その3 生活道具の穴

仙台遠征にお供した
魚柄さんちのガスファンヒーター

単身赴任となる。子どもが大学進学で一人暮らしをする。――まあ家族が離れて暮らすことって、人生の中で避けては通れんことですね。昔で言うところの「元服」による独立じゃと、もうこれで生き別れ……みたいな独立ですけ、生活道具も「元服くん」自ら手に入れてゆくことになる訳じゃし、そのくらテメーでやれなきゃ「元服くん」でもありますまい。

しかし、期間限定単身赴任ってのは、「いずれ戻ってくる暫定的独り暮し」ですね。ってことは、限定期間のために生活道具をそろえたら、戻ってきた時、物が倍になっちまうですよ。そりゃリースででも借りとりゃ別ですが、えてして買いそろえるもんなんですわ。

○○電気の3月のチラシを見てみなさい。独り暮らし用セット電化メニュー一式5万円ポッキリ!! ありますでしょ。生まれながらのしみったれ、でもよく言えば、これ以上資源も使わず、ゴミも出さず生きようとするこのおいさんです。同居人の単身赴任にあたり、「家財道具は新たに買わんっ。うちにあるもんを二人でわけて使うことにするっ。誰が何ちゅうても、わしゃそうするんじゃあっ!!」と宣言したですよ。

その結果、このおいさん、電子レンジ、トースター、ガスファンヒーター、アンティークドレッサー、TV……片っ端から持ってゆかれた。と、なりますと、まずは不便。でもその不便って、一週間程度の不便で終わっちまったです。なーんでか?

やってみりゃわかるんじゃが、無きゃないで何とかなるもんなんスね。レンジ無くとも蒸し器で済む。ヒーターなくともこたつでよろしい。また、何かが無くなるってことは、人間何かでおぎなうべく工夫するんであります。

これがまたクリエイティブでここちよい。ここちよいと言えば、もっとここちよいのが、「消えてしまった道具」は500キロ離れた同居人(現・別居人)が使っており、便利さを楽しんどるんじゃなあと思うことがここちよい。月に一度訪ねた時に、その道具に再会し、その道具が役にたってる暮らしをみるのもここちよい。

1セットの生活道具を2世帯でわけて使うこと、暮らすことで、500キロ離れておっても、その距離がより身近に思えるもんなんですね。これ、同居人単身赴任が始まって1・5ヵ月たった現在の心境であります。

その2

その4