Rnにおける線形独立/従属と一次結合の関係:トピック一覧 〜 数学についてのwebノート |
・定理: ベクトルを一次結合として表すことと一次独立/従属、互いの基底を成す「ベクトルの有限集合」の性質1、互いの基底を成す「ベクトルの有限集合」の性質2:元の数、 実n次元数ベクトルの有限集合の基底の存在 ・定理:一次結合が一次従属であることと、一次結合の個数・一次結合を構成するベクトルの個数との、関連性 1/2 |
※ 実n次元数ベクトル空間関連ページ:実n次元数ベクトル空間の定義/線形結合/一次独立・一次従属/基底/次元/部分ベクトル空間※上位概念:一般のベクトル空間における一次独立・一次従属/体上の数ベクトル空間における一次独立・従属 →線形代数目次・総目次 |
定理:実n次元数ベクトルを一次結合として一意的に表わせることと一次独立/従属との関係 | ||
舞台 |
R :実数体(実数をすべて集めた集合)Rn:実n次元数ベクトル空間 v1, v2, …, vl:l個の実n次元数ベクトル。 具体的に書くと、 v1= ( v11, v12, …, v1n ) ただし、v11 , v12 , …, v1n ∈R v2= ( v21, v22, …, v2n ) ただし、v21 , v22 , …, v2n ∈R : : vl= ( vl1, vl2, …, vln ) ただし、vl1 , vl2 , …, vln ∈R したがって、v1, v2, …, vl ∈Rn 。 なお、個数lが有限個であることに注意。 a1, a2, …, al , al+1 :スカラー。a1, a2, …, al , al+1 ∈R |
[ 文献]佐武『線形代数学』V§1補題1:証明付(p.87); 佐和『回帰分析』2.1.2(i)(p.17)証明付; 矢野田代『社会科学者のための基礎数学』定理6.2(p.44):証明無. |
定理 |
条件 1:「実n次元数ベクトルv1, v2, …, vl」が一次独立かつ 条件2:「実n次元数ベクトルv1, v2, … , vl , u」が一次従属 ならば、 実n次元数ベクトルuは、v1, v2, …, vlの一次結合として、一意的に、表わせる。 つまり、 条件1かつ条件2ならば、 u=a1v1+a2v2+…+alvl が成り立ち、かつ、a1, a2, …, al は一意的である。 |
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定理 |
上記定理の 対偶は、つぎのとおり。| 「実n次元数ベクトルuを、v1, v2, …, vlの一次結合として、一意的に、表わせないならば、 | 「実n次元数ベクトルv1, v2, …, vl」が一次独立でない(=一次従属である)か、 | または、 | 「実n次元数ベクトルv1, v2, … , vl , u」が一次従属でない(=一次独立である)か、 | のいずれか。 だから、 「実n次元数ベクトルv1, v2, …, vlが一次独立である」ということが既に与えられているケースについては、 | 「実n次元数ベクトルuを、v1, v2, …, vlの一次結合として一意的に表わせないならば、 | 「実n次元数ベクトルv1, v2, … , vl , u」が一次従属でない(=一次独立である) といえる。 |
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活用例 |
実n次元数ベクトルの有限集合の基底の存在の証明、 | |
定理 |
条件の確認 ・条件1:「実n次元数ベクトルv1, v2, …, vlが一次独立」 ⇔ 条件1' :「a1v1+a2v2+…+alvl=0 を満たす実数a1, a2, …, al の組合せは、a1=a2=…=al=0だけであって、 a1v1+a2v2+…+alv=0を満たすが、a1=a2=…=al=0は満たさない、a1, a2, …, al の組合せは 存在しない」 ∵一次独立の定義 ・条件2:「実n次元数ベクトルv1, v2, … , vl , u」が一次従属 ⇔ 条件2' :「a1v1+a2v2+…+alvl+al+1u=0 を満たすが、a1=a2=…=al=al+1 =0は満たさない 実数a1, a2, …, al , al+1 が存在する 」 ∵一次従属の定義 step1:条件1かつ条件2ならば、 a1v1+a2v2+…+alvl+al+1u=0かつal+1 ≠0を満たすスカラーa1, a2, …, al , al+1 が存在する、 を示す。 条件2が成り立つならば、条件2'が成り立って、 a1v1+a2v2+…+alvl+al+1u=0 を満たすが、a1=a2=…=al=al+1 =0を満たさない スカラーa1, a2, …, al , al+1 が存在する。 ところが、 条件1が成り立ちかつ条件2が成り立つならば、 a1v1+a2v2+…+alvl+al+1u=0 を満たすが、a1=a2=…=al=al+1 =0を満たさない スカラーa1, a2, …, al , al+1 は、al+1 =0を満たさない。 