平面R2におけるコーシー列と収束  

 ・定義コーシー列 
 ・
定理点列のコーシー列と数列のコーシー列点列の収束に関するコーシーの判定条件 
 R2における点列の関連ページR2における点列の収束・極限―定義/収束点列の極限とベクトル演算 
 
コーシー列関連ページ数列のコーシー列  
 
参考文献総目次  

定義:コーシー列

(平面R2上の距離空間一般におけるコーシー列の定義)

設定

(R2,d) :平面R2に距離dを与えてつくった距離空間 
P :    R2上の(x , y ) 
{
P1 , P2 , P3 , …} : R2上の点列{ (x1,y1), (x2,y2), (x3,y3) , }

 

[文献]
杉浦『解析入門I1章§4(p.38)
小平『解析入門I』§1.6定理1.25(p.60);
吹田新保『理工系の微分積分学6章§1定理2(p.156).

定義

距離空間 (R2, d ) 上の点列{P1 , P2 , P3 , …}がコーシー列であるとは、
 
任意のε> 0に対して、ある自然数Nをとると、
   「
N以上のあらゆるの自然数i, jに対して、d ( Pi , Pj )<ε
 が成立するということ 
 
論理記号で表すと、
    
( ε>0 ) (NN) (i,jN) ( iNかつjN d ( Pi , Pj ) <ε) 
を言う。

(ユークリッド平面におけるコーシー列の定義)


小平『
解析入門I』§1.6定理1.25(p.60);


設定

(R2,d)平面R2ユークリッド距離を与えてつくったユークリッド平面 
P ユークリッド平面(R2,d)上の(x , y ) 
{
Pi}iN ユークリッド平面(R2,d)上の点列
      

{ P1 , P2 , P3 , }={ (x1,y1), (x2,y2), (x3,y3) , }

定義

ユークリッド平面(R2,d)上の点列
  {
P1 , P2 , P3 , …}={ (x1,y1), (x2,y2), (x3,y3) , }  


コーシー列であるとは、
 
任意のε> 0に対して、ある自然数Nをとると、
  「
N以上のあらゆる自然数i, jに対して、
             」
 が成立するということ 
 
論理記号で表すと、
  
(ε>0) (NN) (i,jN)
          ( iNかつjN ) 
を言う。

(ユークリッド平面におけるコーシー列の定義―ベクトル表現)

設定

R2実数2個並べた組 (x,y ) をすべてあつめた集合
  すなわち、「
実数全体の集合R」と「実数全体の集合R」の直積
          
R×R={ (x,y) | xR かつ yR } 
2次元数ベクトル空間R2R2にたいして、通例のベクトルの加法スカラー乗法を定義したもの。
ノルム空間 R2, ‖‖ ):2次元数ベクトル空間R2にたいして、
             「
自然な内積(標準内積)・」「ユークリッドノルム‖‖」を定義したもの。 
ユークリッド空間(R2,d)ノルム空間 R2, ‖‖ )にたいして、
            
ユークリッドノルムから定めた距離d(x, y)=xyを定義したもの。 
P ユークリッド空間(R2,d)上の(x , y ) 
   「
平面R2上の(x , y )」は、2次元数ベクトルであるから、
   この
2次元数ベクトル(x , y )Pで表すことにする。  
{
Pi}iN ユークリッド空間(R2,d)上の点列すなわち2次元数ベクトル
      

{ P1 , P2 , P3 , }={ (x1,y1), (x2,y2), (x3,y3) , }

定義

ユークリッド平面(R2,d)上の点列{P1 , P2 , P3 , …}

コーシー列であるとは、
 
任意のε> 0に対して、ある自然数Nをとると、
  「
N以上のあらゆる自然数i, jに対して、
         
d ( Pi , Pj ) =P1 Pj<ε 」
 が成立するということ 
 
論理記号で表すと、
  
(ε>0) (NN) (i,jN)
          ( iNかつjNP1 Pj<ε ) 
を言う。

杉浦『解析入門I1章§4(p.38)

(他の列のコーシー列)

