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新作映画で英語学習
『ブラック・スワン』(Black Swan)
お薦め度 ★★★★★
過去の新作映画 『ジュリエットからの手紙』 『ガリバー旅行記』 『トゥーリスト』 『塔の上のラプンツェル』 『ウォール・ストリート』 |
ナタリー・ポート演じるニーナが所属するバレエ団は次の公演『白鳥の湖』の主役を選ぼうとしていた。その人物は無垢で繊細なホワイト・スワンと、その対極にある官能的で邪悪なブラック・スワンの二役を演じなければならない。だが、候補者の一人である極めて真面目なニーナには、技術的な面では何の問題もなかったが、悪を象徴するブラック・スワンの持つ魔性と情熱に欠けていた。 オーディションが行われた日、彼女は意気消沈して母の待つ自宅へと帰ってくる。以下は、人生のすべてをバレエに捧げる日々を送るニーナと、自分が果たせなかった夢を娘に託す母との対話、そして翌日の二ーナと監督トーマスとの場面である。母の愛情に溢れた言葉や監督に再考を促す際の表現など、日常的に頻繁に使われる英語を学習するには最適といえるだろう。 (青色の語句には注釈が付いています) |
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INT. House – Night |
屋内―夜 | ||||||
Mother: | So how did it go? You were late, so I called Susie in the office. An audition. I can’t believe he just sprang that on you. So? | 母親: | で、どうだった?あなたが遅いので、ママはオフィスのスージーに電話したのよ。オーディションだなんて?あなたに彼がそんなことをやらせるなんて信じられないわ。それで? | ||||
Nina: | It was fine. | ニーナ: | うまくいったわ。 | ||||
Mother: | Just fine? Oh. | 母親: | うまくいっただけ?まあ。 | ||||
Nina starts to sob. |
ニーナは泣きだす。 | ||||||
Mother: |
Oh, sweetheart. Oh. Oh, you tell me about it. |
母親: | まあ、ニーナ。ほら、ねえ、そのこと、ママに話してみなさい。 | ||||
Mother is talking to Susie over the phone in the next room. |
母は隣の部屋でスージーに電話している。 | ||||||
Mother: | I know, Susie, but he just can’t expect these girls…to come back from a break and dance like Beth MacIntyre. It’s completely unrealistic. I mean, they can do the work, but they don’t have Beth’s magic. | 母親: | 分かってるわ、スージー、でも、彼があの娘たちに期待するのは間違ってるわよ….休みから帰ってバス・マッキンタイヤーみたいに踊れなんて。全く非現実的よ。つまり、あの娘たち、ちゃんと踊れるでしょうけで、でも、ベスの魔力は無理よ。 | ||||
Mother continues talking. | 母は話し続ける。 | ||||||
Mother: | She’s miserable, and it’s…(indistinct) | 母親: | あの娘はすごく落ち込んでるの。それに、その….(不明確) | ||||
Nina begins to practice ballet. She gasps and falls on the floor. She groans. | 二ーナはバレーの練習を始める。彼女はあえぎ、床に倒れ、うめき声を上げる。 | ||||||
Nina: | Ow. | 二ーナ: | あっ。 | ||||
Mother: | Nina? Everything all right? | 母親: | 二ーナ?大丈夫? | ||||
Nina: | I’m fine! | 二ーナ: | 大丈夫よ。 | ||||
Nina takes off her shoe. She finds her toenail split. | 二ーナは靴を脱ぐと、足の爪が割れているのを見つける。 | ||||||
Int. Bedroom – Night | 屋内-寝室-夜 | ||||||
Nina gasps. Mother is treating her for her toenail. | 二ーナはあえぐ。母は彼女の足の爪の治療をしている。 | ||||||
Nina: | Oh. | 二ーナ: | あっ! | ||||
Mother: | Shh. Almost done. You are working yourself too hard. We all have off days. | 母親: | しーっ。もうすぐ終わりよ。頑張りすぎよ。誰だって休みは取らなきゃ。 | ||||
Nina: | If that girl hadn’t barged in…. | 二ーナ: | あの娘が押しかけてさえこなかったら….. | ||||
Mother: | I’m sure she didn’t mean to. Remember when you first started? If I hadn’t taken you to each of your classes, you would have been completely lost. | 母親: | その娘、きっとそんなつもりはなかったのよ。あなたが初めてバレーを始めたときのこと、覚えてる?もし私が各クラスに連れて行かなかったら、あなたは完全に迷子になっていたわね。 | ||||
