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はじめに
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相も変らず、我が国のメディアやネットの世界では「動物愛護の先進国ドイツ」という軽い
神輿が練り歩き、それに釣られて観衆も「ドイツに倣え!ワッショイ!わっしょい」のようです。
しかし、皆様お気付きでしょうか?
我が国でのドイツ動物愛護事情を伝える報道等は全て『和製』。
せっかく現地を取材しているのに、現地の実情をじかに伝えるものではありません。
ドイツにも当然 新聞、テレビ、ラジオがあり、インターネットに特化した報道もあります。
更に我が国同様、飼い主向けサイトや犬好き猫好きが集う掲示板も存在し、動物に関する問題は、議会でも議論されています。
しかし、これらを我が国で紹介したものは殆ど存在せず、我が国のメディアが伝えてきたドイツの動物愛護事情は端的にいって、実態とは異なる「メルヘン」です。
海外の動物愛護事情を「メルヘン」化して伝えることは我が国の歴史的!因習であり、長年、我が国で語られてきた英国のRSPCAに関する紹介もその一つで、「メルヘン」になってしまうのは、語り手がRSPCA 発の情報だけを耳にして論ずるからです。
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スコットランド動物虐待防止会(SSPCA)による新聞意見広告(2009年2月) |
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※活動をしていないスコットランドで「動物を救います!、寄付をお願いします !!」とRSPCAが宣伝をしていた為、地元のSSPCA(1839年創立)が、たまりかねて広告を出しました。
関連報道:英ガーディアン紙 https://goo.gl/nzgVbd
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因みに昨年、英国中央政府の環境・食料・農村委員会では、犬猫の販売や動物虐待を巡る長年の問題を根本から討議し、答申を出しましたが、この中で過去に司法長官が「古代の権利」※と称した、
RSPCAによる私人訴追の権限の見直しを求めています。
※2013年1月29日 英国下院議事中継より
これは、動物虐待事案をRSPCA が今までのように独自に起訴して裁判に持ち込むのでなく、RSPCA が動物虐待を認知したら、検察庁(CPS 1985 年創設)へバトンタッチすべきという判断で、これまで幾度かあったRSPCA に対する指摘の中で、最も厳しいものになりました。
このことは、RSPCA が動物虐待だと判断した飼い主の動物を許諾なく持ち去り殺害したり、動物を渡さない飼い主には訴追すると詰め寄る等の、いわば彼らの動物福祉向上を願う信念に基づく長年の行動が、そのまま容認される時代ではなくなったという背景を示します。また、寄付者の個人情報を不適切に扱い、データ保護法違反で、罰金を科されたことも同様です。
つまり、ダイアナ妃が亡くなった際、宮殿に半旗を掲げたことに始まり、国民に寄り添うべく王室が行ってきた自らの改革と同様の取組みを、RSPCA はしてこなかった、若しくは手法に誤りがあったと言えるかもしれません。
従って、「RSPCAが狐狩に反対した為、これに怒った保守系特定議員が私人訴追の権限剥奪を主張している」と市民に説明する学者がいるようですが、これは単純すぎて賛同できません。
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また、練りに練った法律が、なぜ現場で機能しないのか、その方策は何かを議論した、この委員会のような取組みは、我が国はもちろんドイツでも行われていません。
更にメモや事務方に一切頼らず、自分の言葉で繁殖やネット生体販売について話す担当大臣(45)。
EUとわたりあう農水系議員ながら、過去に漢方薬向け中国の熊牧場の解体に寄与し、英国内動物保護の実情にも詳しい委員長(60)等、この委員会の質疑過程は永久保存に値するもので、中継録画を含めて、いずれ紹介したいと思います。
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家庭動物の福祉に関する英国中央政府の環境・食料・農村委員会の答申書 |
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さて、話をドイツに戻します。ドイツの動物愛護事情が「メルヘン」として広まる構図も先のRSPCAのケースと同様です。30年以上前のことですが、歌舞伎ファンのバイエルン人とスコットランド人から「日本人は音楽や美術、料理以外、欧州のことを殆ど知らない」「だから欧州を美化し過ぎる」「もっとしたたかになれ!」と指摘されたことがありました。それぞれ自らは「ドイツ人」「英国人」ではないと主張する個性の強い方々でしたが、「美化し過ぎる」は的を射た指摘だったと今にして思います。
