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証明:一般のベクトル空間から一般のベクトル空間への一次写像の行列表示

[永田『理系のための線形代数の基礎』定理1.4.1(p.28);志賀『線形代数3017(p.109); 
  
ホフマン・クンツェ『線形代数学I3.4行列による一次変換の表現(p.89);
  藤原『線形代数4.3(p.102);神谷浦井『経済学のための数学入門』§5.2.1線形写像の行列表現(p.165);
  
酒井『環と体の理論1.6ベクトル空間(p.23);]
(舞台設定)
K (例:有理数をすべてあつめた集合Q実数をすべて集めた集合R、複素数をすべてあつめた集合C) 
V K上の有限次元ベクトル空間。ただし、 n次元。 
{ v1, v2, , vn }V基底をなす、Vに属すベクトルの集合   
W K上の有限次元ベクトル空間。ただし、 m次元。 
{ w1, w2, , wm }W基底をなす、Wに属すベクトルの集合  
(定理の確認)
K上の(m,n)型行列
  
にたいして、 
  
f (v1)=a11w1+a21w2++am1wm   
  
f (v2)=a12w1+a22w2++am2wm   
   :     : 
  
f (vn)=a1nw1+a2nw2++amnwm   
を満たす
一次写像f:VWがきまる。   
 
f (v1), f (v2), , f (vn) を縦に並べた(n,1)型行列
  
W基底をなすベクトルw1, w2, , wm
      横に並べた
(1,m)型行列(ベクトルを並べた横ベクトル!)を用いると、
  上記は、
行列の乗法を使って、次のように、簡潔に表せる。   
       「
K上の(m,n)型行列Aにたいして、 
       
 
  を満たす
一次写像f:VWがきまる。   

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(証明) 
まず、「
K上の(m,n)型行列Aから写像fを定義し、
次に、
写像f一次写像となることを示す。 
Step1:K上の(m,n)型行列Aから写像fを定義 
v1, v2, , vn Vであって、{ v1, v2, , vn }V基底とされていた。…(1-1)
・まず、(1)V基底からWへの写像f0{ v1, v2, , vn }Wを、
    の成分を用いて、
  
f0 (v1)=a11w1+a21w2++am1wm W   
  
f0 (v2)=a12w1+a22w2++am2wm W   
   :     : 
  
f0 (vn)=a1nw1+a2nw2++amnwm W  
 と定義する。…
(1-2) 
  
なお、上記右辺の演算記号は、ベクトル空間Wにおいて定義されているベクトル和スカラー積  
(1-1)より、Vに属す任意のベクトルを、{ v1, v2, , vn }一次結合として一意的に表せる。()  
 つまり、
xV に対して、あるx1, x2, , xnKが一意的に存在して、x=x1v1+x2v2++xnvn …(1-3)
VからWへの写像fVWを、
 
xV にたいして、(1-3)によって一意的に存在するx1, x2, , xnKを用いて、
  
f (x)= f (x1v1+x2v2++xnvn)x1 f0 (v1)+x2 f0 (v2)++xn f0 (vn)W   …(1-4)
 と定義する。 
  
上記第2式f()内の演算記号は、ベクトル空間Vにおいて定義されているベクトル和スカラー積 
   上記最右辺の演算記号は、
ベクトル空間Wにおいて定義されているベクトル和スカラー積 
 上記右辺を整理すると、以下のようになる。
 
x1 f0 (v1)+x2 f0 (v2)++xn f0 (vn)   
  
=x1(a11w1+a21w2++am1wm )+x2(a12w1+a22w2++am2wm)++xn(a1nw1+a2nw2++amnwm) ∵(1-1) 
  
=x1a11w1+x1a21w2++x1am1wm +x2a12w1+x2a22w2++x2am2wm++xna1nw1+xna2nw2++xnamnwm 
      ∵
Wベクトル空間だからベクトル空間におけるベクトルに関する分配則が成り立つ。  
  
