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新作映画で英語学習

『ヘルプ~心をつなぐストーリー』(The Help, 2011)

                                                                                    お勧め度:★★★★★


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『ブラック・スワン』

『ジュリエットからの手紙』

『ガリバー旅行記』

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『塔の上のラプンツェル』

『ウォール・ストリート』
                                   

 1960年代初頭。公民権運動が広がりを見せ始めた時代のミシシッピ州のジャクソン。都会での4年間の大学生活を終え、故郷に帰って来たスキーターは、運良く地元の小さな新聞社にライターとしての職を得る。

 当時のこの町では黒人女性のほとんどが白人家庭で家政婦として、あるいは乳母として働いていた。映画のタイトル「ヘルプ」とは、そうした彼女たちに付けられた名称だった。

 都会の空気に触れ、精神的にも大きく成長していたスキーターは、いまだ人種差別が横行する深南部の悲しい現実を目のあたりにし、虐げられた彼女たちの本心を聞き出そうと、インタビューすることにする。しかし、記事が公にされた場合の白人による報復を恐れ、彼女たちはスキーターから逃げ出す始末。そんな中、一人の女性エイビリーンがその重い口を開き、心の内を語りはじめた。

 以下は、映画の冒頭で、姿が見えないスキーターの質問に答えるアイビリーンの様子である。

 深南部で社会の片隅に追いやられ、苦しむ黒人の家政婦たちと、彼女らに救いの手を差し伸べる若きジャーナリストの奮闘を描いたこの作品は、物語の背景となっている場所で生まれ育ったキャスリン・ストケット(Kathryn Stockett, 1969 -   )の同名の処女作が原作であり、彼女の幼馴染であるテイト・テイラー(Tate Taylor, 年令不詳)がメガフォンを握ったものだ。主役のスキーターには Easy A (2010)や『ラヴ・アゲイン』 (Crazy, Stupid, Love , 2011)で絶賛されたエマ・ストーン(Emma Stone, 1988 -  )、そして抑圧された、陰鬱な社会に大きな風穴を開ける原動力となったアイビリーンには、アメリカ演劇界で最も権威のあるトニー賞に2度にわたって輝いているヴィオラ・デイヴィス(Viola Davis, 1965 - )があたっている。


                             (青色の語句には注釈が付いています)

Int. Aibileen’s House – Day
Aibileen is being interviewed by An Unseen Woman.

屋内-エイビリーンの家-昼
エイビリーンは姿の見えない女性のインタビューを受けている。 
Aibileen:   I was born 1911, Chickasaw County, Piedmont Plantation.  エイビリーン:  あたしが生まれたのは1911年、チッカソー郡のピードモント農園です。
 
Woman:   And did you know, as a girl growing up, that one day you’d be a maid
女性: それで、成長するにつれ、いつか自分がメイドになるってことは分かっていましたか? 

Aibileen: Yes, ma’am, I did. 

エイビリーン:  ええ、分かっていました。 
Woman:    And you knew that because…. 

女性:  じゃあ、そのことは分かっていたのね、理由は…… 
Aibileen:  My mama was a maid. My grandmamma was a house slave

エイビリーン: あたしの母はメイド、祖母はハウス奴隷でしたから。 
Woman:   House…slave. Do you ever dream of being something else?

 
女性: ハウス….奴隷。メイド以外のものになりたいと思ったことは?
She nods.

彼女はうなずく。
Woman:   What does it feel like to raise a white child when your own child’s at home being looked after by somebody else? 

女性: 自分の子供が家で他人に面倒をみてもらっているときに、白人の子供を育てるって、どんな感じかしら?
Aibileen:  It feel… 

エイビリーン:  それは…. 
She stops and looks at the picture on the wall. Suddenly she looks sad and turns away from the woman.

彼女は話すのをやめ、壁にかかった一枚の写真に目をやる。突然、悲しげな表情になり、その女性から顔を背ける。
Aibileen: I done raised 17 kids in my life. Looking after white babies, that’s what I do. 

エイビリーン: あたしはこれまで、17人の子供たちを育ててきました。白人の赤ん坊の面倒をみる、それがあたしの仕事です。

Int. White Woman’s House – Morning

屋内-白人の家庭-朝
Girl: Aibee, Aibee. 

幼い女の子:  エイビー、エイビー。 

Aibileen walks in.

エイビリーンが歩いて入ってくる。
Aibileen:   Hi! 

エイビリーン:  ハイ!

 
Girl: Aibee! 

幼い女の子:  エイビー! 