「メルヘン」の語り手は、以前は愛護団体でしたが、近年では議員や行政職員という新人も出現しており、こうなると、公金の無駄遣い=明確な実害と言えるでしょう。
本稿は、これらメルヘンに抗し、現地発直接の情報にもとづく実情をお伝えするものです。
その情報は、先輩たちの欧州行き南周り航路による西独視察(1960年代)、当会有志による西独視察(1985年)、更に現在の在独者からの意見等をベースに、独特の語り口で動物愛護事情を伝えるドイツメディアの報道に敬意を払いつつ、ドイツ行政発の情報をも含むものです。
これらを出来る限りそのままに紹介し、読者諸兄姉にご判断頂きたいと思います。
なお、内容は多岐にわたり、分量も膨大になるので、今回を第1回として、数回に分けて発表します。そのため、全体を先ずつかんでいただきたく、以下に[目次]と、少々の説明を加えて記しておきます。
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目次
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第1章 争い(“リードの着用が義務付けられているでしょう !!”) |
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僅か1分半で、ベルリン犬事情を有りのままに伝えた N24ニュースより(詳細は第1章) |
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第2章 ドイツの悲しい現実(長期休暇と捨てられる多数の動物たち) |
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2014年1月公開 [遺棄されたペット 犬や猫はどうなるのか?] ベルリン州HPより (詳細は第2章)
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第3章 行政に更なる費用負担を求め、ベルリン州との契約を打ち切ったティアハイムベルリン |
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契約打ち切りを伝える2015年8月10日付ベルリン州HPより (再契約を含め、詳細は第3章) |
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第4章 推察 ティアハイムベルリンに収容される動物は年間何頭?
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第5章 人はなぜ寄付をするのか?(ドイツの寄付金詐欺とバイエルンテレビの或る試み)
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第6章 ドイツと犬
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a. 行政が湖に犬が入ることを止めさせたい理由
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なぜか我が国では「全域ノーリードOK、犬の楽園」として紹介されてきたグリューネヴァルト。
2015年に行政は湖(シュラハテン湖とクルンメ・ランケ湖)に犬が入ることを禁じようと
しましたが、ベルリン一部の愛犬家や特定団体の猛反発を受けて撤回しました。
尚、NHKの番組等で犬がスイスイ泳いでいた湖は糞便性大腸菌等の値が高く、湖水浴に
適さなくなり、2004年に人の遊泳が禁止になったグリューネヴァルト湖です。
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b. 歴史有るベルリンの犬糞放置問題 (16トン/日:1985年 → 55トン/日:2015年、BRS公表値) |
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2002年、ベルリン都市清掃公社BRS制作、飼い主向け犬糞放置対策パンフレットより |
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c. ドイツの咬傷事故 |
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ドイツ保険協会GDVの咬傷事故パンフレットより
※保険会社の支払い額は80百万ユーロ (約102億円) |
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ドイツ警察労働組合(GdP) 誌 2008年9月号
※2008年8月、ベルリン州議会で咬傷事故850件/年が問題視され、急遽、特集が組まれた。 |
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d.毒餌に注意して!
