Food Processing 2022年12月7日
欧州司法裁判所 EU の二酸化チタン禁止を覆す EU は欠陥ある研究に依存していると述べているが 消費者団体は人気の食品着色料に依然警告を発している パン・デメトラカケス 情報源:Food Processing, December 7, 2022 Court Reverses EU Ban on Titanium Dioxide Says EU relied on flawed study; consumer group still warns against the popular food colorant. By Pan Demetrakakes https://www.foodprocessing.com/business-of-food-beverage/international/ news/21438611/court-reverses-eu-ban-on-titanium-dioxide 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) https://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日:2022年12月8日 このページへのリンク: https://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/news/221207_ Food-Processing_Court_Reverses_EU_Ban_on_Titanium_Dioxide.html (訳注2):末尾に、”食品添加物としての二酸化チタンは欧州で依然として禁止”であると解説する Ingredients Network 2022年11月25日の記事を紹介しました。 欧州連合は、食品の着色料としてよく使用される化学物質である二酸化チタンを禁止したことは誤りであったと、欧州連合の司法部門が判決を下した。 欧州連合司法裁判所は、2019 年の EU による二酸化チタンの発がん性分類は、誤った科学的分析に基づいているとの判決を 11 月下旬に下した。 二酸化チタンを含む製品のラベル表示要件とともに、その分類を無効にした。 EU は現在、裁判所の判決に照らしてどのように対応するかを決めなくてはならない。 EU 加盟国は、一般に、国際貿易に個別に影響を与える食品安全基準を独自に設定することを許されていない。 二酸化チタンの懸念は、肺や体の他の場所に蓄積する可能性のあるナノ粒子に分解する傾向に注がれている。 しかし裁判所は、EU が禁止の根拠とした科学的研究は信頼できないものであり、二酸化チタンがナノ粒子に分解するように設計されておらず、常に分解するわけではないため、二酸化チタンがもたらす危険性は「非本質的」であるとの判決を下した。 欧州裁判所の判決を受けて、公益科学センター(Center for Science in the Public Interest / CSPI)は 12月5日に、二酸化チタンを含む製品を避けるよう消費者にアドバイスしていると発表した(訳注1)。 ”食品に使用される他の化学物質とは異なり、二酸化チタンには栄養、防腐、または食品安全機能はない。その使用は純粋に見た目(cosmetic)のためである”と CSPI の広報担当者は声明で述べている。 ”二酸化チタン ナノ粒子が DNA に損傷を与える可能性は、消費者にそれを含む食品を避けることを推奨するのに十分な懸念事項である。” 著者 パン・デメトラカケス(Pan Demetrakakes)| 上級編集者 Pan は 25 年以上にわたって食品および飲料業界について執筆している。彼の担当分野には、製剤、加工、包装、マーケティング、小売が含まれる。 パンは 1990 年代に 6 年間フード プロセッシング マガジンに勤務し、オペレーション エディター (現在の役割) を務め、あらゆる種類の食品工場を数多く視察した。 彼はまた、Packaging and Food & Beverage Packaging 誌で編集長を務め、その間に 3 つの ASBPE 賞を受賞した。 彼はスタンフォード大学を卒業し、コミュニケーションの学士号を取得している。 訳注1:CSPI のアドバイス
Ingredients Network 2022年11月25日の記事紹介 Titanium dioxide still banned in Europe https://www.ingredientsnetwork.com/titanium-dioxide-still-banned-in-europe-news119481.html EU司法裁判所は、特定の条件下で二酸化チタンを発がん性物質に指定する規則を無効とした。しかし、これは EU で依然として禁止されている食品添加物としての使用には影響しない。 欧州委員会の広報担当者は、Ingredients Network に対し、この規則の無効化という最近の決定は、塗料などの特定の用途における二酸化チタンの使用に影響を与えるものであり、食品添加物としての使用には影響しないことを確認した。 欧州委員会は今年、二酸化チタン(TiO2)を食品添加物として禁止し、この規則は 6か月の遵守期間を経て8月に完全施行された。 しかし、今週(11月23日)、EU 司法裁判所は、特定の粉末状の二酸化チタンを吸入すると発がん性があると分類した 2019年の規則を EU一般裁判所が無効と決定したと発表した。 これに対し、二酸化チタン製造者協会(TDMA)は声明を発表し、”これは、TiO2 が EU において危険物質として分類されていないことを意味し、危険物質分類に関連する義務は今後適用されないことを意味する”と述べた。 ”TDMA はこの結果を歓迎するが、TiO2 業界にとって、TiO2 の安全性に関する科学的コミュニケーションの改善について、いくつかの教訓が得られたことも認識している。” ソーシャルメディア上では、この取消が二酸化チタンの食品への使用が再び認可されることを意味するのか疑問視するコメントが一部寄せられ、混乱が生じた。しかし、成分リストに E171 として記載されていたこの添加物は、EUでは依然として食品への使用が禁止されている。 欧州消費者機構(BEUC)の食品政策担当上級官、カミーユ・ペランは、次のようにツイートした。”昨日の @EUCourtPress による#二酸化チタンに関する判決を受けて混乱が生じている。これは食品添加物としての TiO2 の禁止とは関係ない。#E171は、@EFSA_EU がもはや安全とはみなせないと表明した後、2022年初頭から食品への使用が禁止されており、今後も禁止される予定である。” EU裁判所:"欧州委員会は明白な誤りを犯した” 判定の無効化の主な理由は、分類の根拠となった研究の信頼性と許容性の評価において誤りがあったこと、そして分類は発がん性を持つ固有の特性を持つ物質にのみ適用できることである。 司法裁判所が発表した声明には、次のように記されている。”第一に、委員会は、分類の根拠となった研究の信頼性と許容性の評価において明白な誤りを犯し、第二に、当該分類は、がんを引き起こす本質的な性質を有する物質にのみ適用できるという基準に違反した。” EFSA:潜在的な遺伝毒性作用 欧州委員会は、欧州食品安全機関(EFSA)による科学的意見の公表を受け、食品への二酸化チタンの使用を禁止する措置を講じた。EFSA は二酸化チタンナノ粒子の安全性に関する不確実性を報告し、もはや安全であるとはみなせないことを意味した。 科学的意見はまた、二酸化チタンが細胞内の DNA や遺伝物質に直接損傷を与える可能性、すなわち遺伝毒性作用についても指摘している。 しかしながら、カナダ保健省や英国食品基準庁などの他の食品安全当局は、二酸化チタンは摂取しても安全であると報告している。 訳注:当研究会が紹介した二酸化チタンナノ粒子関連情報
|