数列のコーシー列

[トピック一覧R2上のコーシー列]
総目次

定理:点列のコーシー列と、数列のコーシー列の関係

設定

(R2,d) :平面R2に距離dを与えてつくった距離空間
    
(通常は、R2ユークリッド距離を与えてつくったユークリッド平面)
P :
   R2上の(x , y ) 
{
P1 , P2 , P3 , …} : R2上の点列{ (x1,y1), (x2,y2), (x3,y3) , }

 
{
x1 ,x2,x3,…}:点列{P1,P2,P3,…}の各Pi( xi , yi )xiだけを取り出して並べた数列
{
y1,y2,y3,…}:点列{P1,P2,P3,…}の各Pi( xi , yi )yiだけを取り出して並べた数列

[文献]
杉浦『解析入門I1章§4定理4.5-2(p.38):証明付。

定理

次の2つの命題は、同値である。
命題
P点列{P1 , P2 , P3 , …}={ (x1,y1), (x2,y2), (x3,y3) ,…}はコーシー列であり。
命題
Q数列{ x1 , x2, x3, }コーシー列であり、
    
かつ 
    
数列{y1,y2,y3,…}もコーシー列である。 

[トピック一覧R2上のコーシー列]
総目次

定理:点列の収束に関するコーシーの判定条件

設定

(R2,d) :平面R2に距離dを与えてつくった距離空間
    
(通常は、R2ユークリッド距離を与えてつくったユークリッド平面)
P :
   R2上の(x , y ) 
{
P1 , P2 , P3 , …} : R2上の点列{ (x1,y1), (x2,y2), (x3,y3) , }

 

[文献]
杉浦『解析入門I1章§4定理4.5-3(p.38)
小平『解析入門I』§1.6定理1.25(p.60);
吹田新保『理工系の微分積分学6章§1定理2(p.156).

定理

次の2つの命題は、同値である。
命題
P点列{P1 , P2 , P3 , …} が、P=(x,y)収束する。
     つまり、 
      
  
命題
Q点列{P1 , P2 , P3 , …} コーシー列である。

数列におけるコーシーの判定条件

[トピック一覧R2上のコーシー列]
総目次

 

 

 

   

reference

日本数学会編集『岩波数学辞典(3)』項目58関数D族・列(p.158);項目92距離空間(pp.253-256);項目166収束(pp436);項目409ユークリッド幾何学(pp.1225-1229)、項目410ユークリッド空間 (pp.1229-1230).
(解析学についての教科書)
高木貞二『
解析概論改訂第三版』岩波書店、1983年、p.14.
小平邦彦『解析入門I (軽装版)岩波書店、2003年、§1.6平面上の点集合-d.点列の極限(pp.60-61)
杉浦光夫『
解析入門I』岩波書店、1980年、1章§4(pp.38-40):Rn上の点列について。収束定義の論理記号での表現がある。.
吹田・新保『理工系の微分積分学』学術図書出版社、1987年。6章§1(pp.155-157):平面上。
(数理経済学についての教科書)
神谷和也・浦井憲『
経済学のための数学入門』東京大学出版会、1996年、pp.67-68;120-123;4.3Rnにおける点列の収束(pp.135-141).
奥野正寛、鈴村興太郎『ミクロ経済学I』岩波書店、1985年、pp.261-265.
(位相についての教科書)
志賀浩二『位相への30』朝倉書店、1988年、第2講平面上の座標・点列の収束(pp.10-15)
矢野公一『
距離空間と位相構造』共立出版、1997年。 1章距離空間1.1.2点列の収束(pp.10-11);2章位相空間2.1位相構造(p.65)
斉藤正彦『数学の基礎:集合・数・位相』東大出版会、2002年。1章§2定義1.2.11:点列;定義1.2.12部分列(pp.13-4); 3章§4定義3.4.4Rn点列収束(pp.86-87);4章位相空間(その1)§4点列の収束 (p.122-3)
松坂和夫『集合・位相入門』岩波書店、1968年。第6章§1-C点列の収束(pp.238-9)
彌永昌吉・彌永健一『岩波講座基礎数学: 
集合と位相II 岩波書店、1977, §1.7距離空間のCauchy,完備距離空間(pp.154-8);§2.5有向点列の収束(p.198)