なぜなら、 「a1v1+a2v2+…+alvl+al+1u=0 を満たすが、a1=a2=…=al=al+1 =0を満たさない スカラーa1, a2, …, al , al+1 が、al+1 =0を満たす」ということは、 「スカラーa1, a2, …, al が、a1v1+a2v2+…+alvl=0 を満たすが、a1=a2=…=al=0を満たさない」 ということになるが、 これは、条件1が成り立たないということにほかならず、 「条件1が成り立ちかつ条件2が成り立つならば」という設定と両立しないからである。 したがって、 条件1が成り立ちかつ条件2が成り立つならば、 条件2より、 a1v1+a2v2+…+alvl+al+1u=0 を満たすが、a1=a2=…=al=al+1 =0を満たさない スカラーa1, a2, …, al , al+1 が存在し、 条件1より、 これらのスカラーa1, a2, …, al , al+1 は、al+1 ≠0を満たす ということになる。 以上から、 条件1が成り立ちかつ条件2が成り立つならば、 a1v1+a2v2+…+alvl+al+1u=0 を満たし、 a1=a2=…=al=al+1 =0を満たさず、 al+1 ≠0を満たす スカラーa1, a2, …, al , al+1 が存在する といえる。 スカラーa1, a2, …, al , al+1 がal+1 ≠0を満たすならば、いつでも、a1, a2, …, al , al+1 はa1=a2=…=al=al+1 =0を満たさずにすむから、 上記は、次のように省略して表現できる。 、 条件1が成り立ちかつ条件2が成り立つならば、 a1v1+a2v2+…+alvl+al+1u=0 を満たし、かつ、al+1 ≠0を満たす スカラーa1, a2, …, al , al+1 が存在する。 step2: 条件1かつ条件2ならば、 a1v1+a2v2+…+alvl+al+1u=0かつal+1 ≠0を満たすスカラーa1, a2, …, al , al+1 が存在する、 ので、 条件1かつ条件2ならば、 a1v1+a2v2+…+alvl+al+1u=0 を、 al+1u=(−a1)v1+(−a2)v2+…+(−alvl) へ、 さらに、 u=(−a1/al+1)v1+(−a2/al+1)v2+…+(−al/al+1)vl (∵al+1 ≠0) へ変形できる。 これで、 条件1かつ条件2ならば、uは、v1, v2, …, vlの一次結合として表わせる ことが示された。 Step3: 一意性 ・実n次元数ベクトルuを、次の二通りの「v1, v2, …, vlの一次結合」として表わせるとする。…(仮定3-1) u=a1v1+a2v2+…+alvl u=a'1v1+a'2v2+…+a'lvl ・(仮定3-1)のもとでは、u=a1v1+a2v2+…+alvl=a'1v1+a'2v2+…+a'lvl であるから、 (a1−a'1)v1+(a2−a'2)v2+…+(al−a'l)vl=0 …(3-2) ・条件1:「実n次元数ベクトルv1, v2, …, vlが一次独立」かつ(仮定3-1)のもとでは、 (3-2)を満たす a1−a'1 , a2−a'2 , … ,al−a'l の組合せは、 a1−a'1 = a2−a'2 = … =al−a'l =0 だけであるから、 a1=a'1 , a2=a'2 , … , al=a'l 。 ・つまり、 条件1:「実n次元数ベクトルv1, v2, …, vlが一次独立」が成り立っているならば, たとえ、(仮定3-1)uを二通りの「v1, v2, …, vlの一次結合」として表わせたとしても、 その2通りの表現は、実は同じもの。 ・したがって、 条件1:「実n次元数ベクトルv1, v2, …, vl」が一次独立 かつ 条件2:「実n次元数ベクトルv1, v2, … , vl , u」が一次従属 ならば、 uを表す一次結合a1v1+a2v2+…+alvl は一意的だといえる。 |
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互いの基底をなす「実n次元数ベクトルの2つの有限集合」の性質1: | |||
設定 |
R :実数体(実数をすべて集めた集合)Rn:実n次元数ベクトル空間 v1, v2, …, vl:l個の実n次元数ベクトル。 具体的に書くと、 v1= ( v11, v12, …, v1n ) ただし、v11 , v12 , …, v1n ∈R v2= ( v21, v22, …, v2n ) ただし、v21 , v22 , …, v2n ∈R : : vl= ( vl1, vl2, …, vln ) ただし、vl1 , vl2 , …, vln ∈R したがって、v1, v2, …, vl ∈Rn 。 なお、個数lが有限個であることに注意。 u1, u2, … , um:m個の実n次元数ベクトル。 具体的に書くと、 u1= ( u11, u12, …, u1n ) ただし、u11 , u12 , …, u1n ∈R u2= ( u21, u22, …, u2n ) ただし、u21 , u22 , …, u2n ∈R : : um= ( um1, um2, …, umn ) ただし、um1 , um2 , …, umn∈R したがって、u1, u2, …, um ∈Rn 。 なお、個数mが有限個であることに注意。 |
[ 文献]佐武 『線形代数学』V§1補題2の証明のなか(pp.87-8); |
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本題 |
