副題は「回帰分析と分散分析を中心として」
「1章 記述的回帰論」では、回帰と相関について説明されている。ここで、正規方程式について導出されている。途中は省くと、次の(1)式が得られる。
ここで総和記号は `r = 1` から `n` までを取る。
`{(sum y_r, = a sum 1 + b_1 sum x_(1r) + b_2 sum x_(2r) + cdots + b_k sum x_(kr)),
(sum y_rx_(1r), = a sum x_(1r) + b_1 sum x_(1r) x_(1r) + b_2 sum x_(1r) x_(2r) + cdots + b_k sum x_(1r) x_(kr)),
(vdots,vdots),
(sum y_rx_(kr),=a sum x_(kr) + b_1 sum x_(kr) x_(1r) + b_2 sum x_(kr) x_(2r) + cdots + b_k sum x_(kr) x_(kr)):}`
これを本書では正規方程式と呼んでいる。
そして、最後の項は、直交多項式について解説されている。ここでいう直交多項式は、ルジャンドルとか、チェビシェフとかの名前がつくものではない。
ここで直交多項式を導入している理由は、本書 p.15 によれば、正規方程式を解き易くし,第2章,第3章の統計的推測に利用するため
である。
正規方程式は現在ではコンピュータを使って解いてしまうし、それに最小二乗法の式を正規方程式を経由して解くのは数値誤差の問題から得策ではないことが現在ではわかっている。
だから、ここの直交方程式は後で読み返すぐらいでいいだろう。
「2章 線形モデルと分散分析の基礎理論」では、BLUE という用語が登場する。この BLUE とはいわゆる頭字語であろうが、何の略かは本書では明かされていない。 BLUE は Best Linear Unbiased Estimator の略で、最良線形不偏推定量、という訳語がある。まずはこれでよしとしよう。
「3章 回帰分析と分散分析の実際」では、実際の数値でいろいろな例題を説明している。
本書では、確率変数を使って,その構造を示した式を確率模形といい,
とある。現在なら確率モデルというところだ。あえてモデルでもなく、模型でもなく、模形ということばを使っているのが著者の信念を感じさせる。
さて、p.74 の例1をみてみよう。少し改変している。
ある農事試験場で 30 のプロットを無作為に選んで,施肥の程度を 5 段階 `A, B, C, D, E` にして,麦を栽培して,つぎの収量を得た.
水準 平均 `T_(i*)` A B C D E
改変したのは、全平均と `T_(i*)` の計を表から外したことだ。全平均は 79.5、`T_(i*)` の計は 2385.0 である。
計算のために、まず p.76 から、一般的な分散分析表を少し補足して転載する。
要因 | 自由度 | 平方和 | 平均平方和 |
---|---|---|---|
仮説 (`nu_i = 0`) | `k - 1` | `sum n_i(x_i - bar x)^2 = sum T_(i*)^2 // n_i - T^2// n` | 左項 / (`k-1`) |
誤差 (`E`) | `n - k` | `sum sum x_(ij)^2 - sum T_(i*)^2 // n_i` | 左項 / (`n-k`) |
全変動 | `n - 1` | `sum_(i,j) (x_(ij) - bar x)^2 = sum sum x_(ij)^2 - T^2 // n` |
上記の一般的な分散分析表を計算した結果は次のとおりである。
要因 | 自由度 | 平方和 | 平均平方和 |
---|---|---|---|
仮説 | |||
誤差 | |||
全変動 |
本書では、p.76 にある <例 2> の表の S. S(平方和)の欄で、誤差が 743.73, 全変動が 1 059.73 となっているが、私の JavaScript による計算では、誤差が 743.74, 全変動が 1 059.74 となり、小数点第2位がどちらも 4 になった。
「4章 不完備実験計画法」では、1 ブロックの中で全部の処理が実験できない場合に、処理について情報を得ることができるような実験計画をいう。 このような実験計画を本書では、不完備実験計画法(incomplete block design)と称しているが、 現在は「不完備実験計画法」のことを不完備ブロックデザインあるいは不完備ブロック計画と呼ぶのが普通だ。
p.148 に `L_16` 直交表がある。以下、少し改変して掲載する。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
書名 | 実験計画法 |
著者 | 宇喜多義昌 |
発行日 | 1985 年 4 月 5 日 第1版第3刷 |
発行元 | 森北出版 |
定価 | 2400 円(税別) |
サイズ | A5 版 |
ISBN | 4-627-00390-0 |
NDC | |
備考 | 草加市立図書館で借りて読む |
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