証明:
一次写像f:V→V'にたいして、Image f は、V'の部分ベクトル空間。
(
舞台設定)
K:体 (例:有理数をすべてあつめた集合Q、実数をすべて集めた集合R、複素数をすべてあつめた集合C)
V :K上のベクトル空間
V' :K上のベクトル空間
f:V→V':K上のベクトル空間VからK上のベクトル空間V'への一次写像
(命題)
一次写像f:V→V'にたいして、Image f は、V'の部分ベクトル空間となる。
(証明) [志賀『線形代数30講』21講(p.133)]
Image f がV'の部分ベクトル空間であることを示すには、
次の三点を示せば十分。∵部分ベクトル空間になるための必要十分条件
1. Image fは、V'の空でない部分集合。
2. 任意のベクトル v'1, v'2 ∈Image fに対して、v'1 +v'2 ∈Image f
[Image fは「V'に定められているベクトルの加法」について閉じている]
3. 任意のベクトルv'∈Image fとスカラーc∈Kに対して、cv'∈Image f
[Image fは「V'に定められているスカラー乗法」について閉じている]
step1: Image fは、V'の空でない部分集合
・「K上のベクトル空間」の定義―条件I-2-2により、
あらゆる「K上のベクトル空間」は、零ベクトルを備えたものとして定義されている。
したがって、V にもV'にも、零ベクトルは備わっている。…(1-1)
・一次写像f:V→V'は、f ( 〇 ) =〇 を満たす。(∵)…(1-2)
・(1-1) (1-2)より、fは、〇∈Vを〇∈V' に写すことがわかる。
したがって、〇∈Image f
Image fには、少なくとも、〇∈V'が含まれているから、V'の空でない部分集合である。
step2: Image fは「V'に定められているベクトルの加法」について閉じている
・任意のベクトル v'1, v'2 ∈Image f
にたいして、Image f の定義より、
f ( v1 ) = v'1 を満たす v1∈V
f ( v2 ) = v'2 を満たす v2∈V
が存在する。…(2-1)
(注意) f が単射(一対一対応)ではない場合、
v'1, v'2にたいして、v1, v2は一意的にきまるとは限らない。
しかし、v'1, v'2にたいして、v1, v2が複数存在したとしても
下記の主張に何ら問題は生じない。
・任意のベクトル v'1, v'2 ∈Image f にたいして、
v'1 +v'2
=f ( v1 ) + f ( v2 ) ∵(2-1)
=f ( v1 +v2 ) ∵一次写像fの定義―要件1:ベクトル和の保存
がなりたつ。 …(2-2)
・(2-1)で定めたv1,v2 ∈V にたいして、 v1 +v2 ∈V …(2-3)
∵ VはK上のベクトル空間だから、ベクトル空間の定義―条件I-1によって。
・(2-2)が意味しているのは、
「任意のv'1, v'2 ∈Image f に対して、
v'1 +v'2は、一次写像fがv1 +v2∈V[∵(2-3) ]をV'に写した像である」
ということ。
一次写像f:V→V'のImage f は、{ f ( v ) | v∈V }と定義されるので、
v'1 +v'2∈Image f である。
step3: Image fは「V'に定められているスカラー乗法」について閉じている
・任意のベクトル v'∈Image f にたいして、Image f の定義より、
f ( v ) = v' を満たす v∈V
が存在する。…(3-1)
(注意) f が単射(一対一対応)ではない場合、
v'1, v'2にたいして、v1, v2は一意的にきまるとは限らない。
しかし、v'1, v'2にたいして、v1, v2が複数存在したとしても
下記の主張に何ら問題は生じない。
・任意のベクトル v'∈Image f と、任意のスカラーc∈Kにたいして
cv'
=c f ( v ) ∵(3-1)
=f ( cv ) ∵一次写像fの定義―要件2:スカラー倍の保存
がなりたつ。 …(3-2)
・(3-1)で定めたv∈Vと、任意のスカラーc∈Kにたいして、 cv∈V …(3-3)
∵ VはK上のベクトル空間だから、ベクトル空間の定義―条件II-1によって。
・(3-2)が意味しているのは、
「任意のv'∈Image f と、任意のc∈Kに対して、
cv'は、一次写像fがcv∈V[∵(3-3) ]をV'に写した像である」
ということ。
一次写像f:V→V'のImage f の定義により、
一次写像fが、Vの元をV'に写した像は、すべて、Image f の元と呼んでよいので、
cv∈Image f である。