条件 1:l個の実n次元数ベクトル{v1, v2, …, vl }が一次独立かつ 条件2:u1, u2, … , umがそれぞれ、v1, v2, …, vl の一次結合として表わされる かつ 条件3:m個の実n次元数ベクトル{u1, u2, … , um}が一次独立 かつ 条件4:v1, v2, …, vlがそれぞれ、u1, u2, … , umの一次結合として表わされる ならば、 {v1, v2, …, vl } に属す任意の実n次元数ベクトルv(i)に対して、 次の3条件をともに満たす、実n次元数ベクトルu(j)を、{u1, u2,…, um}から一つ選ぶことができる。 1. {v1, v2, …, vl }からv(i)を排除して、u(j)を付け加えた実n次元数ベクトルの集合 {v1, v2, …, vl }−{v(i) }+{u(j)} が一次独立 (∀v(i)∈{v1, v2, …, vl } )(∃u(j)∈{u1, u2, … , um} )({v1, v2, …, vl }−{v(i) }+{u(j)}が一次独立) 2. {v1, v2, …, vl }からv(i)を排除して、u(j)を付け加えた実n次元数ベクトルの集合 {v1, v2, …, vl }−{v(i) }+{u(j)} に属す実n次元数ベクトルをそれぞれ、 u1, u2, … , umの一次結合として表わせる 3. {v1, v2, …, vl }からv(i)を排除して、u(j)を付け加えた実n次元数ベクトルの集合 {v1, v2, …, vl }−{v(i) }+{u(j)} に属す実n次元数ベクトルの一次結合として、 u1, u2, … , umをそれぞれ、表わせる |
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活用例 |
実n次元数ベクトルの2つの有限集合が互いの基底をなすならば、元の数は同一、 | ||
証明 |
Step 1:条件1:{v1, v2, …, vl }が一次独立 かつ 条件2:u1, u2, … , umがそれぞれ、v1, v2, …, vl の一次結合として表わされる かつ 条件4:v1, v2, …, vlがそれぞれ、u1, u2, … , umの一次結合として表わされる ならば、 {v1, v2, …, vl } に属す任意の実n次元数ベクトルv(i)に対して、 「{v1, v2, …, vl }−{v(i) }+{u(j)}が一次独立」を満たすu(j)を、{u1, u2,…, um}から一つ選ぶことができる (∀v(i)∈{v1, v2, …, vl } )(∃u(j)∈{u1, u2, … , um} )({v1, v2, …, vl }−{v(i) }+{u(j)}が一次独立) ということを示す。 ・「条件1:{v1, v2, …, vl }が一次独立」より、 v(i)は、{v1, v2, …, vl }−{v(i) }の一次結合として表せない。 ∵一次独立の必要十分条件 したがって、{v1, v2, …, vl }のなかには、{v1, v2, …, vl }−{v(i) }の一次結合として表せないものが存在する。 …(1-1) ・(1-1)と、互いに一次結合として表せる関係の推移性の対偶より、 次の命題の少なくとも一つは成立しなければならない。 命題1-1:{v1, v2, …, vl }のなかに、{u1, u2, … , um}の一次結合として表わされないものがある 命題1-2:{u1, u2, … , um}のなかに、{v1, v2, …, vl }の一次結合として表わされないものがある 命題1-3:{u1, u2, … , um}のなかに、{v1, v2, …, vl }−{v(i) }の一次結合として表わされないものがある 命題1-4:{v1, v2, …, vl }−{v(i) }のなかに、u1, u2, … , umの一次結合として表わされないものがある ところが、条件2より、命題1-2は成立せず、条件4より、命題1-1も命題1-4も成立しない。 したがって、条件1から引き出された(1-1)、条件2,4のもとでは、命題1-3だけが成立するといえる。 すなわち、 条件1 かつ 条件2 かつ 条件4 ならば、 {u1, u2, … , um}のなかに、{v1, v2, …, vl }−{v(i) }の一次結合として表わされない実n次元数ベクトルがある。 この実n次元数ベクトルを、u(j)とおく。 …(1-2) ・(1-2)で存在が示されたu(j)を、{v1, v2, …, vl }−{v(i) }に加え、{v1, v2, …, vl }−{v(i) }+{u(j)}をつくる。 一次独立な数ベクトルの集合の部分集合も一次独立だから、 条件1より、{v1, v2, …, vl }−{v(i) }は一次独立。…(1-3) 一次独立な数ベクトルの集合に、それらの一次結合として表せない数ベクトルを加えても、一次独立だから、 (1-2)(1-3)より、 {v1, v2, …, vl }−{v(i) }+{u(j)}は一次独立となる。 ・以上から、 条件1 かつ 条件2 かつ 条件4 ならば、 (∀v(i)∈{v1, v2, …, vl } )(∃u(j)∈{u1, u2, … , um} )({v1, v2, …, vl }−{v(i) }+{u(j)}が一次独立) が示された。 