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ドイツ獣医師会(ドイツ獣医商工会議所) 2012年9月21日付けプレスリリースより |
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同獣医師会ベルリン支部がベルリンに於ける毒餌(Giftköder)による被害及び死亡犬について報じ、注意喚起をしています。
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ドイツ調査報道の雄、『シュピーゲル誌』も毒餌問題を報じており、単純に『毒餌=けしからん!』でなく、その現状、要因、対策を掘り下げており、数ある毒餌報道の中で、決定版といえる内容です。 |
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訓練士による対毒餌トレーニングのシーンより ※訓練では当然、リードを付けています
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犬にとって別腹のソーセージが気になって仕方ありません |
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こちらは訓練済、地面のソーセージに全く興味を示さず、完全無視
※シュピーゲル誌の毒餌レポートは第6章で触れます。 |
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d. 一枚の絵画より(大型犬と使役) |
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“怠け者と労働者(1895年)” ハインリッヒ・スパーリング作(1844〜1924) |
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第7章 “ドイツは動物愛護の国なのだろうか?”(ドイツメディアからの問いかけ) |
一部ドイツメディアによる我が国に対する論調には、大変残念に感じるところがあります。
しかし、自国の動物問題に対するドイツメディアの取組みは、近年のEUサルモネラ卵騒動のように、感度の悪い行政に対して徹底追及し、人の健康被害拡大を抑止する等、結果として我が国の家畜保健衛生所さながらの役割を果たしたというみごとなケースもあります。
また、動物愛護問題での自国やEU に対する、実態に基づいた彼らの手厳しい主張は、
ドイツやEU 諸国の動物愛護問題を知る手掛かりになる為、その幾つかを紹介します。
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a.ドイツの動物 (2014年5月22日付記事)
“私たちは犬猫を甘やかし、安い豚肉を買っている”
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ディー・ツァイト紙 政治担当記者 ペトラ・ピンツラー女史
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b. 動物工場/ドイツ(2015年8月25日放送)
ドイツ公共第二放送局ZDF「調査報道番組 フロンタル21」 |
イェルク・ゲーベル、クリスチャン・ローデ両記者
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[番組ロールアップより]
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映っている施設は工業製品ではなく、畜産動物を肥育させる農場=動物工場 |
[番組エンドロールより]
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ドイツの統計※によると中小養豚業の離農が増大していますが、豚肉の生産量は増大しています。この珍現象は豚の肥育頭数60.000を超え、いわゆる動物福祉の軽視や異臭、地下水汚染等、動物にも環境にも優しくないメガ・ファーム(巨大農場)の台頭によるものです。
※ドイツ連邦政府統計局 農業国勢調査 https://goo.gl/voX11T https://goo.gl/uBbRBe
また、ドイツ国内の自給率を超えてまで、豚肉を生産する試みは明らかに輸出を念頭にしたものですが、2013年頃からドイツの複数メディアは、「動物を痛めつけ、自国の環境を汚染してまで、他国に輸出する必要があるのか」と疑問を呈してきました。
そういう中で例えば公共第二放送局ZDFは、「巨大農場は米国だけ/EU圏の畜産環境は◎/EU圏ではケージ飼いによる卵は販売できない」等と思い込んでいる我が国の一部の学者・愛護諸氏が卒倒する様な動物虐待の具体的証拠を列挙した番組をつくり、それを基に行政に詰め寄り、司法をも動かすに至りました。
しかしメガ・ファーム(巨大農場)台頭の背景には、オランダ等の外資よるドイツ国内一部地域の雇用創生があり、加えて過去に殺虫剤として養鶏場内に硫酸ニコチン水を撒いて検挙されたケース※と同様、不法行為→検挙→起訴→判決→廃業命令ではない等、事は簡単ではありません。 ※ バイエルン州議会 質問主意・答弁書 No17/8662 (2015年3月10日)より
このような現状で、このドキュメンタリーと番組特設ホームページ※では、大規模経営側の言い分
を含め、ありのままの巨大な農場と食肉処理場を紹介し、安すぎる肉や牛乳、使い捨ての雛(オス)等について、国民の意識が足らないと主張しつつ、ドイツ動物愛護法第一条に謳う「人と同じく神の作られた被造物(動物)を人として責任の下、動物の命、動物が健康で暮らしていけるよう保護することを目的とし、何人も合理的な理由なく、動物に対して痛み、あるいは苦痛、傷害を与えていけません」が守られているのかと問いかけています。
※番組特設ホームページについて
雛(オス)が二酸化炭素でガス処理され、息絶える動画等、一部に我が国メディアでは有り
得ないストレートな表現がありますので、心して閲覧されることをお勧めいたします。
http://webstory.zdf.de/tierfabrik-deutschland/
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第8章 第三帝国の動物観 |
ふつうの犬や猫共生者から「動物に優しい素振りをして、徹底して人には優しくないから愛護は大嫌い」と言われたことがあります。この「動物に優しい素振り」「人には優しくない」は、第三帝国(ナチス)幹部の思考にそっくり当てはまります。故に、愛護の立場にいる者として、この指摘は決して他人事ではないと感じました。
そのために、この章では第三帝国の動物観を確認します。
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a.“なぜ、私は愛する犬猫を飼い続けてはいけないの? ”
b. 強制絶滅収容所と犬舎 (“犬の食住環境を充実せよ!” )
c. 動物行動学の権威から名誉博士号剥奪 (コンラート・ローレンツってどんな人)
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2015年12月15日付 ザルツブルグ大学による名誉博士号剥奪決定書 https://goo.gl/GGZXbR
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第9章 ドイツ行政による動物愛護法及び関連法の解釈と運用実例 |
家庭動物編 |
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a.
