EFSA ニュース 2021年5月6日
二酸化チタン(E171)は最早、
食品添加物として安全であるとみなせない


情報源:EFSA News 6 May 2021
Titanium dioxide: E171 no longer considered safe when used as a food additive
https://www.efsa.europa.eu/en/news/titanium-dioxide-e171-
no-longer-considered-safe-when-used-food-additive


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2021年6月30日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/EFSA/210506_EFSA_Titanium_dioxide_E171_
no_longer_considered_safe_when_used_as_a_food_additive.html


  欧州食品安全機関(EFSA)は、2020年3月の欧州委員会の要請を受けて、食品添加物の二酸化チタン(E171)の安全性評価を更新した。

 更新された評価は、2016年に公開された EFSA の以前の評価の結果を改訂し、データのギャップを埋めるためにさらなる調査の必要性を浮き彫りにした。

 EFSAの食品添加物及び香料に関する専門家諮問委員会(FAF)の議長であるマジッド・ユネス教授は、次のように述べている。”利用可能な全ての科学的研究とデータを考慮た結果、諮問委員会は二酸化チタンは最早食品添加物として安全であるとはみなすことができないと結論付けた。この結論に達するための重要な要素は、二酸化チタン粒子の遺伝子毒性の懸念を排除できなかったことである。経口摂取後、二酸化チタン粒子の吸収は低いが、それらは体内に蓄積する可能性がある”。

 この評価は、厳密な方法論に従い、2016年の EFSAの前回の評価以降に利用可能になった、新しい科学的証拠やナノ粒子に関するデータなど、何千もの研究を考慮して実施された。

我々の科学専門家らは、食品添加物の安全性評価に2018年のナノテクノロジーに関する EFSA科学委員会ガイダンスを初めて適用した。二酸化チタン E171には、消費者がさらされる可能性のあるナノ範囲(100ナノメートル未満)の粒子が最大で50%含まれている。

遺伝子毒性評価

 遺伝子毒性とは、化学物質が細胞の遺伝物質である DNAに損傷を与える能力を指す。遺伝子毒性は発がん性の影響をもたらす可能性があるため、物質の潜在的な遺伝子毒性の影響を評価して、その安全性を結論付けることが不可欠である。

 FAF 審査委員会のメンバーであり、E171に関する EFSAの作業部会の議長であるマシュー・ライト教授は、次のように述べている。”一般的な毒性作用の証拠は決定的ではなかったが、新しいデータと強化された方法に基づいた今回結果を除外することはできなかった。遺伝子毒性への懸念があり、したがってこの食品添加物の安全なレベルの一日摂取量を確立できなかった”。

 欧州委員会及び EU加盟国のリスク管理者は、EFSAの結論を知らされており、消費者の保護を確保するために取るべき適切な行動を検討するであろう。

背景

 二酸化チタン(E171)は、規則(EC)No 1333/2008の付属書IIによって、EUで食品添加物として認可されている。

 食品添加物 E171 の安全性は、2009年1月20日より前に EUで認可された食品添加物のための再評価プログラムの一部として、規則(EU)No 257 / 2010の枠組のなかで 2016年に EFSA ANS 諮問委員会によって再評価された。

 2016年の意見では、ANS 諮問委員会は、生殖系への影響の可能性に関するギャップを埋めるために新しい研究を実施することを勧告した。これにより、一日摂取許容量(ADI)を設定できるようになる。食品添加物(E171)として使用される材料の特性に関する不確実性も、特にE171として使用される二酸化チタンの粒子サイズと粒子サイズ分布に関して強調された。

 2019年、EFSA は、フランス食品環境安全衛生庁(ANSES)が実施した食品添加物二酸化チタン(E171)への暴露に関連するリスクのレビューに関する声明を発表した。その声明の中で、EFSA は、ANSES の意見が、EFSA によって以前に特定された不確実性とデータのギャップを何度も繰り返して述べ、二酸化チタンの安全性に関する ANSES の以前の結論を無効にする調査結果を提示しなかったことを強調した。

 同じ年(2019年)に、オランダ食品消費者製品安全局(NVWA)は、食品添加物の二酸化チタンの健康への影響の可能性について意見を述べ、潜在的な生殖毒性の影響に加えて免疫毒性の影響を調べることの重要性を強調した。

Scientific opinion on the safety assessment of titanium dioxide as a food additive (E171) (EFSA, 6 May 2021)
(食品添加物としての二酸化チタンの安全性評価に関する EFSA の科学的見解(E171))

動画:遺伝毒性(GENOTOXITY)
Genotoxic substances can damage DNA. How does science help to keep them out of food?

FAQ:二酸化チタンのEFSA 2021安全性評価(E171)
  1. 二酸化チタンとは何ですか?
     二酸化チタンは食用色素(E171)として使用され、すべての食用色素と同様に、その機能は、食品をより視覚的に魅力的にすること、そうでなければ無色である食品に色を与えること、または食品の元の外観を復元することです。二酸化チタンは、化粧品、塗料、医薬品にも含まれています。
     食品添加物の分野での EFSAの取り組みの詳細については、EFSA の Web サイトをご覧ください。

  2. 二酸化チタンを含む食品は何ですか?
     E171 の食事への暴露に寄与する主な食品類は、高級パン製品、スープ、ブイヨン(だし汁)、ソース(乳幼児、幼児、若者向け);スープ、ブイヨン(だし汁)、ソース、サラダ、塩気のある(セイボリーベース)のサンドイッチ・スプレッド(塗り物)(子ども、大人、高齢者向け)。加工ナッツは、成人及び高齢者向けの主要な食品類でもあります。

  3. 食品添加物としての二酸化チタンの安全性に関する 2021年の意見で EFSAは何と言っていますか?
     関連する入手可能なすべての科学的証拠のレビューを行った後、EFSAは、TiO2 粒子の遺伝子毒性の懸念を排除することはできないと結論付けました。この懸念に基づいて、EFSA の専門家らは、食品添加物として使用した場合、二酸化チタンが安全であるとはもはや考えていません。これは、E171の一日摂取許容量(ADI)を確立できないことを意味します。
     EFSAの評価は、食品添加物として使用される TiO2のリスクに関連しており、他の用途には関連していません。

  4. TiO2を含む製品を食べるのをやめるべきですか?
    一般的な毒性作用の証拠は決定的ではありませんでしたが、新しいデータと強化された方法に基づいて、我々の科学者は遺伝子毒性の懸念を排除できず、その結果、食品添加物としてのTiO2の毎日の摂取の安全なレベルを確立できませんでした。
    欧州委員会と加盟国は、リスク管理者としての役割において、EFSAの科学的アドバイスを反映し、消費者向けの適切な規制措置またはアドバイスを決定します。

  5. EFSAは二酸化チタンを禁止していますか?
    いいえ。EFSAの役割は、食品添加物としての二酸化チタンに関連するリスクの評価に限定されていました。これには、TiO2、その潜在的な毒性、及びヒトの食事暴露の推定に関する関連する科学的情報の評価が含まれていました。食品添加物の認可に関する立法上または規制上の決定は、リスク管理者(つまり、欧州委員会及び加盟国)の責任です。

  6. 次に何が起こりますか?
    EFSAの科学的アドバイスは、リスク管理者(欧州委員会、加盟国)が、可能な規制措置について行う決定を通知するために使用されます。


訳注:当研究会が紹介した二酸化チタンナノ粒子関連情報


化学物質問題市民研究会
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