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定理:
一次写像の階数と、一次写像の行列表示の標準形
[永田『理系のための線形代数の基礎』定理1.6.4(p.37);斎藤正彦『線形代数入門』4章§5[5.1](p.116);
砂田『行列と行列式』§5.5-d(p.194).]
(舞台設定)
K:体 (例:有理数をすべてあつめた集合Q、実数をすべて集めた集合R、複素数をすべてあつめた集合C)
V :K上の有限次元ベクトル空間。
W :K上の有限次元ベクトル空間。
(本題)
一次写像f :V→W には、
f (v1)=w1, f (v2)=w2,…, f (vrankf )=wrankf , f (vrankf+1)=0 , f (vrankf+2)=0 ,…, f (vdimV)=0
を満たす
Vの基底{v1,v2,…,vdimV }、Wの基底{w1,w2,…,wdimV' }(これはImagefの基底を拡大して得たWの基底)が存在する。
(
証明)
[永田『理系のための線形代数の基礎』定理1.6.4(p.37);砂田『行列と行列式』§5.5-d(p.194).]
・Image fの基底の定義を満たす、rank f個の「Image fに属すベクトル」を
{w1 , w2 , …, wrankf }とおく。…(1)
なお、この設定下では、Image fには、rank f個の基底が必ず存在する。
なぜなら、
W はK上の有限次元ベクトル空間で、Image fはW の部分ベクトル空間である(∵)から、
rank f(=dimImage f)≦dimW
したがって、Image fはK上の有限次元ベクトル空間。
K上の有限次元ベクトル空間とは、有限個の基底が存在するベクトル空間のことであるから、
Image fには、有限rank f個の基底が存在することになる。
・f−1 (w1 ), f−1 (w2 ),…, f−1 (wrankf )をv1, v2,…,vrankf とおく。
f (v1)=w1 を満たすv1∈V
f (v2)=w2 を満たすv2∈V
: :
f (vrankf )=wrankf を満たすvrankf ∈V
となる。…(2)
・Ker fの基底の定義を満たす、dim(Ker f)個の「Ker fに属すベクトル」を
{vrankf+1,vrankf+2,…,vrankf+dim(Kerf)}とおく。
定理より、dimV=rank f +dim(Ker f) だから、
Ker fの基底{vrankf+1,vrankf+2,…,vrankf+dim(Kerf)}は、
{vrankf+1, vrankf+2,…, vdivV}と書いてよい。…(3)
・Ker fの定義より、vrankf+1 , vrankf+2 ,…, vdivV [→(3)]について、次が成り立つ。
f (vrankf+1)=〇 , f (vrankf+2)=〇 ,…, f (vdivV )=〇 …(4)
(右辺の〇は、V'に属す零ベクトル)
・定理より、
「Ker fの基底」{vrankf+1, vrankf+2,…, vdivV} [→(3)]に
「Image fの基底のfによる逆像」{v1 , v2 , …, vrankf } [→(2)]を付け加えたもの
{v1 , v2 , …, vrankf , vrankf+1, vrankf+2,…, vdivV }
は、Vの基底となる。…(5)
・Image fの基底{w1 , w2 , …, wrankf }[→(1)]は、
Wに属す線形独立なベクトルである。(∵Image fの定義、基底の定義)
よって、
定理により、{w1 , w2 , …, wrankf }を拡大して、
Wの基底{w1,w2,…, wrankf , wrankf+1 , wrankf+2,…, wdimW }を得ることができる。…(6)
・以上で、
一次写像f:V→W には、
Vの基底{v1 , v2 , …, vrankf , vrankf+1, vrankf+2,…, vdivV } [→(5)]
Wの基底{w1,w2,…, wrankf , wrankf+1 , wrankf+2,…, wdimW } [→(6)]
が存在し、
f (v1)=w1, f (v2)=w2, …, f (vrankf )=wrankf を満たし、[→(2)]
f (vrankf+1)=0 , f (vrankf+2)=0 ,…, f (vdimV)=0 を満たす[→(4)]
ことを示せたことになる。