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行政による監視を規定した動物愛護法 第16条aのケース |
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b.
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動物虐待の刑罰を規定した動物愛護法 第17条のケース |
実験動物編 |
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a.
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動物が物になる時 (民法90条aのケース) |
畜産動物編 |
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a.
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大規模養鶏場の環境検体すり替え容疑で、行政獣医師が検挙され、取調べを
受けているケース(EUサルモネラ卵騒動) |
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第10章 動物愛護法改正顛末記 |
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a.
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“連邦憲法裁判所の判決は関係ない!、私(保健所所長)のいうとおりにしなさい!” |
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b.
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動物福祉の追求はヘイト(差別排外扇動)行動か? |
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第11章 最終章 |
ドイツかぶれの日本人として |
以上
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第一章 「リードの着用が義務付けられているでしょう !!」
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ベルリンに本部を構え、隣国スイス、オーストリアもカバーするニュース専門放送局N24が、僅か1分半で、ベルリン犬事情の有りのままを伝えたニュースをご覧下さい。
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YouTube N24公式チャンネルより 配信開始日2012年10月16日
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以下、青字は訳文です。解り難い部分は※で補足します。 |
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0:00〜0:03 [言い争い] |
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※激しいやり取りの為、言い争いの全てを聞き取れませんでした。
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0:03〜0:16 [モデレーター] |
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ドイツでは、犬を巡る争いが日常茶飯事のように起こっています。
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「遊んでいるつもりなんですよ」等という飼い主の発言を聞くたびに、ベルリン在住のマーティン・ゴールドバッハ氏(※画面中央の男性)は怒りを覚えると言います。
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ゴールドバッハ氏は、自身の娘が犬に襲われた経験から、このような状況を変えなければないと考え、「ベロ・ダイアローグ」と呼ばれる協議会に参加しています。
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0:17〜0:27 [ゴールドバッハ氏] |
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犬の飼い主は、子どもが向こうからやってくるのが見えたとしても、犬をそのまま自由に、呼び戻すこともなく、とにかく、そのまま走らせたりします。
もう少し理解というか、もうちょっと周囲に対する配慮を持ってもらいたいと思います。
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0:28〜0:48 [モデレーター] |
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それというのも、実際には法律で定められたルールがあるのです。 |
※犬のリード着用義務標識
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※ノーリードの首輪を付けた飼い犬、 右は、犬のリード着用義務標識
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例えば、犬を(子ども専用の)公園に連れて入ることは禁止されています。
歩行者専用区域や指定された場所では、リードの使用が義務付けられていますし、
「危険犬種」とされている犬には口輪を装着しなければなりません。
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※ |
左→ 犬の進入禁止、 例:公園
中→ 所定の時期・場所でのリード着用義務
右→ 危険犬種に対する口輪装着義務
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しかし、このようなルールは犬好きの人にとっては厳格過ぎ、反対意見の人々にとっては、
緩過ぎるのです。「フィフィ」や「ベロ」のためにどのような改善がなされるべきか、協議会の
場で激しい議論が交わされています。 |
※フィフィ(Fifi) ベロ(Bello)は、ドイツで、よくある犬の名前
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0:50〜0:53 [協議会場内] |
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犬が誰かに迷惑をかけているわけでもないのに、緑地でのリード着用が義務付けられるなんて我慢なりません。
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0:53〜0:57 [協議会場内] |
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更なる法律、新たな法律の制定で終わらないことを、とにかく願うばかりです。
