土地改良区内の農地の転用目的での譲渡に際して土地改良区に支払われた農地転用決済金等は譲渡費用にできますか?


 土地改良区内の農地の転用目的での譲渡に際して土地改良区に支払われた農地転用決済金等が譲渡費用に当たるかどうかが争われた裁判で、最高裁判所等において、この農地転用決済金等は譲渡費用に当たるとの判決があったことから、これを受けて、一定の要件を満たす農地転用決済金等については、譲渡所得の金額の計算上、譲渡費用とするよう取扱いを改める、と国税庁ホームページに掲示されました。
 詳しい内容はQ&Aを含んだ
リーフレットが国税庁ホームページにて配布されておりますので、そちらをご覧ください。

【改正の概要】
 土地や建物を譲渡した場合の譲渡所得の計算は、これらの資産の譲渡価額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算することとされている。
 土地改良区内にある農地を農地以外に転用して譲渡する場合、土地改良法の規定などにより、土地改良区への農地転用決済金及び協力金等(以下「農地転用決算金」という。)の支払義務が生じることがあるが、これまでは、この農地転用決済金等は、譲渡所得の金額の計算上、譲渡費用(資産の譲渡のために直接要した費用及び資産の譲渡価額を増加させるために譲渡に際して支出した費用)に当たらない取扱いがされていた。しかし、このたび、「土地改良区内の農地の転用目的での譲渡に際して土地改良区に支払われた農地転用決済金等が譲渡費用に当たる」とする最高裁判所及び東京高等裁判所の判決があったことから、一定の要件を満たす農地転用決算金等については、譲渡所得の金額の計算上、譲渡費用とするよう取扱いが改められた。

1.農地転用決算金とは?
 次の①〜④のすべてを満たすものをいう。
 ① 売買契約で農地法の規定による農地転用の許可又は届出(以下「農地転用許可等」という)が停止条件とされているなど、売買契約において、土地改良区内の農地を転用して売買することが契約の内容となっていたものであること。
 ② 土地改良法第42条第2項及びこれを受けた土地改良区の規定により、土地改良区に支払うことが義務づけられている償還金、事業費等(注)であること。
   (注)費用の名称については、各土地改良区により異なっている場合がある。
 ③ 転用目的での譲渡に際して土地改良区に支払われたものであること。
 ④ 決済の時点ですでに支払義務が発生していた決済年度以前の年度にかかる賦課金等の未納入金でないこと。

2.協力金等とは?
 次の①〜④すべてを満たすものをいう。
 ① 売買契約で農地転用許可等が停止条件とされているなど、売買契約において、土地改良区内の農地を転用して売買することが契約の内容になっていたものであること。
 ② 土地改良区の規定により、土地改良区に支払うことが義務づけられている協力金、負担金等(注)であること。
   (注)費用の名称については、各土地改良区により異なっている場合がある。
 ③ 転用された土地のために土地改良施設(注)を将来にわたって使用することを目的としたものであること。
   (注)「土地改良施設」とは、農業用用排水施設、農業用道路その他農用地の保全又は絵里養生必要な施設
 ④ 転用目的での譲渡に際して土地改良区に支払われたものであること。
   (注)たとえば、次に掲げるものは、原則として「転用目的での譲渡に際して土地改良区に支払われたもの」とは認められないから譲渡費用には当たらない。
   イ 農地法第4条の規定に基づいて農地を転用した際に、土地改良区に支払った農地転用決算金等
   ロ 土地改良施設使用の再契約のために、土地改良区に支払った協力金等

【過去の事案に対する処置】
 農地転用決済均等の金額などを明らかにした上で、税務署に更正の請求の手続きをすることができる。
 農業所得など譲渡所得以外の所得の金額の計算上、その農地転用決済均等を必要経費としている場合には、農業所得など譲渡所得以外の所得についても再計算することとなる。また、再計算の結果、所得税が減額されない場合もありえる。
 なお、更正の請求をすることができるのは、この「土地改良区内の農地の転用目的での譲渡に際して土地改良区に支払われた農地転用決済金等が譲渡費用の取扱い」の変更を知った日の翌日から2月以内とされている。
 (注)法定申告期限からすでに5年を経過している年分の所得税については、法令上、減額されない。


海外出張費にかかる消費税の処理を教えてください。



 消費税は、国内で行われる資産の譲渡等と保税地域から引き取られる課税貨物に課されます。したがって海外出張費のうち、国外での宿泊費、交通費等には消費税は課されません。また、輸出免税という規定があり、国内から国外への旅客運賃などは消費税が免除されます。以下、具体的に見ていきましょう。
【消費税の課されるもの】
  • 海外出張のための支度金(基本通達11-2-1参照)
  • パスポート交付申請等の事務代行費等
  • 海外出張のための予防接種料
  • 国内での運賃(空港までの運賃など)や国内における出発前夜の宿泊費(基本通達7-2-4参照)
  • 成田空港や関空内の旅客サービス施設使用料