Aibileen: I know how to get them babies to sleep, stop crying and go in the toilet bowl before their mamas even get out of bed in the morning. 

エイビリーン:  あたしは赤ん坊を寝かしつけたり、泣き止ませたり、また母親たちがベッドから起き上がる前にちゃんとトイレに行かせる術を心得ています。 

The girl giggles happily. 

女の子は幸せそうにクスクス笑う。
Aibileen: Babies like fat. They like big fat legs, too. That I know. 

エイビリーン: 赤ん坊はぽっちゃり。彼らはまた大きなぽっちゃりした足みたい。ええ、そうですとも。 

She holds the girl and talks to her.

彼女はその女の子を抱き、話しかける。
Aibileen:    You is kind.  You is smart. You is important. 

エイビリーン:  あんたは親切、あんたは頭がいい…あんたは重要人物。

Girl: You is smart…. 

幼い女の子:  あんたは頭がいい…. 

Aibileen:   Smart….. 

エイビリーン:  頭がいい….

Girl: You is kind….. 

幼い女の子:  あんたは親切…. 

Aibileen:   You is kind… 

エイビリーン:  あんたは親切….

Girl: You is important. 

幼い女の子:  あんたは重要人物…. 

Aibileen:   You is important. That’s so good. That’s so good.

エイビリーン: あんたは重要人物。ほんと、すばらしい。すばらしいですだ。

She hugs the girl.

彼女はその女の子を抱きしめる。
Aibileen:  I work for the Leefolts from eight to four, six days a week. I make 95 cent an hour. That comes to 182 dollars every month. I do all the cooking, cleaning, washing, ironing and grocery shopping. But mostly, I take care of Baby Girl. And, Lord, I worry she gonna be fat. (to the girl) Mae Mobley. 

エイビリーン: あたしはリーフォルト家で8時から4時まで、一週間に6日働いています。一時間95セントで、毎月、182ドルになります。料理、掃除、洗濯、アイロンがけ、それに食料品の買出し、すべてをやるんです。でも、主な仕事は女の子の世話。だけど、ほんとに、あの子は太るんじゃないかと心配ですだ。(女の子に)メイ・モブリー。

She pats the girl’s stomach. 

彼女は女の子のおなかを軽くたたく。
Aibileen:   Ain’t going to be no beauty queen either. 

エイビリーン:  それに美人コンテストで優勝しそうもないですだ。 

Mrs. Leefolt appears.

リーフォルト夫人が現れる。
Leefolt: Aibileen, bridge club is in an hour. Did you finish the chicken salad? 

リーフォルト: エイビリーン、一時間後にブリッジクラブなの。例のチキンサラダは出来たかしら? 

Aibileen:   Yes. 

エイビリーン:  はい。
Leefolt: Oh, and Hilly’s devilled eggs. No paprika

リーフォルト:  あ、それから、ヒリーの刻みタマゴの辛味焼き。パプリカはなしよ。

Aibileen: Mm-hm. 

エイビリーン:  へえ。

Leefolt: Does this dress look homemade

リーフォルト: このドレス、お手製に見える?

She turns around.

彼女はぐるっと回転する。

Aibileen: I reckon when you finish it won’t. 

エイビリーン:  終えたら、そうは見えないと思いますけど。

Leefolt: Well, thank you. 

リーフォルト:  まあ、有難う。 
She smiles and leaves.

彼女は微笑み、そして立ち去る。

Aibileen:   Miss Leefilt still don’t pick Baby Girl upbut once a day. The birthing blues got hold of Miss Leefolt pretty harsh. I done seen it happen plenty of times, once babies start having them own babies

エイビリーン: ミス・リーフォルトはまだ一日に一度しかお嬢さんを抱きかかえないんです。ミス・リーフォルトは出産ブルーにかかってらっしゃるんです、かなりひどくね。あたしは、これまでに何度も、そうした現象を見てきました。未熟な人が赤ん坊を生むとたちまちですだ。 

       
       
       
   語句解説    

* I was born 1911  ⇒正しくは I was born in 1911

 

* Chickasaw County   Mississippi州の郡。数百年にわたってこの場を住処としていたインディアンたち Chickasaw族に由来する名前。

 

* grow up      成長する、大人になる、大きくなる ⇒この意味から、子供じみたことをしたり、言ったりする人をたしなめる表現として Grow up! (大人になれ⇒子供だなあ)のように使われる。

 

* maid         メイド、女中、お手伝い

 

* house slave   家事など家の中の労働をする奴隷。アメリカ南部では南北戦争(1861 – 65)以前においては、黒人たちは自由を奪われ、奴隷として厳しい労働に従事させられていた。

