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証明:一般のベクトル空間の一次変換の行列表示
[
永田『理系のための線形代数の基礎』定理1.4.1(pp.28-9);
ホフマン・クンツェ『線形代数学I』3.4行列による一次変換の表現(pp.90-91);
神谷浦井『経済学のための数学入門』§5.2.1線形写像の行列表現(p.165)。;]
(舞台設定)
K:体 (例:有理数をすべてあつめた集合Q、実数をすべて集めた集合R、複素数をすべてあつめた集合C)
V :K上の有限次元ベクトル空間。ただし、 n次元。
{ v1, v2, …, vn }:Vの基底をなす、Vに属すベクトルの集合
(定理の確認)
Vの基底{ v1, v2, …, vn }と、
「体K上のn次正方行列」
にたいして、
f (v1)=a11v1+a21v2+…+an1vn
f (v2)=a12v1+a22v2+…+an2vn
: :
f (vn)=a1nv1+a2nv2+…+annvn
を満たす一次変換f : V→Vがきまる。
※ f (v1), f (v2), …, f (vn) を縦に並べた(n,1)型行列、
Vの基底をなすベクトルv1, v2, …, vn を
横に並べた(1,n)型行列(ベクトルを並べた横ベクトル!)を用いると、
上記は、行列の乗法を使って、次のように、簡潔に表せる。
「体K上のn次正方行列」Aにたいして、
を満たす一次変換f : V→Vがきまる。
(証明)
まず、Vの基底{ v1, v2, …, vn }と「体K上のn次正方行列」Aから写像fを定義し、
次に、写像fが一次写像となることを示す。
Step1:「体K上のn次正方行列」Aから写像fを定義
・v1, v2, …, vn ∈Vであって、{ v1, v2, …, vn }はVの基底とされていた。…(1-1)
・まず、(1-1)のVの基底からVへの写像f:{ v1, v2, …, vn }→Vを、
の成分を用いて、
f0 (v1)=a11v1+a21v2+…+an1vn ∈V
f0 (v2)=a12v1+a22v2+…+an2vn ∈V
: :
f0 (vn)=a1nv1+a2nv2+…+annvn ∈V
と定義する。…(1-2)
※なお、上記右辺の演算記号は、ベクトル空間Vにおいて定義されているベクトル和とスカラー積
・(1-1)より、Vに属す任意のベクトルを、{ v1, v2, …, vn }の一次結合として一意的に表せる。(∵)
つまり、∀x∈V に対して、あるx1, x2, …, xn∈Kが一意的に存在して、x=x1v1+x2v2+…+xnvn …(1-3)
・VからVへの写像f:V→Vを、
x∈V にたいして、(1-3)によって一意的に存在するx1, x2, …, xn∈Kを用いて、
f (x)= f (x1v1+x2v2+…+xnvn)≡x1 f0 (v1)+x2 f0 (v2)+…+xn f0 (vn)∈V …(1-4)
※なお、上記の演算記号は、すべて、ベクトル空間Vにおいて定義されているベクトル和とスカラー積
と定義する。
上記右辺を整理すると、以下のようになる。
x1 f0 (v1)+x2 f0 (v2)+…+xn f0 (vn)
=x1(a11v1+a21v2+…+an1vn )+x2(a12v1+a22v2+…+an2vn)+…+xn(a1nv1+a2nv2+…+annvn) ∵(1-2)
=x1a11v1+x1a21v2+…+x1an1vn +x2a12v1+x2a22v2+…+x2an2vn+…+xna1nv1+xna2nv2+…+xnannvn
∵Vはベクトル空間だからベクトル空間におけるベクトルに関する分配則が成り立つ。
=(x1a11+x2a12+…+xna1n)v1+(x1a21+x2a22+…+xna2n)v2+…+(x1an1+x2an2+…+xnann)vn
∵Vはベクトル空間だからベクトル空間におけるスカラーに関する分配則が成り立つ。
※( )内の"+"は、体Kに定義されている加法を表し、x*a**は体Kに定義されている乗法を表す。
したがって、
ここで定義した写像f:V→Vは、要するに、
の各成分と、
x∈V にたいして、(1-3)によって一意的に存在するx1, x2, …, xn∈Kを用いて、
f (x)=(x1a11+x2a12+…+xna1n)v1+(x1a21+x2a22+…+xna2n)v2+…+(x1an1+x2an2+…+xnann)vn …(1-5)
と表されるものである。
Step2: 写像fは一次写像
・{ v1, v2, …, vn }はVの基底とされていたので、
Vに属す任意のベクトルを、{ v1, v2, …, vn }の一次結合として一意的に表せる。(∵)
つまり、∀x,x'∈V に対して、あるx1, x2, …, xn∈K, x'1, x'2, …, x'n∈Kが一意的に存在して、
x=x1v1+x2v2+…+xnvn 、x'=x'1v1+x'2v2+…+x'nvn …(2-1)
したがって、∀x,x'∈V に対して、step1で定義した写像f:V→Vは、以下を満たす。
f (x+x') ※f ( )内の+はベクトル空間Vにおいて定義されているベクトル和
= f (x1v1+x2v2+…+xnvn+x'1v1+x'2v2+…+x'nvn) ∵(2-1)
= f ( (x1+x'1)v1+(x2+x'2)v2+…+(xn+x'n)vn )
∵Vはベクトル空間だからベクトル空間におけるスカラーに関する分配則が成り立つ。
=(x1+x'1) f0 (v1)+(x2+x'2) f0 (v2)+…+(xn+x'n) f0 (vn) ∵(1-4)
=x1 f0 (v1)+x2 f0 (v2)+…+xn f0 (vn)+x'1 f0 (v1)+x'2 f0 (v2)+…+x'n f0 (vn)
∵Vはベクトル空間だからスカラーに関する分配則・ベクトル和に関する可換則が成り立つ。
= f (x1v1+x2v2+…+xnvn)+ f (x'1v1+x'2v2+…+x'nvn) ∵(1-4)
= f ( x )+ f ( x' ) ∵(2-1)
以上から、
∀x,x'∈V に対して、 f (x+x')= f ( x )+ f ( x' ) …(2-2)
が示された。
・{ v1, v2, …, vn }はVの基底とされていたので、
Vに属す任意のベクトルを、{ v1, v2, …, vn }の一次結合として一意的に表せる。(∵)
つまり、∀x∈V に対して、あるx1, x2, …, xn∈Kが一意的に存在して、
x=x1v1+x2v2+…+xnvn …(2-3)
したがって、∀x∈V,∀α∈K に対して、step1で定義した写像f:V→Vは、以下を満たす。
f (αx) ※f ( )内の演算はベクトル空間Vにおいて定義されているスカラー乗法
= f ( α(x1v1+x2v2+…+xnvn) ) ∵ (2-3)
= f ( αx1v1+αx2v2+…+αxnvn ) ∵ Vはベクトル空間だからベクトルに関する分配則が成り立つ。
=αx1 f0 (v1)+αx2 f0 (v2)+…+αxn f0 (vn) ∵(1-4)
=α( x1 f0 (v1)+x2 f0 (v2)+…+xn f0 (vn) ) ∵ Wはベクトル空間だからベクトルに関する分配則が成り立つ。
=α f (x1v1+x2v2+…+xnvn) ∵(1-4)
=α f (x) ∵(2-3)
以上から、
∀x∈V, ∀α∈K に対して、 f (αx)=α f (x) …(2-4)
が示された。
・(2-2) (2-4)より、step1で定義した写像f:V→Vは、一次写像であるための2要件を満たしている。