平面R2における収束点列の極限とベクトル演算 

 定理:収束点列のベクトル和の極限収束点列と収束数列とのスカラー積の極限 
 R2における点列の関連ページR2における点列の収束・極限―定義/コーシー列と収束   
 収束列の極限と演算の関連ページ数列の極限どおしの演算/Rn上の収束点列の極限とベクトル演算 
 
参考文献総目次  

定理:平面R2における収束点列どおしのベクトル和の極限

要旨

点列ベクトルの加法をほどこしてから極限をとった値と、
点列極限をとってからベクトルの加法を施した値とは、等しくなる。
つまり、
極限ベクトルの加法の順序交換は可能。

設定

この定理は、以下の舞台設定上で、成立する。
R2実数2個並べた組 (x,y ) をすべてあつめた集合
  すなわち、「
実数全体の集合R」と「実数全体の集合R」の直積
          
R×R={ (x,y) | xR かつ yR } 
2次元数ベクトル空間R2R2にたいして、通例のベクトルの加法スカラー乗法を定義したもの。
ノルム空間 R2, ‖‖ ):2次元数ベクトル空間R2にたいして、
             「
自然な内積(標準内積)・」「ユークリッドノルム‖‖」を定義したもの。 
ユークリッド空間(R2,d)ノルム空間 R2, ‖‖ )にたいして、
            
ユークリッドノルムから定めた距離d(x, y)=xyを定義したもの。 
P ユークリッド空間(R2,d)上の(xP , yP ) 
   「
平面R2上の(xP , yP )」は、2次元数ベクトルであるから、
   この
2次元数ベクトル(xP , yP )Pで表すことにする。  
{
P1 , P2 , P3 , }ユークリッド空間(R2,d)上の点列
         すなわち
2次元数ベクトル

{ (xP1,yP1), (xP2,yP2 ) , (xP3,yP3 ) , }
Q
ユークリッド空間(R2,d)上の(xQ , yQ ) 
   「
平面R2上の(xQ , yQ )」は、2次元数ベクトルであるから、
   この
2次元数ベクトル(xQ , yQ )Qで表すことにする。  
{
Q1 , Q2 , Q3 , }ユークリッド空間(R2,d)上の点列
          すなわち
2次元数ベクトルの列

{ (xQ1,yQ1), (xQ2,yQ2 ) , (xQ3,yQ3 ) , }
   この2次元数ベクトル(xQ , yQ )Qで表すことにする。  
{
xi}iN : 点列{Pi}iNの各Pi( xi , yi )xiだけを取り出して並べた数列{ x1 , x2, x3, }  
{
yi}iN : 点列{Pi}iNの各Pi( xi , yi )yiだけを取り出して並べた数列{ y1 , y2, y3, }   

定理

ユークリッド空間(R2,d)において、
点列{ P1 , P2 , P3 , }={ (xP1,yP1), (xP2,yP2 ) , (xP3,yP3 ) ,…}がP=(xP,yP)に収束し
かつ
点列{ Q1 , Q2 , Q3 ,…}={ (xQ1,yQ1), (xQ2,yQ2 ) , (xQ3,yQ3 ) ,…}がQ=(xQ,yQ)に収束する
ならば
点列{ P1Q1 , P2Q2 , P3Q3 , }
   ={ (xP1,yP1)(xQ1,yQ1), (xP2,yP2 )(xQ2,yQ2 ), (xP3,yP3 )(xQ3,yQ3 ) , }
   ={ (xP1+xQ1 , yP1+yQ1 ), (xP2+xQ2 , yP2+yQ2 ), (xP3+xQ3 , yP3+yQ3 ), }
は、PQ (xP,yP)(xQ,yQ)(xP+xQ , yP+yQ )に収束する。 
つまり、

[文献]

杉浦『解析入門I1章§4命題4.6(p.40):証明付

神谷浦井
経済学のための数学入門』定理4.3.2(p.140):証明付 ;

cf.