Step2: 条件1:{v1, v2, …, vl }が一次独立 かつ 条件2:u1, u2, … , umがそれぞれ、v1, v2, …, vl の一次結合として表わされる かつ 条件4:v1, v2, …, vlがそれぞれ、u1, u2, … , umの一次結合として表わされる ならば、 (1-2)で存在が示されたu(j)について、 命題2-1: {v1, v2, …, vl }−{v(i) }+{u(j)}に属す実n次元数ベクトルをそれぞれ、 v1, v2, …, vl の一次結合として表わせる 命題2-2: {v1, v2, …, vl }−{v(i) }+{u(j)}に属す実n次元数ベクトルの一次結合として、 v1, v2, …, vl をそれぞれ表わせる が成立することを示す。 ・v1, v2, …, vl は、それぞれ、v1, v2, …, vl の一次結合として表わせる。…(2-1-1) 実際、 v1=1v1+0v2+…………+0vl v2=0v1+1v2+0v3+…+0vl : : : vl=0v1+………+0vl−1+1vl ・条件2より、{u1, u2, … , um}から取り出したu(j)は[→(1-2)]、v1, v2, …, vl の一次結合として表わせる。…(2-1-2) ・(2-1-1)(2-1-2)から、命題2-1は、与えられた条件のもとで成立することが示された。 ・v1, v2, …, vl のうちv(i) 以外は、それぞれ、(2-1-1)同様の方法で、 {v1, v2, …, vl }−{v(i) }+{u(j)}の一次結合として表わせる。…(2-2-1) ・条件2より、{u1, u2, … , um}から取り出したu(j)は[→(1-2)]、v1, v2, …, vl の一次結合として表わせる。 すなわち、u(j)=a1v1+a2v2+…+a(i)v(i)+…+alvl …(2-2-2) u(j)は、{v1, v2, …, vl }−{v(i) }の一次結合として表わされないように選ばれたのだった。 [→(1-2)] したがって、(2-2-2)において、v(i) の係数a(i)≠0 よって、(2-2-2)を次のように変形してよい。 v(i)=−(a1/a(i))v1+(a2/a(i))v2+…+(a(i)-1/a(i))v(i)-1+(a(i)+1/a(i))v(i)+1+…+(al/a(i))vl+( 1/a(i))u(j) これは、 v(i) も、{v1, v2, …, vl }−{v(i) }+{u(j)}の一次結合として表わせるということを示している。…(2-2-3) ・ (2-2-1)(2-2-3)から、命題2-2は、与えられた条件のもとで成立することが示された。Step3: 条件1:{v1, v2, …, vl }が一次独立 かつ 条件2:u1, u2, … , umがそれぞれ、v1, v2, …, vl の一次結合として表わされる かつ 条件4:v1, v2, …, vlがそれぞれ、u1, u2, … , umの一次結合として表わされる ならば、 (1-2)で存在が示されたu(j)について、 step2でみたように、 命題2-1: {v1, v2, …, vl }−{v(i) }+{u(j)}に属す実n次元数ベクトルをそれぞれ、 v1, v2, …, vl の一次結合として表わせる 命題2-2: {v1, v2, …, vl }−{v(i) }+{u(j)}に属す実n次元数ベクトルの一次結合として、 v1, v2, …, vl をそれぞれ表わせる が成立するので、 条件2・条件4・命題2-1・命題2-2を与件として互いに一次結合として表せる関係の推移性を適用すれば、 与えられた条件のもとで、 2. {v1, v2, …, vl }からv(i)を排除して、u(j)を付け加えた実n次元数ベクトルの集合 {v1, v2, …, vl }−{v(i) }+{u(j)} に属す実n次元数ベクトルをそれぞれ、 u1, u2, … , umの一次結合として表わせる 3. {v1, v2, …, vl }からv(i)を排除して、u(j)を付け加えた実n次元数ベクトルの集合 {v1, v2, …, vl }−{v(i) }+{u(j)} に属す実n次元数ベクトルの一次結合として、 u1, u2, … , umをそれぞれ、表わせる といえる。 Step4: 以上から、 条件1:{v1, v2, …, vl }が一次独立 かつ 条件2:u1, u2, … , umがそれぞれ、v1, v2, …, vl の一次結合として表わされる かつ 条件4:v1, v2, …, vlがそれぞれ、u1, u2, … , umの一次結合として表わされる ならば、 (1-2)で{u1, u2,…, um}から選ばれたu(j)について、 1. {v1, v2, …, vl }からv(i)を排除して、u(j)を付け加えた実n次元数ベクトルの集合 {v1, v2, …, vl }−{v(i) }+{u(j)} が一次独立 (∀v(i)∈{v1, v2, …, vl } )(∃u(j)∈{u1, u2, … , um} )({v1, v2, …, vl }−{v(i) }+{u(j)}が一次独立) 2. {v1, v2, …, vl }からv(i)を排除して、u(j)を付け加えた実n次元数ベクトルの集合 {v1, v2, …, vl }−{v(i) }+{u(j)} に属す実n次元数ベクトルをそれぞれ、 u1, u2, … , umの一次結合として表わせる 3. {v1, v2, …, vl }からv(i)を排除して、u(j)を付け加えた実n次元数ベクトルの集合 {v1, v2, …, vl }−{v(i) }+{u(j)} に属す実n次元数ベクトルの一次結合として、 u1, u2, … , umをそれぞれ、表わせる が満たされることが示された。 |