=(x1a11+x2a12++xna1n)w1+(x1a21+x2a22++xna2n)w2++(x1am1+x2am2++xnamn)wm     
    ∵
Wベクトル空間だからベクトル空間におけるスカラーに関する分配則が成り立つ。 
     ※
( )内の"+"は、Kに定義されている加法を表し、x*a**Kに定義されている乗法を表す。 
 したがって、
 ここで定義した
写像fVWは、要するに、
  の各成分と、  
 
xV にたいして、(1-3)によって一意的に存在するx1, x2, , xnKを用いて、
 
f (x)=(x1a11+x2a12++xna1n)w1+(x1a21+x2a22++xna2n)w2++(x1am1+x2am2++xnamn)wm  …(1-5) 
 と表されるものである。  
Step2:写像f一次写像  
{ v1, v2, , vn }V基底とされていたので、
 Vに属す任意のベクトルを、{ v1, v2, , vn }一次結合として一意的に表せる。()  
 つまり、
x,x'V に対して、あるx1, x2, , xn, x'1, x'2, , x'nKが一意的に存在して、
         
x=x1v1+x2v2++xnvn 、x'=x'1v1+x'2v2++x'nvn  …(2-1) 
 したがって、
x,x'V に対して、step1で定義した写像fVWは、以下を満たす。   
 
f (x+x')    ※f ( )内の+ベクトル空間Vにおいて定義されているベクトル和  
 
= f (x1v1+x2v2++xnvn+x'1v1+x'2v2++x'nvn)  ∵(2-1) 
 
= f ( (x1+x'1)v1+(x2+x'2)v2++(xn+x'n)vn ) 
      ∵
Vベクトル空間だからベクトル空間におけるスカラーに関する分配則が成り立つ。 
 
=(x1+x'1) f0 (v1)+(x2+x'2) f0 (v2)++(xn+x'n) f0 (vn)  ∵(1-4)   
 
=x1 f0 (v1)+x2 f0 (v2)++xn f0 (vn)+x'1 f0 (v1)+x'2 f0 (v2)++x'n f0 (vn)  
      ∵
Wベクトル空間だからスカラーに関する分配則ベクトル和に関する可換則が成り立つ。 
 
= f (x1v1+x2v2++xnvn)+ f (x'1v1+x'2v2++x'nvn)  ∵(1-4)   
 
= f ( x )+ f ( x' )  ∵(2-1)   
 以上から、
  
x,x'V に対して、 f (x+x')= f ( x )+ f ( x' )  …(2-2)  
 が示された。       
{ v1, v2, , vn }V基底とされていたので、
 Vに属す任意のベクトルを、{ v1, v2, , vn }一次結合として一意的に表せる。()  
 つまり、
xV に対して、あるx1, x2, , xnKが一意的に存在して、
         
x=x1v1+x2v2++xnvn …(2-3) 
 したがって、
xV,αK に対して、step1で定義した写像fVWは、以下を満たす。   
 
f (αx)     ※f ( )内の演算はベクトル空間Vにおいて定義されているスカラー乗法

 
 
= f ( α(x1v1+x2v2++xnvn) )  ∵ (2-3) 
 
= f ( αx1v1+αx2v2++αxnvn ) ∵ Vベクトル空間だからベクトルに関する分配則が成り立つ。
 
=αx1 f0 (v1)+αx2 f0 (v2)++αxn f0 (vn) ∵(1-4)  
 
=α( x1 f0 (v1)+x2 f0 (v2)++xn f0 (vn) ) ∵ Wベクトル空間だからベクトルに関する分配則が成り立つ。   
 
=α f (x1v1+x2v2++xnvn)      ∵(1-4)  
 
=α f (x)  ∵(2-3)  
 以上から、
  
xV,αK に対して、 f (αx)=α f (x)  …(2-4)  
 が示された。       
(2-2) (2-4)より、step1で定義した写像fVWは、一次写像であるための2要件を満たしている。      

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