数列の極限どおしの演算

証明

仮定1点列{ P1 , P2 , P3 , }={ (xP1,yP1), (xP2,yP2 ) , (xP3,yP3 ) ,…}がP=(xP , yP) に収束する」 
仮定
2点列{ Q1 , Q2 , Q3 , }={ (xQ1,yQ1), (xQ2,yQ2 ) , (xQ3,yQ3 ) ,…}がQ=(xQ , yQ) に収束する」 
のもとで、
結論
点列
   {
P1Q1 , P2Q2 , P3Q3 , }={ (xP1,yP1) (xQ1,yQ1), (xP2,yP2 )(xQ2,yQ2 ), (xP3,yP3 )(xQ3,yQ3 ), }
                 ={ (xP1+xQ1 , yP1+yQ1 ), (xP2+xQ2 , yP2+yQ2 ), (xP3+xQ3 , yP3+yQ3 ), }
 がPQ (xP,yP)(xQ,yQ)(xP+xQ , yP+yQ) に収束する
が成立することを示す。 
Step1:
・仮定1点列{ P1 , P2 , P3 , }={ (xP1,yP1), (xP2,yP2 ) , (xP3,yP3 ) ,…}がP=(xP , yP) に収束する」は、
 仮定
1'数列{ xP1 , xP2 , xP3 , }xPに収束しかつ数列{ yP1 , yP2 , yP3 , }yPに収束する
 と
同値)。
・仮定
2点列{ Q1 , Q2 , Q3 , }={ (xQ1,yQ1), (xQ2,yQ2 ) , (xQ3,yQ3 ) ,…}がQ=(xQ , yQ) に収束する」は、
 仮定
2'数列{ xQ1 , xQ2 , xQ3 , }xQに収束しかつ数列{ yQ1 , yQ2 , yQ3 , }yQに収束する 」
 と
同値)。
Step2:
・結論「点列{P1Q1 , P2Q2 , P3Q3 ,…}={ (xP1+xQ1 , yP1+yQ1 ), (xP2+xQ2 , yP2+yQ2 ), (xP3+xQ3 , yP3+yQ3 ), }
     
PQ(xP+xQ , yP+yQ) に収束する」 
 は、
 結論
'数列{ xP1 + xQ1 , xP2 + xQ2 , xP3 + xQ3 , }xP+xQ に収束し
        
かつ数列{ yP1 + yQ1 , yP2 + yQ2 , yP3 + yQ3 , }yP+yQ に収束する」 
 と
同値)。
Step3:
数列{ xP1 , xP2 , xP3 , }xPに収束しかつ数列{ xQ1 , xQ2 , xQ3 , }xQに収束するならば
 
数列{ xP1 + xQ1 , xP2 + xQ2 , xP3 + xQ3 , }は、xP+xQ に収束する。(∵収束数列の和の公式)  
数列{ yP1 , yP2 , yP3 , }yPに収束しかつ数列{ yQ1 , yQ2 , yQ3 , }yQに収束するならば
 
数列{ yP1 + yQ1 , yP2 + yQ2 , yP3 + yQ3 , }は、yP+yQ に収束する。(∵収束数列の和の公式)  
・以上
2点から、
 「仮定
1'かつ仮定2'ならば結論'が成り立つ」といえる。
 したがって、
Step1,Step2より、「仮定1かつ仮定2ならば結論が成り立つ」といえる。 

[トピック一覧:収束点列の極限とベクトル演算]
総目次

定理:空間Rnにおける収束点列と収束数列とのスカラー積の極限

要旨

点列数列とのスカラー積極限をとった値と、
点列極限数列極限をとってから両者のスカラー積をとった値とは、等しくなる。
つまり、
極限スカラー乗法の順序交換は可能。

設定

この定理は、以下の舞台設定上で、成立する。
R2実数2個並べた組 (x,y ) をすべてあつめた集合
  すなわち、「
実数全体の集合R」と「実数全体の集合R」の直積
          
R×R={ (x,y) | xR かつ yR } 
2次元数ベクトル空間R2R2にたいして、通例のベクトルの加法スカラー乗法を定義したもの。
ノルム空間 R2, ‖‖ ):2次元数ベクトル空間R2にたいして、
             「
自然な内積(標準内積)・」「ユークリッドノルム‖‖」を定義したもの。 
ユークリッド空間(R2,d)ノルム空間 R2, ‖‖ )にたいして、
            
ユークリッドノルムから定めた距離d(x, y)=xyを定義したもの。 
P ユークリッド空間(R2,d)上の(xP , yP ) 
   「
平面R2上の(xP , yP )」は、2次元数ベクトルであるから、
   この
2次元数ベクトル(xP , yP )Pで表すことにする。  
{
P1 , P2 , P3 , }ユークリッド空間(R2,d)上の点列
         すなわち
2次元数ベクトル

{ (xP1,yP1), (xP2,yP2 ) , (xP3,yP3 ) , }
{ a1 , a2 , a3 ,
} : 数列 
a  : ある実数の値 
{
xi}iN : 点列{Pi}iNの各Pi( xi , yi )xiだけを取り出して並べた数列{ x1 , x2, x3, }  

定理

ユークリッド空間(R2,d)において、
点列{ P1 , P2 , P3 , }={ (xP1,yP1), (xP2,yP2 ) , (xP3,yP3 ) ,…}がP=(xP , yP)に収束し
かつ
数列{ a1 , a2 , a3 , }aに収束する 
ならば
 
P1スカラーa1P2スカラーa2P3スカラーa3、…
と並べた
点列 
  {
a1P1 , a2P2 , a3P3 , }
     ={ a1(xP1,yP1), a2(xP2,yP2 ), a3(xP3,yP3 ) ,…} 
     ={
(a1xP1,a1yP1), (a2xP2,a2yP2), (a3xP3,a3yP3) ,…}  
は、
Pスカラーaとして表される 
      
aPa(xP,yP)(axP , ayP )
に収束する。 
つまり、
 

[文献]

杉浦
解析入門I1章§4命題4.6(p.40):証明付

神谷浦井『経済学のための数学入門』定理4.3.2(p.140):証明付 ;

cf.

