n変数関数の高次偏微分  

 定義n変数関数の2階偏導関数・第2次偏導関数/n次偏導関数・n階偏導関数・高階偏導関数/Cn
 ・
偏微分の順序定理/Youngの定理/Schwarzの定理/C n級関数のn回までの偏微分は偏微分の順序を換えても変わらない

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定義:2階偏導関数・第2次偏導関数・交叉偏導関数  


定義


n変数関数y=f (x1,x2,,xn )偏導関数
 さらにその
偏導関数が存在するならば、
 それらを、
2階偏導関数2次偏導関数などと呼ぶ。 
はじめに偏微分したときと、次に偏微分したときとで、
 偏微分する変数が異なる場合、
 その
2階偏導関数を、交叉偏導関数と呼ぶこともある[西村『経済数学早わかり]
n変数関数y=f (x1,x2,,xn )2(2)偏導関数として、
 以下の
n2通りを考えることができる。
  (→
これらを一定のパターンに並べたのが、Hesse行列
 
type-1-1.まず、x1 に関して偏微分して、次もx1 に関して偏微分
   
y=f (x1,x2,,xn )x1に関する偏導関数 f x1 (x1,x2,,xn) を、
   さらに
x1で偏微分して出てきた導関数 
    
   (記法)
     
f x1 x1 (x1,x2,,xn)  ∂2f/x12 
      
     
 
type-2-1. まず、x2 に関して偏微分して、次にx1 に関して偏微分。 
   
y=f (x1,x2,,xn )x2に関する偏導関数 f x2 (x1,x2,,xn) を、
   
x1で偏微分して出てきた導関数 
    
   (記法)
     
f x2 x1 (x1,x2,,xn)  ∂2f /x1x2 
     
     
   
*このように、別の変数で偏微分した2階偏導関数を、
    
交叉偏導関数と呼ぶ[西村『経済数学早わかり]
 

 :

 
type-n-1. まず、xn に関して偏微分して、次にx1 に関して偏微分
   
y=f (x1,x2,,xn )x n に関する偏導関数 f xn (x1,x2,,xn) を、
   
x1で偏微分して出てきた導関数 
    
   (記法)
     
f xn x1 (x1,x2,,xn)  ∂2f /x1xn 
     
      
   
*このように、別の変数で偏微分した2階偏導関数を、
    
交叉偏導関数と呼ぶ[西村『経済数学早わかり]

[文献]
岡田『経済学・経営学のための数学1.6(p.48)
西村『経済数学早わかり3-3.1(p.119);
黒田『微分積分学8.4.1 (p.297);
神谷浦井『経済学のための数学入門6.3.1 (p. 224) ;
入谷久我『数理経済学入門』補足7.1(pp.164-5)
杉浦『
解析入門』U§3 定義3(p.109);
小平『解析入門II』§6.4 (p.310) ;

類概念:
  
1変数関数の2(2)偏導関数
  
2変数関数の2(2)偏導関数

 

 ・type-1-2. まず、x1 に関して偏微分して、次にx2 に関して偏微分。 
   
y=f (x1,x2,,xn )x1に関する偏導関数 f x1 (x1,x2,,xn) を、
   
x2で偏微分して出てきた導関数 
    
   (記法)
     
f x1x2 (x1,x2,,xn)  ∂2f /x2x1 
     
     
   
*このように、別の変数で偏微分した2階偏導関数を、
    
交叉偏導関数と呼ぶ[西村『経済数学早わかり]
 
type-2-2. まず、x2 に関して偏微分して、次もx2 に関して偏微分。 
   
y=f (x1,x2,,xn )x2に関する偏導関数 f x2 (x1,x2,,xn) を、
   さらに
x2で偏微分して出てきた導関数 
    
   (記法)
     
f x2 x2 (x1,x2,,xn)  ∂2f /x22 
      
     
 

 :

 
type-n-2. まず、xn に関して偏微分して、次にx2 に関して偏微分。 
   
y=f (x1,x2,,xn )x n に関する偏導関数 f xn (x1,x2,,xn) を、
   
x2で偏微分して出てきた導関数 
    
   (記法)
     
f xn x2 (x1,x2,,xn)  ∂2f /x2xn 
     
      
   
*このように、別の変数で偏微分した2階偏導関数を、
    
交叉偏導関数と呼ぶ[西村『経済数学早わかり]
 

 :

 ・type-1-n. まず、x1 に関して偏微分して、次にxn に関して偏微分。 
   
y=f (x1,x2,,xn )x1に関する偏導関数 f x1 (x1,x2,,xn) を、
   
xnで偏微分して出てきた導関数 
    
   (記法)
     
f x1xn (x1,x2,,xn)  ∂2f /xnx1 
     
     
   
*このように、別の変数で偏微分した2階偏導関数を、
    
交叉偏導関数と呼ぶ[西村『経済数学早わかり]
 
type-2-n. まず、x2 に関して偏微分して、次にxn に関して偏微分。 
   
y=f (x1,x2,,xn )x2に関する偏導関数 f x2 (x1,x2,,xn) を、
   
xn で偏微分して出てきた導関数 
    
   (記法)
     
f x2 xn (x1,x2,,xn)  ∂2f /xnx2 
     
     
   