【消費税の課されないもの】
  • 海外出張日当(海外出張のために支給する旅費や日当)
  • 海外出張のための航空運賃(基本通達7-2-4参照)
  • 外国における宿泊費、食事代、交通費等
  • 国内と海外出張者との通信(電話・電報・郵便・ファックスなど)

【参考:基本通達7-2-4】
 消費税法第7条第1項第3号(国際輸送等に対する輸出免税)に規定する国内及び国内以外の地域にわたって行われる旅客又は貨物の輸送は、国内から国外への旅客若しくは貨物の輸送又は国外から国内への旅客若しくは貨物の輸送(以下「国際輸送」という。)をいうのであるが、国際輸送として行う旅客輸送の一部に国内における輸送(以下「国内輸送」という。)が含まれている場合であっても、次のすべての要件を満たす場合の国内輸送は、国際輸送に該当するものとして取り扱う。 (1)当該国際輸送に係る契約において国際輸送の一環としてのものであることが明らかにされていること。 (2)国内間の移動のための輸送と国内と国外との間の移動のための国内乗継地又は寄港地における到着から出発までの時間が定期路線時刻表上で24時間以内である場合の国内輸送であること。
【参考:基本通達11-2-1】
 役員又は使用人(以下「使用人等」という。)が勤務する場所を離れてその職務を遂行するため旅行をし、若しくは転任に伴う転居のための旅行をした場合又は就職若しくは退職をした者若しくは死亡による退職をした者の遺族(以下11-2-1において「退職者等」という。)がこれらに伴う転居のための旅行をした場合に、事業者がその使用人等又はその退職者等に支給する出張旅費、宿泊費、日当等のうち、その旅行について通常必要であると認められる部分の金額は、課税仕入れに係る支払対価に該当するものとして取り扱う。 (注)1 「その旅行について通常必要であると認められる部分の金額」の範囲については、所基通9-3(非課税とされる旅費の範囲)の例により判定する。 (注)2 海外出張のために支給する旅費、宿泊費及び日当等は、原則として課税仕入れに係る支払対価に該当しない。

営業車が追突されました。消費税の経理処理について教えてください。

 できれば避けたい事故ですが、どんなに注意していてももらってしまう事故もあります。そのために保険に加入するわけですが、事故に伴う経理処理は仕訳はともかく、消費税の処理が正しく行われていない事例を散見します。以下に消費税の課税関係を記しますから、参考にしてみてください。
【消費税の課されるもの】
  • 事故にともない支払った車両の修繕費
  • 事故の被害者へのお見舞いの品代(注:商品券は非課税です)

【消費税の課されないもの】
  • 保険会社に支払っていた自動車保険料や共済金(非課税)
  • 事故の被害者への見舞金や示談金(課税対象外=不課税)
  • 罰金、科料、過料(課税対象外=不課税)
  • 保険会社から支払われる事故保険金(課税対象外=不課税)

【参考:基本通達5-2-4】
 保険金又は共済金(これらに準ずるものを含む。)は、保険事故の発生に伴い受けるものであるから、資産の譲渡等の対価に該当しないことに留意する。
【参考:基本通達5-2-5】
 損害賠償金のうち、心身又は資産につき加えられた損害の発生に伴い受けるものは、資産の譲渡等の対価に該当しないが、例えば、次に掲げる損害賠償金のように、その実質が資産の譲渡等の対価に該当すると認められるものは資産の譲渡等の対価に該当することに留意する。 (1)損害を受けた棚卸資産等が加害者(加害者に代わって損害賠償金を支払う者を含む。以下5-2-5において同じ。)に引き渡される場合で、当該棚卸資産等がそのまま又は軽微な修理を加えることにより使用できるときに当該加害者から当該棚卸資産等を所有する者が収受する損害賠償金 (2)無体財産権の侵害を受けた場合に加害者から当該無体財産権の権利者が収受する損害賠償金 (3)不動産等の明渡しの遅滞により加害者から賃貸人が収受する損害賠償金
(注)無体財産権とは、特許権、実用新案権、商標権、意匠権、回路配置利用権、商号及び著作権をいいます。

車やパソコンを下取りに出したら、消費税分も払ってもらえるでしょうか?

