パスダー

   地球に飛来した有史以来初の地球外知性体EI−01にして、機界四天王を束ね指揮する機界司令ゾンダリアンタワーの中心部の作戦会議室にしばしば実体を持たない顔だけの存在として現れ機界四天王へ指示を下したり、四天王からの報告を受けているが、実際にはゾンダリアンタワーこそがパスダーの実体であり、身体なのである。現れる顔は「彼」の「人格」を擬似的に投影した虚像にすぎない。冷徹で目的遂行以外のことに興味が無く、ゾンダリアンタワー内は「彼」の意思に従って自由自在に変容する。東京における機界四天王最終作戦においてはこの能力を駆使し、内部に侵入したサイボーグ・ガイギャレオンを苦しめた。
   2003年、地球を機界昇華すべく飛来するが、ギャレオンに阻まれ全く無防備な状態で地球大気圏へ落下、墜落した。その際初フライトの最中であった獅子王凱の乗るシャトルと接触、ガイに重傷を負わしめたほか、墜落の際の衝撃と爆発によって横浜中心部と周辺市街地に多大な被害をもたらした。ミコトの両親もこの時死亡している。
   大気圏突入と地上への墜落によって深刻なダメージを負ったパスダーは周囲の機械やライフラインを吸収しながら地下へと逃亡、東京タワーの直下にゾンダリアンタワーとして潜伏することに成功した。そこで銀河各地に散っていた機界四天王を招集、損傷を回復しつつ機を待つこととなる。この時大量に搭載してきたゾンダーメタルはその殆どが破損し使用できるものは皆無であったため、パスダーはその存在を気取られぬように、低いエネルギーレベルでゾンダーメタルを精製していたものと思われる。
   機界四天王が地球へと到着し、ゾンダーメタルも20数個が精製された2005年、パスダーは活動を再開した。だが、このとき人類もまた来るべき再侵攻に対する備えを整えていた。ここに地球外知性体・ゾンダリアンと地球防衛組織GGGとの戦いが幕を開けたのである。この間パスダーはエネルギィを節約するためかあまり表立って人間のゾンダー化作戦に関与することはなく、ゾンダーメタルプラントの精製など究めて重要な作戦でのみ直接指揮をとった。だが、作戦はGGGの妨害によって悉く失敗に終り、ゾンダーメタルも枯渇寸前となったとき、パスダーは自ら機界四天王を指揮し、最終作戦へと打って出た。これは巨大なエネルギィを生み出している大都市・東京そのものをコントラフォールによって隔絶、要塞化し、1000万の都民を素体として確保すると同時にその内部でゾンダーメタルプラントを精製しようというものであった。だが、これもGGGの総攻撃のために失敗し、機界四天王は全滅してしまう。しかし、このときパスダーは機界四天王にも知らせていなかった作戦を発動させる。それは東京の巨大なエネルギィを利用した宇宙への脱出である。つまり、機界四天王をGGGと対決させ、GGGを覆滅できればそれで良し。たとえ敗れてもパスダー自身は無傷である。このときGGGは機界四天王との対決によって疲弊していることは疑いなく、事実そうであった。そのGGGを貯えておいた巨大なエネルギィによって殲滅し、宇宙へ帰還を計る。この二重三重に保険をかけた作戦をパスダーは機界四天王最終作戦が立案される以前に既に考案していたのである。そして最後の段階でなお、パスダーがGGGに敗れてもそれもまた作戦のうちであった。なぜならパスダーは全てのゾンダー、およびゾンダリアンを管理、統括するマスタープログラムの中枢、心臓原種の情報収集端末であるパリアッチョのさらにその一端末でしかなかったのだから。最悪の場合、GGGに敗れることがあってもパスダーの中枢であるデータベースが地球脱出を果たし、パリアッチョと接触できればそれで良かったのである。また、原種にとっては仮にパスダーが完全消滅したところで、それは端末のひとつが失われたにすぎず、また新たな端末を送り込めば良いだけのことで、文字通り痛くも痒くもなかったのだ。
   実際にはパスダーの中枢は宇宙へと脱出を果たし、パリアッチョとの接触に成功している。このとき原種はGGGの戦闘能力の成長に著しいものを感じ、これに対する戦力の逐次投入の愚を冒すことなく原種31体の総攻撃を決定した。この判断は戦略的に正しいものであったが、結果的には機界文明の機能中枢を丸ごと敵地に送り込んで殲滅されることとなり、機界文明は地球侵攻からわずか三年余りで終焉を迎えることとなる。

 声優は緒方賢一さん。