一般の有界集合上の2重積分 double integral
I.定義


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定義:一般の有界集合上で積分可能、2重積分 double integral  


【文献】

 ・高木『解析概論』第8章92節(pp.331)
 ・杉浦『解析入門I』IV章§8(p.255;256-7.)
 ・笠原『微分積分学』7.2節[2]定義7.1.3(pp.256-7.)
 ・吹田新保『理工系の微分積分学』193
 ・黒田『微分積分』10章2節(352-3)
 ・片山『微分積分学』204-5. 

【ポイント】

  R2上の有界な点集合A上の2重積分定義は、矩形上の2重積分に帰着。



(舞台設定)
 A: Aは、R2上の有界な点集合 を表すとする。
 P: Pは、R2上の(x,y) を表すとする。
  f ( P )ないし f (x ,y): ここでは、関数  f ( P )ないし f (x ,y)として、有界関数のみを考える。
(本題)
関数  f ( P )ないし f (x ,y)が、R2上の有界な点集合A上リーマン積分可能、リーマン可積分とは、
 1. Aを内部に含むR2上の閉区間(閉矩形)K{ (x,y) | axb, cyd }=[a,b]×[c,d]をとり、      
     
 2. 次のような関数 f * ( P ) ないし f * (x,y) をつくるとき、
      P(x,y)がA上の点であるときは f * ( P ) = f ( P ) ないし f * (x,y) =  f (x ,y)
      P(x,y)がA上の点でないときは f * ( P ) =0  ないし f * (x,y) =0 
     ※ Aの特性関数(定義関数)χAを用いて表すと、
            f * ( P ) = f ( P ) χA ( P ) ないし  f * (x,y) =  f (x ,y) χA(x ,y)
関数 f * ( P ) ないし f * ( P ) が閉矩形K上可積分となることをいう。
また、
fのA上の (2重)積分
 
とは、
  f *閉矩形K上の積分 
   
   
を指す。
※以上のような事情だから、
 f有界な点集合A上の可積分条件とは、 f *閉矩形上の可積分条件を指すことになる。
f (x ,y)がA上連続だとしても、 f * がK上連続となるとは限らない。
 なぜなら、Aの境界上 f (x ,y)=0となる特殊な場合を除いて、
  f * はAの境界で不連続となる(Aの外にでると0にカクンと落ちる)から。
 一般集合A上の2重積分の性質・計算についての考察は、
 この不連続点をどう処理するかを中心に進められていく。[笠原『微分積分学』7.2節[2] p.257.)] 

 

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定理:

 fが有界な点集合A上積分可能であるかどうか、fの有界な点集合A上の積分値は、
 その定義で用いた閉矩形Kのとりかたによらない。
[杉浦『解析入門I』IV章§8(p.255;.) ;笠原『微分積分学』7.2節[2] p.257.)]  

( reference )

・日本数学会編集『岩波数学辞典(第三版)』 岩波書店、1985年、202項積分法(pp.520-525)→リーマン積分、
・高木貞治『解析概論:改訂第3版』岩波書店、1983年、第8章91-92節(pp.326-334.)
・吹田・新保『理工系の微分積分学』学術図書出版社、1987年、第7章1節(II)-(III) (pp.191-196).
・杉浦光夫『解析入門I』東京大学出版会、1980年、IV章§8(pp.254-261.)(2重積分についてというよりもむしろ、主にn変数関数全般についてリーマン積分を論じている。)
・笠原皓司『微分積分学』サイエンス社、1974年、7.2節[2]定義7.1.3(pp.256-7.)。
・黒田成俊『21世紀の数学1:微分積分』共立出版、2002年、第10章2節(pp. 352-359.)。連続関数に限定。
・小平邦彦『解析入門II』 (軽装版)岩波書店、2003年、第7章 d)矩形塊上の積分(pp.327-330.)。有限個の矩形の合併集合に限定。連続関数に限定.。
・高橋一『経済学とファイナンスのための数学』新世社、1999年、第3章3.8節I(pp. 106-108)。
・Walter Rudin,Principles of Mathematical Analysis,Mcgraw-Hill,1953-1976.
  =ウォ−ルタ−・ルディン『現代解析学』共立出版、1971年、第6章。
 ・高橋陽一郎『岩波講座現代数学への入門:微分と積分2』 岩波書店、1995年、5章2節(pp.138-146.):。このテキストは、リーマン積分とルベーク積分の間という特殊な立場を進んで行っている気がする。ついていってよいのかどうか。
・片山孝次『微分積分学』(現代数学レクチャーズB-8)、培風館、1980年、p.202.極めて簡潔な要約。 
・和達三樹『理工系の数学入門コース1:微分積分』岩波書店、1988年、pp.138-9. アイデアだけ。厳密な議論なし。
・小形正男『理工系数学のキーポイント7:多変数の微分積分』岩波書店、1996、87-89. アイデアだけ。厳密な議論なし。
・Lang,Serge.Undergraduate Analysis(Undergraduate Texts in Mathematics),Springer-Verlag New York Berlin Heidelberg Tokyo,1983,Chapter 19. Multiple Integrals. (pp.468-482.)。