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0:53〜0:59 [協議会場内] |
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そうですね、私は基本的にリード着用義務に賛成です。
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1:00〜1:05 [モデレーター] |
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犬の飼い主たちは口を揃えて、リード着用だけでは何の効果もないと言います。
犬が飼い主の命令に従順かどうかが重要だと言うのです。
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1:05〜1:10 [公園内] |
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犬の飼い主が皆、まずは、この問題に敏感になり、基本知識を身に着けることができるように「飼い主免許」を義務付けるのが良いと思います。
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1:10〜1:13 [公園内] |
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犬というのは、その大きさを問わず、全く危険でないということは絶対にありませんからね。
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※
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ベルリン州の年次報告書(2011〜最新の2015 年版)によると、ベルリン州内の対人咬傷事故では、飼育数が多いダックスフントが、大型犬のドーベルマンとほぼ同数の加害犬であり、「大きさを問わず」は十分根拠がある話。
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1:13〜1:16 [公園内] |
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リードの着用義務が必ずしも状況を改善するとは思いません。
むしろ、犬のしつけ次第です。
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1:17〜1:26 [モデレーター] |
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これから6カ月にわたり議論と解決策の模索が続けられ、その提案がベルリンの犬に関する新たな法律に取り入れられる予定です。 |
[訳文ここまで]
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さて、いかがでしたでしょうか?
このニュースで映っていた犬のリード着用義務標識は、我が国で公共放送局を名乗るNHKが、複数の番組で紹介してきたグリューネヴァルト(Grünewald=緑の森)内に設置されているものです。
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この標識の右下には、標識の設置者として、グリューネヴァルトの南西部を管理する区名※が、記されています。
※シュテーグリッツ=ツェーレンドルフ区(Bezirksamt Steglitz-Zehlendorf)
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また、リード着用義務標識の上には、保護された緑豊かなエリア(Geschützte Grünanlage)を示す、別名チューリップ標識も設置され、これらの2枚の標識は、ノーリードの犬が緑地を自由に走り回り、荒らすことを防止するためのものです。 |
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別名 チューリップ標識
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つまり、グリューネヴァルト全域が「ノーリードOK」ではないことになり、その理由は、グリューネヴァルトがベルリン州法やドイツ連邦法に加えて、EUの生物多様性戦略(ナチュラ2000)の下、厳格に管理されている自然保護区だからです。
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ナチュラ2000のシンボルマーク
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因みにEUが公開しているナチュラ2000ビューワー※でグリューネヴァルトを見てみると以下のようになります。
※ http://natura2000.eea.europa.eu/ (サイトが重いので表示まで少々時間を要します)
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わかりやすいように地図のみで表示させています(和文は当会で加筆)
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上の地図では、現状で規定されている自然保護区、風景地保護区、自然公園、SPA(鳥類の生息に重要な場所)等が色分けで表示されています。
ご覧のようにグリューネヴァルトは「犬のための公園」ではなく、自然公園、自然保護区であり、あくまで決まりが守れるという条件で、犬の同伴が許されているに過ぎません。
よって「全域ノーリードOK」、「リードの着用は飼い主の判断に任されている・・・」等の話は、真っ赤なウソということになります。
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ベルリン州による犬の規制区域ガイド(2017年最新版)より 和文は当会で加筆
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尚、ベルリンに於けるリード着用等については、先ほどご覧頂いた動画に登場していた、ベロ・ダイアローグという協議会を経て、昨年、議会で犬の新しい条例が成立、段階的に施行されます。
よって、今後、犬の立ち入り禁止区域の変更等が予想され、仮に犬と共にベルリンを訪れる場合は、決して我が国のメディアや自称専門家等が流布してきた、「ノーリードOK」を鵜呑みにせず、ベルリン州観光案内HPをご覧になることを強くお勧めします。
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[第1回 終]
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ドイツに倣えば 日本の動物も人も幸福になれるか?
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『動物ジャーナル96 2016冬』掲載記事のweb用増強版
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