込みを推進させ、飼主不明動物の数を減らす。
 けれども、この目標を達成するためには、市民みなさんが以下のことを実行してくれることが必要となる。事前によく考え、慎重に計画してほしい。ペット一匹を飼うと、長い間かかわらなければならないのだから。
あなたが一匹のペットを飼う前に、その子が将来にわたって何を必要とするか、確実に理解してほしい。
できればRSPCAから、あなたのペットを手に入れてほしい。
あなたのペットには不妊手術を施し、マイクロチップを入れてほしい。
当協会のウェブサイトwww.rspca.org.uk/petsを閲覧し、あなたのペットが今必要としている事柄を見つけ出してほしい。
寄付やボランティア、そして当協会のキャンペーンに協力することで、我々の仕事をサポートしてほしい。
 当協会は毎年統計表を発刊することによって、年ごとの進展を跡づけようと思う。それは我々が設定した目標にどれほど近寄れたかを示すものになるはずである。
 最初の統計表は今年の八月に発表される予定である。 (終)   (紹介ここまで)
 これで最近入手できた資料三本の紹介を終ります。なお、この資料原典のURLは、文末に記します。内容に間違いがありましたら教えて下さい。(他にありがちな、自身に都合の悪いことを故意に隠すという類のことはしておりません。)
 さて、どういう感想を抱かれたでしょうか。
 単純には、やはりよくやっていると思いました。研究者がシェルターの調査をするのも、愛護団体が事件の摘発に積極的であるのも、有罪判決をかなりたくさん取りつけられるのも、羨ましいかぎりです。
 少し落着いて考えると、そんなに酷い事件がそんなにたくさんあるの?となりますし、そんなにたくさんのペットが放棄されるの?となります。また「安楽死やめる」宣言によって、逆に今まで行われていた事実を明確にしました。

大英帝国の動物事情

 この三本の資料入手以前、昨年十一月のことですが、新聞の書評欄で一冊のタイトルに引きつけられました。それは、『それでもイギリス人は犬が好き』(飯田操著・ミネルヴァ書房 二〇一一年十月二十日刊)。
 紹介文は「ペットブームの日本で動物愛護の意味が問われ「日本はイギリスを見習うべきだ」という議論がある。本当にそうなのかーと闘犬を引合いに出して疑問を呈しつつイギリスの〈犬文化〉を紹介する。」と書き出されていて、これは見過すことならずと購入しておきました。
 今回前掲三本の資料で、英国のペットの現状をある程度知らされたわけですが、その背後事情=文化的、社会的、歴史的な=をやはり理解すべきではないかと、それにはこの本が格好の教科書になると思い、紙幅のゆるす範囲でご紹介することにします。

 この本の帯には「犬をこよなく愛する国民、揺れる動物愛護の国、イギリス/イギリス人の犬に対する関心を動物への虐待と動物愛護の視点から文化史的に辿り、イギリス社会・文化の特質を浮彫りにする」と。著者はイギリス文化史の専門家で広島大学名誉教授、著書・訳書多数。巻末に索引完備、参考文献リスト、図版出典一覧も備わって、圧倒されそうです。
 先回りしてお知らせすれば、「索引」の中の「動物虐待防止関連法(成立年順)」は「一八二二年畜獣虐待禁止法」から「二〇〇六年動物福祉法」までたっぷり一頁に収められ、ことさらにありがたい資料です。
 内容を章立てでみると、序章 イギリス人の動物愛護精神/第一章 アニマル・スポーツと階級社会/第二章 ドッグ・ショーと愛玩犬/第三章 グレイハウンド・レーシングの盛衰/第四章 フォックス・ハンティングの終焉/終章 イギリスの犬文化と二つのイングリッシュネス
 この論考は、犬とのかかわり方を見ることによってイギリス人・イギリス文化の特質を明らかにするものですが、今私たちの関心は、犬やその他の動物たちの扱われ方そのもの・実態にありますので、事象のみを以下に見ていくことにします。