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互いの基底をなす「実n次元数ベクトルの2つの有限集合」の性質2:元の数は同一。 | |||
設定 |
R :実数体(実数をすべて集めた集合)Rn:実n次元数ベクトル空間 v1, v2, …, vl:l個の実n次元数ベクトル。 具体的に書くと、 v1= ( v11, v12, …, v1n ) ただし、v11 , v12 , …, v1n ∈R v2= ( v21, v22, …, v2n ) ただし、v21 , v22 , …, v2n ∈R : : vl= ( vl1, vl2, …, vln ) ただし、vl1 , vl2 , …, vln ∈R したがって、v1, v2, …, vl ∈Rn 。 なお、個数lが有限個であることに注意。 u1, u2, … , um:m個の実n次元数ベクトル。 具体的に書くと、 u1= ( u11, u12, …, u1n ) ただし、u11 , u12 , …, u1n ∈R u2= ( u21, u22, …, u2n ) ただし、u21 , u22 , …, u2n ∈R : : um= ( um1, um2, …, umn ) ただし、um1 , um2 , …, umn∈R したがって、u1, u2, …, um ∈Rn 。 なお、個数mが有限個であることに注意。 |
[ 文献]佐武 『線形代数学』V§1補題2(pp.87-8); |
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本題 |
条件 1:l個の実n次元数ベクトル「v1, v2, …, vl」が一次独立かつ 条件2:u1, u2, … , umがそれぞれ、v1, v2, …, vl の一次結合として表わされる かつ 条件3:m個の実n次元数ベクトル「u1, u2, … , um」が一次独立 かつ 条件4:v1, v2, …, vlがそれぞれ、u1, u2, … , umの一次結合として表わされる ならば、 l=m。 |
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活用例 |
実n次元数ベクトルの有限集合の基底の存在の証明 | ||
証明 |
活用される性質: 互いに一次結合として表せる関係の推移性、互いの基底をなす「実n次元数ベクトルの2つの有限集合」の性質1 |
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定理:実n次元数ベクトルの有限集合の基底の存在 | |||
設定 |
R :実数体(実数をすべて集めた集合)Rn:実n次元数ベクトル空間 v1, v2, …, vl:l個の実n次元数ベクトル。 具体的に書くと、 v1= ( v11, v12, …, v1n ) ただし、v11 , v12 , …, v1n ∈R v2= ( v21, v22, …, v2n ) ただし、v21 , v22 , …, v2n ∈R : : vl= ( vl1, vl2, …, vln ) ただし、vl1 , vl2 , …, vln ∈R したがって、v1, v2, …, vl ∈Rn 。 なお、個数lが有限個であることに注意。 |
[ 文献]佐武『線形代数学』V§1定理1(pp.89-90); |
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1. |
任意の「実n次元数ベクトルの有限集合」{v1, v2, …, vl }には、 v1=v2=…=vl =0 でないならば、 次の2条件を満たす部分集合S={vn(1), vn(2), …, vn(m) }が存在する。 条件1:Sに属すm個の実n次元数ベクトルvn(1), vn(2), …, vn(m)が一次独立 条件2:Sに属すm個の実n次元数ベクトルvn(1), vn(2), …, vn(m) の一次結合として、 l個の実n次元数ベクトルv1, v2, …, vlの全てをそれぞれ、表わせる。 ※これは、任意の「実n次元数ベクトルの有限集合」には、その有限集合に限定した基底が存在するという主張にほかならない。 |
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2. |
「 実n次元数ベクトルの集合」{v1, v2, …, vl }に対して、上記の条件を満たす部分集合Sは複数存在し得る。これらの部分集合Sに属す実n次元数ベクトルの個数mは、 {v1, v2, …, vl }に対して一意的に定まる。 |