*このように、別の変数で偏微分した2階偏導関数を、
    
交叉偏導関数と呼ぶ[西村『経済数学早わかり]
 

 :

 
type-n-n. まず、xn に関して偏微分して、次もxn に関して偏微分。 
   
y=f (x1,x2,,xn )x n に関する偏導関数 f xn (x1,x2,,xn) を、
   
xn で偏微分して出てきた導関数 
    
   (記法)
     
f xn xn (x1,x2,,xn)  ∂2f /xn2 
      
      

   

[トピック一覧:n変数関数の高次の偏微分]
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定義:n階偏導関数・第n次偏導関数・高階偏導関数  


定義


2以上の偏導関数を総称して高階偏導関数と呼ぶ。 
n変数関数y=f (x1,x2,,xn )を、
    
k i1回、x i1 に関して偏微分i11,2,nのどれか)
    
k i2回、x i2に関して偏微分i21,2,nのどれか) 
     : : 
    
k in回、x inに関して偏微分i n1,2,nのどれか) 
 して得られた高階偏導関数は、
 
(k1+ k2++ kn ) 階偏導関数ないし(k1+ k2++ kn )次導関数
 
と呼ばれ、
   
 と表される。

[文献]
・岡田『経済学・経営学のための数学1.6(p.48)
・黒田『微分積分学8.4.2 (p.299);
・入谷久我『数理経済学入門』補足7.1(pp.164-5)
・小平『
解析入門II』§6.4 (p.310) ;

類概念:
  
1変数関数のn(n)偏導関数
  
2変数関数の高階偏導関数 

   

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定義:C k Function of Class C k  


定義


n変数関数y=f (x1,x2,,xn )
D上でk回連続微分可能
ないし
D上で C k function of class C-k 」であるとは、 
f (x1,x2,,xn )領域D上でn階までのあらゆる偏導関数をもち、
それらがすべて
D上で連続であることをいう。

[文献]
・岡田『経済学・経営学のための数学1.6(p.48)
・黒田『微分積分学8.4.2 (p.300);
・杉浦『解析入門』U§3 定義4(p.111);
・小平『解析入門II』§6.4 (p.312) ;

類概念:1変数関数のC n/2変数関数のCn

全微分可能との関係、偏微分の順序との関係


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偏微分の順序 

 

n変数関数y=f (x1,x2,,xn )に、
2階偏導関数f x y , f yx がともに存在したとしても
一致するとは限らない。 
では、
一致するための十分条件とは?



定理 

 

ある領域Dにおいて
n変数関数y=f (x1,x2,,xn )偏導関数 f x , f y2階偏導関数 f x y , f yx が存在して、
f x y (x1,x2,,xn) , f yx (x1,x2,,xn) が連続
ならば、  
f x y (x1,x2,,xn) f yx (x1,x2,,xn)  が成り立つ


[文献]
小平『解析入門II』定理6.23(pp.311);

Youngの定理 

 


領域Dにおいて
n変数関数y=f (x1,x2,,xn )偏導関数 f x , f y が存在して(全)微分可能
ならば、 
f x y (x1,x2,,xn) f yx (x1,x2,,xn)  が成り立つ。 


[文献]
小平『解析入門II』定理6.24(pp.312);

Schwarzの定理 

 


ある
領域Dにおいて
n変数関数y=f (x1,x2,,xn )偏導関数f x , f y ,2階偏導関数 f x yが存在して、 
  
f x y連続ならば  
2階偏導関数f y xも存在して、
  
f x y (x1,x2,,xn) f yx (x1,x2,,xn)  が成り立つ。


[文献]
黒田『微分積分学』定理8.13 (p.297);
杉浦『解析入門』U§3定理3.2(p.109);

偏微分の順序についての結論 

 


以上の諸定理より、
C k級関数y=f (x1,x2,,xn )について、
k回までの偏微分
微分の順序を換えても変わらない。


[文献]
杉浦『解析入門』U§3定理3.3(p.111);
黒田『微分積分学』系8.1:C2(p.297);8.4.2:Ck(p.299)

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reference

西村和雄『経済数学早わかり』日本評論社、1982年、3章§4極値問題-定符号行列(p.138)
黒田成俊『
21世紀の数学1:微分積分学』共立出版株式会社、2002年、8.4高階偏導関数(p.297)

岩波数学辞典(第三版). 項目333 微分法[pp.983-986]

矢野健太郎・田代嘉宏『社会科学者のための基礎数学 改訂版』裳華房、pp.92-93.

小平邦彦『解析入門II (軽装版)岩波書店、2003年、pp.265-266

高木貞治『解析概論 改訂第三版』岩波書店、1983年、p. 58.

和達三樹『理工系の数学入門コース1・微分積分』岩波書店、1988年、pp.118-119.

吹田・新保『理工系の微分積分学』学術図書出版社、1987年。pp.162-163.

杉浦光夫『解析入門』岩波書店、1980年、pp.107-110.  ただし、いきなり多次元。

高橋一『経済学とファイナンスのための数学』新世社、1999年、pp.59-60