既存の減価償却資産に対して行った資本的支出の取扱い
このたび、国税庁から「法人の減価償却制度の改正に関するQ&A」(平成19年4月)が公表され、新たな減価償却制度の具体的な内容が明らかになりましたので、今回は資本的支出を行った場合の取扱いについてご紹介します。
既存の減価償却資産に対して平成19年4月1日以後に資本的支出を行った場合
【原則】
法人が有する減価償却資産について支出する金額のうちに、その支出する日の属する事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されなかった金額(資本的支出:その固定資産の使用可能期間の延長または価額を増加させる部分の支出)がある場合の原則的な取扱いについては、その支出金額を固有の取得価額(法令54)として、その支出の対象となった減価償却資産の種類及び耐用年数を同じくする減価償却資産を新たに取得したものとする(法令55①)。
したがって、既存の減価償却資産とは別個の資産を新規に取得したものとされた資本的支出の償却方法については、その支出の対象となった減価償却資産と同じくするものとしてその種類と太陽年素に応じて償却を行っていくことになる。
この場合、既存の減価償却資産本体の償却については、この資本的支出を行った後においても、従来から採用されている償却方法により償却を続けていくことになる。
なお、事業年度の中途で資本的支出を行った場合のその事業年度にかかる償却限度額については、原則として、その資本的支出について計算されたその事業年度の償却限度額に相当する金額を、その事業年度の月数で除し、これにその事業の用に供した日からその事業年度終了の日までの期間の月数を乗じて計算した金額となる(法令58、59①)。
【特例】
(1)平成19年3月31日以前に取得をされた既存の減価償却資産に資本的支出を行った場合
その資本的支出を行った事業年度において、改正前の取扱いと同様にその資本的支出の金額を、資本的支出の対象資産である既存減価償却資産の取得価額に加算することもできる(法令55②)。
この場合、その取得価額に加算を行った資本的支出にかかる償却については、既存の減価償却資産の種類、耐用年数及び償却方法に基づいて、その加算を行った資本的支出部分も含めた減価償却資産税隊の償却を行っていくこととなる。
なお、その加算を行った資本的支出も含めた減価償却資産全体に対して、その事業年度に償却費として計上を行う取扱いをした場合には、翌事業年度以後において、その加算した資本的支出を新たな資産の取得として、平成19年4月1日以後に取得をされた資産に採用される新たな定率法等の償却方法を適用することはできない。
(2)新たな定率法を採用している既存の減価償却資産に資本的支出を行った場合
その資本的支出の対象資産である既存の減価償却資産(以下「旧減価償却資産」という。)と新たに取得したものとされた資本的支出(以下「追加償却資産」という。)について、そのよるべき償却の方法として定率法を採用している場合には、その時における旧減価償却資産の帳簿価額と追加償却資産の帳簿価額との合計額を取得価額とする一の減価償却資産を新たに取得したものとして取り扱うこともできる(法令55④)。
この場合の償却方法については、翌事業年度開始の日を取得日として、「旧減価償却資産」の種類及び耐用年数に基づいて償却を行っていくこととなる。
なお、いったん、一の減価償却資産を新たに取得したものとして減価償却資産全体に対して、翌事業年度に償却費として計上を行う取扱いをした場合には、翌々事業年度以後において、旧減価償却資産に合算したその資本的支出について、新たな資産を取得したものとして「旧減価償却資産」と「追加償却資産」とを別個に償却する方法を採用することはできない。
(3)同一事業年度内に複数回の資本的しっしゅつを行った場合
同一事業年度内に新たに取得したものとされた複数回の資本的支出(追加償却資産)がある場合、そのよるべき償却の方法とし手定率法を採用し、かつ、上記(2)の適用を受けないときは、その資本的支出を行った事業年度の翌事業年度開始の時において、その適用を受けない追加償却資産のうち種類及び耐用年数を同じくするもののその開始の時の帳簿価額の合計額を取得価額とする一の減価償却資産を新たに取得したものとして取り扱うこともできる(法令55⑤)。
この場合の償却方法については、翌事業年度開始の日を取得日として、既存の減価償却資産と同じ種類及び耐用年数に基づいて償却を行っていくことになる。
なお、既存の減価償却資産と合算した追加償却資産については、翌々事業年度以後において、他の追加償却資産との合算の選択や、逆に、他の追加償却資産と合算した追加償却資産については、翌々事業年度以後において、既存の減価償却資産との合算の組み合わせに変更することはできない。