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1 の証明 |
次の手順で、 {v1, v2, …, vl }から、その部分集合Sを選ぶ。[手順] Step1: case1: v1=v2=…=vl =0 ならば、S=φ、m=0 とする。(終わり) case2: v1=v2=…=vl =0 でないならば、 {v1, v2, …, vl }のなかで最初の非零ベクトルを、vn(1) とする。 つまり、 v1が非零ベクトルのとき、vn(1)=v1 v1 =0 かつv2が非零ベクトルのとき、vn(1)=v2 v1 =v2 =0 かつv3が非零ベクトルのとき、vn(1)=v3 : v1 =v2 =…=vl−1=0 かつvlが非零ベクトルのとき、vn(1)=vl だから、vn(1) は {v1, v2, …, vl }の先頭に来て{vn(1), v2, …, vl }となるか、 { 0 ,… , 0 , vn(1), …, vl }と言った具合に、0並びの直後に来るか いずれかである。 {vn(1) }は一次独立となる。(∵) →Step2 |
[ 文献]佐武『線形代数学』V§1極大集合の作り方(pp.87-88); |
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Step 2:case0: vn(1)=vlであって、{v1, v2, …, vl }にはvn(1)以降にもはや実n次元数ベクトルが存在しないならば、S={vn(1) }、m=1 とする。(終わり) case1: {v1, v2, …, vl }で、vn(1)以降に位置するすべての実n次元数ベクトルが、それぞれ、vn(1)のスカラー倍として表せる(従ってvn(1)の一次結合として表せる)ならば、S={vn(1) }、m=1 とする。(終わり) case2: {v1, v2, …, vl }で、vn(1)以降に位置する実n次元数ベクトルのなかに、vn(1)のスカラー倍として表せない(従ってvn(1)の一次結合として表せない)ものがあれば、その最初のものを、vn(2) とする。 { vn(1) , vn(2) }は一次独立となる。(∵→対偶) →Step3 Step3: case0: vn(2)=vlであって、{v1, v2, …, vl }にはvn(2)以降に、もはや実n次元数ベクトルが存在しないならば、S={vn(1) , vn(2) }、m=2 とする。(終わり) case1: {v1, v2, …, vl }で、vn(2)以降に位置するすべての実n次元数ベクトルが、それぞれ、vn(1) , vn(2) の一次結合として表せるならば、S={vn(1) , vn(2) }、m=2 とする。(終わり) case2: {v1, v2, …, vl }で、vn(2)以降に位置する実n次元数ベクトルのなかに、vn(1) , vn(2) の一次結合として表せないものがあれば、その最初のものを、vn(3) とする。 { vn(1) , vn(2) , vn(3) }は一次独立となる。(∵→対偶) →Step4 : : Step-k : case0: vn(k-1)=vlであって、{v1, v2, …, vl }にはvn(k-1)以降に、もはや実n次元数ベクトルが存在しないならば、S={vn(1) , vn(2) , vn(3) ,…,vn(k-1) }、m=k-1 とする。(終わり) case1: {v1, v2, …, vl }で、vn(k-1)以降に位置するすべての実n次元数ベクトルが、それぞれ、vn(1) , vn(2), vn(3) ,…,vn(k-1) の一次結合として表せるならば、S={vn(1) , vn(2) , vn(3) ,…,vn(k-1) }、m=k-1 とする。(終わり) case2: {v1, v2, …, vl }で、vn(k-1)以降に位置する実n次元数ベクトルのなかに、vn(1) , vn(2) , vn(3) ,…,vn(k-1)の一次結合として表せないものがあれば、その最初のものを、vn(k) とする。 {vn(1) , vn(2) , vn(3) ,…,vn(k-1) }は一次独立となる。(∵→対偶) →Step-(k+1) : : [論点1] ・Sが条件1「Sに属すm個の実n次元数ベクトルvn(1), vn(2), …, vn(m)が一次独立」を満たすことは、上記手順のなかの説明によって明らか。 [論点2] ・{v1, v2, …, vl }のなかでSに選ばれなかった実n次元数ベクトルは、すべて、それぞれ、S={vn(1), vn(2), …, vn(m) }の一次結合として表せる。この点は、上記手順から、明らか。 [論点3] Sに属すm個の実n次元数ベクトルvn(1), vn(2), …, vn(m)の各々は、すべて、S={vn(1), vn(2), …, vn(m) }の一次結合として表せる。実際、 vn(1)=1vn(1)+0vn(2)+… …+0vn(m) vn(2)=0vn(1)+1vn(2)+0vn(3)+…+0vn(m) : vn(m)=0vn(1)+… …+0vn(m-1)+1vn(m) [論点4] 論点3,4より、 Sが 条件2「Sに属すm個の実n次元数ベクトルvn(1), vn(2), …, vn(m) の一次結合として、 l個の実n次元数ベクトルv1, v2, …, vlの全てをそれぞれ、表わせる」 を満たすといえる。 |
