宇喜多義昌:実験計画法

作成日 : 2024-09-30
最終更新日:

概要

副題は「回帰分析と分散分析を中心として」

感想

「1章 記述的回帰論」では、回帰と相関について説明されている。ここで、正規方程式について導出されている。途中は省くと、次の(1)式が得られる。 ここで総和記号は `r = 1` から `n` までを取る。
`{(sum y_r, = a sum 1 + b_1 sum x_(1r) + b_2 sum x_(2r) + cdots + b_k sum x_(kr)), (sum y_rx_(1r), = a sum x_(1r) + b_1 sum x_(1r) x_(1r) + b_2 sum x_(1r) x_(2r) + cdots + b_k sum x_(1r) x_(kr)), (vdots,vdots), (sum y_rx_(kr),=a sum x_(kr) + b_1 sum x_(kr) x_(1r) + b_2 sum x_(kr) x_(2r) + cdots + b_k sum x_(kr) x_(kr)):}`
これを本書では正規方程式と呼んでいる。 そして、最後の項は、直交多項式について解説されている。ここでいう直交多項式は、ルジャンドルとか、チェビシェフとかの名前がつくものではない。 ここで直交多項式を導入している理由は、本書 p.15 によれば、正規方程式を解き易くし,第2章,第3章の統計的推測に利用するためである。 正規方程式は現在ではコンピュータを使って解いてしまうし、それに最小二乗法の式を正規方程式を経由して解くのは数値誤差の問題から得策ではないことが現在ではわかっている。 だから、ここの直交方程式は後で読み返すぐらいでいいだろう。

「2章 線形モデルと分散分析の基礎理論」では、BLUE という用語が登場する。この BLUE とはいわゆる頭字語であろうが、何の略かは本書では明かされていない。 BLUE は Best Linear Unbiased Estimator の略で、最良線形不偏推定量、という訳語がある。まずはこれでよしとしよう。

「3章 回帰分析と分散分析の実際」では、実際の数値でいろいろな例題を説明している。

本書では、確率変数を使って,その構造を示した式を確率模形といい, とある。現在なら確率モデルというところだ。あえてモデルでもなく、模型でもなく、模形ということばを使っているのが著者の信念を感じさせる。

さて、p.74 の例1をみてみよう。少し改変している。

ある農事試験場で 30 のプロットを無作為に選んで,施肥の程度を 5 段階 `A, B, C, D, E` にして,麦を栽培して,つぎの収量を得た.

水準平均`T_(i*)`
A
B
C
D
E

改変したのは、全平均と `T_(i*)` の計を表から外したことだ。全平均は 79.5、`T_(i*)` の計は 2385.0 である。

計算のために、まず p.76 から、一般的な分散分析表を少し補足して転載する。

要因自由度平方和平均平方和
仮説 (`nu_i = 0`)`k - 1``sum n_i(x_i - bar x)^2 = sum T_(i*)^2 // n_i - T^2// n`左項 / (`k-1`)
誤差 (`E`)`n - k``sum sum x_(ij)^2 - sum T_(i*)^2 // n_i`左項 / (`n-k`)
全変動`n - 1``sum_(i,j) (x_(ij) - bar x)^2 = sum sum x_(ij)^2 - T^2 // n`

上記の一般的な分散分析表を計算した結果は次のとおりである。

要因自由度平方和平均平方和
仮説
誤差
全変動

本書では、p.76 にある <例 2> の表の S. S(平方和)の欄で、誤差が 743.73, 全変動が 1 059.73 となっているが、私の JavaScript による計算では、誤差が 743.74, 全変動が 1 059.74 となり、小数点第2位がどちらも 4 になった。

「4章 不完備実験計画法」では、1 ブロックの中で全部の処理が実験できない場合に、処理について情報を得ることができるような実験計画をいう。 このような実験計画を本書では、不完備実験計画法(incomplete block design)と称しているが、 現在は「不完備実験計画法」のことを不完備ブロックデザインあるいは不完備ブロック計画と呼ぶのが普通だ。

p.148 に `L_16` 直交表がある。以下、少し改変して掲載する。

123456789101112131415

数学ライブラリー

  1. 多元数論入門
  2. 複素関数論
  3. 自然数論
  4. 接続の幾何学
  5. OR 入門
  6. グラフ理論の基礎
  7. 動的計画法
  8. 変形法による構造解析
  9. 計量経済学入門
  10. 差分方程式入門
  11. 変分学の応用
  12. 待ち行列の応用
  13. 保険数学
  14. 微分方程式序説
  15. ゲームの理論
  16. 応用確率論
  17. 線形代数入門
  18. 統計数学入門
  19. 位相幾何学
  20. リーマン幾何学入門
  21. 集合論入門
  22. コンパイラ
  23. テンソル解析の応用
  24. 電気系の確率と統計
  25. ベクトルとその応用
  26. 積分とその応用
  27. 数学と物理学の交流
  28. 初等フーリエ解析と境界値問題
  29. 組合せ位相幾何
  30. グラフ理論の展開と応用
  31. テンソル解析入門
  32. 多変量解析入門Ⅰ
  33. 計量社会学入門
  34. 関数解析と数値解析入門
  35. 経営と経済の数値計算
  36. 線形代数と解析幾何
  37. スケジュール理論
  38. 有限要素法とその応用
  39. 実験計画法
  40. 特殊関数とその応用
  41. 多様体入門
  42. ネットワークプログラミング
  43. 確率制御過程
  44. 数理計画法入門
  45. コンピュータによる統計解析
  46. 多変量解析入門Ⅱ
  47. 乱数とモンテカルロ法
  48. ファジィ集合とその応用
  49. ルベーグ積分入門
  50. 最適化問題の基礎
  51. 多変数複素解析入門
  52. 情報代数の基礎
  53. 最適化と最適制御

書誌情報

書名 実験計画法
著者 宇喜多義昌
発行日 1985 年 4 月 5 日 第1版第3刷
発行元 森北出版
定価 2400 円(税別)
サイズ A5 版
ISBN 4-627-00390-0
NDC
備考 草加市立図書館で借りて読む

まりんきょ学問所統計活用術統計の本 > 宇喜多義昌:実験計画法


MARUYAMA Satosi