パリアッチョ

   機界31原種とともに現れた謎の存在。ただし、GGGはこのパリアッチョの存在を確認していないものと思われる。玉乗りをする女性のピエロといった感じの外観をしているが、機界31原種に対して指令を下すなど、一段高い立場にあるようだ。地球上はもとより、宇宙空間をも自在に行き来し、GGGによって拡散した原種核の覚醒と、GGGの動向を常に監視している。
   その実体は、原種の中枢である心臓原種の情報収集端末であり、「彼女」から更に幾つかの端末を発して、機界文明下にある星系の監視と、機界昇華が行われている最前線での情報収集、および、作戦指令の伝達を行っている。機界司令パスダーも、こうした端末のひとつにすぎなかった。
   パスダー、および機界四天王の作戦がGストーンを所有する文明によって悉く退けられた事を受け、地球に飛来、GGGに敗北し、宇宙に脱出したパスダーを吸収するとともに、全ての原種を地球へ召喚、地球の機界昇華の指揮を執った。しかし、Jアークの出現などのトラブルが続き、作戦は失敗を重ね、機界最強7原種を含めた多くの原種が、浄解されるに至る。そんなおり、かねてより捜索していた無限エネルギィ「ザ・パワー」の発生源を突き止め、全ての原種を率い、木星でGGGとの最終決戦に臨む。その際、心臓原種と融合しZマスターとなってGGGおよび、Jアークを窮地に追い込むが、「ザ・パワー」の暴走により、内部から崩壊、消滅した。
   「彼女」は心臓原種の端末のひとつであり、一個の人格を所有しているわけではない。それはパスダーに関しても同様で、「彼ら」の人格は心臓原種、あるいは原種総体としてのZマスターの人格の一部を切り取ったものである。Zマスターの「声」が、パスダーとパリアッチョのそれを同時に発するものであったことは、パスダーやパリアッチョといった人格が地球圏で戦闘を繰り返すことで経験を蓄積し、より強い自我を形成したために、それら二つの人格がZマスターの中で大きなウェイトを占めていたことの擬似的な現われであると考えられるのである。パリアッチョは心臓原種を頂点とした「機界文明」の階層の中でもより高い階層に属しており、地球圏でのように直接戦闘の指揮をとることは究めて希であると推測できる。一方、パスダーは地方司令官として、常にゾンダリアンの指揮をとり続けており、実戦経験も豊富であることからパリアッチョよりも確固たる(あるいは、皮肉な言い方ではあるが、人間的な)人格を形成しているのではないだろうか。ただ、こうした人格は上部の端末に収集される情報系からは切り離されている。もとより、機界文明はこういった自我こそがマイナス思念の源であるとして、基本的に歓迎しない。では、なぜ前線における司令伝達と情報収集の端末に、人格が存在するのであろうか。
    可能性としては、機界昇華の原理の「伝道」が考えられる。かつてアメリカ大陸にヨーロッパ人としては初めて上陸を果たしたスペイン人は、経済的な利益と同様にキリスト教の「伝道」を大きな目的としていた。彼らは「福音」を知らぬ「未開の新大陸」のひとびとにキリストの言葉を伝え、導く義務があると信じていた。それと同様に、機界31原種の中枢にある心臓原種も「機界昇華の原理」をマイナス思念を持つ者全てに知らしめし、「導く」ことを義務と感じていたのではないだろうか。パスダーや機界四天王、機界最強7原種などは、無慈悲な「侵略者」としての印象があるのに対して、心臓原種の物言いはまるで、「大宇宙の意志」を振りかざし、人類を裁く「審問官」のようではないか。
   機界昇華を司る中枢にこのような人間的な原理が働いているとすることには違和感を拭えないであろう。もちろん、これは一つの仮説にすぎず、より深い議論が必要となるだろう。だが、機界文明はマイナス思念を否定しながら、マイナス思念を吸収し、マイナス思念を動機とするゾンダーを使役する。マイナス思念の消去を目指しながら、マイナス思念の存在を前提としたシステムしか構築することができなかったという本質的な矛盾を機界文明が抱えているとするならば、その組織の頂点がこのような人間的な原理に支配されているということも、有り得ないとはいえまい。