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2 の証明 |
互いの基底をなす「実n次元数ベクトルの2つの有限集合」の性質2:元の数は同一を使う。 |
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→ [トピック一覧:線形独立と一次結合の関係]→線形代数目次・総目次 |
一次結合が一次従属となるための十分条件(1):一次結合の個数・一次結合を構成するベクトルの個数と、一次従属 |
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設定 |
R :実数体(実数をすべて集めた集合)Rn:実n次元数ベクトル空間 +:実n次元数ベクトル空間Rnに定められたベクトルの加法 スカラーに続けてベクトルを並べて書いたもの: 実n次元数ベクトル空間Rnに定められたスカラー乗法 v1, v2, …, vl:l個の実n次元数ベクトル。 具体的に書くと、 v1= ( v11, v12, …, v1n ) ただし、v11 , v12 , …, v1n ∈R v2= ( v21, v22, …, v2n ) ただし、v21 , v22 , …, v2n ∈R : : vl= ( vl1, vl2, …, vln ) ただし、vl1 , vl2 , …, vln ∈R したがって、v1, v2, …, vl ∈Rn 。 なお、個数lが有限個であることに注意。 a1, a2, …, al :スカラー。a1, a2, …, al ∈R |
[ 文献]永田『理系のための線形代数の基礎』補題1.2.1(p.12); |
本題 1 |
実n次元数ベクトルv1, v2, …, vlの一次結合を(l+1)個つくる。 これら(l+1)個の「v1, v2, …, vlの一次結合」は一次従属。 つまり、 w1=a11v1+a12v2+…+a1lvl (a11, a12, …, a1l ∈R、v1, v2, …, vl ∈Rn ) w2=a21v1+a22v2+…+a2lvl (a21, a22, …, a2l ∈R、v1, v2, …, vl ∈Rn ) : wl=al1v1+al2v2+…+allvl (al1, al2, …, all ∈R、v1, v2, …, vl ∈Rn ) w(l+1)=a(l+1)1 v1+a(l+1)2v2+…+a(l+1)lvl (a(l+1)1, a(l+1)2, …, a(l+1)l ∈R、v1, v2, …, vl ∈Rn ) は 一次従属。 |
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※ |
「 v1, v2, …, vlの一次結合」も実n次元数ベクトルであることに注意。 |
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※ |
なぜ?→ 証明 |
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→ [トピック一覧:線形独立と一次結合の関係]→線形代数目次・総目次 |
一次結合が一次従属となるための十分条件(2)一次結合の個数・一次結合を構成するベクトルの個数と、一次従属 |
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設定 |
R :実数体(実数をすべて集めた集合)Rn:実n次元数ベクトル空間 +:実n次元数ベクトル空間Rnに定められたベクトルの加法 スカラーに続けてベクトルを並べて書いたもの: 実n次元数ベクトル空間Rnに定められたスカラー乗法 v1, v2, …, vl:l個の実n次元数ベクトル。 具体的に書くと、 v1= ( v11, v12, …, v1n ) ただし、v11 , v12 , …, v1n ∈R v2= ( v21, v22, …, v2n ) ただし、v21 , v22 , …, v2n ∈R : : vl= ( vl1, vl2, …, vln ) ただし、vl1 , vl2 , …, vln ∈R したがって、v1, v2, …, vl ∈Rn 。 なお、個数lが有限個であることに注意。 a1, a2, …, al :スカラー。a1, a2, …, al ∈R |
[ 文献]永田『理系のための線形代数の基礎』補題1.2.1(p.12); 佐武『線形代数学』V§1定理1系1(p.90); |
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命題 1 |
実n次元数ベクトルv1, v2, …, vlの一次結合をm個つくる。 m>l ならば、m個の「v1, v2, …, vlの一次結合」は一次従属。 つまり、 w1=a11v1+a12v2+…+a1lvl (a11, a12, …, a1l ∈R、v1, v2, …, vl ∈Rn ) w2=a21v1+a22v2+…+a2lvl (a21, a22, …, a2l ∈R、v1, v2, …, vl ∈Rn ) : wm=am1v1+am2v2+…+amlvl (am1, am2, …, aml ∈R、v1, v2, …, vl ∈Rn ) であって、 |