 車は買い替えの際に下取りに出すのは一般的です。また、不景気(景況感は改善されつつあると報道されておりますが)を反映してか、パソコン等の情報機器も、下取りに出されたり、買い取りに出されたりで、中古市場が活況を呈しているようです。  このように、下取りや買い取りに出す場合、消費税は払ってもらえるのでしょうか?、というのが今回のテーマです。
【消費税の課税対象】
 「消費税の課税対象」とは、何に消費税が課されるのかを定義したものですが、下記のように売る側の立場から定められています。
「国内において
事業者が、事業として対価を得て行う資産の譲渡、貸付け並びに役務の提供には消費税を課する。」
 つまり、事業者(法人や個人事業者)が、会社の車やパソコンを、または、個人事業に供していた車やパソコンを下取りに出した場合は、消費税がかかる。つまり、消費税分も支払ってもらえるということになります。たとえば、下取車の査定額が500,000円であった場合、消費税込みで525,000円で下取りしてもらえることになります。逆に言えば、事業者は、消費税の申告の際、
下取車500,000円を課税標準に含めて申告する必要があります。
 では、事業者ではない、一般の消費者(サラリーマン)が車やパソコンを下取りしてもらった場合はどうなるのでしょう? その答えは下記をご覧ください。

【課税仕入れ】
 「消費税の課税対象」は、上記の通り売る側の立場から規定されていますが、逆に「課税仕入れ」は買う側の立場から規定されています。「課税仕入れ」の定義は下記の通りです。
「事業者が、事業として他の者から資産を譲り受け、もしくは借り受け、又は役務の提供を受けること(当該他の者が事業として当該資産を譲り渡し、若くは貸し付け、又は当該役務の提供をしたとした場合に課税資産の譲渡等に該当することとなるものをいう。)」
 (  )書き部分が非常に重要ですね。「当該他の者が・・・したとした場合に課税資産の譲渡等に該当するもの」と書かれています。つまり、専業主婦やサラリーマン(いずれも事業者ではありません)が、車やパソコンを下取りに出した場合でも、買ったディーラーや業者からすれば消費税の課税仕入れに該当する、ということです。
 簡単な例を挙げましょう。サラリーマンが20万円(税込21万円)のパソコンを買いました。その際販売店は、そのサラリーマンのノートパソコンを5万円で下取りしました。サラリーマンは差額の16万円を支払いました。  この場合、サラリーマンは一見消費税分を受け取っていないように見えますが、実は5万円の中に消費税が含まれているのです。販売店側は47,620円でノートパソコンを下取りし、仕入れにかかる消費税2,380円を含めて、サラリーマンに支払っていると経理処理します。サラリーマンは事業者ではありませんから、販売店側が預けたとしている消費税2,380円については、納税義務を負いません。
【参考:基本通達10-1-17】
 課税資産の譲渡等に際して資産の下取りを行った場合であっても当該課税資産の譲渡等の金額について、その下取りに係る資産の価額を控除した後の金額とすることはできないのであるから留意する。 (注)課税資産の下取りをした場合には、その下取りは課税仕入れに該当し、法第30条(仕入れにかかる消費税額の控除)の規定を適用することとなる。

運動会の協賛金は消費税の課税仕入れでしょうか?

 体育振興会等が行うスポーツ大会や運動会に協賛金として会社や商店が数千円〜1万円程度を支払うことはよくあることです。この支払いには消費税がかかる(消費税の申告上、課税仕入れとして仕入れ税額控除できる)のでしょうか?  「消費税なんてかからないよ。不課税取引だから仕入れ税額控除の対象にはならないよ。」とお考えの方が多いと思いますが、実はこれ、一般的には課税取引(消費税のかかる取引)なのです。つまり、本則課税で消費税を納めている場合、仕入れ税額控除の適用を受けることができます。もちろん、例外もありますが。
【課税仕入れになる場合=仕入れ税額控除できる場合】
 先ほど「一般的には課税取引」と書きましたが、これには理由があります。一般的に、スポーツ大会等の主催者に対してその協賛者である会社や商店が協賛金を支払うと、そのスポーツ大会や運動家のプログラム等に社名や広告が記載されます。この場合、その支払いは広告宣伝の対価であり、消費税の課税対象、つまり課税仕入れとなります。
【課税取引にならない場合】
 では、逆に課税取引にならない場合とはどんな場合でしょうか。それは、スポーツ大会等の主催者に対して協賛金を支払っても、いっさいの広告宣伝が行われないもの、その他の見返りがないものが該当します。この場合は、その支払いは寄付と同じで、全く対価性がありませんから、消費税の課税対象外(不課税)取引となります。
【参考:課税仕入れ】
 「課税仕入れ」は消費税法第2条において、
「事業者が、事業として他の者から資産を譲り受け、もしくは借り受け、又は役務の提供を受けること(当該他の者が事業として当該資産を譲り渡し、若くは貸し付け、又は当該役務の提供をしたとした場合に課税資産の譲渡等に該当することとなるものをいう。)」
 と規定されています。(  )書き部分で明らかなように、仕入れの相手方は事業者である必要はないのです。これは自動車ディーラーがサラリーマンや主婦から乗用車を下取りした場合、その下取りは課税仕入れに該当する(基本通達10-1-17)ことからも明らかです。各地域の体振など事業者でない者への支払いは課税対象外と勘違いしてしまいがちですが、まちがいやすい点ですので十分注意して経理処理しましょう。