数列の極限どおしの演算

証明

仮定1点列{ P1 , P2 , P3 , }={ (xP1,yP1), (xP2,yP2 ) , (xP3,yP3 ) ,…}がP=(xP , yP) に収束する」 
仮定
2数列{ a1 , a2 , a3 , }aに収束する」 
のもとで、
結論「
点列{ a1P1 , a2P2 , a3P3 , }={ (a1xP1,a1yP1), (a2xP2,a2yP2), (a3xP3,a3yP3) ,…}がaP(axP , ayP )に収束する
が成り立つことを示す。
Step1:
 仮定1点列{ P1 , P2 , P3 , }={ (xP1,yP1), (xP2,yP2 ) , (xP3,yP3 ) ,…}がP=(xP , yP) に収束する」は、
 仮定
1'数列{ xP1 , xP2 , xP3 , }xPに収束しかつ数列{ yP1 , yP2 , yP3 , }yPに収束する
 と
同値)。
Step2:
・結論「点列{ a1P1 , a2P2 , a3P3 , }={ (a1xP1,a1yP1), (a2xP2,a2yP2), (a3xP3,a3yP3) ,…}がaP(axP , ayP )に収束する
 は、
 結論
'数列{ a1xP1, a2xP2 , a3xP3 , }axP に収束しかつ数列{ a1yP1, a2yP2 , a3yP3 , }ayP に収束する
 と
同値)。
Step3:
数列{ xP1 , xP2 , xP3 , }xPに収束しかつ数列{ a1 , a2 , a3 , }aに収束するならば
 
数列{ a1xP1, a2xP2 , a3xP3 , }は、axP に収束する。(∵収束数列の積の公式)   
数列{ yP1 , yP2 , yP3 , }yPに収束しかつ数列{ a1 , a2 , a3 , }aに収束するならば
 
数列{ a1yP1, a2yP2 , a3yP3 , }は、ayP に収束する。(∵収束数列の積の公式)   
・以上
2点から、
 「仮定
1'かつ仮定2ならば結論'が成り立つ」といえる。
 したがって、
Step1,Step2より、「仮定1かつ仮定2ならば結論が成り立つ」といえる。 

[トピック一覧:収束点列の極限とベクトル演算]
総目次

 

reference

日本数学会編集『岩波数学辞典(3)』項目58関数D族・列(p.158);項目92距離空間(pp.253-256);項目166収束(pp436);項目409ユークリッド幾何学(pp.1225-1229)、項目410ユークリッド空間 (pp.1229-1230).
(解析学についての教科書)
高木貞二『
解析概論改訂第三版』岩波書店、1983年、p.14.
小平邦彦『解析入門I (軽装版)岩波書店、2003年、§1.6平面上の点集合-d.点列の極限(pp.60-61)
杉浦光夫『
解析入門I』岩波書店、1980年、1章§4(pp.38-40):Rn上の点列について。収束定義の論理記号での表現がある。.
吹田・新保『理工系の微分積分学』学術図書出版社、1987年。6章§1(pp.155-157):平面上。
(数理経済学についての教科書)
神谷和也・浦井憲『
経済学のための数学入門』東京大学出版会、1996年、pp.67-68;120-123;4.3Rnにおける点列の収束(pp.135-141).
奥野正寛、鈴村興太郎『ミクロ経済学I』岩波書店、1985年、pp.261-265.
(位相についての教科書)
志賀浩二『位相への30』朝倉書店、1988年、第2講平面上の座標・点列の収束(pp.10-15)
矢野公一『
距離空間と位相構造』共立出版、1997年。 1章距離空間1.1.2点列の収束(pp.10-11);2章位相空間2.1位相構造(p.65)
斉藤正彦『数学の基礎:集合・数・位相』東大出版会、2002年。1章§2定義1.2.11:点列;定義1.2.12部分列(pp.13-4); 3章§4定義3.4.4Rn点列収束(pp.86-87);4章位相空間(その1)§4点列の収束 (p.122-3)
松坂和夫『集合・位相入門』岩波書店、1968年。第6章§1-C点列の収束(pp.238-9)
彌永昌吉・彌永健一『岩波講座基礎数学: 
集合と位相II 岩波書店、1977, §1.7距離空間のCauchy,完備距離空間(pp.154-8);§2.5有向点列の収束(p.198)

[トピック一覧:収束点列の極限とベクトル演算]
総目次