Nina: | I’m gonna talk to him tomorrow. I’m gonna tell him I finished it. | 二ーナ: | 私、明日、彼に話してみる。あれはやり終えたって言うつもりよ。 | ||||
Mother: | You don’t need to lie. It won’t convince him one way or the other. Oh, sweetheart. I know it’s disappointing. And when you start getting older, there’s all this…. ridiculous pressure. God knows, I understand. But it’s all right. No matter what. You’ll probably get to dance the pas de quatre again. That’s such a wonderful part. Or maybe he’ll make you a big swan. Either way, you’ll shine. | 母親: | 嘘を言う必要はないわ。そんなことしたって、どっちみち、彼を納得させられっこないもの。まあ、二ーナったら、残念なことは分かるわ。それに、年を取り始めると、ほら、こんな….ばかばかしいプレッシャーがかかってくるものね。ほんと、分かるわよ。でも、大丈夫。何があろうとね。たぶん、またパ・ド・カトルを踊れるわよ。あれはほんとに素敵な役だわ。それとも彼、あなたをビッグ・スワンにしてくれるかもね。どちらにしろ、あなたは輝くわよ。 | ||||
Nina: | I know. | 二ーナ: | ええ。 | ||||
Mother: | Everything will be better in the morning. It always is. Sweet girl. | 母親: | 朝になれば全てすっきりするわよ。いつもそうでしょ。いい子ね。 | ||||
Int. Hallway – Next Day Nina walks up to Thomas. |
屋内―通路―翌日 二ーナはトーマスに歩み寄る。 |
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Thomas: | Yes, Nina? | トーマス: |
なんだ、二ーナ? | ||||
Nina: | Do you have a minute? If now’s not a good time, I can…. | 二ーナ: | 少しお時間はありますか?今、ご都合が悪いようでしたら、私…. | ||||
Thomas: | Now is perfect. | トーマス: | 今が一番いい。 | ||||
They walk into his office. | 二人は歩いて彼のオフィスに入る。 | ||||||
Int. Office – Day | 屋内―オフィス―昼 | ||||||
Thomas: | So? | トーマス: | それで? | ||||
Nina: | Um …I just wanted to tell you that…I practiced the coda last night, and…I finished. I thought you should know. | 二ーナ: | えっと….ただあなたに言いたかったんです….昨夜、コーダの練習をして、それで….終えたんです。そのこと、知っておいて欲しいと思ったものですから。 | ||||
Thomas: | Okay, Nina, listen. Honestly, I don’t care about your technique. You should know that by now. | トーマス: | よろしい、二ーナ、いいかね。正直に言って、私は君のテクニックなんかどうでもいいんだ。そのことは、今ではもう分かっているべきだが。 | ||||
Nina: | Yeah, but yesterday… | 二ーナ: | ええ。でも、昨日…. | ||||
Thomas: | No. Anyway, I’ve already chosen Veronica. So…. | トーマス: | いや。とにかく、私は既にベロニカを選んだんだ。だから…. | ||||
He opens the door. | 彼はドアを開ける。 | ||||||
Thomas: | Sorry. | トーマス: | 残念だが。 | ||||
Nina: | Okay. Thank you. | 二ーナ: | ええ。ありがとう。 | ||||
He shuts the door before she gets out of the office. | 彼は彼女がオフィスを出る前にドアを閉める。 | ||||||
Thomas: | That’s it? You’re not gonna try and change my mind? You must have thought it was possible. Otherwise, what are you doing here all dolled up? | トーマス: | それで終わりかね?君は私の気を変えようとはしないのか?それが出来ると思ったはずだ。そうでなければ、めかしこんでこんな所で何をしてるのかね? | ||||
Nina: | I came to ask for the part. | 二ーナ: | 例の役を頼みに来たんです。 | ||||
