欧州委員会共同研究センター(JRC) 2016年1月
二酸化チタン・ナノ粒子の結晶構造の役割: アナターゼではなくルチルが Balb/3T3 マウスの繊維細胞に 有害影響を引き起こす [アブストラクト] 情報源:Joint Research Centre(JRC), January 2016 Role of the crystalline form of titanium dioxide nanoparticles: Rutile, and not anatase, induces toxic effects in Balb/3T3 mouse fibroblasts [Abstract] https://ec.europa.eu/jrc/en/publication/role-crystalline-form- titanium-dioxide-nanoparticles-rutile-and-not-anatase-induces-toxic-effects 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日:2016年1月30日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/JRC/ JRC_2016_Jan_Rutile_TiO2_NPs_toxic_effects_in_vitro.html 二酸化チタンナノ粒子(TiO2 NPs)は工業用途で広範に使用されているので、人間への健康影響の調査が必要である。この文脈で、生体外(in vitro) で 二つの異なる結晶構造(アナターゼとルチル)の二酸化チタン(訳注1)について、ナノサイズとバルクサイズの影響を調査した。コロニー形成率分析(colony forming efficiency assay)を使用して、Balb/3T3 マウスの繊維芽細胞のクローン原生活動の用量依存低減がルチルの存在下で検出されたが、アナターゼ NPs の場合には検出されなかった。 同様に、細胞形質転換分析(cell transformation assay)及び小核試験(micronucleus test)(訳注:遺伝毒性試験)は、ルチル TiO2 NPs は Balb/3T3 細胞に type-III 病巣形成を引き起こすことができ、若干遺伝毒性があるように見えるが、アナターゼ TiO2 NPs はどの様な顕著な腫瘍性又は遺伝毒性影響をも引き起こさないことを示した。 さらに、TiO2 NPs と Balb/3T3 細胞の相互作用を調査し、質量分析計を用いて生体外における二酸化チタンの取り込みを定量化した。その結果は、ナノ二酸化チタンはバルク材のものより多く取り込まれ、細胞内移行は TiO2 NPs の結晶構造とは無関係であり、サイズ依存であることを示した。 結論として我々は、細胞毒性、腫瘍性、及び遺伝毒性影響はナノ物質の結晶構造に依存して Balb/3T3 細胞の中で TiO2 NPs により引き起こされるが、細胞内移行は粒子サイズによって調整されることを示した。 訳注:参考情報 ケミカルウォッチの記事紹介 Chemical Watch 19 January 2016, Rutile titanium dioxide nanoparticles found to have toxic effects 欧州委員会・共同研究センターの科学者らは、二酸化チタン・ナノ物質のひとつのタイプがマウス細胞分析で有害性があることを示した。 ジャーナル 『Toxicology』 に掲載された論文が二つの異なるナノ結晶構造−ルチル及びアナターゼ−の Balb/3T3 マウスの繊維芽細胞への影響の二酸化チタンの生体外での影響の詳細を示している。ルチル形状だけが有害影響を生成することが発見された。 ルチル二酸化チタンナノ粒子は細胞毒性、腫瘍性、及び遺伝毒性影響を生成するが、アナターゼナノ粒子ではでは生成しない。しかし、ナノ粒子の細胞内への移行の程度は粒子サイズだけに依存する。 訳注1:アナターゼ型及びルチル型二酸化チタン 酸化チタン(IV)/ウィキペディア 訳注:当研究会が紹介した二酸化チタンナノ粒子有害影響関連記事
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