 

* dream of       ~を夢に描く、を夢想する  ⇒この意味の場合は、通例、否定文または疑問文で使われる。

 

* raise           育てる、養う ⇒ この意味の場合、bring up が一般的。

 

* at home         在宅して、家にいて ⇒ I s your mother at home? (お母様はご在宅ですか)のように be at home で「在宅している」を意味する。なお、くだけた会話ではIs he home? (彼、家にいる)のようにatを省略することもある。

 

* look after       の世話をする、の面倒をみる ⇒take care of に同じ。

 

* done raised      have raisedのこと。アメリカ南部の、特に黒人が用いる非標準用法。過去形、時に現在形の本動詞と共に用いて完了した行為を表す。

 

* in my life     生まれてから現在まで、一生のうちで ⇒I’ve never seen her in my life. (生まれてから一度も彼女を見たことはない)のように、通例、否定文で用いられる。

 

* Aibee        ⇒Aibileenの愛称形。

 

* get them babies to sleep    ⇒「SgetOto do」で「SOに~させる、SOに~してもらう、SOに~するように言う」の意を表す。なお、them babiesthose babies のこと。thosethemとするのは非標準用法。

Ex. I did my best to get her to give up drinking. (私は彼女に飲酒をやめさせようと一生懸命だった)

 

* toilet bowl     便器

 

* like           ⇒ここでは are like

 

* You is kind    You are kindのこと。無教育からくるbe動詞の用法間違い。

 

* the Leefolts   ここでのthe the Andersons (アンダーソン一家)のように、名前の複数形に冠して「~一家」とか「~家の人々」を意味する。

 

* make 95 cent  make 95 centsとすべきところ。無教養な人たちの特徴の一つに単数形、複数形の混同がある。なお、ここでのmake He made his fortune in oil. (彼は石油で財をなした)のように利益、金などを「獲得する、かせぐ」の意を表す。

 

* come to        ~になる ⇒Your bill comes to ten dollars. (お客様の勘定は10ドルになります)のように、金額や総計が「~になる」の意。

 

* grocery        食料品店、食料雑貨店

 

* Baby Girl       幼い女の子であることから。

 

* Lord            おやおや、全くもう、ほんとに、いやはや ⇒驚き、悲しみ、感嘆、得意、上機嫌などを表す間投詞。

 

* She gonna be   She’s gonna be とか She’s going to be   とすべきところ。

 

* Ain’t      She isn’t のこと。Ain’tis [amarehavehasdodoesdid] notの短縮形で非標準用法。なお、no beauty queen a beauty queen。このように一つの節に二つの否定語を用いて一つの否定の意味を表す構文、すなわち二重否定は教育のない人たちの非標準用法。  

 

* bridge club     トランプゲームの一種であるブリッジのクラブ。

 

* Hilly’s devilled eggs   ヒリーの刻みエッグ辛味焼き ⇒ここでのdevilは「悪魔」ではなく、料理用語で「(細かく切った材料に)香辛料を使って料理する、辛味を利かせあぶり焼きする」の意。

 

* paprika          パプリカ ⇒乾燥した成熟アマトウガラシ、またそれから作った赤色の粉末香辛料。

 

* homemade       手作りの、手製の

 

* reckon           思う、考える ⇒特にアメリカ南部でthinkの意味で使われる。

 

* Miss Leefolt      本来Missは若い未婚の女性に対して用いるが、ここでは既婚夫人の名の前に付けて「~さん」を意味する。

 

* pick up           つかみあげる、持ち上げる、抱える

 

* but…             ~を除いて

 

* birthing blues     出産ブルー ⇒母親としての自覚や用意ができていないうちに出産したことからくる憂鬱な気分、不安定な精神状態。なお、bluesとは「気分のふさぎ、憂鬱な気分」のこと。

 

* get hold of…        ~をつかまえる ⇒getに代ってcatchlayseizeも使われる。Get ahold of とすることもある。

 

* pretty              very

 

* harsh           荒々しく、激しく

 

* plenty of times   かなりの数、何度となく ⇒plenty I have plenty of DVDs. (私はたくさんのDVDを持っている)のように、通例、肯定文で使われて「たくさん、十分」を意味する。否定文ではmuch、または many、疑問文ではenoughを用いるのが普通。

 

* once             ひとたび~すれば、~するやいなや

 

* babies start….them own babies    ⇒大人になりきっていない未熟な人間が子供を生むことを指した表現。なお、them own babiesは、正しくはtheir own babies

 
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