Canna
カンナの出てくる小説や漫画をご紹介しています。

カンナ科の球根植物
〔花期〕6〜11月
〔花言葉〕妄想
赤、黄色が代表的な花色だが、ピンク、オレンジなどもある。
<小説>
幸田文 『おとうと』 岩波書店他
三つ違いの弟・碧郎のことを心配しつつ、素直に表すことのできない「げん」。
誤解されやすい弟は学校でも問題を起こし、悪い仲間とつるみ、それでも優しいところもあった。
しかし、十九になった碧郎は結核にかかってしまう。げんは弟の看病を必死にするのだが……。
「ねえさん、外へ出るとカンナの花が咲いてゐるだろ?公園やなんかに。」彼がそんな風に喘いでゐるのがわかる。このかつとした光線の下に、血のやうな赤い花をつけてゐる植物のことを思ひうかべて、彼はやつとベッドに堪へてゐるらしいのだ。 (p.209)
+ + +
姉のげんも炎暑から赤を感じるより、白を感じて辟易していたという風に続きます。病院の建物の白さ、廊下の白さ……姉は白におびえを感じ、弟は赤を想って横たわっている。
どうにもならない入院生活の日々を印象付けるシーンです。
<漫画>
内田善美 『空の色ににている』 集英社
図書室で本を借りる手続きをしていた蒼生人(たみと)は、図書係の少女が自分のカードを見て意味ありげに笑ったことを疑問に思った。
そのことを考え続けた蒼生人は、自分が借りる本のカードに野々宮浅葱という名前が必ず書かれていることに気づく。
その少女が自分と同じものを見、同じものを求め、同じ感動を続けてきたのかもしれないと思い、「暗号解読成功」をどう伝えようかと悩んでいた蒼生人は、兄の伝言を伝えに行った生物部でたまたま本人に出会う。それから、蒼生人は浅葱の姿を目で追うようになっていた。
しかし、浅葱には冬城という特別な関係の青年がいて……。
松林の
埋もれるような
一面の緑の中で
アトリエの前に
小さく開けた庭の
一角だけが
燃えるように
緋かった
血の色よりも
さらに濃い
カンナの一群 (p.100〜p.101)
+ + +
バーコード化された今の図書館(図書室)では考えられない出会いですよね。昔は本にはさんであった貸し出しカードに、名前や借りた日などを自分で記入していました。