 序章の小見出しにいきなり「残酷なイギリス人」と出てきます。イギリスで愛護精神が意識されるのは十八世紀になってからで、十六・十七世紀を通じ、イギリス人は残虐行為で有名であった(キース・トマス『人間と自然界』)とのこと。首だけ出して埋めた雄鶏に石を投げつける、ヒキガエルを空中高く放り上げる、猫を高い所から投げ着地できるか試すなどの子供の遊びは、大人たちがアヒルを犬に追わせたり、肉食の大魚の群がる池にガチョウや鶏などを放り込んで苦しむ姿を楽しんだりすることの反映である、と(トマス同書)。
 鎖につながれたクマや牛に犬をけしかけて楽しむ「熊攻め」や「牛攻め」は十二世紀かそれ以前からイングランドでは盛んに行われていたが、エリザベス朝のロンドンで一段と人気が高まる。芝居小屋と並んでこれら「動物いじめ」の常設小屋もあり、人々は日常的に楽しんでいた。攻められる雄牛や熊も傷を受けるが、反撃に遭って死ぬ犬、牛の角ではね飛ばされる犬もあった。使われる犬は、宮廷人が楽しんでいた頃は大型のマスティフ(例えば一五七五年ケニルワース城におけるエリザベス一世歓迎行事。熊十三頭が用意された)だったが、庶民の娯楽として普及する時期になると「並の大きさ」(アンリ・ミソン『イングランド見聞記』一七一九年刊)のマスティフが好まれたようだ。ミソンの描写によると「数人の肉屋と紳士が…めいめいの犬の両耳をつかみ、雄牛を取り巻いている。勝負が始まると、一頭の犬を放つ。犬は雄牛の周りをぐるぐる回る。雄牛は身動きできず、軽蔑した眼で犬を睨みつけ、角を向けて犬が近づけないようにする。」そして犬は次第に足が短く改良された、また攻撃の対象としてアナグマやイノシシも用いられた、とのことです。

 第一章にはドッグ・ファイティング(闘犬)が説明されています。
 二頭の犬を闘わせるドッグ・ファイティングが盛んになるのは十九世紀に入ってからだが、見世物としては十七世紀中頃に始まっていた。十八世紀に入っても人気を保っていたことは一七二八年『乞食のオペラ』(ゲイ)や一七三八年『寓話集』(同)で確かめられる。
 一八二五年一月十八日夕刻に当時最も有名な闘犬場=ウェストミンスター・ピットでの様子を伝える『スポーティング・マガジン』の記事によると、「そこは首都の愛好家で超満員、彼らは有名なボニーと新参者ガスとの勝負を楽しみにしていた。賭け金は四十ソヴリンに上り、三対一でボニーの戦績に賭けられた。戦いは休みなく一時間五十分続き、結局ボニーが意識不明の状態でリングから運び出され、包帯が巻かれ、暖かい寝床に入れられた。」
 これらドッグ・ファイティングの入場料は大部分が興行主へ、一部は勝負に勝った犬のオーナーに渡された。勝負の公正を保つために、おおよそ次のような規則があった。
試合は体重別に行われ、勝負直前に厳重に測定された。双方合意の審判二名と時計係がおかれた。試合前に、毒物や油が塗られていないか舌で確かめた。リングは十二フィート四方、直径約二フィートのコーナーが相対しておかれ、犬は交互にそこから中央線を越えて攻撃するよう求められ、最終的に四本の脚が相手の陣地に入っている方が勝者となった。セコンド(補助者)が犬を放つことで開始され、抱き上げることで終了となる。抱き上げて中止させようとしても相手の犬がなお攻撃してきた場合は、犬を降して続行せねばならなかった。
 闘犬は一八三五年の動物虐待禁止法によって禁止(アイルランドは別)されたが、近年でも隠れて行われ、告発もされているとのことです。

 第二章以下は簡約にて。ドッグ・ショーはつまるところ虚栄心と競争心を満足させる見せびらかしの場…不要の毛を抜いたり耳や尾を切断したりするまやかしも横行した。繁殖段階では容赦ない抹殺も行われた。一番足の速い犬種グレイハウンドはレーシング(競走)・コーシング(野兎狩り)に、またフォックス・ハンティングに使われた。キツネは穴から無理矢理引出され、巣穴が塞がれ逃げ場をなくし、死ぬまで疾走しなければならない。その他脇筋で、苦役を強いられる馬、残酷に扱われる家畜などへの言及もありました。
 ここに見てきたような事象に対し当然発生する動物の愛護・福祉の精神や運動を、詳しく説明し、意味をさぐるのがこの著作の目的でした。乱暴にまとめてしまいますと、著者は、愛護運動の基盤には支配階級の思惑があったとします。(詳しくはご自分でお読み下さい。)

おわりに

 今まで、故意か無知か判別不能ながら、欧米礼賛一辺倒で日本の愛護後進性を強調してきたこの国の運動家諸氏は、以上の事実と分析をどう見るのか確認したくなります。また「カッコイイ」スタイルに盲従するちまたの動物救済者にはどうしても目覚めてもらわなければなりません。「日本中の大せんだく」がこの「業界」でも必要のように思います。

ブリストル大学プレスリリース
http://www.bris.ac.uk/news/2012/8384.html
RSPCA報告書の紹介記事
http://news.sky.com/home/uk-news/article/16214722
RSPCAプレスリリース
http://www.rspca.org.uk/media/pressreleases/details/-/article/RSPCAAimToEndEuthanasiaOfRehomeableAnimals