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命題 2 |
上記命題の対偶: 実n次元数ベクトルv1, v2, …, vlの一次結合をm個つくる。 m個の「v1, v2, …, vlの一次結合」が一次独立ならば、m≦l。 つまり、 w1=a11v1+a12v2+…+a1lvl (a11, a12, …, a1l ∈R、v1, v2, …, vl ∈Rn ) w2=a21v1+a22v2+…+a2lvl (a21, a22, …, a2l ∈R、v1, v2, …, vl ∈Rn ) : wm=am1v1+am2v2+…+amlvl (am1, am2, …, aml ∈R、v1, v2, …, vl ∈Rn ) であって、 |
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図解 |
命題 1と命題2を図解すると、次のようになる。![]() Pの内側:「v1, v2, …, vlの一次結合」w1, w2, …, wmがl個より多い(m>l ) Pの外側:「v1, v2, …, vlの一次結合」w1, w2, …, wmがl個以下(m≦l) Qの内側:「v1, v2, …, vlの一次結合」w1, w2, …, wmが一次従属 Qの外側:「v1, v2, …, vlの一次結合」w1, w2, …, wmが一次独立 つまり、命題1・命題2が言わんとしていることは、 「v1, v2, …, vlの一次結合」w1, w2, …, wmは、 個数mと一次独立/一次従属に関して、 次の三つのケースのいずれかに分けられるということ。 [case1: 上図のPの内側] 「v1, v2, …, vlの一次結合」w1, w2, …, wmの個数mがl個より多く(m>l )、なおかつ、一次従属 [case2: 上図のPとQのあいだ] 「v1, v2, …, vlの一次結合」w1, w2, …, wmの個数mがl個以下、なおかつ、一次従属 [case3: 上図のQの外側] 「v1, v2, …, vlの一次結合」w1, w2, …, wmの個数mがl個以下、なおかつ、一次独立 この3ケースにわかれるので、 ・m>l ならば、case1のみに該当して、w1, w2, …, wmは一次従属(命題1) ・w1, w2, …, wmが一次独立ならば、case3のみに該当して、m≦l (命題2) とだけ断言できて、 m≦l のときには、一次独立/一次従属に関してなんともいえず、 一次従属のときも、個数についてなんともいえない、 ということになる。 |
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命題 3 |
[佐武『線形代数学』V§1定理1系1(p.90);] 「実n次元数ベクトルv1, v2, …, vlの一次結合」をl個つくる。 l個の「v1, v2, …, vlの一次結合」が一次独立ならば、 v1, v2, …, vlも一次独立であり、 v1, v2, …, vlはそれぞれ、l個の「v1, v2, …, vlの一次結合」の一次結合として表せる。 つまり、 w1=a11v1+a12v2+…+a1lvl (a11, a12, …, a1l ∈R、v1, v2, …, vl ∈Rn ) w2=a21v1+a22v2+…+a2lvl (a21, a22, …, a2l ∈R、v1, v2, …, vl ∈Rn ) : wl=al1v1+al2v2+…+allvl (al1, al2, …, all ∈R、v1, v2, …, vl ∈Rn ) であって、 v1, v2, …, vlも一次独立であり、 v1=b11w1+b12w2+…+b1lwl (b11, b12, …, b1l ∈R、w1, w2, …, wl ∈Rn ) v2=b21w1+b22w2+…+b2lwl (b21, b22, …, b2l ∈R、w1, w2, …, wl ∈Rn ) : vl=bl1w1+bl2w2+…+bllwl (bl1, bl2, …, bll ∈R、w1, w2, …, wl ∈Rn ) と表せる。 |
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命題 1の 証明 |
・ w1, w2, …, wl, w(l+1)は一次従属。(∵)・w1, w2, …, wl, w(l+1)が一次従属であって、m>l ならば、 w1, w2, …, wl, w(l+1),w(l+2), …, wmは一次従属。 (∵) |
[ 文献]永田『理系のための線形代数の基礎』補題1.2.1(p.12); |
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命題 2命題3 の 証明 |
実n次元数ベクトルの有限集合の基底の存在を、 { w1, w2, …, wm } + {v1, v2, …, vl } に適用する。 |
[ 文献]佐武『線形代数学』V§1定理1系1(p.90); |
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