Crape myrtle
サルスベリの出てくる俳句や漢詩をご紹介しています。
ミソハギ科の落葉高木
〔別名〕ヒャクジツコウ 〔花期〕7月〜9月
〔花言葉〕能弁
江戸時代の初めに日本に渡来。百日紅の名前は、百日の間紅色の花が咲き続けることから。花色は他に白、紫、赤、ピンクなどがある。
<短歌・俳句>
散れば咲き 散れば咲きして 百日紅 (千代女)
<詩(漢詩)>
杜牧 「紫薇花」
暁迎秋露一枝新
不占園中最上春
桃李無言又何在
向風偏笑艶陽人
暁に秋露を迎えて一枝(いっし)新たなり
桃李言無く 又た何(いず)くにか在る
占めず 園中最上の春
風に向かって偏(ひとえ)に笑う艶陽(えんよう)の人を
+ + +
七言絶句。「新・春・人」が韻を踏んでいます。
百日紅は多くの花と違って夏から秋に花を咲かせます。そのことを詠んでいるようですが、結句の言い方の意味がいまいちとれません。何か深い意味があるのか……。
ちなみに百日紅の一般的な花言葉は、「能弁」です。
(石川忠久著 『漢詩をよむ 夏の詩100選』 NHK出版 他を参考にしています。)
楊万里 「道旁店」
路旁野店両三家
清暁無湯況有茶
道是渠儂不好事
青瓷瓶挿紫薇花
路旁の野店両三家
清暁に湯無し 況んや茶有らん
是れ 渠儂(かれ)は好事(こうず)ならずと道(い)うや
青瓷の瓶に挿す 紫薇の花
+ + +
七言絶句。「家・茶・花」が韻を踏んでいます。鄙びた店の朝になっても湯も沸かさず、まして茶が用意されているわけでもない、といった風情のなさを前半で強調し、後半では一転、青磁の花瓶に活けてある紫薇の花(さるすべり)を詠むことで、店の主人の趣味のよさを逆に浮き立たせています。
色彩の対比が印象的なこの詩ですが、「紫薇花」の色は何色なのかという疑問が浮かびました。これは少し調べてみると、白い「百日紅」が「白薇」と呼ばれるなど色によって名前が変わっていることからも、ストレートに紫系の色だろうと思われます。ということは、紫(赤系)と青のコントラスト。
……少し暑苦しいような気もしますね(笑)。
また、なぜ「紫薇」という名前がついたのかと調べてみると、中国では紫微(宮廷)によく植えられたから紫薇(くさかんむりを加えたのですね)という名前がついたらしいという記述をあちこちで見かけました。逆に、紫薇が植えられていたから、中書省が紫微省という名になったというものも。
もう一つご紹介すると……。中国では古代「紫微垣」という星座(区画の場合もある)の一部が天帝の住まいとされ、それにより宮城のことまでそう呼ぶようになったそうです。その流れから、宮城に位置し、国の最重要機関である中書省の名前が唐代に「紫微省」と変わった。そのときに「紫薇」という非常によく似た名を持つ植物が、省内に植えられたとか。……てんでばらばら、どれが正しいのだかますます分からなくなりました。
(石川忠久著 『漢詩をよむ 夏の詩100選』 NHK出版 他を参考にしています。)