「はじめに」から引用する:
まだリーマン幾何学の適当な参考書がなかったので,著者があえてテンソル解析学の初歩とリーマン幾何学の概要を説明するために書いたものである.
第1章はテンソル代数学である。ここでは、指標記法とその利用方法についての説明がある。 そのなかの1.3 節は行列式である。 ここの用語が面白い。まず、p.22 で、行列式 `a` を次で考えている。
行列式 `a` における `a_1^1, a_2^1, cdots, a_n^1` の余因数それぞれ `A_1^1, A_1_2, cdots, A_1^n` とおけばという記述がある。余因数のことを今は余因子というだろう。 たとえば「理系のための線型代数の基礎」p.70 などを見るといい。
本書の同じページには、行列式 `a` における元素 `a_mu^lambda` の余因数を `A_lambda^mu` とおけば(後略)
という記述がある。元素という表記はここだけだ。おそらく要素といってもいいだろう。
p.26 まで読み進めるとクラマーの法則が出てくる。他書では「クラーメルの公式」
と呼ぶことが多い。いっきに飛んで、p.128 では、これは有名なロードリーグの公式の拡張である
と記されている。ロードリーグの公式とは、三次元回転におけるロドリゲスの回転公式のことであろうか。
本書の p.23 ではクロネッカー (L. Kronecker) のデルターという表記がある。 デルターと長音で伸ばすのがかっこいい。
本書の p.96 の 4.4 節は「テンソルの展げ」である。これは何と読むのだろう。 「テンソルのひろげ」だろうか。
p.4 下2行から1行で微分幾何者
とあるが、《微分幾何学者》だろう。
また p.7 14行で古典微分何学
となっているが、《古典微分幾何学》だろう。
p.17 の 1.1 節は「指標記号」となっているが、p.13 目次では 「1.1 指標記法」 となっている。1.1 節の本文は「記号」より「記法」の用語が多く使われているので、 目次の「指標記法」を採用すべきだろう。
p.181 は 行 「ベクトラミの第1種微分係数」とあるが、正しくは《ベルトラミの第1種微分係数》 だろう。この上がベクトルに関する数々の用語だから、これにひきずられたか。
p.181 ら 行「ロードリーグの公式」は p.125 とあるが、p.125 にはこの公式の記載はない。
このページの数式は MathJax で記述している。
書名 | リーマン幾何学入門 |
著者 | 矢野健太郎 |
発行日 | 1990 年 7 月 10 日 第 1 版 第 11 刷発行 |
発行元 | 森北出版 |
定価 | 2900 円(本体) |
サイズ | A5版 264 ページ |
ISBN | 4-627-00200-9 |
その他 | 草加市立図書館にて借りて読む |
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