「はしがき」から引用する
与えられた制約のなかで,1 つのシステムをある判定基準に従い最も望ましい状態にする問題が最適化問題である.本書は,この最適化問題をやや狭く解釈して,与えられた制約条件のもとで,目的関数の極値を求める問題, すなわち数理計画問題をとりあげ,その基本的な考え方と数学的基礎理論を解説したものである.
本文中には問があるが、解答はない。
私は頭が弱いので、内容がわからない。具体的な数値計算例は少なく、後半にいくほど理論が中心になっていく。
「1 章 線形不等式系」では、Farkas の補題が出てくる。 補題の中でも、ファルカシュ(ファルカス)の補題は、ツォルンの補題や米田の補題と同じぐらい有名な補題だ。ただし、 ファルカシュの補題は日本の Wikipedia のページにはまだない。以下、本書 p.23 から引用する。ただし、引用の都合で、太字の斜体は太字の立体に変更している。
定理 1.7(Farkas's lemma)`A in R^(m times n), bb b in R^m` が与えられたとき
Ⅰ 連立 1 次方程式 `A bbx = bb b` が非負の解 `bbx in R^n` をもつ.
Ⅱ 線形不等式 `bby^"T" A ge bb 0, (bby, bb b) lt 0` が解 `bb y in R^m` をもつ.
は,いずれか一方のみが成立し同時に成り立つことはない.
この「いずれか一方のみ成立し、同時に成り立つはない」という性質は、何とすがすがしいのだろう。欲の皮がつっぱってあれもこれも欲しいという人は山ほどいるし、 ミニマリストを気取ってあれもこれも捨てるという人もたくさんいる。そんな世界に身を置くと、数学の世界がうらやましい。
「2 章 凸集合」では、当然のことながら集合の記号が多用されている。集合の記号には和集合を表す `uu` や、積集合を表す `nn` などが使われている。気になったのは、 本書で使われているこれらの記号が、和集合の場合「浅い」のだ。極端にいえば、︶ や ⌒ のように見えてしまう。
「3 章 線形計画法」では、線形計画法の計算手順や線形計画法の双対性が述べられている。ここでは、`ccC` とか `ccK` というカリグラフ体が踊っていて、よくわからない。 慌てて本書を見直したら、もっと前に出てきていた。しかし、どこで定義されているのかはわからないままだった。
書名 | 最適化問題の基礎 |
著者 | 久志本茂 |
発行日 | 1988 年 11 月 5 日 第 1 版 第 4 刷発行 |
発行元 | 森北出版 |
定価 | 2400 円(本体) |
サイズ | A5版 186 ページ |
ISBN | 4-627-00500-8 |
その他 | 草加市立図書館にて借りて読む |
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