Thomas: | Well, the truth is…when I look at you….all I see is the White Swan. Yes, you’re beautiful, fearful, fragile. Ideal casting. But the Black Swan? It’s hard fucking job to dance both. | トーマス: | なるほど、実は….君を見ると…..私に見えるのはホワイト・スワンだけだ。そう、君は美しく、不安そうで、繊細だ。理想的な配役だよ。しかし、ブラック・スワンはどうかな?両方の役を踊るのは極めて難しい。 | ||||
Nina: |
(softly) I can dance the Black Swan too. | 二ーナ: | (静かに)私、ブラック・スワンも踊れます。 | ||||
Thomas: | Really? In four years, every time you dance….I see you obsess getting each and every move perfectly right…but I never see you lose yourself. Ever. All that discipline for what? | トーマス: | 本当に?4年間、君は踊る度に…君はどの動作も完璧に正確なものにしようと気にしている….しかし、君が夢中になるのは見たことがない。その自制とやらは何のためかね? | ||||
Nina: | (whispers) I just want to be perfect. | 二ーナ: | (ささやく)私はただ完璧でありたいんです。 | ||||
Thomas: | You what? | トーマス: | 君は何だって? | ||||
Nina: |
I want to be perfect. | 二ーナ: | 完璧でありたいんです。 | ||||
He laughs. | 彼は笑う。 | ||||||
Thomas: | Perfection is not just about control. It’s also about letting go. Surprise yourself, so you can surprise the audience. Transcendence. And very few have it in them. | トーマス: | 完璧とは抑制さえすればいいということではない。解き放つことでもあるんだ。君自身を驚かせたまえ。そうすれば観客を驚かすことができる。超越だよ。だが、それを持っている人間は極めて少ない。 | ||||
Nina: | I think I do have it in…. | 二ーナ: | 私はそれ、持っていると思います… | ||||
He suddenly kisses her. She is too surprised and bites his lips. He shouts. | 彼は突然、彼女にキスする。彼女は驚き、彼の唇をかむ。彼は叫ぶ。 | ||||||
Thomas: | You bit me? I can…I can’t believe you bit me. | トーマス: | 君、私をかんだね?信じ…..私をかむなんて信じられない。 | ||||
Nina: |
I’m sorry. | 二ーナ: | ごめんなさい。 | ||||
Thomas: | Now, that fucking hurt. | トーマス: | なあ、クソ痛いぜ。 | ||||
She leaves his office in a hurry. | 彼女は急いで彼のオフィスから立ち去る。 | ||||||
語句解説 | |||||||
* spring (人に)急に持ち出す ex. She likes to spring surprises on her
friends. (彼女は友人をびっくりさせるのが好きだ) * expect 予期する、期待する → 出来事、事態などを期待すること。受身では当然、予定、義務などを表し、否定文では禁止を表す。そのため、ここでは「~してはだめだ」ということ。 * work 仕事、務め → 取り組むべき仕事。ここではバレーを踊ること。 * magic 不思議な力、抵抗し難い魅力 * barge in 勝手に押しかける、加わる * each それぞれの、めいめいの、各 * lost 道に迷った、分からなくなった、当惑した →方向、居場所が分からなくなった、ということ。ここでは幾つものクラスに出かけていたことを暗示している。 * pas de quatre (バレエ)パ・ド・カトル、四人の舞踊 * perfect 申し分ない * try and… ~しようとする → try to…より口語的で、より強い切迫感や決意を表す。 * doll up 美しく着飾る * fucking とてつもない、全くもって → この語は強意を表し、「いまいましい」とか「とても」などの意味で用いられる卑俗語。人前での使用は避けたい。 * obsess 気にする、くよくよする → She obsesses about trifles. (彼女はつまらないことをくよくよ気にする)のように、不必要なほど気にすることをいう。 * each and every… どの~も → every を強調したもの。 * lose oneself 自分を見失う、没頭する、夢中になる → ここでは「我を忘れるほど夢中になる、はじける」ということ。 * discipline 規律、自制、秩序 * let go 自由にする、放つ → ここでは「自らを解放する、羽目を外す、はじける」ほどの意。 * transcendence 超越 → 経験、理解、理性、常識などを超越すること。 |
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